※この作品はR-18です。

神器なき男 (再編集版)   作:もっち~!

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匙の願い

 

 

新年3日目から鍛錬を始めた。僕は新年早々から災難に遭遇していて、身体を使っていたので、そうでもなかったけど、食い倒れ生活をしていた者は、散々な目に遭っている。今日は特薬草の青汁の消費量が多そうだ。

 

7日目までの予定でゼノヴィアが出稽古に来ている。バチカンでの鍛錬が物足りないとかで。以前より死ぬ回数は減っている。いい傾向だ。

 

 

 

---イッセー---

 

新年3日目から、鍛錬な日々。だんだん死ぬ回数も減ってきて、強くなっている実感もあり、充実した生活が送れた。もちろん、夜の方もねぇ。シュウには感謝だ。こんなに充実した新年は無かったもの、今までの人生で。

 

新学期、いつものように淡々と授業を受ける。学年が上がれば、シュウ達も復学してくるので、もう少し楽しく過ごせるはずだ。俺達の家で高校に行っていない組、ぎゃ~助、子猫ちゃん、レイヴェル、ルフェイは来年度1年生として入学してくるみたいだ。あと、産休中(表向きは留学中)の部長と、ソーナ生徒会会長は2年生として復学するようだし。もう少しの辛抱だな。

 

 

 

---匙---

 

昨年の生徒会の選挙で、ソーナ先輩は会長、真羅先輩は副会長、俺は書記に選ばれた。が、ソーナ先輩は1月から留学に出てしまって。真羅先輩が会長代理を務めている。眷属内で新年の手合わせをしたのだが、俺は由良達の足元にも及ばないくらいの惨敗だった。アイツの家での出稽古って、そんなに効果が有るものなのだろうか。兵藤に相談してみるか。放課後、兵藤ののクラスにいって兵藤に話しかける。

 

「なぁ、相談が有るんだけど」

 

「うん?金と女の相談は乗れないぞ」

 

「そんなんじゃない。出稽古の件だ」

 

「それは、俺に相談しても無理。お前が一番わかっているだろ?」

 

「そこをなんとかならないか?」

 

「シュウが言っていただろう?謝罪が先だ。とは、いっても今更遅いんじゃないの?」

 

「……」

 

「負けた時点で、謝罪すれば問題は無かったと思う。でも、お前は負けていないって」

 

「あの勝負は負けていないと、今でもそう思っている。やりかたが卑怯だろ?あれは!」

 

「そう思うなら、もう俺には話しかけないでくれるか?恩人を卑怯者呼ばわりするヤツと関わりあいを持ちたくないからな!」

 

兵藤はそういうと教室を出て行ってしまった。そんな俺に一人の女子が近づいてきて、俺の耳元で悪魔の囁きをする。こいつは桐生だっけ?

 

「駅前で配っている願いを叶えるビラって知っている?本当にどんな願いも叶うんだよ」

 

「本当に?」

 

初めて聞いたぞ、そんな眉唾な話。

 

「私も叶えてもらったもの。普通に考えると相当無理なお願いをね」

 

それを聞いて、俺は駅前に走った。そして、配っているビラをかたっぱしから貰った。藁にもすがる思いで…

 

学校が終わると駅前に通う日が何日か過ぎた。そして、とうとう、願いの叶うビラに巡り会えた。俺は公園で願いを魔法陣に向けて念じた。すると目の前に姫島先輩が現れた。えっ?!

