連休最終日。
九月上旬、夜とはいえ未だ気温は下がる気配もなく、どこからともなくセミの鳴く声も聞こえていた。
月は見えない。朝からずっと分厚い雲が空を覆っているからだ。
「ここに駿介くんが暮らしているんだねえ」
西野は真新しいベッドに座り、ぱたぱたと足を泳がせる。
彼女の視線の先には目と鼻の先で飲み物を用意する駿介の姿があった。普段はあまり見ることの無い、黒のズボンに白いシャツというラフな格好。彼の家に二人っきりということも相まって、西野は思わず襟ぐりをつまみ変な下着だったかもと覗きこむ。
ほっと息を吐いた所で、駿介が冷たい緑茶を持ってくる。
「最近、色々買い揃えたばっかりだから、まだ俺も慣れてないんだけどな」
「あははっ、なにそれ! 」
一緒にお茶を飲み、そうやって笑い合っている中で駿介の様子が少しばかりおかしい事に西野は気づく。しかし原因は全く分からないらしく、何故だろうと駿介を見つめた。
駿介は駿介で、彼女を家に連れてきた事に内心では心臓が驚くほど早く高鳴っていた。
自分のベッドに座る最愛の彼女である西野もまた、紺のノースリーブニットにライトブルーのショートパンツというラフな格好である。しかしその服装は彼女の細く長いしなやかな腕も、細いながらもハリのある白い太ももが見えるようなものだった。
駿介は隣に座っているのだが、何度もちら見してしまう。しかしこれではダメだと思い何とか意識を逸らそうと、先日届いたばかりのテレビをつける。
重なる身体と唇。名前は知らないが、有名らしき海外の俳優と女優が裸のまま抱き合う姿が映し出された。
死のふちから生還し、最愛の彼女と再会して愛を確かめ合っている感動的なシーンなのだがーーそんな事は知らない二人にはただただ刺激が強いシーンに他ならない。
「ご、ごめん! 」
駿介は短く謝ると、慌ててテレビの電源を切った。西野は真っ赤な顔を隠すように少しだけうつむき、「う、うん」と消え入るような声で答えた。
訪れる静寂。
慌てて消したせいで、ベッドの前に置いた小さなテーブルにぶつかったせいで電気のリモコンが落ちてしまっていた。
いち早く気付いた西野はしゃがみこみ、拾い上げ駿介に「はいっ」と手渡した。その時、ボタンに指が当たり電気が消えた。
「あっ……」
「ごめん、すぐつけるーー」
「いい! つけなくて、いい」
互いの姿を認識出来るのが精一杯の、真っ暗闇。
ベッドに押し倒された駿介と、彼の上に馬乗りとなる西野。
聞こえた小さな音。駿介の手から落ちたリモコンがベッドの下に落ちたらしい。
「つかさ……? 」
「なに? 」
「えっと、これはどういう状況なのかな」
「そんなの、分かるわけないじゃん! 」
西野は自分がどうしてそんな事をしたのか、自分自信でも分からなかった。だけど、心当たりはある。文化祭のために、連休を利用して行った撮影合宿で駿介に新しい恋人が出来た事だ。
もちろん、新しい仲間が出来た事は素直に嬉しかった。
東城よりも胸が大きい北大路を彼女にした事は少しだけ落ち込む要素ではあったが、自分には自分にしかない魅力があるはずだと自分に言い聞かせた。
小さな不安。世の男が胸の大きな女の子を好むことくらい、西野も知っていた。だけど、と思ってしまうのだ。自分の小さな胸を見るたびに。
「なんで、なんでそんな顔してるの」
温かな駿介の手が冷たい西野の頬に触れた。
目が慣れてきたのか、互いの表情が読み取れる。西野は今にも泣きそうな、駿介は心配する顔だった。
「べつに、駿介くんがあたしの身体に興味を持ってくれないんじゃないかなーなんて、不安になってないよ」
壁の方を向き、西野は言った。
駿介は身体を起こし彼女の身体を抱いて、今度は自分が馬乗りになるように体勢を変える。
「……なに」
「つかさは分かってないよ。今だって、ずっとドキドキしてんのに」
