Subterranean Electron World 作:深緑 風龍
ーリインカークロニクル本部ー
レアside
………………お父さんが亡くなって、2ヶ月経ちました。それだけで無く、英竜お母さんも、あの戦い以降姿を見せなくなってしまいました。
理由は分かっていましたが、それでもやっぱり、寂しく思ってしまいました。
夕立「司令官、大丈夫か?」
レア「………………。」
夕立「司令官!!」
レア「! な、何!?」
夕立「大丈夫か?仕事に詰めるのはいいが、少し休んだ方がいいぞ?それに、手から血も出てる。」
レア「え?あ、あ!?」
気付かなかった。私、知らず知らずに仕事に没頭してたらしいね。それに、いつの間にか血の跡が紙に………………。
夕立「………………やっぱ、まだ気にしているのか?お前の、親父とお袋のこと。」
レア「………………………。」
夕立「………………司令官、しばらく休んだ方がいいぞ?ずっと仕事詰めしていたら、壊れるだろ?」
レア「………………うん。まだ書く事あるけど、休むよ。心配かけて、ごめんなさい。」
もう、何処にもいないのは分かっているのに、会えないって理解しているのに、………………現実を受け入れ切れない………………。
エデン『レア、僕の身に何かあったら、後の事任せるよ。』
レア「!!」
夕立「司令官?」
レア「何で、何で私を置いて、何も言わずに行ってしまったのですか!まだ、話したい事がいっぱいあったのに!!
何故なのです!?お父さん!!」
両儀零に報告して以降から、お父さんからの連絡は来なかった………。お父さんが切る前に言った言葉は、どういう意味だったのか分からなかった。
それを聞きたかったのに、あの戦いを最期に、亡くなって………………。
夕立「………………その、今日ぐらいはさ、墓参りしに行ったほうがいいんじゃないか?」
レア「…………そうね。」
ー孤独の岬ー
夕立(アズールレーン)の言うとおりに、お父さんの墓がある『孤独の岬』に行きました。墓の内容には、こう書かれています。
『アルカディア・エタンセル・エデン
数多の宇宙と世界を救い、大いなる罪を背負い続けた哀しき大英雄。
忘れられぬ桜を咲かせ、この世に去る。』
目撃した人が言うに、お父さんはオルタに向けてトドメを刺した際に、ビッグバンを起こしたあと1本の巨大な桜が現れたらしく、その幹のところでお父さんの遺体があった。
まるで、安らかな眠りにようやく付けられるかのような、心地よい死に顔だったって。
レア「お父さん。」
一体、どういう思いで、亡くなったんだろう?どんな思いを抱きながら、戦ったんだろう?他にも色々あるけど、この2つは聞きたかった。
もっとちゃんと、話し合いしておくべきだったかもしれない。
だけど、もうお父さんは、お父さんは………………………。
「リインカークロニクルのリーダーがここに居るなんて、珍しいね。」
レア「!?」
今の声、まさか!?
そう思って後ろを振り向くと、フードを深く被っていたけど、雰囲気から感じて思わず………。
レア「お父さん!?お父さんなの!?」
「………………。」
レア「何で黙っているんですか!?私です、『星空・クォーター・レア』です!!」
「分かってる、それぐらい………。」
レア「なら、何で────」
「分かっているからこそ、覚悟を決めなきゃならないんだ。」
レア「お父さん?」
お父さんはフードを脱ぐと、表情は悲しみでいっぱいでした。まるで、お別れを言いに来たかのような、そんな表情でした。
顔付きもあの頃のままでしたが、髪の色は半分真っ白で、前髪の一部も4色に染まっていた。
エデン「言いたいことは分かる。あの時、何でそんなこと言ったのか。それは、あの最期の戦いで死ぬと分かっていたから。」
レア「で、ですが、貴方は生きて───」
エデン「いや、実際死んでいるに等しい。本来なら、こうやって話すなんて無理な事だしね。」
レア「何でそう言い切れるのですか!?」
エデン「そうだな。『インフィニティ・ストーン』って言うのは、知ってるよな?」
レア「え?はい。『力』、『空間』、『時間』、『魂』、『精神』、『現実』の6つの事ですよね?」
エデン「7つ。」
レア「7つ?」
エデン「7つ目のインフィニティ・ストーンが存在していたんだ。そして、今の僕は死んだ事で、正式にその『インフィニティ・ストーン』になったんだ。」
7つ目のインフィニティ・ストーン!?それが、お父さんに!?
