僕は戦いたくない……でも、邪龍になった者達は、自分の意思では行動出来無いみたいだ。そんな時、僕の心にレイヴェルの声が聞こえてきた。
『お願い!誰かを傷つける前に…私を…』
涙がこみ上げてくる。僕は力一杯、祝福の聖剣を頭上に掲げ黙祷をした。
『レイヴェルを…ライザーを…みんなを邪龍から、解き放ってください。学校を…ソーナたちを…守ってください。そして…僕に…アイツらを屠る力を与えてください』
僕は光に包まれた。意識が朦朧としてきた。次のステップだな。僕は僕で無くなるかもしれない。でも、みんなを護る為…僕は進んで、僕を辞める…
---ヴァイラ---
シュウが光に包まれていった。邪龍が浄化されて、天上から降りてきた光の粒子に導かれるように、淡く光る魂が天上へと誘われていく。幻想的な風景だ。それに伴い、紫煙の十字架も消えていく。
『子供たちを頼む!』
シュウの声が聞こえたような気がした。その声の響きは、私の魂を揺さぶり、涙がこみ上げ、こぼれていく。
---リアス---
光に包まれたシュウ。光が弱くなってくると、シュウの変化に気がついた。悪魔のような羽が生えている。でも、悪魔とは違い、白く輝いている。sシュウは、その羽を使い、空中都市アグレアスのある方向へ飛んで行く。飛び去っていくシュウをバックに、アジと子供達は、こちらに飛んでくるようだ。途中で別れて、アジは学校へ向かうみたい。子供達だけ、私へ向かって飛んでくるけど、どうしたの?なんで、私に?
---白音---
『こめん!レイヴェルを救えなかった。本当にごめん!』
いきなり、お兄様の声が聞こえたような気がした。どういうこと??
---シュウ---
僕は空中都市アグレアスに着いた。誰もいないスタンド。誰もいないフィールド。誰もいない放送席。僕はヴァーリの爺のオーラを索敵する。あぁ、見つけたぞ!アイツのオーラを辿っていく。途中、敵がいたが数名いたが屠っていく。
少し広い空間に出た。魔術師と思われる女がいた。かまわず前進すると、紫炎の十字架が降ってきた。でも、僕に触れると消えていく。それを見た女は狼狽えていた。
「まさか、『神器無効化』持ちの悪魔?リゼヴィム様以外にいたの??」
爺の部下かぁ。『ウルティマウエポン』で屠る。そろそろ、爺相手かな?
「堕天使サマエル、トライヘキサよ、僕に力を貸してくれ!」
僕はトライヘキサを鎧化して、サマエルをナックルにした。爺、待っていろよ!地獄を見せてやる!
---ソーナ---
門を破壊したドラゴン3匹と多数の魔物達は、忽然と消えて去った。唖然としている私の元へ、白音さんが駆け寄って来た。
「お兄様はどこですか?」
白音さんの顔は、切羽詰まっている。
「ごめんなさい。わからないわ。どうしたの?」
「お兄様の声を聞いたような気がしたんです。あれって、気のせいかな?」
彼女の顔は今にも泣きそうに見えた。シュウ君は何を言ったのかな?戸惑う私の元へ、今度はヴァイラが近づいてきた。
「私もシュウの声を、聞いたような気がしたわ」
私は会話用魔法陣を多数開いて、状況を確認しつつ、シュウ君の情報を集め始めた。。
「子供達と今いるけど……場所は別荘の予定地よ……シュウ?シュウなら、空中都市アグレアスへ向かっていったわ」
リアスから情報を得られた。アグレアスへ?今日はプロの試合があったわね。確か…ライザーが出るとか。私はTVモニタ用の魔法陣を開いた。が、ゲームどころか、放送すらしていなかった。なんで?今日はライザーたちの試合が放送されるはず??白音さんが聞いた声、『こめん!レイヴェルを救えなかった。本当にごめん!』だそうだ。アグレアスで、何かあったのかもしれない。
私は未だ、学校の後始末があるので動けないので、ヴァイラ、白音さん、黒歌さん、ヴァーリ君、イッセー君達に、空中都市アグレアスへ転移してもらった。
---ヴァイラ---
アグレアスは静かだった。スタンドには観客がいない。フィールドには参加選手がいない、放送席には誰もいない。どういうこと?不審に思いながら、レイヴェルさんがいると思われる控え室へと向かった。参加選手達の荷物とかは置いてあるので、試合があったはずだ。でも、姿もオーラも感じられない…みんなどこに行ったのか?……まさか??
