---ヤマト---
朱乃姉ちゃんとヴァーリと僕の三人で逃げている。追手がまだいる。一向に気配が消えない。とにかく姉ちゃんを隠して、ヴァーリと二人で戦おう。目の前に大きな草陰を見つけて、そこに姉ちゃんを隠した。
「僕とヴァーリで倒してくる。姉ちゃんは、ここで待っていてね」
姉ちゃんはショックで声が出ないのか、無言で頷く。
「ヴァーリ、行くぞ!」
「お姉さん、待っていてくださいね。すぐに戻ります」
二人で、敵の気配へ向かう。
---朱乃---
私が姉なのに、あの子達を守るのは私のはずだった。でも、お母さんの姿…私は泣き縋るだけだった。あの子達のように強くなかった。あの子達が帰ってきたら、お母さんがしていたみたいに、優しく抱きしめてあげようと思う。だけど…それは叶わなかった。
突如、後ろから気配を感じた。
「見つけたぞ!堕天使の娘」
私は逃げようと走りだしたのだけど、後ろから一太刀を喰らったみたいだ。薄れていく意識。ヤマト…ヴァーリ…父さん
「あの子達と一緒に生きたい」
目の前に紅髪の少女が現れた。
「あなたの『生きたい』という願いを叶えてあげる。見返りに私の眷属になってもらうわよ」
それが、私が私である時に聞いた最後の言葉だった。
---ヤマト---
ほとんど無防備な姉ちゃんのいる方に、追手の気配がする。急いで目の前の敵を、総て屠り、二人で急いで戻ると、姉ちゃんの声がした。
「あの子達と一緒に生きたい」
急いで駆け寄ると、姉ちゃんの背中は斬り裂かれていた。
「あなたの『生きたい』とい願いを叶えてあげる。見返りに私の眷属になってもらうわよ」
姉ちゃんの前に紅髪の少女がいる。人間ではなさそうだ。
「お前!姉ちゃんに何をした!」
少女は冷たい笑みを浮かべ
「あなた達には関係ない。彼女の願いを聞き、見返りに私の下僕にするの。これからは私の為だけに生きてもらうわ」
「ふざける!姉ちゃんの願いは、僕達と一緒に生きたいって言っていただろ?」
「私には生きたいしか聞こえなかったわ?ふふふ」
目の前の紅髪の少女は、姉ちゃんと共に消えた。
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僕達が家に帰ると、お父さんとアザゼルおじちゃんがいた。
「お父さん、ごめんなさい。姉ちゃんを護りきれなかったよ」
僕とヴァーリはお父さんに縋りつき泣いた。少し落ち着いてから、僕は紅髪の少女とのやり取りを二人に話した。
「紅髪?下僕?願いの改ざん?…たぶん、悪魔のグレモリー家のお嬢ちゃんだな。自分の都合の良いように解釈するから」
アザゼルおじちゃんが情報をくれた。紅髪の少女は悪魔だったのだな。
「おじちゃん、下僕って?」
「あぁ、家来とか部下みたいなものだ」
「ねぇちゃんは悪魔の部下にされちゃうの?」
「まさか、手にかけてまで、眷属にするとはな」
「おじちゃん、悪魔の倒し方を押してください」
僕は土下座して頼んだ。ヴァーリも僕と同じように頼んだ。
「お前ら?グレモリー家と戦う気か?その少女の兄は魔王だぞ?」
「ラスボス?」
「まぁ、そんなところだ」
「教えてください。お願いします。お母さんだけでなくて、姉ちゃんまで…紅髪の悪魔を絶対に許せない」
お父さんはお母さんに寄り添っている。僕らのように怒りを持つ以前に、心が折れてしまっているように見える。
「う~、でも、あいつがそこまでして、眷属を手に入れるかな?」
僕達の話を信じないおじちゃん…怒りがこみ上げて来た。ダメだ…この人では…
「おじちゃんは悪魔の味方なの?もう、いいよ。いつか、おじちゃんも倒せるようになるから。ヴァーリ、行くぞ!」
頷くヴァーリと二人で鎧を発現して、僕らの秘密基地に向かう。
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秘密基地は、姫島神社という古びた神社である。お母さんが昔住んでいた場所。たまに掃除に行くお母さんと一緒に行って、ヴァーリと遊んだ場所。今日からここで暮らして、オーフィス先生とアルビオン先生に悪魔との戦い方を学ぼう。いつか、あの紅髪の少女を見つけて倒す為にも。