西野の手を自分の胸へと当てて、ほらっと駿介は得意気に言った。少し声をうわずらせながら。
「あたし、綾とさつきと比べなくても分かるくらいおっぱい小さいのに? 」
「胸の大きさなんて、俺は気にしないから」
「……ほんとに? 」
「つかさを騙したことなんてないだろ? 」
「……逃げたことならあるけどね」
「それはもうごめんとしか言えないけど」
西野はくすりと笑う。
釣られたように駿介も笑い、そっと唇を重ねた。
「ん…、んんう、ん」
ついばむようなキスから、ねっとりと絡み合うようなキスになり、駿介の手が思わず西野のささやかな胸へと触れた。
するとびくんと西野は身体を震わせる。
「ご、ごめん」
「や、めないでーーおねがい」
触れるか触れないかという距離で、西野は震える声で言う。
駿介の唇に、今度は西野の方からキスをした。離れないでとせがむように、駿介と指を絡ませ手をつなぎ。
「脱がせるよ」
「ん……」
寝転は背中を浮かせる。駿介はぎこちくゆっくりと裾を捲り脱がせていく。
細いお腹が露になり、淡いピンクのブラにつつまれた肉はあまりついていないが、女性らしい丸みをおびた胸に駿介は固まり凝視してしまう。
「ちょっと、見すぎだからね」
「ごめん、つい」
頬をふくらませた西野に駿介は謝るのだが、その視線は胸に向いてしまっていた。西野は嬉しさを隠すために怒ったふりをしたのが、そんな彼の姿に思わず笑ってしまう。
「つかさ? 」
「嬉しいよ。駿介くんが、あたしなんかのからだで、そのーーこーふんしてくれて」
「いやっ俺の方こそ……想像以上に綺麗で、見とれちゃって。ありがとう」
「なんでありがとうなんだよ、もう。ねえ、あたしの服はそこに置いてていいからさ、続き……して? 」
うすく開いたカーテンの隙間から、雲の裂け目から現れた月の明かりが柔らかく入り込む。
西野は嬉しさがにじみでる笑みで、駿介の身体に触れた。
駿介は脱がした服とキャミソールをテーブルに投げ置き、自身もシャツを脱ぐ。
「凄く綺麗だ」
首筋へと触れるようにキスして、ブラを外し囁いた。
西野は恥ずかしさのあまり、唇をぎゅっと噛みしめ声を漏らさない。
駿介の悪戯心に火がついた。少しだけむっとした駿介は、彼女の胸を手のひらでつつみこむ。ふにふにと優しく揉むと、ふわふわとしたやわらかさが直に伝わった。
「つかさ」
名前を呼んで先端の突起を指で弾く。しかし西野は「んんんっ」と少しだけ甘い声を漏らしはしたが、未だ緊張でがちがちだ。
今度は少しだけ強く、突起をつまんで空いた右手で彼女の太ももへと手を伸ばす。
「ひぁ! …んぅ…んんんっ」
「ちょっと可愛すぎてヤバイかも」
「やばいい…? 」
蕩けるような、甘くすがるような声。
駿介はショートパンツのチャックを下ろすと、そのまま脱がせる事に成功した。
自らもズボンを脱ぎ捨て、下着も脱ぎ捨てた。
「止まんないってこと」
「止まんないでいーよぉ? あたしを、駿介くんのもにして? 」
既に西野の秘部は濡れていた。下着をぐっしょりと濡らすほどに。
駿介の一物もいきり立っていた。初めての経験だ、無理もない。
駿介はショーツを脱がせた。
薄く生えた陰毛は愛液で湿っている。ぷっくりと盛り上がった割れ目は仄かな薄茶色。
「ちょっ!!ダメだよ、汚いから! シャワーだって浴びて、ないっんんっ、のにいっ」
彼女の股に顔をうずめ、溢れでる愛液で口まわりを濡らしながら秘部の中に舌を入れ動かした。太ももを抱かれ、いくら身体を動かしても快感から逃げる事の出来ない西野は漏れる声をおしころすため、枕を顔に押ししあてた。
「ふぁっふぅ…っああんっ」
びくんとびくんと数回、西野の体が跳ねた。しかし駿介の舌は止まらない。本で得た知識が頭を過ったらしく、クリトリスの辺りを舌先でくすぐるように刺激し始めた。
