---シュウ---
グレイフィアさんが、おっさん、いやアザゼルさんに、連絡を取ってくれた。サーゼクスさんは、僕に屠られたショックで落ち込んでいる。クリスの両親には歓迎された。魔王を屠る力のある者が眷属になったからねぇ。
で、やっと、堕天使サイドからお迎えがきて、グリゴリという堕天使の組織の総督に会っている。
「俺が堕天使の総督のアザゼルだ」
「若っかいなぁ」
「はぁ、お前とは初対面だが」
「僕の世界ではおっさんだよ。おっさんって、呼んでいたもの」
「はいはい。で、並行世界から来たって?」
「みたいです」
「…で、種族はなに?」
「いま転生悪魔ですが」
「いや、その前だよ!!」
おっさんは、何で怒っているのかな??
「鬼と天使のハーフです」
「はぁい?そんな組み合わせは、聞いたことないぞ」
「見識が狭いんですね。この世界のアザゼルさんは」
「悪かったなぁ。で、能力は?」
「今、持っているのは、『身体再生』『神器無効化』『魔物化』『光、聖属性の攻撃の無効化』かな?」
「おぃおぃ…ほぼ無敵じゃないか」
検査装置で僕を検査するおっさん。
「神器はないなぁ。並行世界から持ち込んだ装備、アイテム類は?」
「容量無限大の不思議な袋、聖水を滴らす妖刀村雨、魂を食らう妖刀村正、インパクト時に聖なる槍を放つライトニングナックル、龍喰の剣サマエル、鉄壁の鎧トライヘキサ、どこでも錬金できる錬金釜、なんでも変化させちゃう変化の杖など」
おっさん、固まっているみたいだ。
「……なぁ、反則クラスの武器、装備ばかりじゃないか、特に気になったのは、トライヘキサの鎧って、おまえの世界で、トライヘキサを倒したのか?」
「まぁ、使役させてました」
「おまえの強さも、反則クラスだな。弱点が無いじゃないか」
「あるよ!白音の甘え顔にノックダウンです♪」
「白音?サーゼクスの妹の眷属で笑わないヤツだな。そいつの甘え顔か?」
「僕のいた世界では、僕の妹でした。」
「こちらの世界と、多少違うんだな。白音、塔城 小猫っていうんだが、彼女の心を開いてあげられるか?」
「姉の黒歌のいる位置が、わかればね」
おっさんは、何かの装置を操作して、
「はぐれハンターに追われているみたいだ。黒歌のいる場所に強制転移させるぞ!」
僕は、黒歌の元に強制転移させられた。
---黒歌---
今回のハンターはまずいにゃ。けっこうしぶといし強い。白音とはもう会えにゃいのかにゃ?え?突然、背後から優しく抱きしめられた。
「黒歌、お前を白音の元に届ける」
え?本当かにゃ?
「僕の駒を一時的に入れるぞ!」
返事をする前に駒を入れて?え、私には駒が入っているにゃ、既に…
「僧侶の駒2こ、無事に取れたよ♪」
私に声を掛けてくれた人物から、僧侶の駒を2こ手渡された。本当だ…忌まわしい駒が取れたにゃ。
「少し、ここにいてくれ。追っ手を屠ってくる」
え?手練れだよ。一人じゃ無理…あぁ、行っちゃったよ。しばらくすると、
「もう安心だよ。白音のところに、転移するぞ」
私達は、どこかのお屋敷に転移した。ここに白音がいるのにゃ。私を助けてくれた彼に、ついて行った。彼はある部屋をノックして入る。
---白音---
ノックして誰かが入ってきた。えっ?気配を感じること無く、その者に私は背後から抱きしめられて、その者は私の頭を撫でてくれている。とても、暖かいオーラに包まれていき、心の闇が昇華されていく。そして、彼は私の耳元で囁いた。
「黒歌を救い出してきたよ。これからは一緒に暮らせるぞ」
え?お姉様を救い出してくれたの?私を抱きかかえて、ドアの方に合図すると…黒歌お姉様が駆け寄ってきてくれた。私は彼の手から、お姉様の手に優しく、大切に手渡された気がした。この人は、誰なんだろう?私の中の乾いていた心が潤っていく。
私とお姉様が再会したのを見届けると、彼は何も言わずに音も無く、部屋を出て行ってしまった。まだ、お礼を言っていないのに…
---グレイフィア---
この家の誰もが手を焼いていたあの子を、あんなに素早く、優しい顔つきにするなんて。あのクリスですら、落とせなかったのに。私は彼に心が奪われつつあった。今夜、色々訊いてみよう。