 

「あらあら、お呼び出しは匙君でしたか?」

 

「なんで、姫島先輩が?」

 

「私達グレモリー眷属の悪魔のお仕事ですから。まさか、悪魔に呼び出されるとはねぇ」

 

桐生はグレモリー眷属の誰かと契約を結んだのかぁ…

 

「で、願いは何かしら?」

 

「兵藤達が鍛錬している処に、出稽古に行きたい」

 

「……それは難しいお願いですね。ちょっと上の者と相談してきますので、お待ちくださいね」

 

姫島先輩は転移していった。

 

 

 

---ソーナ---

 

シュウ君から呼び出された。行ってみると、難しい問題に直面していた。匙がこともあろうに朱乃さんに、悪魔の契約を申し入れたとのことだった。しかも願いは、無理でわがままなもの。シュウ君的には、ここで契約しないと、朱乃さんの失点になるのを懸念していた。しかし、この家に入れることには難色を示している。

 

「どうなの?悪魔が悪魔の契約をして良いの?」

 

シュウ君がサーゼクス様に質問をしていた。

 

「前例は無い。断る理由も見当たらないが、悪魔が悪魔に願いを頼むって、前代未聞だよ。どうしたものか」

 

サーゼクス様が悩んでいらっしゃる。

 

「すみません。私の眷属の者が、問題を起こしてしまったようで」

 

サーゼクス様に謝罪をして、頭を深々と下げた。

 

「いや、ソーナ君は悪く無いよ。これは、その眷属の者の個人的な資質の問題だからね」

 

「しかし、よりによって、こんなアンフェアに近い行動に出るとは…」

 

シュウ君は頭を抱えて悩んでいた。ごめんね…私のせいで…

 

「確かにアンフェアだな。でも的確に、シュウ君の弱点をついている。見ようによっては、悪魔的な手法ではあるが…」

 

「あぁ、僕に負けたことを認めていないヤツだから、僕のことを研究しているんだろう。僕がダメなら、同居してる者に頼み、頼みを拒んだら同居している者に被害が出るって。サイテーな攻撃だよ。いくら悪魔だとしても」

 

シュウ君、本当にごめんなさい…怒りを押し殺しているシュウ君。見ているのが辛い。

 

「朱乃君のことを思うなら、認めるしかないな。シュウ君には悪いけど」

 

「そうだよね。朱乃さんは悪くないもの。朱乃さん、その願い、受けていいよ。鍛錬の相手は、僕がして屠るから」

 

「屠っても復活させてくださいね?」

 

翼紗が心配そうにシュウ君の顔を見ている。あれ?いつから、そんな関係になったの?それは、私の役目だと思うんだけど…

 

「100年後とかじゃダメ?」

 

「ダメです。埋め合わせは、私がしますから、お願いします」

 

「翼紗の埋め合わせはいらないよ~」

 

「なんで?」

 

不満げな翼紗…でも、シュウ君は翼紗との会話で、表情が穏やかになっている。どうして?

 

「それは、あとで話す。朱乃さん、願いを叶えて来て」

 

朱乃さんは申し訳なさそうに頷いて、転移していった。

 

 

 

---匙---

 

しばらくして姫島先輩が、戻って来てくれた。

 

「その願いを叶えます。報酬は、シュウ君への謝罪でどうでしょうか?」

 

思いがけない報酬を示してきた。

 

「それは…」

 

受け入れがたい。踏み倒せば良いのか?きっと、会長が護ってくれるだろう。

 

「悪魔は願いを叶え、依頼主はそれに見合った報酬を払うのがルールです。どうしますか?」

 

前に進むだけだ。

 

「わかった」

 

「では、お連れいたします。」

 

転移した処は、トレーニングルームのようだ。

 

 

 

---シュウ---

 

トレーニングルームに、匙と朱乃さんが転移してきた。待ち構えるように、僕達は匙を取り囲む。

 

「報酬をシュウ君への謝罪にしました」

 

それはナイスアイデアではあるが、鍛錬前に謝罪してくれないかな?