すると再び西野はびくびくと反応し、何とか太ももを閉じようと試みる。しかし力が入らない程に感じてしまっていたので、駿介は舌を動かすのを止めない。
「あ、うんんっ…そこはヤバイいっ!」
止めどなく訪れる快感に西野の体が今まででいちばん大きく跳ねた。
駿介は顔を離すと腕で顔についた愛液を拭い、彼女の白く細い腰に触れる。荒く息をする西野は、揺れる瞳に駿介を映した。口は動いているが、声は出ていなかった。
「いれるよ、」
「“きて”」
ようやく聞き取れた声に、駿介はキスをし、ゆっくりと自分の一物を西野の中へと入れていく。狭く、絞り取るように訪れる快感に今度は駿介が耐える。
キスをしながら、更に奥へと入る途中、何かに阻まれるような感覚。駿介はもう一度、いいか? と耳元で囁いた。
「うんっ……!」
「愛してる」
何かが避けたような、小さな違和感を一物が感じた。
西野は「えへへ」と痛みを耐えるように笑った。駿介は何度も何度も口付けを重ね、痛みを忘れさせようとする。両の手を繋いで。
「ふぅ……んっ…ちょっと痛いけど、駿介くんと繋がってるんだと思うと、凄く嬉しい」
「よかった。俺もすごく気持ちいいし、幸せだよ。ありがとう」
さらさらと艶のある西野の髪を撫でた。
いきなり動くと痛いだろうからと、入れたままの状態で。
しばらくすると、ちょっと慣れてきたかもと西野が言った。
確かに彼女の顔にあった緊張が、幾分ましになっていた。しかし駿介はシーツを濡らす愛液に混じる血を見て、未だ心配している。
「動いていいよ? 」
「でもーー」
「あたしが動いてほしいから、ね? 」
そう言われてしまうと、駿介も望みに答えようと、最初はゆっくりと動かした。
すると西野は顔を火照らせ、次第に甘い声を漏らし始めた。愛撫をされていた時のように。
「ふぁ、ふぁ……んっんっあっ…んあっあった」
「気持ちいいよ、つかさ」
「あっ、たし、もっん…あっん」
駿介は西野の足を抱きかかえ、少しだけより深くを突き上げた。
訪れたより強い快感に、西野は喘ぎ声で答える。
「もう我慢できない、かもっ」
「い、いよ、きてったくさんきてーーっ」
ずるんと抜けた一物から吐き出された白い液体が、西野の白い柔肌にかかった。
「はぁーはぁ……すごく熱いんだね、せーえきって」
寝転んだまま指で腰の上にたまった精液を弄る西野。
駿介は一瞬、やめさせようかと思案したのだが、その可愛い姿をもっと見ていたかったので何も言わなかった。
「ありがとね、駿介くん」
「俺の方こそ、ありがとう」
しばらくして、精液の熱が冷めた所で西野の要望に答えた駿介が綺麗に拭き取った。二人でシャワーをあび、シーツを代えたベッドに入ると十二時を過ぎようとしていた。
「誕生日おめでとう」
「うん。最高のプレゼントを、ありがとう」
抱き合ったまま、布団の中で温もりをわけあいながら二人は最後にもう一度キスをして、眠りにつくのだった。
まどろみの中、目の前に誰かがいることに気付いた。
あたしを抱き締めたまま気持ち良さそうに眠る、駿介くん。
そうだ。合宿から帰ってきて一緒にケーキを買ってそれからーー
色々と経験して、オトナになった。
心もカラダも、駿介くんのものになったみたいな感じ、かな。
「あーー」
ふと気づいて、駿介くんを起こさないようにそっと自分の右手薬指を見た。そこにはキラキラと光るエメラルドグリーンの指輪がはめられていた。眠るときには無かったから、きっと駿介くんのサプライズだ。ただでさえ幸せ過ぎるのに、どうしてこんなにもあたしをもっと幸せにしてくれるのか。あたしはつんつんと、駿介くんが起きるまでいたずらをすることにした。
「早く起きないかなあ」
のぼりはじめた朝日の光を浴びながら、そんなことを呟く西野は幸せそうに笑うのだった。
次の話は未定です。
あと、本編の進みかたによっては色々と変更があるかもしれません。