---ヴェネラナ---
突然、彼が私の部屋に来た。
「なんで、クリスにルシファーの血が、入っているんだ?」
見抜かれている。並行世界から来た彼には、総てがわかっているのかもしれない。
「何の事でしょうか?」
平静さを装う。
「ふっ、なんで銀髪なんだ、クリスは?後、天使の翼を、持っているみたいじゃないか?」
「イレギュラーなだけよ」
「いや、あれはイレギュラーじゃない。たぶんこの世界でも、悪魔王家と大王家と大公家は、交わっちゃダメなんじゃないのかな?悪魔の系譜が、バレるからな」
あぁ、この人、系譜を知っているのね。
「どこまで知っているのかな?」
振り返ると亭主がいた。
「私もそんな気がしたんだよ。イレギュラーで天使の翼は生えないよ」
---シュウ---
グレモリー卿は、涙をうっすら浮かべていた。僕は本当の事を言っていいのか悩んだ。
「サーゼクスも交えて、君の話を聞きたい。悪魔の系譜は、調べる事もタブーなんだよ、この世界ではねぇ。生を受けた者には責任は無い。でもこれ以上、イレギュラーと呼ばれそうな存在は、つくちゃいかんと思うんだよ」
グレモリー夫人を部屋に残して、グレモリー卿の書斎へ向かった。
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書斎には色々な古い書物があった。グレモリー卿は独自に調べていたのかもしれない。イレギュラーになってしまった理由を。サーゼクスさん、アジュカさんも書斎に入ってきた。
「シュウ君、お願いだ。教えてくれ。悪魔の本当の系譜を」
グレモリー卿の顔は、真剣であった。
僕は僕の書き写したノートを三人に見せた。
---知恵の精霊の独白---
いまでこそ、三大勢力といわれている、天使、悪魔、堕天使であるが、元を正せば、同じ種族である。天使が欲に塗れると堕天使に。天使が神に反すると地に落とされて悪魔になる。今の三大勢力で気づいているのは、きっと天使長だけであろう。昔起こった三大勢力による戦争っていうのは神ヤハウェ体系の内乱みたいな、小さな争いに過ぎない。あの勢力がすべて滅びようと、他の神話体系には影響がないから。
ルシファーの末裔と名前を引き継ぐ者よ
悪魔の王ルシファーが、天界を追放される前は最上級の熾天使であったことを知っているのだろうか
ルシファーは、特別に12の翼を有し、なによりも美しく光輝いていたことを知っているのだろうか
明けの明星、光をもたらす者と呼ばれていたルシファーは、元々全天使の長であったが、神ヤハウェとサマエルの処遇を巡って対立し、天を追放され、神ヤハウェの敵対者となったことを知っているのだろうか
レヴィアタンの末裔と名前を引き継ぐ者よ
レヴィアタンは、神ヤハウェが天地創造の5日目に造りだした最強の生物、リヴァイアサンであることを知っているのだろうか
レヴイアタンは、その硬い鱗と巨大さから、いかなる武器も通用しなかったドラゴンだったことを知っているのだろうか
ベルゼブブの末裔と名前を引き継ぐ者よ
ベルゼブブはルシファーに仕える君主の一人で、エクロンの神だったことを知っているのだろうか
アスモデウスの末裔と名前を引き継ぐ者よ
アスモデウスは元々智天使で、「天使の階級」では第二位だったことを知っているのだろうか
アガレスの末裔の者よ
アガレスはかつては力天使だったことを知っているのだろうか
バアルの末裔の者よ
バアルは、元々嵐と慈雨の神であったことを知っているのだろうか
忘れてはいけない。
お前達は翼をもがれ天界を追放された者の末裔であることを
神ヤハウェの御前にいたラファエル、ウリエル、ミカエル、ガブリエルの四大天使は天使の九階級のうち下から二番目の階級の大天使すぎなかったことを知っているのだろうか
先の三大勢力戦争時に、神ヤハウェが亡くなり、上位の大天使たちはルシファーとともに追放されて残っておらず、残っていた大天使の中から、全天使の長が選ばれたことを知っているのだろうか
神ヤハウェ亡き後、「父(ヤハウェ)」と「子(キリスト)」と「天使(御使い、神の使い)」が「三位一体(唯一の神)」となったことを知っているだろうか
