自分のボキャブラリーの無さが恨めしい。
早朝からリニスは訓練に勤しんでいた。
「そうだリニス、常に動きを止めるな。動くのを止めたらソレは死に繋がる」
リニスは今まで航に習った技を活用して、でっくんと戦っていた。
「はあッ!!」
リニスはでっくんの攻撃を躱し、ついにでっくんに一撃入れる。
「そこまでっ!!」
航は声を張り上げ訓練の終了を告げる、それと同時にでっくんも沈黙する。
「リニス……なんで最後に一撃入れるとき打鉄を使わなかった?」
「そ、それは……」
「まぁ……その事を考える暇は無かったんだろうが実戦では死んでるぞ……」
そう告げられリニスはショックを隠せない。そんなリニスに航は続ける
「いいか、さっきの場合の理想的な動き方は天駆けを使いながら打鉄を入れることだ」
そう言いでっくんを起動させる。
「見てろよ」
でっくんはリニスと戦っていた時の速度を遙かに超え航に迫る。
航はでっくんの攻撃を躱しすぐに足下に球体の魔力弾を形成しその上を駆け抜け、でっくんに接近する。
「ふッ!!」
そして勢いを乗せて打鉄をでっくんに命中させる。するとでっくんは思いっきり吹き飛ばされた……そして沈黙する。
「わかったか?天駆けと一緒に打鉄を使うことによって威力をあげる事が出来たりする」
リニスは静かに頷く。
「んじゃあやってみろ。数時間したら戻ってくるから。テキトーに休憩入れろよ」
そう言って航は屋敷に戻る。
航は自室に戻ってきた。自分の部屋にある本棚に向かい一冊の本を数センチ動かす、すると本棚が横に音もなくスライドする。そこにはもう一部屋あった。この部屋は航の研究室・兼訓練室だ。部屋の中はここに来るときに通った航の部屋の三倍はある。
「さてと……俺も訓練するか、空間歪曲システム作動、訓練レベルA」
「了解シマシタ、空間歪曲作動」
どこからともなく機械音声が返答する。
「いくぞ、カナカ……」
航は呟きながら訓練の開始ボタンを押した。
数時間後
リニスは全身ボロボロになりながらでっくんの前に立っていた。この数時間ひたすらでっくんとの訓練に明け暮れていた。しかしリニスは一度倒れる事は無かった。決定打が入りそうになったときには鎧で身を守り、自身が攻撃に移った時には天駆けを使い、剣や打鉄を的確に打ち込んでいた。しかし、でっくんの予想以上の頑丈さに悪戦苦闘していた。
「ハァ……ハァ……」
それなりにダメージを与えて来たはずですが……こちらにもかなりのダメージが……。このまま持久戦にもって行かれたら確実に負けますね……。次の一撃で決めます!!。
リニスは決心してでっくん向かう。それと同時にでっくんも動き出す。リニスは自分の周りに数発の魔力弾を生成しながらでっくんに近づき接近戦に持ち込む。でっくんの攻撃を躱し避けきれない攻撃は鎧で守る、そんな攻防が続く。
数分後リニスが勝利した。
時間は少し遡り
周りは木々で囲まれている森の中。右を向けば木、左を向けば木、そんな森の中男は仰向けに倒れて居た。服の所々は破け、焼け焦げ斬られた後や血の跡も見受けられる。男……航は息も絶え絶えになりながら呟く。
「……はあっ……はあっ。腕が鈍ったなぁ……この程度でこんなにバテるなんて。一応それなりに訓練しているつもりだったんだけどなぁ……」
航は誰に言うでもなく事実を述べる。
「マジで体力着け直さないとな。これじゃあ、リニスの事も言えないな……」
そう言って周りを確認する。そこには百体以上のでっくんがあった。しかしそのどれもが壊れて地面に崩れ落ちていたのだ。そんなスクラップ置き場の様な中で航は笑う……それは自分に対する苦笑とも嘲笑とも聞き取れる。
「これから毎日こっちで訓練するか……」
航はバリアジャケットのポケットに手を突っ込んでタバコを取り出し口に咥え安物の百円ライターで火を着けた。
数分後に航は起き上がり、バリアジャケットを解除してリニスの所へと向かった。
リニスは荒く呼吸をしながら地面に腰を下ろしていた。そばには動かなくなったでっくんが倒れて居た。あのあと、リニスはでっくんとの激しい攻防を繰り返し遂に倒したのだ。
「おう、終わったか」
航はリニスに近づき軽く声をかける。
「……はぁ、……はぁ。マ、マスター……」
リニスは息を整える。その姿を見てチラリと横で沈黙しているでっくんに目を向ける。でっくんは大破とまでは行かないが、あちこちが罅(ひび)が入ってたり壊れているのが伺えた。
「取り敢えずおつかれさん。今日の訓練はこれで終わりだから、明日からは別の訓練始めるぞ。まぁ一回シャワー浴びてこい、その後リビングに集合」
リニスは、はいと頷きながら立ち上がり航と一緒に屋敷に戻る
「ふぅ……あー疲れたー」
航はどかっとソファーに腰を下ろす。リニスがシャワーを浴びている間に航はリビングのソファーにタバコに火を着け一服している。口にタバコを咥えながらリビングにあるテレビのリモコンを使い録画していたアニメを見る。ちょうどアニメがAパートからBパートの間のCMの所でリニスがリビングに入ってきた。
「おー、おかえりー。んじゃあ行くか」
航のセリフにリニスは首を傾げる
「行くって何処にですか?」