---アザゼル---
俺はボウズから話を聞いて、紅髪の魔王サーゼクス・ルシファーへ連絡を取った。
「よぉ、元気か?魔王様」
「アザゼルか?どうしたんだ?珍しいなぁ」
俺はボウズから聞いた話を、サーゼクスにした。
「いつから、欲しい人材に手をかけて、眷属にするようになったんだ?」
「リーアがそんなことをするとは思えない。」
「なら、あいつの眷属に人間と堕天使のハーフの少女がいないか、確認してくれるか?」
「ちょっと待ってくれ。リーア……あぁ、事情を聞いてきた。眷属にしたそうだ。眷属にした後に、人間の子供が二人来て返せって言ったけど、無視して連れ帰ったそうだ」
「なぁ、姉弟三人がいて、弟たちの目の前で姉だけ持ち帰るって、どうなんだよ!」
「どうと言われても、リーアが言うには『生きたい』っていう願いを叶えて、見返りに眷属にしたって…」
「ボウズたちは『あの子たちと一緒に生きたい』と聞いたと二人とも言っているが」
「前半部分は聞き取れなかったって」
「お前の妹は、都合の良いように解釈するクセが、治っていないだな?お前ら、とんでもないヤツを敵にしたぞ!」
「とんでもないヤツ?」
「あぁ。この星の命運を左右できる力を持つヤツだ。覚悟しておけよ。友人としての忠告だ。謝るなら早めにしろよ」
「リーアの話だと、リーアより幼いみたいだったけど、そんな力があるの?」
「グレモリー家の相手は、破壊神が宿る者と、初代ルシファーのひ孫だ」
「はぁい?それってヤバそうだな」
「あぁ、この星を巻き込むなよ。グレモリー家だけで解決してくれな」
サーゼクスのヤツ、あまり危険性を感じていないみたいだった。まさか、殺しにかかることは無いよな、サーゼクスよ。一応、グリゴリから護衛を出そうと、ボウズ達の位置を確認しようとしたが、既に確認出来無かった。どこかに潜んだのかもしれない。マズいなぁ…
---ヤマト---
僕の身体から出てくる友達がオーフィス以外にもいた。シヴァさんだ。シヴァさんは神器の使い方を教えてくれた。アルビオン先生が言うには、悪魔の弱点は聖水、光、十字架だそうだ。
僕は神器「聖なる絶霧」(聖水を霧状にして相手を包み、聖水に満たされた結界に閉じ込めることができる)と「輝光祭主による磔台」(光輝く十字架を放つことができる)を創造した。あと、怪我した時の為に「聖母の愛情」(ダメージの総てを回復でき、敵と認識した相手に放てば聖なる攻撃になる)の3つを創造した。これからの悪魔との戦いに必要になるはずだ。
ヴァーリはアルビオン先生の力を、総て使いこなせるように練習している。オーフィス先生には体術とオーラでの攻撃を学ぶ。
家事はシヴァさんがこなしてくれたので、1日の大半を鍛錬にあてることができた。
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月日は流れて、毎晩悪魔の活動時間帯になると、見回りをして悪魔を屠っていく僕達。今夜も悪魔の気配を探る…いつもよりデカイ気配を見つけた。大物だ。急いで向かうと、巫女の装束を来ているお姉さんが悪魔に襲われているところだった。ヴァーリは相手の力をアルビオン先生の力で減らしていく。僕は相手を聖なる霧で囲み、聖水で満たした結界に閉じ込める。最上級悪魔なのか、屠れない。光り輝く十字架を放っていく。やっと灰にすることができた。
ヴァーリはお姉さんに近づき怪我の状態を確かめている。
「ヤマト、この人、脚をくじいたみたいだ。」
僕は頷いて、神器による回復のオーラでお姉さんを包み、癒していく。
「お姉さん、僕達が家まで送って行きますよ」
僕らは、お姉さんを家までガードした。
---那魅---