エデン「そのインフィニティ・ストーンの名は、『
石の色は虹色で、本来の姿は『幻想仕掛けの神』と呼ばれる、『抑止力』も『機械仕掛けの神』ですら手に負えないと言わせられた存在がいた。
今の僕がそうだ。」
レア「でしたら、何で世間に公表しないのですか?今こうして、生きて───」
エデン「レア。もう僕は死んでる。数多の世界を救い、多くの罪を償った大英雄である『アルカディア・エタンセル・エデン』は、この世にいない。
今の僕は、『アルカディア・エタンセル・エデン』の姿をした『幻想』のインフィニティ・ストーン。
例え君と過ごした日々を覚えていても、今の僕には、君と過ごす事はできない。それが、どんな理由があっても、どんな理屈があろうと………。」
レア「………………。」
エデン「すまなかった。レア。もっと、幸せに過ごしてあげるべきだったかもしれない。それか、もっとまともな生活を送らせるべきだったかもしれない。
君等だけ辛い思いをさせて、すまなかった。」
レア「………お父さん。」
エデン「………………………さようなら、『星空・クォーター・レア』。僕と英竜の愛娘。どうか、僕が成し得なかった事を、君と君の仲間達と共に、成し遂げてくれ。
そしてどうか、幸せに、生きてくれ………………………。
それが、父親としての、最期のっ、頼みだっ。」
レア「ま、待って下さい!!」
行っちゃだめ!行ったら、本当に、もう二度と会えなくなってしまう。お願い、ですから、行かないで!!
エデン「来ないで!!」
レア「!?」
エデン「お願いだからっ、来ないでくれッ!もう、辛い思いは懲り懲りなんだ………!僕の事を忘れて、生き続けてくれ………………!
こんな、最低最悪な父親の事なんか忘れて、幸せに────」
レア「出来ません!!」
エデン「何で、何でなんだ!?もう僕は、死んで─────」
レア「関係ありません!!」
死んだから何なのですか!インフィニティ・ストーンになったから何なのですか!?私は、私はッ!!
レア「もう勝手に居なくならないでください!!どんな理由があったとしても、貴方は私の父親であることには変わりません!!」
エデン「父親
レア「でしたら、何で泣いているんですか!?本当に赤の他人になるつもりでしたら、泣く必要は無いでしょう!?」
エデン「いい加減にしてくれ!!もう、失うのは嫌なんだ!!家族が、友人が、大切なものが、いなくなっていくのが、耐えられないんだ………………!
他人になってしまえば、こんな思いをせずに、済むのに………………。平然と、いられたのに………………。
お願いだから、もう僕の事、放っといてくれ………!」
レア「その願いは、無下にさせてもらいます。だって、私の幸せは、貴方と共に過ごす事ですから。」
エデン「レア………………。」
そういう事でしたのね。お父さんが私を突き放そうとしていたのは、私を守るため。いつか敵は私のような家族を人質にして、手駒のように操って、用済みになれば殺される。
家族などの大切なものを人質にすれば、降伏する事も容易い。特に、鳳凰さんやアラヤさん、私、マリベル、うさうさのような転生者の子なら尚更………。
だけど、だからって、こんな形で、お別れなんて、嫌ですよ………………。
レア「他人のフリなんて、出来ません。私も貴方も、そんな状態が続いていたら、気が狂いそうになります。
もう、貴方しかいないのです。何時でも、会える親は………………。」
エデン「………………。」
レア「お願いだから、行かないで………………。お父さん………………!」
エデン「………………………覚悟を決めたのに………………、別れを告げようと決めたのに、もう二度と、失いたく無いのに………………………!!
