クリスマスまで、あと数日という頃、バチカン組は帰国した。
---ストラーダ---
私は帰ってきた三名に、日本で何をしていたかを問うた。
まず、デュリオ。
「僕はシュウ君の家で和食を堪能しながら、元最強エクソシストだった八重垣牧師に色々教えていただきました。」
「八重垣殿は元気だったか?」
「奥様共々もお元気でした。シュウ君が聖者に成られたことを、大変喜んでいらっしゃいました。また、行きたいです」
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次にゼノヴィア。
「私は毎日、鍛錬という名の殺し合いをしてきました。実際に数え切れない位、殺されましたが、死んでもすぐに復活してもらい、また死にに行くの繰り返しでした。あそこでの鍛錬を経験してしまうと、ここでの鍛錬は子供のお遊びに思えます」
「死ぬのは怖くないか?」
「最初、怖かったです。でも死を何度も体験すると、身体が相手の攻撃に反応して、自己防衛をしようとするのです。彼らは毎日年中、あのような鍛錬をしているそうで、実戦において死に恐怖して、仲間を見殺しにするのでは無くて、共に生き抜く為に全力が出せたそうです。また、行きたいです」
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最後にイリナ。
「毎日が楽しく幸せでした♪」
「それは良かった」
「また、行きたいです♪」
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過ごし方は三者三様ではあるが、皆また行きたいと言う。バチカンでの教えは、古いのだろうか?ここでの鍛錬は子供の遊びなのか?一体、どのような鍛錬を積んできたのか、あとで確認しよう。
---匙---
あいつに、脅されて土下座はしたけど、負けた訳では無い。って、話をシトリー眷属の仲間にしたら、それっきり、お見舞いに来てくれなくなった。
ヴリトラも負けを認めない僕には、明日は無いという。
今日は久しぶりのお見舞い、グレモリー眷属の兵藤と木場が来てくれた。兵藤は俺の目標だ。あいつみたいに、俺は強くなれるようにがんばっている。
「お前は負けを認めてないそうだな」
来るなり兵藤に言われた。
「認めないよ。あいつ卑怯だろ?ドラゴンとか天使とかを使って、俺を脅したんだぞ」
「お前とシュウでは立場が違うだろ?俺達は『兵士』だ。率先して戦わないといけない。でも、シュウは『王』だ。仲間に指示を出して、生き残らないといけない存在なんだよ。それがわからないのであれば、お前の成長はもう無いな」
兵藤はそう言うと、俺から視線を外し、窓の外を見出した。
「木場だって、あいつに卑怯な手で重傷を負わされて、負けは認めていないだろ?」
木場の左頬には、その時の傷跡が残っている。なんでも、肉を抉り、骨まで達する怪我を学校で負わされたんだから、同情してしまう。
「僕は、シュウに負けを認めているよ。恨みも無い。嫌いでも無い。寧ろ、恩人だと思っている」
木場はさわやかな笑顔で、予想に反した言葉を並べた。
「なんで?そんなに、傷跡が残る暴力を受けたのに?」
「間違った情報を、鵜呑みにするのは良くないよ。暴力を受けた訳でも無いし、先に手を出したのは僕の方だ。傷跡が残ったけど、相手の実力を知らずに、ケンカをふっかけた罰だと思っている」
「そうなのか?聞いた話と違う」
「事実は関係者しか知らないから、しょうがないな。あの後、シュウは僕の為に、色々としてくれた。他では経験できない鍛錬の機会を与えてくれて、生き別れた仲間とも、再会をさせてくれた。もし再度、君がシュウをどうかするっていうなら、僕達は全力で君を屠るからね」
そう言い残すと、木場は兵藤と連れだって帰っていった。
---シュウ---
クリスマスイブの夜、義父さんの教会でミサを執り行った。壇上には神父の義父さんと、聖者の僕と、元セラフのガブがいる。教会に来た子供には、レイヴェルの作ったクッキーをプレゼント。おいしいと大好評だった。
ミサが終わって、教会に隣接した義父の家で、ちょっとしたパーティーを開催。ここでも、レイヴェルお手製のケーキが大評判に。レイヴェルは色々な人に褒められて、とっても嬉しそうだった。
家に帰ると…リビングには大小様々な靴下が置いてある。うちは煙突がないから、サンタは来ないって知らないのかな??朝になったら、靴下の主の全員に説教だな。
翌朝、リビングに行くと、靴下をのぞき込んで、がっかりしている者が多数。うん?なんでお兄さんとおっさんが??魔王と提督も知らなかったのか?煙突が無いとダメってことを…ちなみに、僕は煙突のある家に住んだことが無いので、サンタさんからのプレゼントは、1回も貰ったことがない。
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さぁ、うちでクリスマスパーティーだ♪
当然、レイヴェルお手製ケーキやクッキーが振る舞われた。壁に設置したドアからは、料理を運ぶ者達が行き来している。久しぶりに、仮出所したリアスを見た。だいぶ、しばかれたみたいで、髪型がいつもと違うぞ。あと、産休中のソーナも久しぶりに見たな。
そうだ、今まで抱いていた疑問を、質問してみよう!