わたしは闇雲那魅。古来より日本の祭儀一切を取り仕切ってきた、闇雲家の当主である。今夜はいつものように、悪魔祓いに行ったのだが、今夜の敵は最上級悪魔だった。この私の力がまったく効かない。追い詰められた私をヤマト君達が助けてくれた。
私の家である闇雲神社まで、送ってもらったので、家の中に入ってもらった。私は、ヤマト君達の力を、貸してもらえるように頼んだ。私よりも強い悪魔が最近多くなったきたからだ。ヤマト君達は、協力してくれると約束してくれた。もう、夜遅かったので、家の方に連絡をしてあげようとしたら…ヤマト君達の生い立ちを聞いた。
姫島神社の巫女、姫島朱璃の子供達。朱璃は殺され、長女の朱乃は悪魔に攫われたそうだった。この朱乃の弟と妹は、いつか朱乃を奪い返そうとしているようだ。
私は、この子達の後ろ盾になろうと思った。ヤマト君達の了解を取って、二人の左手の甲に闇雲家の紋章を与えた。これがあれば、日本の神社仏閣が彼らの味方になってくれる。もう1つの後ろ盾を、この子達に与えたかった。明日、会わせたい人がいるといって、今夜はうちに宿泊してもらった。
夜半、寝ていると、何かの気配に気づいて、息を潜めて待っていると、あの子達が枕を持って、私の寝床に寝に来たようだ。寝ているふりをする私。
私の左右に一人ずつ枕を置いて、布団に入ってきた。そして、私の胸に縋り付き
「お母さん…」
と、すすり泣いていた。そうだよね、朱璃一家に襲いかかった惨劇は、まだ幼い二人には過酷なものだ。二人を抱えるように腕を回して三人で就寝した。
---那魅---
翌朝、二人を連れて「Cafe らびりんす」に向かった。昔の同僚の鷲尾由貴が経営しているお店である。
「昨夜、連絡した二人。ヤマトくんとヴァーリちゃんです」
「二人ともよろしくね」
二人は由貴さんに挨拶をした。
「突然の話で申し訳ないです」
「いえ、徹さんに話したら、力になりたいって」
彼女の旦那さま、鷲尾徹さんはEGコンツェルンのオーナーである。昨夜の連絡で、この二人には戸籍がないことを伝えて、彼ら夫婦の養子に二人を迎えてもらうことを頼んだのだ。
「あなた達は、今日から鷲尾ヤマトくん、鷲尾ヴァーリちゃんよ。戸籍がちゃんとしていないと、今後活動に支障があるからね」
「那魅さん、ありがとうございます」
ヤマト君、ヴァーリちゃんの目から涙がこぼれている。
「それと、由貴さんから忌まわしい力を取り除いてくれる?」
人間兵器開発計画の生き残りの由貴さんから持ちかけられた、養子にすることに対する代償。由貴さんが持つ忌まわしい過去、超能力を取り除くこと。ヤマトくんの能力を由貴さんに話したら、持ち出してきた。
「わかりました」
由貴さんの肩に手を置くヤマトくん。『強奪』とささやくと手が一瞬光り輝いた。
「由貴さん、能力を総ていただきました」
由貴さんはコップをみつめて力をこめるが、コップには何も起こらなかった。
「ありがとう!能力が無くなったみたい。これで普通の人として生きられるわ♪」
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次に二人を、とあるマンションの最上階の部屋に連れて行った。部屋の中には、溜め息の出るようなプロポーションを持つ女性がいた。
「レビア、この二人よ」
レビア・マーベリック、私の昔の同僚。電脳世界に直接ハッキングできるヴィジョネイルの能力を持つ。発明家の祖父のおかげで自分用の人工衛星すら持つ大富豪である。この二人の金銭的な後ろ盾になってもらおうと、彼らのことを話したのだ。彼らに興味を持ち、了承をしてくれた。
「よろしくね、ヤマト、ヴァーリ」
「「よろしくお願いします!」」
二人は部屋にある様々な機械に目を輝かしていた。レビアさんの厚意で、ヤマトにヴィジョネイルの能力をコピーさせてくれた。
「好きな時に、この家を使っていいからね」
レビアさんはこの二人を気にいったようだ。
「「ありがとうございます」」
二人は揃って、レビアさんに頭を下げた。