迷宮はハーレム王国(Make your harem kingdom!!) 作:五十貝ボタン
「あかん、あかんで! あいつら、星を背にしとる上に、追い風や! あいつら、自分に有利な地形を選んで待ち伏せしとったんや!」
本陣のユナには状況がはっきりと分かった。数の利と地の利を得た小鬼の軍勢が、一斉に攻め上げてくる。
「一人で掛かるな。挟み撃ちにしろ!」
「おー!」
キブの指示に答えて。半ダースもの小鬼が先頭に立つナズナとマユの二人を囲み、逃げ道を塞ぎながら斬りかかる。
「……!」
「くっ!」
マユは素早く飛び上がって小鬼の刃をかわし、ナズナは身につけた甲冑で受ける。甲冑ごしとは言え、赤い筋がナズナの白い肌に刻まれた。
「倒せ! 倒せ! 倒せったら倒せ! こいつらの首を挙げたものには、褒美をやるぞ!」
「おー!」
小鬼英雄、キブが甲高い声を上げながら前進する。その威勢で火をつけられたように、バックラインを守る小鬼たちが前進し、宮廷に圧力をかける。
その背後では装飾を着けた小鬼が妙な音楽を鳴らして踊っていたが、しかしなにもおこらなかった。
「小鬼ごときに、押されてたまるか……ッ!」
ナズナが大剣を振りかざし、1体の小鬼の頭蓋骨をたたき割った。美しい姫騎士の破壊力を目の当たりにして、一瞬、小鬼たちの表情におびえが混じる。
「その調子ですよう!」
ペティコートがラッパを吹き鳴らして応援する。俄然、宮廷に勢いがついた。マユが手裏剣で小鬼の額を割り、ペティコートが鑓(やり)で小鬼の腹を突く。パトリオットも珍しく手にブロードソードを掴んで首を一つ刎ねた。
「よっしゃ、ええ感じや! どんどんかましたれ!」
ユナが両手を振り上げて叫ぶ。その横では、メロンボール以下神官団が、杯を掲げていた。
「聖なる戦いに神の祝福を!」
唱和の後、一斉に杯を傾け、その中身を飲み干す。
「……あんた、何飲んどるんや?」
問いかけるユナに、頬を赤くしたメロンボールが答える。
「国産のバナナ酒よ。これを飲むと、気力が湧いてくるの」
「……そうかいな」
「押せ! 押せ! 押せったら押せ! 仲間の死を悼むより、敵ののど元に食らいつけ!」
「わー! わー!」
キブの叫びに呼応して、小鬼たちが一気呵成にパトリオットとナズナを囲む。
「そのちっこいやつは狙っても無駄だ! その二人に攻撃を集中しろ!」
「……小鬼に小さいとか、……言われたくない」
ぽそりと呟くマユを無視して、小鬼たちがパトリオットとナズナを取り囲む。文字通り、四方から狙われてはたまったものではない。ナズナの甲冑に傷が増えていく。
「いいっ!? ちょ、待っ……!」
甲冑を着ていないパトリオットはそれどころではない。勢いに乗った刃がパトリオットの身体を傷つけていく。血だらけになりながらも、
「あ、あぶねえ。ペティに貰った強壮剤がなければ即死だった……」
「あまい! あまぁあぁぁぁい!」
不意に、本陣に残っていた、装飾のついた小鬼が叫ぶ。かーっと叫ぶと共に、得体の知れない力を杖の先から放った。
「……え?」
思わずぽかんと口を開くパトリオットの額に、謎の魔力ががつんとぶつかった。
「ぐふっ……」
額から地を噴き出しながら倒れる国王。もしかして、魔力ではなくて投石だったのかもしれない。耐えきれず、パトリオットはノックダウンされた。
「な、なんちゅー役立たずや……」
思わずうなりをあげるユナ。そのとなりで、メロンボールが仕方ない、とでもいうように肩をすくめた。
「みんな。パトくんのために祈りましょう。信仰を!」
メロンボールが神をたたえる言葉を紡ぐと、信者たちがそれに応える。その儀式に神が応えてか、それとも集団が行った儀式が魔力を導いたのか、パトリオットとナズナの傷が癒されていく。
「は、俺は何を……」
「伏せていろ」
がば、っと身体を起こすパトリオットの鼻を、ナズナがかかとで後ろに蹴った。
「ぼごっ!?」
再びぶっ倒れるパトリオットの腹を踏み、ナズナが両手で大剣を構える。
「我が国の絶技、とくと見よ。バナナ流剣術奥義、花散里(はなちるさと)!」
一瞬。ナズナが腕を振ったかと思うと、六筋の白刃が同時に閃いた。