「ねぇ、悪魔って、卵を産むの?」
ソーナを含めたグレイフィアさん以外の純血悪魔の女性達の目が点になっている。なんで?
「卵は産みませんよ。悪魔も、ほ乳類ですからね」
優しく教えてくれるグレイフィアさん。
「この豊満な胸が、母乳で育ててる証拠よ」
リアスが自慢げに言った。うん?豊満な胸?では、豊満でない場合は?
「ねぇ、ソーナは卵なの?」
なぜか、涙目になっているソーナ。
「リアスのイヂワル!」
泣きながら、リアスに抗議しているソーナ。なんで?
きょとんとして、ソーナを見ていたら、グレイフィアさんが無言で、リアスの頬を引っ張ってドアに入っていった。リアスの仮出所が、取り消しになったようだ。
そうだ、ほ乳類の定義を思い出した。乳の大きさでなくて、乳が出るか出ないかだったかな。
「ねぇ、ソーナ。乳出るの?」
「まだ、出ないよ。子供が生まれてから出るみたいだよ」
「そうなんだ」
うん?乳って言葉に反応している者が一人。相方にえり首を捕まれて、お持ち帰りされたぞ。ケーキよりそっちが優先だな、あのカップルは。
「名前を考えないといけないな」
「うん!」
なんか、ソーナが嬉しそうだ。名前かぁ…それはそれで難しいなぁ。呼びやすく覚えやすいのがいいけどなぁ。
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大晦日、午前中は普段と変わらない生活だ。ただ、厨房を任されている朱璃さんと朱乃さん、料理見習いのレイヴェルとトスカが、お節料理を作っている。興味深そうにオーフィスとギャスパーが覗いている。普段見たことがない料理を、調理しているからだそうだ。
午後からは、大人体型のリヴァさん、ジズさん、ベヒモスさんは、椿姫を班長として、年末年始の買い物班として、買い出しに出ている。子供体型組はトレーニングルームの大掃除。他の者は自分の部屋の大掃除だ。
僕の部屋のドアをノックして入ってくる木場。
「頼みがあるんだけど」
「また、女性になりたいのかな?」
「それも有りだけど、トスカが一緒だから、ちょっと気が引けるんだよ」
有りなのか…おいおい
「相談って?うん?二人部屋希望かな?」
「察しがいいねぇ。トスカが失っていた時間の話をするのに、リビングだとねぇ」
そうだよな、好奇な目で見られそうだし
「ここを出るかい?」
「それは出来ない。トスカが任務放棄になってしまうからね」
あぁ、そうだった。トスカは僕のガードだった。
「今、創造神に頼んで、大浴場の上の階に、夫婦用のフロアを作ったよ。木場の部屋も、もう有るはずだ。確認してみて」
「ありがとう、シュウ」
木場が部屋を出て行った。もう1組にも言わないとなぁ。念話で黒歌を呼び出す。
「にゃんにゃ?」
「大浴場の上の階を、夫婦専用のフロアにしたから、黒歌とイッセーは引っ越ししてな。部屋は作ってある。二人の部屋の物をすべて転移させてあるから、確認してね」
「ありがとうにゃ♪」
鼻歌まじりで出て行った黒歌。
あと、忘れていたこと、あったっけ??うん?ドアが開いて、翼紗が一人で入ってきた。
「どうした?スライムは貸さないぞ」
「イヂワル!」
翼紗は僕の隣に座った。
「スライムがいいのか?」
「スライムで無くても良いの。ねぇ、お願い!」
おいおい、服を脱ぎ始めたぞ。疲れていて、ソフトな対応が出来ないかもだよ。でも、翼紗を見ていると、なんか懐かしい気分になる。なんでかな?