 

「じゃ、遠慮無く出稽古をさせてもらう。報酬は後だ」

 

あぁ、やはりそうでたか。ソーナが匙に近寄り頬を叩いた。

 

「匙、恥を知りなさい!」

 

ソーナに驚いたようだが、ソーナの言葉に対する返答は無かった。

 

「会長、留学にいらしたんでは無いのですか?なんでこんな場所に、いらっしゃるんですか?」

 

「それは、答える義務は無いと何度も言ってあるでしょ?」

 

「留学しないで、何しているんですか?」

 

「答える義務は無い。それより、なんでこんな…私に恥をかかすことをしたんですか?」

 

「恥?なんで、会長が恥をかくのですか?」

 

「それは、私が説明しよう。」

 

堂々巡りをしていきそうなソーナと匙の会話に、お兄さんが割り込んだ。お兄さんの登場に、匙が驚いた。

 

「なぜ、理事長がこのような場所に?」

 

「ソーナ君、この者は何も知らないのか?」

 

「申し訳ございません。個人的な興味が優先で、説明とかは、あまり聞き耳を持たない子なんです」

 

ソーナが本当に申し訳なさそうに、お兄さんへ返答した。

 

「この者の個人的な資質の問題なんだな?」

 

匙はお兄さんとソーナの会話で、不機嫌になっていく。

 

「なんで会長が謝るのですか?理事長どういうことですか?」

 

魔王様に噛みつく転生悪魔。勇気あるなぁ…

 

「匙、口を慎みなさい。理事長は魔王様ですよ!」

 

ソーナが涙を堪えている目で、匙を睨んでいた。

 

「まおうさま?」

 

「私達、悪魔のトップです」

 

「えっ??」

 

匙は初めて知ったのか、物凄く驚いている。そんな匙に、みんなが驚いているんだが…おい、基本事項だろうが…悪魔で無い僕でも知っているのに…

 

「ソーナ君、この者をしばらく預からせてもらうよ。無知は凶器になる場合も有るので、魔王領で教育する。私の義弟を困らせることは許しがたいことだからね」

 

「義弟って?」

 

「それも知らないのか??やれやれ、本当に困った君だな。シュウ君は、私の義弟だ」

 

お兄さんの声は、呆れ果てている様だった。

 

「えっ?魔王様の義弟??」

 

「そして、四大魔王の一人、アジュカの義理の息子でもある」

 

「四大魔王??魔王の義理の息子??」

 

「なんだい。魔王が4人いることすら知らないのか?はぁ~、後は、魔王領できっちり教えこんであげよう。シュウ君、ちょっと冥界に行ってくるからね」

 

そういうと、お兄さんと匙は転移していった。

 

 

 

---匙---

 

俺が連れて来られたのは、魔王領という場所らしい。魔王様の領土で悪魔の住む冥界の中心部に当たるらしい。ここで、悪魔の基礎から色々叩きこまれる。眷属悪魔は、ただ強くなるだけでは無くて、知識も必要らしい。

 

ここで、シュウがどんな人物であるかを習った。驚愕の事実が次々と出てくる。魔王アジュカ様の義理の息子で、魔王サーゼクス様の妹君のリアス先輩の婚約者で、魔王セラフォルー様の妹君のソーナ会長の婚約者で、大公アガレス様のお嬢様のシーグヴァイラさんの婚約者であること。それも総て正式に決まったことらしい。要するに、アイツは悪魔の世界で、俺よりも立場も地位も上だった。

 

さらに、天界の神様と家族で、教会においては聖者として認定されているって。どんだけ、すごいヤツなんだ、アイツは…その立ち位置を踏まえて、悪魔が決して敵にしてはいけない人物だそうだ。

 

以前、アイツの眷属には魔王様のうち3名が含まれていたこと。それって、魔王様より実力が上ってことだ。真面に戦っても、俺には勝ち目が無いことを思い知らされた。さらに、反則じみた戦い方をするのは、真面に戦ったら秒殺してしまうからだそうだ。現に魔王サーゼクス様は一撃で屠られたそうだ。

 

絶対に敵にしてはいけない重要人物だと何度も教えこまれた。彼を含めた仲間全員だと、この星の生物は彼と彼の仲間以外全滅する恐れすらもあるらしい。

 