次の瞬間には、小鬼の首が六つ、空中に飛んでいた。
「見事! ナズナ様の剣術はいつ見ても華麗ですよう!」
別の小鬼を鑓で貫きながら、ペティコートがはやし立てる。マユも小鬼の急所を貫きながら、
「……さすが、ナズナ様。あっという間に、小鬼を全滅させた」
その二体を最後に、小鬼は戦場から消え去った。一ダースも居た小鬼があっという間に全滅だ。その半分を、ナズナが一瞬で屠ったのだ。いかに小鬼相手とはいえ、絶技と呼ぶにふさわしい。
「見事、見事! ようしがんばれ!」
寝転んだままのパトリオットがごろりと肘を突く。完全になまけモードだ。
「あんたはちょっとは働かんかい!」
すこん、とその後ろ頭にユナの投げた石がぶつかった。
「もうあんな国王に任せてられへん! 数の利はなくなったんや、その小鬼をいてまえ!」
「任せろ」
ユナの言葉に、ナズナが頷く。大剣を振り上げ、小鬼英雄キブに斬りかかる。
「ああっ!?」
悲鳴を上げるキブの身体を、容赦なく刃が断つ。が、その命までは届かない。
「とどめですよう!」
その背から、ペティコートが鑓を突き出す。穂先がキブの腹を突いた……と思った瞬間、
「あまい! あまぁあぁぁぁい!」
装飾のついた小鬼が叫び、空中に杖で魔方陣を描く。その瞬間、キブの身体に着くはずの傷が、『転送』された。ドッと刺し傷がペティの身体に刻まれる。
「くうっ!? これは、召喚術……!? こ、この小鬼もただ者じゃないですよう!」
驚くペティに向け、その小鬼はにやりと嫌らしく笑って見せた。
「し、死んでたまるか! たまるかったらたまるかぁ!」
キブがマユの刃をほうほうの体でかわし、傷口を押さえながら叫ぶ。その瞳には生きる事への渇望と執着の炎が燃えていた。
「……」
パトリオットは、ものも言わず立ち上がった。
「人間なんかに……人間なんかに!」
叫ぶキブの頭上に剣を振りかざし、
「俺も、守らなきゃいけない国民が居るんだ。……悪いな」
振り下ろした。
どうと倒れるキブの身体をまたぎ、残った一体の小鬼に剣を向ける。
「これで後はお前だけだ。覚悟はいいな?」
しかし、小鬼はにやりとまた笑みを浮かべる。
「あまい! あまぁあぁぁぁい!」
そして再び、謎の音楽を鳴らし、踊り始める。
「アホ、そんなことしてもなんにもならんで。命乞いでもしたほうが……」
言いかけたユナが思わずぽかんと口を開く。彼女の言葉を遮り、方々から別の声が聞こえてきたからだ。
「呪術師様のお祈りだ!」
「呼ばれてる!」
街道の脇から、わらわらと新たな小鬼たちが現れる。
「ほほほほほ! ワタシは小鬼呪術師! そんなオンナが居なくても、ワタシさえ居ればいくらでも小鬼は集まるのですよ! さあ、者ども、やってしまいなさい!」
「いいっ!? ちょ、ま……っ!」
現れた小鬼たちが、さっそく群がってくる。甲冑を着込んだナズナや、敵の攻撃をかいくぐる訓練を積んだマユとは違い、パトリオットは体の鈍さには自信がある。そりゃあもう、なまけ慣れた体には、小鬼の攻撃だって命中する。
「うわああ!」
小鬼の斧の一撃を、咄嗟に手の中にあったもので受け止める。
ボキッ。
受け止めたものが、音を立てて折れた。
「……なんてことを。旗が……」
ナズナが目を見開いて言う。パトリオットの手に握られていたのは、大バナナ王国の国旗である。国王だからとそれを持たされるパトリオットにとっては大きくてかさばる邪魔なものだが、迷宮探索に旗を持って行くのは、それなりの意味があるらしい。
「そ、そんなこと言っても! 仕方ないだろ!」
「その旗がどれだけ大事なものか、分かっているのか!?」
ナズナが背後に危険なオーラを纏って叫ぶ。パトリオットの背は思わずぶる、っと震えた。
「言い争っとる場合やない! はよ、なんとかせんかい!」
ユナが叫ぶ。はっとしたようにナズナが剣を構えた。彼らの行く手を、小鬼たちが塞いでいる。
パトリオットは背後に一瞥をくれる。
「ペティ、マユ! 俺と、お前らでここらを押さえるぞ! ナズナのキンギョなら、敵の本陣まで一気に切り込める!」
「はーい! お任せあれ!」