「翼紗って呼んでください、ご主人様♪」
「お前、また変な術を食らっているんじゃないのか?」
嫌な予感を感じる僕。翼紗の主はソーナだし…コイツ、術に掛かりやすい気がする。
「そんなことはないよ!」
「怪しいもんだぜ」
「じゃ、魔女狩りの時みたいな責めをしてください。私の身体から淫靡な悪魔を、抜いてください」
やっぱ、こいつおかしいぞ!悪魔なんだから悪魔は憑依しないはず。念話でグレイフィアさんを呼び出す。
しばらくするとグレイフィアさんが部屋に来てくれた。翼紗は全裸で椅子に縛りつけてある。グレイフィアさんに経緯を説明する。
「確かに言動がおかしいわね。何かが取り憑いているのかな?」
こういう場合は…黒歌と白音を念話で呼びだす。二人とも、すぐに来てくれた。黒歌は翼紗を観察する。
「何か取り憑いているにゃん。にゃんだろう?」
「浄化できる能力の人はいませんよね?」
浄化?どこかでしたような。あっ、あそこにある!
「ちょっと借りてくる」
僕は空間を斬り裂いて、そこに潜り、しばらくしてから、僕とクリスタルディさんが出てきた。僕の手には『祝福の聖剣』が握られている。僕は両手でそれを掲げて、黙祷した。
僕を中心に浄化の光が家全体を包み込む。
「なんて暖かな光なの?悪魔なのにダメージを受けるどころか、癒やされていく」
「心が浄化されていくのがわかるにゃん」
「お姉様、私、涙が溢れて止まりません」
「白音、それは、癒やされているんにゃ」
「あの時と同じだぁ。あの剣は彼に託したいな」
グレイフィアさん、黒歌、白音、クリスタルディさんから感想が漏れていた。僕は黙祷をやめて、翼紗を見ると黒い煙が上がって消えていく。何かわからないが、良からぬ物を浄化できたみたいだ。剣をクリスタルディさんに返した。
「すみません。一刻を争う状況だったので、説明しないで所有者ごと誘拐してしまって。ごめんなさい」
時間が惜しかったので、強制連行してしまったクリスタルディさんに、一言謝罪をした。
「いや、いいんだ。役に立ったようだし。しかし…悪魔にとり付く悪霊がいるとはなぁ」
まさかねぇ…こんな事もあるんですね
「バチカンへお送りします。」
僕はクリスタルディさんをバチカンへ送り届けて、戻ってきた。翼紗は全裸で椅子にしばられていることに驚いていた。グレイフィアさんが状況を説明して、翼紗を連れてどこかに行った。事情聴取するみたいだ。悪魔が悪霊に憑依されるってことは、初めて遭遇することだったらしい。あ、もちろん、翼紗には服を着せましたよ。
翼紗の憑依問題。問題の先送りをせずに、年内解決をすることで、僕達の家の住民の意思は一致した。年内解決と言っても、あと10時間くらいしかない。アポとオーフィスは、翼紗の深層心理を探るため、総ての者の夢が覗ける次元の狭間へ調査に行った。
そういや、僕の首が落とされたあの時も、何かに取り憑かれていたようだったな。あの時、僕の呪文で浄化出来たようだったけど、実際は出来ていなかったんだ。きっと、本体は翼紗に潜り込んでいたんだろう。今回は完全に浄化は出来たけど…どいつが原因なんだ??
現状で僕に恨みを持っているのは、ミカエルとフェニックス卿。でも、ミカエルは斬首の時には、僕を知らないはず。そうなると…アポに念話でフェニックス卿を探るように指示。
しばらくしてアポから連絡があり、フェニックス卿の夢に証拠を見つけたようだ。僕はアポとオーフィスを呼び戻して、ヴァーリ、ヴァイラの5名でフェニックス家に転移した。そこからはライザーの案内で、冥界の辺境で隠居しているフェニックス卿の元へ向かった。
フェニックス卿は、強気で僕達を睨んでいる。彼の隣にもう一人の人物がいて、その人物を見てヴァーリが反応した。
「じじぃ、お前が一枚かんでいたとはな」
ヴァーリの瞳は、怒りで満ち溢れているみたいだ。こんなヴァーリは初めて見る。
「そうか…貴様は、リゼヴィム様の孫だったなぁ」
フェニックス卿は、ヴァーリに声を掛けた。リゼヴィムという男、どこかいかれている目をしている。こいつは危険だと、僕でもわかる。
「おぉ、ボクちん孫のヴァーリちゃん。久しぶりだよね♪」
話し方も、どこかいかれているようだ。
「ふざけるな!お前のせいで…」
その話し声を聞いたヴァーリの怒りの炎は、火力を増しているようだ。
「うん?何かな?まだ、怒らせ方が足りないみたいだものね。お前の精神の薄弱の両親を殺しても、その程度の怒りみたいだから、今度はヴァーリちんのお友達をいたぶっているのよ~ん。フェニックス卿の頼みでも有るし。気に入ってくれたかな?まさか、悪魔に悪霊が取り憑けるなんて、ボクちんのアイデアだよ。楽しめたかな?」
笑顔でヴァーリに話しかける、いかれた男性。ヴァーリの祖父で、ヴァーリの両親を殺した?自分の子供だろうに…で、その上、翼紗達を…
「いいねぇ。その怒りに満ちあふれた目つき。怒りに塗れて死んでくれると、僕ちんとっても嬉しんだけど♪」
リゼヴィムとフェニックス卿は、ニヤニヤ笑っている。おい、お前らヴァーリまでも…
「僕ちん、大切な者を失った経験無いから、わからないけど。どうなのよ、ヴァーリちゃ」
「ふざけるなよ、じじぃ!」
ヴァーリは声を荒上げた。
「ふざけているのは、お前らだ。この方は、前魔王のルシファー様のご子息のリゼヴィム・リヴァン・ルシファー様だ。頭が高いぞ。人間風情どもよ。ふふふ♪」
楽しそうに口上を述べる焼き鳥オヤジ…ふざけるなよ!!