俺はどうしろって言うんだ!?僕を庇って死んでしまうのは、もう嫌なんだ!!何で、何でなんだ!?僕はそんなに、頼りなかったっていうのか!?」
レア「………………。」
エデン「………………無駄なのか?どれだけの力を得ようとも、大事な家族を、友人を、守れないのか?救えないのか?もう僕には、誰かを救える力はないっていうの!?」
レア「………………お父さん?あの戦いで、何があったのですか?」
エデン「………………僕がここに要られる理由は、爺さんと婆さんが庇ってくれたお陰なんだ。」
曾祖父のロードさんと曾祖母のマリアさんが?そう言えば、最近見ていなかった気がする。ずっと会わなかったけど、お父さんを庇って亡くなっていたなんて………………。
エデン「それだけじゃない。アズリエルも、僕を庇って死んだ。僕のせいで、3人の命を、奪ってここに居るようなものなんだ。」
レア「………………。」
エデン「これで、分かっただろ?こんな辛い思いをするぐらいなら、赤の他人でいた方が、良いんだ。
何も思わずに、済むんだから。」
レア「『
エデン「!?」
聞いた時は、本当に驚いた。だからって、そんな理由で私から離れないでほしい一心で、お父さんを縛り付けた。
エデン「な、何を!?」
レア「もうこれ以上聞きたくない。私の、厳しく鍛え、間違いを止めてくれた優しいお父さんが、これ以上苦しむ姿を見たくない………………。
ようやく、ようやく帰ってきたのに、前以上に苦しんで………………!
だったらもう戦わないで下さい!!これ以上、苦しむぐらいなら、もう戦わないで!!例え望んで戦いに行くとしても、逃げて下さい!!あなたの言うとおり、あとは全部、私がしますから!!」
エデン「………………それでも駄目だ。」
レア「何でですか!?何故そうやって自分を苦しめるような真似をするのですか!?」
エデン「レアには、荷が重過ぎるから。どれだけ、強くなろうと、この後起こる大天災には、避けられないから。
それに、どの道僕は死人だ。呪われた命と共に生き続けた、死人に過ぎないんだ。でも、君は違う。
君は、生きている。それも、僕や英竜の力を受け継いでいる。不死身でも、不老はあっても、不死の呪いはない。
だから、レアなりの生き方をしろ。いい加減、親離れして、僕や英竜のない幸せを、手にしてくれ。」
レア「………………本当に、残酷な事を、言いだすんですね。あなたの事忘れて、自分の幸せを見つけろなんて………………。
呪われていない私には、荷が重過ぎるなんて………………。」
エデン「それでも、この荷は、持って行かせて。これさえ、終わらせれば、『楽園』が切り開けるから………………。
世界の破滅をもたらす事のない、退屈で、けれど刺激的で、幸せな生き方を送ることができる、『理想郷』を………。」
レア「………………。」
エデン「………………僕の墓参り………………来てくれて、ありがとう。………………幸せに生きて、レア。」
レア「お父さん────」
一瞬だった。縛り付けたはずのツタは解け、お父さんは姿を消すように虹色の羽根を残して、居なくなってしまった。
行ってしまった。もう二度と、お父さんに会えない。会うことも、出来なくなった。
………………………でも、お父さんはそれだけ、私を幸せに生きて欲しいと願っているなら、そうするよ。
この羽根を、御守代わりとして、受け取る事にするね。
レア「………………お父さんの羽根、大事にする。だから、その『お願い』、叶えさせてあげるから………………。
見守ってて、英竜お母さん、エデンお父さん。」
sidechange
エデンside
本当にごめん、レア。結局、辛い思いをさせてしまって。これじゃあ、父親失格だな………………。でも、こうでもしないと、きっと暗いままだったと思ったし、何より………………これ以上あの戦いに加担させる訳にはいかないから。
『女神イリアス』と『闇創造王神』相手に、今のレア達には勝てない。というか、一瞬で消される。
だから、あいつ等の相手は、僕達でやらせてくれ。
5代目創造王神として、今代限りで、創造王神の歴史を終わらせる。
エデン「………………絶対に、滅びの未来のようにはさせない!」
首を洗って待ってろ、イリアス!!好きにはさせないからな!!
next episode