航はアニメを見始めてからの通算四本目のタバコの火を消す
「ん?決まってんだろ。お前の部屋だよ」
一瞬、リニスの表情が固まる。いくらリニスでも航の性格は何となくだがわかっている。だから思った……航を部屋に入れたら危ないんじゃ?と
「り、理由を聞いても良いですか?」
「そりゃあ、お前の疲労をとるためだろ。まぁ良いから行くぞ」
そのまま航達はリニスの部屋に向かった。リニスの部屋に入ると航はここに来る途中に自分の部屋から持ってきたバックを取り出す
「よし!!リニス脱げ」
……
…………
リニスは耳を疑った、そして次に航の正気を疑った。
「はい?す、すみませんマスターもう一度言ってください」
リニスは自分の背中を冷や汗が伝うのを感じる。聞き間違いであってほしいと願いながら航の返答を待つ。
「いや、だから脱げって」
平然と先ほどと同じ言葉を航は言った。
――ああ、聴き間違いであってほしかったです。マスター
薄暗くした部屋の中リニスは裸でうつぶせに横たわっていた。ベッドの下にはバスタオルを一枚引き、部屋の中にはアロマキャンドルの香りが鼻孔をつく。緊張しているのかリニスの身体はほんのりと汗ばんでいた。その汗ばんだ肢体をアロマキャンドルの明かりが照らしていて一層リニスを艶めかしく魅せていた。
「リニス……力を入れるな。もっと力を抜け、そうしないと痛いぞ」
航はリニスの背中をなでながら話しかける。その手は首筋から背中、背中から腰へと伝わせていく。
「――っん……あっ、ひゃっ」
くすぐったさを感じリニスは口から声が漏らす。航は場所を定めリニスに声をかける。
「入れるぞリニス、少し痛いが我慢しろ」
そうして航はリニスにソレを侵入させる。リニスの身体がピクンと僅かにはねたのを航は見逃さなかった。
「よし、一本目は入ったぞ。あと数本は入れるからな」
そう言って航は次の針をバックから取り出し、またリニスの疲労している箇所に針を入れる。ソレを数度繰り返す。
「よし、全部終わったぞ。んじゃ、これからこの針を通して魔力を送るから」
リニスは小さく頷いた。
リニスは針を通して身体の中に暖かい者が入って来るのを感じた。ポカポカと気持ちよくなりながらリニスの意識は遠のいくのを感じた。
「ん?リニスは寝たのか。まぁ、それもそうか」
小さく寝息をたてているリニスに静かにシーツを被せた。
『昔のマスターの方が今のリニスよりめちゃくちゃ凄かったけどね』
「俺も若い頃はやさぐれてたからな……つか、その話をするなカナカ……」
航はタバコを取り出し火を着け煙を燻(くゆ)らせる
「まぁ、やることもないし部屋に戻るか」
リニスの部屋から出て行った。
「さてと、俺たちはもう少し訓練すっか……」
航はリニスの部屋から出て行った。
航はリニスが寝てしまったため一人で昼を摂り、一人で訓練を終えてリビングで一服していた。
「ふぅ……今日もタバコが旨い」
外を見ると日が暮れ暗くなって来ていた。のんびりと夕食はどうしようかと考えている刹那、空間が震えるのを感じた。空間が震え、次元が震える。
「次元震、ジュエルシードか……」
規模はそこまで大きくない、問題はないな……、と考えているとリニスの部屋の方向から『ドタッ』と言う鈍い音と『ガタガタッ』と言う音が聞こえてきた。
「アイツ……ベッドから落ちたな……、意外にアイツもあれだな」
リニスがベッドから落ちる様を想像して苦笑していると、ドアが開いた。
「マスターっ!!」
「よお、リニス。おはよーさん」
航ののんびりとした声色とは別にリニスは声を荒げる。リニスの頭にはたんこぶがついていたが、リニスはソレを気にした風でもなく続ける。
「のんびりしている場合じゃないですよ!!」
焦りながらリニスは言葉を紡ごうとする
「焦るな。そんなに大きな次元震じゃない。」
「それよりももっと面倒なことになったわ……」
額に手を当てながら続ける
「――管理局が出てくる」
その言葉を聞いた瞬間リニスは青ざめる。
「小規模とはいえ次元震が起きたんだ、管理局が観測しているはずだ」
「そ、そんな――」
「まぁ、こっちは俺が何とかしておくから気にするな」
一変して航は陽気に笑う
「お前は訓練だけに集中してろ。ソレよりも腹減ったから飯頼むわ」
そんな航を見て、リニスは何か言いたそうだったが食事の支度を始める。
「あと、その頭のこれ塗っとけ」
航はリニスに小さな軟膏を投げる。
食事も終わり航は自室で寛いでいた。イスに座りのんびりとタバコを燻らせていた。
「さてと。カナカ、管理局のデータベースにハッキングしてこっちに向かっている次元航行艇の規模と人員を調べてくれ」
「りょーかーい」
指示を出し数秒で管理局のデータを画面に映し出した
「むむ、船は一隻で艦長はリンディ・ハラオウンか」
少し考えて航の中に何かが閃いた
「何か思いついたのマスター」
カナカは航の変化に気づいたのか好奇心で話しかける。
「いや、ただ仲良くなろうと思ってな」
航は黒い笑みをみせる
「あははは……」
航の考えを察したのかカナカは苦笑を漏らす
「最後に訓練して寝るか……」
そう言って航は部屋を出て行った。
残された時間は残り3日
誤字脱字がありましたら感想のほうからお願いします。