「レイヴェルのクッキー…お兄様へのプレゼントみたい。なんで…ここに置いてあるの?いつも、お兄様にプレゼントするまで、持ち歩いていたのに…」
クッキーを見つけた白音さんは、泣き崩れた。泣き崩れた白音さんを黒歌さんが、優しく抱きしめて、頭をなでて上げる。そう、シュウがいつもやるように…
---シュウ---
見つけた!爺を…
「爺!てめぇだけは殺しても許さない!」
「はぁ?チミは誰だっけ?あぁ、はな垂れヴァーリのお友達だっけ?」
僕が拳を爺の腹へ叩き込むと、インパクトの瞬間にサマエルの毒槍が爺の腹を貫いた。
「なんだ?痛いよ~!何をしたんだよ~」
泣き声で叫び、血反吐を吐く爺。
「サマエルの毒が浸み出す槍だよ。刺さっている限り、お前の身を食い尽くす」
「なんてことをしやがる。これって、抜けないじゃないか」
爺の言葉をスルーして、僕は逆の手の拳を爺の腹にぶち込む。インパクトの瞬間に聖なる光の槍が爺の腹を貫いた。
「何??今度は光の槍だと…ふふふ、僕ちゃんを殺すとトライヘキサの封印が解かれるぞ!」
笑いながら言い放つ爺。
「あはは、おあいにく様、あれはダミーだ!本物を見せてやる」
僕は鎧を解除した。すると、爺の前にアイツが現れた。
「うっ、こ、こいつが本物だと?お前が封印を解いたのか?」
アイツのオーラを真面に受けて、狼狽え始めた爺。ダミーとは違い、死を感じるオーラを撒き散らしているし。
「僕は、シュウ・ヨハネ…あの書物の作者の末裔だよ!」
恐怖で顔が歪む爺。その爺をおいしそうに食べるアイツ。食べ終わると、静かに門へ帰って行った。その瞬間、何かの封印が解かれるのを感じた。僕は、その気配に向かっていく。
---ヴァーリ---
リゼヴィムのオーラが消えた。その瞬間、何かが解き放たれたようだ。今迄感じたことがない恐怖を感じるオーラ。こいつは、やばいだろう?シュウと早く合流しないと…僕を含めたみんなが、あの恐怖のオーラにやられて、震えている。腰が抜けて、立ち上がれない。何が解き放たれたんだ?