知恵のある者よ
「母」の存在を考えよ
「母」を隠す理由を考えよ
すべての答えは、そこにある
堕天使たちよ。
これ以上、堕天することはない
だが、おまえたちはどこへ歩み、どこへ帰るのか
天使よ、堕天使よ、悪魔よ
お前たちは、同族であることを知っていただろうか
---アジュカ---
この世界の住民には、ノートに書かれた文字が読めなかった。なので、彼に読んで貰った。しかし、グレモリー卿は、何かを思い出したのか、声を上げた。
「この文字は…」
グレモリー卿が、本棚から何かの書物を取りだし、文字を見比べている。
「あぁ…本物だ…このルシファーの日記の文字と同じだ…」
研究資料なのか、あの初代魔王の日記のようだ。
「確かに、君は並行世界から来たようだな。我々でも入手できない資料を持っているし。いや、この世界には、存在していないのか?」
「存在していないですよ。これは知恵の精霊が教えてくれたことを、僕がノートに書き起こした物ですから。これしかないはずです」
「何故、君は古代悪魔文字と言われる文字を読み書き出来るのだ?」
「知恵の実のなる樹に宿る知恵の精霊が、僕の知識の先生だったからです。僕の存在理由は、天界を奪い返す為の駒の1つだから。なので、天界関連の古い文献を読む為に、その文字の理解が必要だったんです」
「天界を奪い返すって、天界にケンカを売ったのか?」
サーゼクスが驚きの声を上げた。
「えぇ、アガレスさんの子孫と、ルシファーさんの子孫と、この戦争を待ち望んでいた仲間達と共にね。僕はその時、消えるはずだった。僕の役目は、獣の数字を呼び出す鍵に過ぎなかったから」
「獣の数字を呼び出したのか?君の世界は、滅んだのか?」
「いえ、今も存続しています。多種族共存の世界として。獣の数字は僕の下僕にしました」
「はぁ?」
グレモリー卿の呆れかえる声がした。俺もサーゼクスも絶句状態だが。
「下僕って…倒したのか?」
「はい♪今、呼び出しましょうか?僕の命令だけは、聞いてくれるし」
「ダメだ、出さないでくれ~」
グレモリー卿の悲痛な叫びをあげる。
彼の話、彼のノートが本当だとすると、今迄の冥界の歴史書が、ウソだったということか?並行世界ゆえ、多少の違いはあるにせよ、大まかはこれが正解なんだろう。
ルシファー、アガレス、バアル。旧魔王派、大公家、大王家、それぞれは交わらない暗黙のルール。イレギュラーが産まれる率が、高まるからなのか?グレモリー卿の奥様はバアル家で、滅びの力を継承されている。そこに聖なる要因が加われば、イレギュラーは産まれ易くなる。
「僕も、イレギュラーなんです」
シュウ君は、天使の翼を展開した。鬼なのに天使なのか…
「君の本当の名前を、教えてくれないか?」
グレモリー卿は、シュウ君の本名を聞きたいらしい。
「聖者のシュウ・ヨハネ・鬼門です」
「聖者でヨハネなのか…君も初代の血を受け継いだ、イレギュラーってことかな?」
「そうです」
彼は聖者なのか…そしてヨハネって…だから、真相に近づけたのか。俺は、グレモリー卿も同じ結論に達した気がした。
「君は悪魔に囲まれても平気なのか?」
「悪魔にも良い悪魔はいます。僕はオーラで、相手を区別出来ます。腹黒いと思ったら、神でも屠りますよ。それに聖者って、教会が勝手に認定しただけですからね」
---グレモリー卿---
「クリスを鍛えてあげてくれないか?我々悪魔では鍛錬の相手が出来ない」
切実なお願いだ。聖なる攻撃の出来るクリスは、悪魔では練習につきあえないからな。
「わかりました。元の世界に戻れる日まで、鍛錬につきあいます。その代わりにではないですが、僕からもお願いです。異世界に戻れる方法を探してください。あと、アガレス領のアウロスの高台の土地を借りたいです。アガレス様と交渉していただけませんか?」
「そこに、何があるのかな?」
「僕の世界で、僕が家族と住む家を建てる予定地なんです。そこからは、大切な友人が、命を落とした場所も見えるし…」
彼は涙を流している。よほど、思い入れのある場所なのだろう。アガレス殿に相談してみよう。