「……了解」
ペティコートが飛び出して前衛に並ぶ。すでにここは敵陣である。パトリオットは小鬼の身体をブロードソードで薙ぎながら、ナズナに目を向けた。
「お前の命令に従うわけではないが、それが一番有効そうだ。……はあっ!」
ナズナが跨がったキンギョの腹を軽く蹴る。パトリオットとペティコート、そしてマユが小鬼を押さえている間に、大剣をまっすぐに構えて呪術師に迫る。
「やれ、ナズナ!」
「あたしを呼び捨てに……するな!」
怒りに任せて振り抜いたナズナの剣が、呪術師の身体をざっくりと切り裂く。あわれ小鬼呪術師は、上半身と下半身が別々の方向に吹っ飛んだのであった。
「あまぁあぁぁぁい……! わ、我らを倒したところで、マアナ様を止める事など……でき……ぬ……」
不吉な言葉と共に、呪術師は倒れた。
小鬼たちは目に見えて戦意を失っていた。パトリオットは剣を引き、
「……あの、キブとかいう小鬼」
と、地に倒れたスカートつきの小鬼を示し、
「……まだ、死んでない。すぐに治療をすれば助かるはずだ。命が惜しかったら、そいつを連れてさっさと逃げろ。ただし、大バナナ王国に二度と刃向かわないことだな」
できる限り声を低くして、小鬼に告げる。小鬼たちはぴしっと背を伸ばし、
「は、はいー!」
と叫び、キブの身体を持ち上げて逃げ出していった。
「お優しいことだ」
剣を背中に収めたナズナが、パトリオットの背に声をかける。
「抵抗するつもりもないのに、小鬼をわざわざ殺すことなんてないだろ。とどめを刺すのもめんどくさくて、思わず力を抜いちまったんだよ」
自分の服の裾を払いながら、やれやれと呟く。
「……とりあえず、二人は怪我、してる。ここでキャンプを張った方がいい」
ナズナの背からぬうっと現れたマユが言う。ナズナはじっと視線を向けたが、それ以上何も言わなかった。
「よし、そうしよう。みんな、キャンプの準備だ!」
「はーい」
パトリオットの指示に返事をしたのは、メロンボール一人だった。
ユナとペティコートは、小鬼の死体の山を漁っていた。
「なんや、これだけか? シケとるなあ」
「数が多いから、何か珍しいものを持ってるかと思ったのに。小鬼に期待しないほうがいいってわけですよう」
ユナが死体から仕えそうな素材をかき集め、ペティコートのバックパックに放り込んでいく。
パトリオットはやれやれと肩をすくめ、
「ま、のんびりやるか」
へら、と笑みを浮かべた。
●
キャンプの準備を終えると、早速ナズナが騎士団に命じて食事の準備をさせた。
ユナは役人たちに命じて周囲を探らせ、さまよっている人間を見かけ、キャンプに引き入れた。冒険の合間にも、国力の拡充を怠らないのが大臣としての使命である。
その帰りに、ユナはたき火に当たっているペティコートを見かけた。メイド服でこくこくと舟を漕いでいるので、そっと毛布を掛けてやる。
「……この子は気楽なもんやなあ」
たき火を挟んで向かいに座り、ぽつりと呟く。自分より年下のメイドの寝顔はいかにも幸せそうで、悩みなど何もなさそうに見える。
「ん……あふ。どうやら眠ってしまったみたいですよう」
目元を擦りながら、ペティコートが目を覚ました。
「あ。……これ、ユナ様が? ありがとうございますよう」
体にかけられた毛布をぎゅっと抱き、笑顔で言ってくる。ユナはなんとなく気恥ずかしくて、そっぽを向いた。
「べ、別に。それより、あんたにも教えてやろうって思ってな。おマユからの報告や。この部屋、『ピノキオ』っちゅー罠が仕掛けられてるらしくてな。ここで嘘ついたら、鼻が伸びてまうらしい」
早口に言う。すると、ペティコートはまた笑みを浮かべる。にこり、というよりは、にやり、という笑みだ。
「そうなんですかあ。……ところでユナ様、パト様のことどう思いますかあ?」
いきなりの問い。ユナは反射的に、
「べ、別に! あんなやつのこと、何とも思ってへんわ!」
と、叫んでしまった。その瞬間、にゅう、と鼻の頭が起き上がっていく。
「えいっ!」
ばしーん! と、その鼻先に向かってペティコートがお守りを投げつけた。すると、伸びかけたユナの鼻がしゅるしゅると元に戻っていく。神の加護か謎の香り成分か、はたまたプラシーボ効果か。
