---木場---
バルパーの投げた球体は、僕の足元に転がってきた。それを拾い目の前に掲げた。
「みんな…」
僕はその結晶からのオーラを感じるように撫でていた。自然に涙があふれ出してくる。隣にいたトスカも結晶を撫でて、涙を流している。やっと、会えたね。みんな…
僕の涙が球体となった結晶に触れると、球体が輝きだし、僕達の周囲に青白い光を放つ人型の陽炎のような物が、何体も浮かび上がった。僕には分かるよ…みんなだよね?
「僕だけ生きていて良かったのかなって、いつも考えていた。僕よりも夢を持っていた子もいたし、僕よりも生きたかった子もいた」
僕の頭を撫でてくれているトスカ。きっと彼女も同じことを…脳裏に彼らの声が聞こえてきた。
『私達のことは、もういいから、あなた達だけでも、生きて欲しい』
いつも、みんなで歌っていた聖歌が聞こえてくる。僕もトスカも口ずさむ。僕の視界に入ったシュウは、祝福の聖剣を掲げている。聖剣から溢れる出てくる暖かいオーラ。僕らの周りの青白いかげろうが金色の球体となって、僕の中に入って来た。
『一人だけではダメだった』
『一人一人の聖剣を、扱う因子は少ないけど』
『みんなで集まれば、きっと大丈夫だよ』
『だから、受け入れて…』
『僕達を…』
『聖剣を…』
『僕達は、いつまでも一緒だよ』
僕は結晶を受け入れた。僕の体に当てると吸い込まれていく。次の瞬間、僕は青白い光に包まれていった。そして、僕が握っていた剣は、聖魔剣へと変化していった。
---シュウ---
サマエルに戦争を仕掛けるなんて言うから、コカビエルの最期は、あっけなかった。話している間に、アイツの後ろに獣門を展開して、トライヘキサを呼び出したら、首だけ出してアイツを食べてしまった。今は上空から、咀嚼音とヨダレとアイツの血が降ってきている。
横を見ると、木場達の周りには、浮かばれない霊魂が漂っていた。僕は祝福の聖剣を、掲げて黙祷した。
『どうか、みんなで木場を助けてあげてください』って
黙祷が終わると、この感動的なシーンを、破壊しそうなヤツと目が合った。僕は咄嗟に獲物を、妖刀村雨に持ち替えて、ソイツと戦い始めた。
「お涙ちょうだいもんは、嫌いじゃないけど、無視されるのは、大嫌いなんです。はい♪」
って、フリード。まぁ、僕もスルーは嫌いかな?
僕は、右手に妖刀村正を手にした。二刀流でフリードの聖剣の攻撃を防ぐ。これでは、居合い斬りが出来無いなぁ。コイツ、隙が無いし。刃物がぶつかる金属音で、イリナ達が気づいた。
「シュウ、助太刀する」
うん?戦力外のイリナが近寄って来た。
「イリナじゃ、無理だ!ゼノヴィア、イリナを頼む!」
「あぁ、死なれたら困るな」
ゼノヴィアはイリナの元へと急ぐ。僕はフリードとイリナの間に入り、ゼノヴィアが来るまで、イリナを護る。
---ヴァイラ---
コカビエルのあっけない最期を見た直後、彼のいた場所の真下に火柱が上がり、そこから数匹の三つ首の犬が現れた。
「地獄の番犬ケルベロスかぁ。シュウが暴走気味でヒマだから、相手をしよう」
クロウが犬の正体を明かした。そして、クロウ、アジ、ジズさん、ベヒモスさんがタイマン勝負に出た。新たな敵が、まだ出てくるかもしれないので、残りの皆は持ち場で待機している。
---木場---
シュウに感謝の言葉を投げようと思ったら、フリードとやりあっている。しばらくの間、無防備だった僕達を守ってくれていたのか。僕はフリード戦に参戦した。僕が参戦したことで、シュウに余裕が生まれ、居合い斬りでフリードの両手を斬り落とした。僕は彼が自力で逃走出来無いように、フリードの片足を斬りつけた。
今度こそ、シュウに感謝の言葉を投げようとしたら、シュウは空に展開していた獣門を閉じていた。
---シュウ---
あっちは、犬と楽しんでいるみたいんだなぁ。あと残ったのは、あのじじぃかぁ。
「聖魔剣だと?まさか…聖と魔の融合するってことは…神は死んでいるのか?」
じじぃは、訳の分からないことを呟いていた。
「はぁ?何千年前の話をしているんだ、じじぃ!」
「お前は神が死んでいたことを、知っているのか?」
何を今更…頭の悪いじじぃだな。
「そんなの常識だろ?何を呆けているんだ??なぁ、イリナ」
「えぇ、聖書の神は死んでいますよ。まだ生きているって、信じているですか?信じられない!」
僕の言葉を裏付けるイリナ。
「なんだとぉ…では、私達は誰を信仰の対象にしていたんだ?」
更に、今更なことを…義務教育に行っていないのか?