---ヴァイラ---
私は守護する者。カレの元へ早く行かないと…なのに、寒気がひどし、身体が震えて動けない。
---シュウ---
『大天使サマエル、創造神ブラフマー、知恵の精霊、航路の神様、今までありがとうございまいした。この日の為に温存していた、次の形態になりました。再生力を更に上げる為、生き続ける器官も無くしました。この世界を、よろしくお願いします』
念話で、僕の家族と言える仲間のみんなに声を掛け、後のことを頼んだ。
『まかせておけ♪』
って、みんなの声が聞こえた気がした。
『この1年、楽しかったです。僕らの家の皆様、ありがとうございました』
と、僕の仲間達へ念話で話し掛けた。届いたかな?この局面で、会話用魔法陣が使えないのは、つらいなぁ。まさか、最期まで使えないとは…僕は最終決戦の場へと向かった。
向かった先にヤツはいた。7つの首を持ち、10本の角を持つヤツだ。僕は仮想フィールドにヤツと転移した。この日の為に用意してあった特別な仮想フィールドにねぇ。
そして、転移して直ぐに戦闘へ…ヤツの攻撃力と防御力はハンパ無いなぁ。サマエルの毒も効果が無いみたいだし。あらゆる攻撃を叩き込むが、あまり効果が無い。まぁ、倒せない場合の手も打ってあるし。少し安心かな…
---ヴァーリ---
突然、あの恐怖のオーラが消えた。身体が動くぞ。白音と黒歌を残して、先へと急ぐ。広い空間に出ると、女性が全身から煙を上げて倒れていた。確認したが、既に息はしていない。先へと急ぐ。
---アジュカ---
仮想フィールド管理用のシステムがおかしい。僕ですらアクセスの出来無いフィールドが出来ていた。フィールドを生成した場所を調べる。トラップが幾重にも仕掛けられていて、容易に探せない。そして、時間がかかったが、漸く見つけた。でも、これって…次元の狭間では無い?おい…これって…仮想フィールドが解けたら、戻れないぞ!シュウ君と誰が戦っているのだ?何をするんだ、シュウ君は…
急いで、サーゼクスに連絡する。
「シュウ君の今日の予定って、知っているかい?」
「今日はソーナ君の学校の体験入学の日で、アガレス領へ行っているよ」
いつもと変わらないサーゼクスの声…緊迫した状況では無いのか?
「ありがとう!」
サーゼクスに礼を言い、シュウ君のパートナーのヴァイラ君へ連絡をした。が、あの冷静なヴァイラ君は取り乱していた。ただならない状況を感じ、僕は彼女から居場所を訊き出し、彼女の元へ急いで転移した。
転移した先…目の前に血反吐がある。残留オーラからリゼヴィムの物とわかる。ここで、何かが起きたようだ。
「ヴァーリ君、何があった?なんで、ヴァイラ君は取り乱しているのだ?」
普段は冷静沈着で、感情をあまり出さないヴァーリ君だったのだが、僕の言葉で、彼の抑えていた感情が爆発したようだった。僕の胸で涙をボロボロ流して泣いてしまった。イッセー君は涙を目に溜めて、気丈にヴァイラ君を宥めている。この三名がこんな状況って…なにやら尋常で無い事が起きたようだ。僕は残りの魔王をここに呼び出した。緊急事態に違いない。そんな僕へ、ヴァーリ君が1枚の紙切れを差し出した。
---シュウ---
妖刀村雨の居合い斬りで首を一本ずつ落としている。攻撃力が凄まじいが、心が折れない限り僕は再生し続ける。もし、僕が負けたら、この仮想フィールドは閉じられて、僕とヤツは、光の粒子レベルで分解されていくようにプログラムしてある。ヤツはどっちにしても消える運命だ。
---サーゼクス---
アジュカに呼び出された先は、修羅場だった。どんな局面でも冷静だったシーグヴァイラ君が取り乱していた。誰よりも冷徹だと思っていたヴァーリ君が号泣していた。アジュカは呼び出したのに、何も言わずに難しい顔をして黙っている。戸惑う僕に、ファルビウムが1枚の紙切れを手渡してきた。書かれている文字は、シュウ君の筆跡のようだ。
『この世に存在してはいけない物を処分してきます』
とだけ、書かれていた。僕には何の事か分からない。ファルビウムに尋ねるが、コイツも黙ったままだ。セラフォルーはシーグヴァイラ君を宥めている。
「サーゼクスよ、少しは考えろ。たぶん、この世に存在してはいけない物は、4つ有るはずだ」
ファルビウムが声を掛けてきた。なぞなぞか?