「危ないところでしたよう。ユナ様、嘘ついちゃあダメって言ったばかりじゃないですかあ」
「こ、これは! そのなんや、何とも思ってへんってのが嘘なだけで、好きとか嫌いとかは言うてへんから……!」
ばたばたと手を振って言い訳するユナに、またくすくすとペティコートが笑みを向ける。
「はいはい。ペティはこれからパト様のテントにお邪魔しますけど、ユナ様もいらっしゃいますかあ?」
「だ、誰が行くかあ! ウチはまだまだ仕事が残っとんねん!」
「もう、強情ですねえ」
それ以上追求するつもりはないらしく。ひらひらと軽い調子でペティは去っていった。
「……」
何か言うとウソになってしまいそうなので、ユナは何も言わずに自分のテントに戻っていった。
●
『大臣命令:仕事中。誰も入るな!』
そう書かれた看板をテントの入り口に立て、ユナは書類を前に、がくっと身体を崩した。
「あかん、あかんで。全然集中でけへん……!」
うなる。机に向かっても思い出すのは、小鬼立ちとの凄絶な戦い……ではない。
ペティコートがくわえていたもの。
メロンボールの胸に埋もれていたもの。
何かをしようとすると、パトリオットの剛直が頭に浮かんでくるのだ。
「な、何やねんな! あ、あんなやつのことなんか……」
言いかけて、はっと口をつぐんだ。嘘をついては鼻が伸びてしまう。が、口に出せなかったらますますもやもやしたものがたまってくる。
頭の回転が速いユナだが、それ以上に舌の回りは早い。彼女が口を動かすのは、頭を動かすためでもある。喋りながら考えをまとめるのに慣れているのだ。
そのユナが、今は嘘をついてしまうことを恐れて口を動かせない。フラストレーションはたまる一方である。
「……し、しゃーない! 仕事に集中するためや!」
ばさりと台帳を投げ捨て、配下に運ばせた即席の寝床に座り込む。
上着を止めている紐を解き、袖のない肌着を露わにする。おずおずと手を服の中に潜らせる。
「ん……っ」
ぴくん、と身体が震える。掌には、張りの強いBカップの感触が帰ってくる。指を押し込むとはじき返すような弾力だ。
「はあ……っ、さ、最近、しとらんかったから……」
指が乳房をつまむように圧迫する。わずかな刺激で、ぴりっと電気が走ったように身体が震えた。
指先で胸の先を探る。つう、と乳首の周りをなぞると、抑えきれずに声が漏れる。
「んっ……や、あ、っくうんっ……!」
強い刺激に引いてしまいそうになる指を、それでも乳首に押し当て、コリ、とつまむ。身体がぴくぴくと震え、じんわりと肌に汗が浮かんだ。
「あ……ん、っく、ぅんっ……!」
必死に声を抑えようとする。テントの外に漏れていたら大変だ。誰が聞いているか分からない。国民にこんな声を聞かれたら。ましてや宮廷の仲間に。ましてや……。
「な、なんでや! なんであないなやつの顔が浮かぶんや!」
ふっと脳裏にパトリオットのだらけきった顔が浮かぶ。ユナは大声を上げてそのイメージを打ち消した。
「ユナ大臣? 何か……」
その声を聞きつけたのか、テントの外から声が掛かる。ユナは慌てて身体を隠し、
「な、なんでもあらへん! 考え中や、邪魔せんといて!」
テントの外の人影は、「はあ」と生返事を返して、遠ざかっていく。
「あ、あかん、あかんで。ウチとしたことが……は、はよ、終わらせな……」
うなる。しかし、一度脳裏に浮かんだパトリオットの顔が離れずにつきまとってくる。しかも、徐々にそのイメージは顔から下に向かっていき……。
「ほ、ほんとに、あんなんが入るんやろか……?」
ペティコートの口を、メロンボールの胸を犯していた凶暴な肉鑓。凝視したわけではないが、その大きさははっきりと分かった。
ユナは国のため、と思って幼い頃から勉学に励んできた。数学、商学、政治に経済、戦略に至るまで、国営のために必要な事ならなんでも学んだ。
だが、そんな彼女があえて目を逸らし続けてきたものもある。
子作りだ。