俺はとんでもない人物にケンカを売っていたようだ。思い起こせば、ソーナ会長の言葉はそれを示唆していたようにも思えてきた。

 

俺に取って一番のショックな事は、ソーナ会長、リアス先輩の留学は表向きで、実はアイツとの子供を生むための産休期間だったことだ。このことは、聞く耳を持たなかった俺以外の眷属全員が、知っていたそうだ。入院中の出来事、眷属の仲間が、誰も見舞いに来なくなったのは、俺が聞く耳をもたなかったことも原因のようだ。

 

 

 

---イッセー---

 

サーゼクス様に連れて行かれた匙。2週間くらいして戻ってきた。家の玄関に入るなり、土下座をして、今までの振る舞い、非礼を詫びた。シュウは、それに対して何も言葉を掛けなかったが、匙を引きずってトレーニングルームへ連れて行き、俺を匙の相手に指名した。

 

シュウなりの不器用な優しさだ。下手に声をかけても無意味だし。拳を合わせて結果を出せということだろう。こうして、シトリー眷属全員が出稽古に通うようになった。

 

匙、良かったなぁ。願いが叶って。

 

 

 

---シュウ---

 

2月に入ると厨房でレイヴェル先生による、チョコレート作り講座が開かれるようになった。家の中にカカオフレバーが漂う。

 

その為、僕はおっさんの家に逃げ込んでいる。あの香りは苦手なので。僕がチョコ嫌いって知っているのは家族の黒歌、白音と幼なじみのイッセーくらいだろうか。なので、殆どの仲間は、僕がおっさんの家に逃げ込んでいる理由を怪訝に思っている。チョコ嫌いはいないと思っている人が大多数だから。

 

「しっかし、ボウズがチョコ嫌いだったとはなぁ」

 

おっさんが不思議そうな顔をして、僕を見ている。

 

「あの臭いはダメ。頭痛はするし、吐き気もするし」

 

「今までもらった場合はどうしていたんだ?」

 

「イッセーに全部あげていた。アイツはチョコ大好きだから、喜ばれていたよ」

 

「持つべき者は友だね」

 

「そういうことです」

 

そして、話題は変わり、

 

「そういや、聞いたぞ。あのリゼヴィム・リヴァン・ルシファーを瀕死状態にしたって」

 

「ヴァーリの祖父のことですね。ヴァーリの神滅具を、無効化する能力を持っているってことだったんで、僕がヴァーリの代わりに戦いました」

 

「どうやったんだ?」

 

「相手が展開した魔法陣のベクトルを総てリバースしただけです」

 

「あの男のことだから、大量に魔法陣を展開したんじゃないのか?」

 

「アジに比べたら、桁が2桁くらい少ないから楽勝でした♪」

 

「アジ?」

 

おっさんは、心辺りのないような表情だ。

 

「アジ・ダハーカです。一度に1000個くらい簡単に開いてくるもの」

 

「まさか…魔法攻撃対策で、アジ・ダハーカと鍛錬しているのか?」

 

おっさんの顔から血の気が引いていく。驚くことなのか…

 

「正解です。始めのうちは、何回死にそうになったか、わからないくらいに惨敗だったよ。今では互角くらいにまでなったかな?再生可能な身体を得たからねぇ」

 

おっさんは真っ青な顔で驚いている。

 

「ボウズの家の鍛錬は、たぶん一番きつい鍛錬だろうな」

 

「そうだね。死んでも生き返らせて鍛錬を続けさすもの」

 

「死んで終わりじゃないんだ?」

 

「死んで終わりじゃ、強くならないでしょ?」

 

---

 

僕が帰ったのは15日になってからだ。部屋のドアの前にはチョコが、てんこ盛りに置いてあった。贈り主にお礼状を書いて、チョコは全部、イッセーの部屋に強制転移させた。

 

その為、イッセーの部屋に一人でいた黒歌が、チョコの山に生き埋めになったそうだ。彼女が救出されたのは、イッセーが帰って来てからだった…

 

 

 

 

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