---クリス---
初めて賢者様の戦いを、仮想フィールドでの戦闘を見られるモニタで、見た時は驚いた。最強の魔王と言われているサー兄さんと眷属の方を、あっという間に倒してしまったのだから。あ、賢者様っていう呼び方は、死んだ者を生き返らせてしまう力を持っているから。サー兄さんを倒されたのを見て、この方を眷属に欲しいって思った。僕の傍にいて、アレコレと色々教えて貰えたらいいなぁって、思ったんだ。
戦闘が終わって、僕達の前に戻られて、僕の眷属になってくれた時は嬉しかった。ティアさんもなってくれたし。その後、賢者様のお子様、ガイアとシルキーも眷属になってくれたし、僕の眷属集めは順調である。そのはずだったが…
賢者様から、衝撃な発言。
「僕もそうだったけど、クリスはレーティングゲームは、出られないと思うよ」
「何故ですか?」
「天使の力を持つ者が、悪魔のゲームに出たら、無敵だろ?そんな化け物と、誰が相手をすると思う。僕の価値は13。サイコロマッチ(サイコロを2個振って出た目の合計の価値の者が参戦できるゲーム)に、『王』として出られないハンデだったもの。たぶん、ここの世界でクリスも、同じ待遇になると思う。悪魔の上層部の頭が柔軟でない限りはね」
「では、僕は何の為に強くなるんですか?」
涙が出てきた。死んでは、生き返りの繰り返しの鍛錬。とってもつらいのに、ゲームで戦って勝つ為に、がんばってきたのだ。
「大事な人を護る為だよ」
賢者様は遠くを見つめていた。
「大事な人?」
「僕の大事な人は僕の家族だよ。あと、一緒に戦う仲間とか…」
アウロスの家のサンデッキからの景色を、懐かしそうに見ている賢者様。
「クリスを初めて見た時、僕達と同じオーラを感じたんだ。天使の持つオーラをね」
「オーラで、そういうことが、わかるのですか?」
「クリスも、もっと強くなって、色々な経験を積めば、わかるようになれるよ。だから、ゲームに出られない状況になっても、腐らずに鍛錬をしていって欲しい」
僕にも、出来るようになる。僕も賢者になれるのかな?
「でも、ゲームに出られないんじゃ…」
「大事な人を護れるように強く…うん?クリスは大事な人が、いないのか?」
「う~むぅ、大事な人、大事な人…」
「リアスは大事でないの?」
リアスお姉様が、僕を睨んでいる。
「大事です」
「サーゼクスさんとか、ご両親は?」
「大事です」
「クリスにも大事な人が、いるじゃないか」
「いますねぇ…」
「その大事な人達よりも、強くなれ!」
「……」
「クリス、僕もガイアもシルキーも、いつまでこの世界に、いられるかわからないんだ。僕達がいなくなったら、クリスにしか、止められないと思うぞ」
「止める?何をですか?」
「ラスボスをさぁ」
「ラスボス?」
「いつか、あれの封印を解く者が現れるかもしれない。その時に対峙できるのは、クリスだけだと思う」
「どうして、僕なんですか?」
「訊いた話では、ラスボスは聖なる身体に、闇のオーラを纏う者。普通の悪魔では、簡単に屠られると思う。イレギュラーなお前なら、戦えると思う。だから、お前を鍛えあげる」
僕達の会話を聞いて、お姉様が近寄ってきていた。
「クリス、私を護りなさいよ!」
お姉様が僕の顔を、覗きこんでいる。
「私達を鍛えあげているのも、それがあるからですか?」
小猫ちゃんが賢者様に問う。お姉様の眷属を見渡した賢者様。
「リアスの眷属は転生悪魔だ。そのままでは簡単に屠られてしまう。いずれ、僕の駒を入れて、元の種族にもなれるようにするよ。いいかな?リアス」
「お願いします。クリスだけでは不安です」
僕だけでは不安なのね。まだ、護れるくらい強くないってことかな。
「実際に戦っていないから、確実ではないけど、クリスとギャスパーが攻撃、白音、黒歌は、仲間を回復しながら、仙術で相手の身体の中にダメージを与える、そんな作戦が有効かな」
「僕は?」
「木場は元々人間だから、前線は無理だな。リアスを護れ。『騎士』なんだからな。朱乃も前線は無理…いや、遠隔での攻撃ならいけるかもしれない」
「ドラゴンは全員、前衛だな。封印した時に、二天龍が協力したというから、ドラゴンの力は有効かもしれない」
---シュウ---
夜空をサンデッキから見ている。みんな元気かな。ソーナ(もちろん、あちらの世界です)とプレイしたいなぁ…そんな不埒な考えをしていたら、後ろからグレイフィアさんが抱きついてきた。
「何を考えていたの?」
「いや、そのぉ…」
いかん、グレイフィアさんの胸に視線が…
「耳まで真っ赤よ。ふ~ん、そういうことを考えていたんだ」
グレイフィアさんが悪魔っぽい笑みをこぼす。いや、彼女は悪魔なんだけど。
「今夜は好きにしていいよ。いじめられる方はうまくないかもしれないけどね」
心の中を読まれている…僕は、グレイフィアさんと寝室に向かった。