「4つ?なんだろう??」
何も浮かばない。しいて言えばリリンくらいか…
「はぁ…お前と来たら…まったく…いいか!まず、人型の物なら迷わず食べてしまうトライヘキサ、それのダミー、龍喰者サマエルと、それらの内2つを使役させている者だ」
「おい、それって…」
何かに魂が揺さぶられる思いだ。
「そういうことだ。彼は帰って来ないつもりだろう。仮想フィールドの管理システムに、僕の知らないフィールドがあった。調べてみると現在稼働中で、作成した場所は遠く離れた銀河だ。シュウ君が死んだ場合、フィールドは自動消滅する。そのとき、中にいる者はすべて、光の粒子レベルまで分解される。魂もだ。招魂も復活もできない状態になる」
アジュカが淡々と説明してくれた。
「なんで、そんなことを?」
セラフォルーの目元に光る物が溜まっていく。
「もし、この先、寿命を全うして、シュウ君が死んだ場合、使役していた者はフリーになる。そうなるとアイツが…」
どこか遠くを見つめるアジュカが、想定される解答を口にした。
「アイツだけじゃない。サマエルだって、悪用されるとドラゴンという種族が全滅してしまうからなぁ。シュウなりに考えたんじゃないかな?僕の後釜だもの。優秀だよ、彼の戦略はねぇ」
えっ!!あのファルビウムが泣いている。アジュカも涙を目に溜め込んでいる。僕は…実感が無いのか、涙が出てこない。
---シュウ---
やっと、ヤツを屠れた。サマエルを龍門から召還する。彼には僕のこの先に行動を話してある。最期にやり残したことが無いかを考えた。この先は後戻り出来無いから…ふとダメ元で、会話用魔法陣を開いた。あっ、初めて開けたぞ。この局面で…しかも相手はリアスだし…
「リアス、子供達は元気かな?」
「もちろん元気だよ。あなたの子供だからね」
「別荘を作ったら、メイド部屋を作って、リアスは住み込みだからね」
「はぁ?なんで、あなたの愛人の別荘に、住み込まないといけないの?」
「愛人?ヴァイラとも結婚式挙げただろう?お前、覚えていないのか?」
「あぅ…そうだったわ。ソーナと3人花嫁だったねぇ」
会話用魔法陣には、リアスの顔は映らない…アイツの凹んだ顔、見たかったなぁ…まぁ、僕の顔もリアスには見えない…それはそれで好都合ではある。今の僕は涙が止まらないから…こんな顔。絶対にリアスには見せたくない!
「リアスにとっては、どうでもいいことだったのかな?結婚式はさぁ」
「もっと盛大な結婚式を挙げましょうよ」
「リアスで女体盛りしたケーキを作るとか?」
「それだと、私がケーキカット出来無いじゃない?」
「つっこみどころはそこかい?」
あぁ、リアスとの会話は楽しい。もっとしたい。もっと…でも、永遠には出来無い。そんなことは分かっている…分かっているんだけど…
「もうすぐ、僕の仕事が終わるから、じゃな!リアス……恥ずかしくて、今まで言え無かったけど、リアスのこと…大好きだったよ!」
僕はリアスの返事を聞かずに魔法陣を閉じた。さぁ、終わりしようか。僕の宴は終わりだ。この1年間で楽しい想い出が増えたし。新しい仲間も増えたし。良い人生だったよ。父さん、母さん、僕を産んでくれてありがとうございました♪
僕は獣門を展開した。
ガイア、シルキー、もっともっと強くなれよ!ヴァイラのまだ産まれてこない子供よ。元気に育てよ。人生はお前らの物だ。
これで僕は…家族から卒業します。僕は祝福の聖剣を頭上に掲げて、残っているオーラを全部捧げて黙祷をした。
『今まで、ありがとうございました!この世界から、争いや哀しみが、無くなりますように!全世界の皆様に幸あれ』
僕はアイツを召喚して喰われた…
---大天使サマエル---
シュウのいた仮想フィールドが、光の粒子になって最後の輝きを発した。それと同時に、私の手元には、彼の形見となってしまった祝福の聖剣が転移してきた。