「なんだと!」
ライザーは驚いたような声を上げた。
「ルシファーさんと大違いね」
ライザーとヴァイラは驚愕の表情をして、いかれた男を見つめている。僕は、彼らを巻き込むたくないので、二人を安全な場所、父さんのお城に強制転移させた。
「うん?仲間を逃したの?まぁ、純血悪魔じゃ、ボクちんに勝ち目無いしねぇ」
「この方の能力は、高められた力を全て無効化する「神器無効化(セイクリッド・ギア・キャンセラー)だよ。貴様らに勝ち目は無い」
焼き鳥じじぃは学習能力が無いな。僕は神器なき男だよ。それとも、以前目の前で繰り広げられた惨劇は、神器の力だと思っているのかな?僕は、ヴァーリに視線を移し
「ヴァーリ、ここは僕にまかせてくれ。ヴァーリの能力が効かないみたいだし。オーフィス、ヴァーリを頼む!」
「我 シュウの友 ヴァーリ 護る」
小さな龍神様はヴァーリの前に仁王立ちした。ヴァーリは怒りで声が出にくいみたいで、か細い声で
「た、の、む、!」
と、だけ言った。
僕は妖刀村雨を身構えて居合い斬りで、先ずフェニックス卿のまだ展開していない翼の根元を切り落とす。フェニックス卿の背中から激しい煙が立ち上る。
「貴様!あぁ…」
フェニックス卿はその場で蹲り、次に僕はリゼヴィムを睨む。武器をライトニングナックルに換装した。
「おもしろいことしてくれね。フェニックス卿を一撃かい。ボクちんを楽しませてくれそうだねぇ~♪」
リゼヴィムは魔法陣を幾重にも展開してきた。僕は展開してきた魔法陣を、総てリバースベクトル(逆方向)に書き換えていく。ついでに僕独自の魔法陣『ウルティマウエポン』を奴の頭上にこっそり発現させた。
「こんだけの魔法陣の攻撃を受けたら、生き残れる可能性はゼロだよ~ん♪ヴァーリちんの目の前で死んでちょ~だいね♪」
次の瞬間、魔法陣はすべて発動し、目の前には黒焦げで息も絶え絶えのリゼヴィムが転がっている。僕はリゼヴィムに近づき、手を翳して、あいつから何かを奪った。奪われた本人に気づかれないようにね。
緊張が途切れると、さっきまでいなかった人の気配を感じた。気配のする方向を見るとサーゼクスお兄さんとアジュカ父さんが立っていた。
「辺境にしては、異常なオーラを感じてね」
苦笑い気味の引きつった笑顔のお兄さん。
「君のお友達二人が、急に転移してきたから、驚いたよ。彼らの残留転移陣を解析してここに来たんだが…」
心配そうな顔の父さん。
「フェニックス卿!、まだ、懲りていなかったのか?まったく。」
僕は黒焦げになっている人物を指さして
「こいつが、翼紗達に悪霊を…」
「まさか、リゼヴィム・リヴァン・ルシファー様まで関与していたとは。いや、一番の驚きは、あのリゼヴィム様が黒こげで瀕死状態のことだよ。何をしたんだシュウ君?」
僕を青ざめた表情で見つめるお兄さん。
「そいつが展開した魔法陣を利用しただけだよ。こういう時のために、アジ・ダハーカを相手に鍛錬しているからね」
「日頃の鍛錬の賜り物なのかぁ」
お兄さんの笑顔、なんか引きつっている。まぁ、いいか。あっ、除夜の鐘の時間が近づいている。
「年越しをみんなで過ごしたいから、後の後始末をお願いします、サーゼクスお兄さん!!」
僕達4名は僕達の家へと、転移していった。