当然ながら、国力の増大のためには国民が必要だ。そして、国民は小鬼のようにどこにでもいるというわけではない。宮廷が、ランドメイカーが率先して国民を増やすことを奨励せねばならないのだ。
一部の国では、見本を示すためにランドメイカー同士が公然と子作りをするのだという。
しかし、ユナにとってそれは信じられないことであった。思春期を迎えても勉学に励んでいた彼女は、ついぞ男の肌に触れたことなどなかったのである。
知識としては知っている。あの剛直を、どこにどうすれば子供ができるのか。
ユナの手は、自然とその場所に向かっていた。
膝の下まである大きなスカートをまくり上げる。飾り気のない下着は、すでに熱と湿り気を帯び始めていた。
「こ、こんな所に、あのおっきいのんが……」
呟く。下着の上からそっと手を伸ばし、割れ目に沿って手を触れる。
「んっ……!」
胸に触れたとき以上の感覚。それはユナの身体が、男の身体を求めて発情している証だ。
「あんなやつを……想像しながらやなんて……!」
下着の上から、何度も指を這わせる。自分で自分の性感帯を熟知していない、つたない自慰だ。
「っふ……っく、うん、んんっ……!」
それでも、身体は快感の反応を示す。くち、くち、と濡れた音が響き始める。ユナの秘所からあふれた蜜が、下着を濡らしているのだ。
「あ、あいつのんが……ここに……」
頬を赤く染めながら、指先を下着に潜らせる。はっ、はっ、と荒い息が吐き出される。
「そ、そんなんがほんとに……気持ちいいんやろか……?」
ちゅく……と小さな音を立て、割れ目の中に指を潜らせる。ひくついている膣口が、進入を拒むようにきゅうっと収縮した。
「んうっ! っふ、う、くんっ……!」
さらに甲高い声が喉の奥から漏れる。
刺激に反応していると言うよりは、自分の体が男を求めているのを自覚したせいだ。ユナは、はしたない、と思うと同時に、なぜかそれをうれしくも感じていた。
「う、ウチかて……女、なんやから……あ、っふ、できるはず、や……うっくんっ……!?」
いつしか、ユナは没頭し始めていた。自分の体だけでなく、心でも男を求めている。むろん、男なら誰でもいい、というわけではない。彼女が求めている男はたった一人だったが……それを、彼女の心は認めていなかった。
「っふ……っく、あう、っや……!」
くちゅ、くちゅ、っと音を立てて指が膣の浅い場所をかき回す。下着の上から、小さな突起……クリトリスを押しつぶし、擦りあげる。ユナの身体は快感に対してまだ未熟で、膣への刺激よりも敏感な突起から伝わってくる快感の方が勝っていた。
「んなっ、あぅ……う、っく、んんっ! も、あかん、あかん……っ! く、るっ……!」
息苦しくて、さらに呼吸を喘がせる。両手で自分の性器をいじめ、大きく脚を開く。腰を突き出して、がく、がく、と震わせた。
「こんな……こんな格好で、あかん、もう……っ! っや、あ、あぁぁっ!」
きゅうっと脚を反らし、腰を浮かせて全身を震わせる。
きゅううううん、っと指を膣口が締め上げる。あふれていた蜜よりもさらに粘りけの強い愛液があふれる。下着では吸いきれず、寝床の布までがぐっしょりと濡れていた。
ユナはしばらく起き上がることもできず、ぼんやりとテントの天井を見上げて呼吸を喘がせていた。
「あかん、あかんで。……何やっとるんや、ウチは……」
目の端に、うっすらと涙が浮かんでいた。
解説編
○戦闘について
冒険の花、戦闘です。「迷宮キングダム」では、プレイヤー側/モンスター側の二陣営に分かれて、陣を張っての戦闘を行います。
戦闘はラウンドで管理され、全キャラクターが行動を行うと次のラウンドに入ります。
ラウンドの始めに《才覚》の高いキャラ(普通は大臣)による作戦判定を行い、イニシアチブを取ります(ユナがちょくちょく、状況を解説するようなセリフを入れるのはこのためです)。
イニシアチブを取った側のキャラクターが全員行動し終えてから、もう一方の陣営が行動を行います。
「迷宮キングダム」の戦闘ルールは驚くほど簡単なもので、移動と行動を1回ずつ行えば行動は終わりです。
ここに、様々なスキルやアイテムの効果が上乗せされ、様々なドラマが生まれるのです。