「三位一体の神のうち、二人がいないんだったら、残った一人に決まっているだろう?なぁ、ゼノヴィア」
「あぁ、ミカエルだったんだよ。私達が信仰の対象にしていたのはね」
ゼノヴィアが僕の質問に答えた。
「わかったか?教会の戦士が知っていることを、元大司教が知らないとはなぁ。で、このじじぃとそこに転がっている元エクソシストは、誰が引き取る??」
「シュウ君、うちで引き取りますよ」
僕の言葉に反応して、転移してきたルシファーさん。
「あ♪ルシファーさん、お久しぶりです」
「新しい天界で、じっくり教育して、教会へ戻しますよ。彼にはタップリと懺悔と贖罪をして貰わないといけませんからね」
ルシファーさんが、配下の天使に命じて、二人を天界へと連れて行った。隣の戦地では、まだ犬と遊んでいる。
「おい、クロウ達!早く終わらせろよ。朱璃さんの夜食を食べに帰りたいよ~もう、腹が減ってダメだよ~」
「「「了解!!」」」
学校の校舎は、傷つけないで終わった…その代わりでは無いが、グラウンドには生臭い臭いが残ったけど。あいつのヨダレの臭いは強烈だな…
聖剣は無事に奪還成功。そして、聖剣騒動から数日経つのに、イリナとゼノヴィアが全く帰ろうとしない。なんでだ??
「お前ら、帰らないでいいのか?」
「ここに待機していなさいって」
って、イリナ。
「はぁ?うちは宿屋じゃないんだけどなぁ」
「ここにはずっといたいよ。こんなに身になる鍛錬は、バチカンでは味わえないからな」
っと、ゼノヴィア。
「まぁ、トレーニングルームは、どこにも負けない自信は有るが…」
そんな会話をしていると、朝の礼拝が終わったのか、アーシアとガブとトスカが八重垣教会から帰ってきた。
「なんか、教会が引っ越すそうです」
っとアーシア。寝耳に水なことを言い出した。
「聞いていないなぁ。なんでだ?」
「なんか、地上げに遭ったらしく、等価交換したって…」
はぁ?あんな街境のへんぴな場所を地上げ??まさかなぁ…嫌な予感がした僕は、玄関を出て、家の前を見ると…なんだとぉ!!予感は的中した…誰の仕業だ…
僕達の目の前には、教会が二つ設置されていた。そのうちの1つには『八重垣教会』の文字がある。僕の後ろに教会関係者達もついて来たが、皆驚愕な表情だ。
「いつのまに」
アーシアが震えている。
「気づかなかった」
トスカは青ざめている。
ガブ「工事してましたっけ??」
ガブは疑問を口にした。いやしていない。それは、そういうことで…驚いている僕達の前に、ルシファーさんが現れた。
「あ、気づいちゃいましたか。サプライズで…後でサマエル様がお知らせに行かれる予定だったんですが…」
そうか、サマエルの御業か…前より綺麗だし、大きいし、ありがたく、貰っておこう。そうなると、もう1つは誰の仕業かな?
「で、もう1つの教会は何?」
ルシファーさんに訊いた。
「あちらは、バチカン教会です。ストラーダさんの提案で設置しました。バチカンと直接行き来できる設備が有ります」
ストラーダさん…
「噂をすればなんとやらですよ」
ストラーダさんが僕達に近寄ってきた。
「やぁ、ごきげんよう。無事に聖剣を取り戻してくれて、ありがとう」
「で、これは一体全体どんな趣向ですか?」
張本人に訊いてみた。
「君の家のトレーニングルームを、体験したいっていう戦士が多くてね。皆、ゼノヴィアの短期間での上達ぶりを見て、興味を持ったようだ。それと、ここにあれば、八重垣教会のミサに参加が出来るだろ?これも参加したいという者が多くてな。旅費などを考えたら、こうすれば安くあがるしな」
そうだとすると…
「八重垣のお父さんの追放処分は、解けるのですか?」
「それはまだだ。すまない…今回の賛同者は、私の派閥の者ばかりでね。まだ上層部は含まれていないのだ」
「で、メリットは?」
「二度と君の義父には手を出させない。もしもの時は、教会戦士が守る♪」
「僕の家の仲間より、強いんですか?」
護ってくれるのは嬉しいんだけど、疑問を口した僕。
「……まぁ、それがメリットだよ」
おいおい
「シュウ、もう良い」
「お父さん…」
八重垣父さんがやって来た。
「教会に追放の身分で良いんだよ、シュウ。教会に戻ると、アーシアちゃん達が来られなくなるからな。うちは追放されている者でも、分け隔てなく祈れる場で良いんだ」
「そう言って貰えると、助かります」
ストラーダさんが八重垣父さんに、頭を下げていた。
「そうそう、ストラーダ殿からマリア像を頂いて飾ってみたよ、シュウ…」
マリア?まさか…僕は八重垣教会に駆け込んだ。教会内を見回すと、壇上に…確かにマリア像があった。しかし、その顔は…
「お母さん…」
僕はマリア像の前に、跪いて泣いた。あの時と変わらない顔の…僕を産んでくれた母親の顔だった。
「せめてもの罪滅ぼしだ。これで、君に償えたとは思わない。君の傍にいて、君の役に立ちたいのだ。残りの私の人生をなぁ」
「知らなかったよ、シュウ。ストラーダ殿に聞くまで…すまない、お前の本当の母親を…私の人生だけでは、償いきれないかもしれない」
八重垣父さんもストラーダさんも、僕の傍でマリア像に跪き、祈りを捧げてくれた。
---アーシア---
あの日以来、ミサや礼拝が無い時は、シュウさんはマリア像に跪いている。私は、まだ心を癒やせる能力が無い。いつか彼の心を、癒やせるようになりたい。
---リアス---
最近、シュウが来てくれない。ソーナの処にもあまり行っていないようだ。他に女が出来たのか?私はまだ、グレイフィアの監視の目から、逃げることが出来無い。いつまで続くのよ、この幽閉生活は…