○希望について
「迷宮キングダム」には、《希望》というデータがあります。
《希望》は《気力》と《民の声》の二種類があります。
《気力》はキャラクターに、《民の声》は王国に与えられるもので、どちらも冒険するうちに増減します。
《希望》を消費することでスキルを使うことができたり、判定を有利にしたりすることができます。
要するに、《気力》を溜めてればキャラクターに、《民の声》がためていれば王国に勢いがついている状態になっているわけです。
……この作品はルールを楽しんで貰うリプレイ作品ではないので、とりあえず「そういう大事なデータがあるんだ」と思ってください。
○今回登場したモンスター
【小鬼】:ゴブリン、オークなどと呼ばれる、百万迷宮でもっとも数が多いと言われるモンスターです。襟巻きを書いた愛らしいイラストと、《HP》1という脆弱さ(お弁当がぶつかると死ぬ)のおかげで、まよキン不動のマスコットとして君臨しています。
【小鬼呪術師】:小鬼の中でも呪術や祭儀を司る、ちょっぴり偉い小鬼です。通常の小鬼の6倍の《HP》を誇ります。
【小鬼英雄】:小鬼の指導者としての力を持つ、強力な小鬼です。通常の小鬼の7倍の《HP》を持っています。【小鬼英雄】が居ると、【小鬼】の強さが跳ね上がるため、低レベル宮廷のもっとも恐るべき敵のひとつです。
○今回登場したスキル
【策士】:小鬼英雄が所持しているスキル。作戦判定の難易度を上昇させる。宮廷が最初に追い詰められているのは、小鬼たちにイニシアチブを取られたからです。
【小鬼の希望】:小鬼英雄が所持しているスキル。自軍の小鬼すべてを強化します。
【信仰】:メロンボールが所持しているスキル。《希望》を消費することで、宮廷全員の《HP》を回復します。ただし、失敗することもあります。
【剣劇】:ナズナが所持しているスキル。《希望》を消費することで、同じエリアに居る複数のモンスターに同時に攻撃を行います。「迷宮キングダム」では複数のキャラクターに攻撃する手段は少ないため、とても強力なスキルです。
【ぐうたら】:パトリオットが所持しているスキル。戦闘中、「何もしない」ことで、HP1点を回復します。怠けて強くなるのがなまけ者のスタイル。
【転送】:小鬼呪術師が所持しているスキル。仲間が受けたダメージを、別のキャラクターに与えることができる。
【小鬼の踊り】:小鬼呪術師が所持しているスキル。小鬼を呼び出すことができる。小鬼は百万迷宮のどこにでも居るので、呼べば出てくる。
【救出】:ユナの所持しているスキル。キャンプ中に行うと、《希望》を消費することで、《民》を増やすことができる。《民》が増えれば王国は発展します。
○今回登場したアイテム
【甲冑】:ナズナが所持しています。装備していると、受けるダメージが減少します。「迷宮キングダム」には防御力という概念がないので、とてもありがたい効果です。
【お酒】:メロンボールが消費しました。このアイテムを消費すると、《気力》1点を得ます。
【強壮剤】:パトリオットが所持しています。装備しているキャラクターの《HP》を上昇させます。……それでも戦闘不能に追い込まれるとは、小鬼は恐ろしい敵ですね。
【旗】:パトリオットが所持していましたが、破壊されました。ランダムエンカウントが起きたとき、少しだけ戦闘を楽にしてくれます。
【乗騎】:ナズナが所持しています。このアイテムを所持していると、普通の移動の後、さらに追加で移動することができます。深階に縁の深い大バナナ王国では、キンギョが使われています。
【お守り】:ペティコートが消費しました。このアイテムを消費すると、発動したトラップ一つを、その瞬間だけ無効化します。
○今回登場したトラップ
【ピノキオ】:このトラップがあるエリアで嘘をついたキャラクターは、【呪い】というバッドステータス(状態異常)を受けます。嘘をつくルールなどは存在しないので、本当にキャラクターが嘘をついたら発動します。
※この作品はあくまで『迷宮キングダム』を下敷きにした小説であり、作中のすべてが原作のルールで再現できるわけではありません。