---シュウ---
とりあえず、クリスのおかげで接触が出来たアーシアを安全な場所、アウロスの家へ連れて行く。直接行くと、アーシアが密入国した事になるので、アジュカさんのお城でアーシアの冥界への入国の許可を貰ってから、連れて帰った。アーシアのことをグレイフィアさんとヴァーリに頼んで、次の一手を打つ為の準備で、天界へ向かった。
------
「教会から追放された元聖女のアーシアの件かい?」
ミカエル様が応対してくれた。
「僕のいた世界と同じ理由かなって、探ったら同じだったので。彼女に痛い思いも、悲しい思いもさせたくないんです。僕のいた世界のアーシアは、一度死んでしまいましたから」
今更、悔やんでもしかたがないけど、今でもあの時のことを、思い出すことがある。
「で、原因を作った悪魔をしばくのかい?」
「あまり歴史に介入しないようにしようかと思うので、もう少し泳がせます。うざい動きしたら、しばいても良いですよね?」
「天界では、その判断は無理だよ。悪魔の件は魔王に相談してみてくれるかな」
僕は頷いた。
「で、バチカンの件は、天界で承るよ。どうすれば、いいかな?」
「僕とアーシアがバチカンに自由に出入りできる通行証をください。あと、祝福の聖剣を僕に貸してください」
「前段は了解だ。祝福の聖剣?使いこなせるの?」
「僕のいた世界では使いこなせていました。主に浄化能力ですけど」
「わかった。バチカンで使いこなせるか試してみて。それで使いこなせるなら、お貸ししよう。アレを使いこなせる者が、なかなかいなくてね。戦闘用っていうより、シュウ君の言う通り、祝福や浄化用だからねぇ。戦士の受けが良く無いっていうか」
ミカエル様は苦笑いしている。まぁ、ゾンビ相手なら最強だけど、普通の世界には滅多にいないからねぇ。書類を色々と作成してくれた。
「帰りに第七天に、寄って行ってね。神様達が話が有るみたいだから」
「了解しました。そういえば、僕の息子はどうしています?」
息子のガイアは、天界で鍛えて貰っている…というか、ガブリエル様が気に入ってしまって、一緒に暮らしている。娘のシルキーも一緒にって、言われたけど、あの子は悪魔の血が多いから、天界での長期滞在は無理に思えて、違う神格で鍛えてもらっている。
「ガイア君?ガブリエルの愛情を独り占めしているぞ。ガブリエル自体も鍛錬の相手にちょうどよいみたいだ。彼女より強い天使っていなかったからね」
うん?ミカエル様は?この世界のミカエル様は事務系だそうだ。
--------
第七天に向かったら、神様達が集まっていた。
「他の並行世界の神より連絡があってな。あと少し待つと、闇の力を持つイレギュラーがはじき出されるそうだ。その者をうちの世界で拾う。君の持つ浄化能力で闇の力を取り除いて欲しいのだ。闇の力が強すぎて、世界滅亡より危険な星破壊が起きそうらしい」
「祝福の聖剣が借りられれば、浄化は出来ると思います。で、その彼が並行世界を移動できる能力持ちなんですか?」
「並行世界移動の能力は持っていないけど、神器創造の能力がある。もしかしたら、そういう能力の神器を作れるのでは、ってことらしいよ」
「うまく作れるといいなぁ」
「これから、バチカンなんだろ?頭の固い教会関係者がジャマだったら、呼んでくれ。すぐに行くからねぇ」
---イッセー---
悪魔のお仕事、いまだ契約が取れない。なのにリピーターが多いのは何故だ?ただ働きってことは無く、報酬は貰えているんだけど、契約が…
今日のお仕事もリピーターさんだ。今度こそ契約が取れないかなぁ。呼び鈴を鳴らして、ドアを開けると、年とも言えない匂いがする。
「こんばんわ。イッセーです」
声を掛けて家の奥に進む。廊下に赤い液体が流れている。これって…家の一番奥の居間を覗くと、家主が壁に磔にされていた。
「君、人間では無いですね。僕に祓って欲しいんですね。はい♪」
声のした方を見ると、剣を振り下ろして来る男がいた。俺は咄嗟に避ける。
「痛っ!」
刃先が少し擦った。それなのに、激痛が全身を走り抜けて行く。
「擦っただけで、激痛ですか。ふふふっ♪君は悪魔君かな?では、聖水入りの水鉄砲でどうかな?」
「えっ?!」
聖水がかかった部分から煙が上がる。聖水って硫酸のことか?激痛が走る。ここから逃げないと、殺される。俺は、部屋から出て廊下を玄関に向けて走り出したが、足を狙われたみたいで、刺すような痛みがしてからの激痛。大きくバランスを崩してその場に倒れた。
「腐れエクソシスト君♪、そこまでだ」
玄関に、誰かが立っていた。声から判断するとシュウさんって人だと思う。
「誰だ。お前も悪魔か?」
「エクソシストだ。フリード・セルゼンだな?バチカンへの手土産に、なってもらおうか」
「はぁ?土産?何で?」
水鉄砲をシュウさんって人に撃ちこんでいる。
「聖水?効かないよ。僕は天使だかね」
目の前で天使の翼を展開している。
「イッセー君、回復魔法を掛けておいた。ドアの外にクリスがいる。一緒にいてくれ」
そういえば、痛みが無くなっている。俺は全速力で、ドアに向けて走り出した。
---シュウ---
「これで、目撃者はいない。何をしてもいいよね?」
無数の針をフリードの身体に撃ち込んだ。
「痛ぇ…なんだ?これは?」
「ストローだよ。ほら、一本一本から血が流れ出ているのがキレいでしょ?」
ハリネズミのようになった身体から、血の滝が無数に見える幻覚を見せてあげる。撃ち込んだのも針でなくて霜柱だ。当たった瞬間は痛いけど、体温で融けてなくなっているし。
「おい、やめろ!止血してくれ」
「いたぶるのは好きなのに、痛いのは嫌いかな?」
妖刀でフリードの魂を取り出して、フリード身体と別々の場所に保管した。バチカンに行くのに手荷物は少ない方がいいからね。
---イッセー---
玄関からシュウさんが出てきた。俺の前に一枚の紙切れを出した。
「家主は生き返らせて、イッセーくんへの契約書に、サイン貰ったよ」
え?初契約だ。
「ありがとうございます」
俺はシュウさんに頭を下げた。
「いいよ。クリスの後輩だし、僕の獲物だったヤツを捕獲出来たしね」
「シュウさんって、天使でエクソシストなんですか?」
「まぁ、それはまた今度ねぇ。とりあえず、リアスのところに行こう」
俺達はリアス部長の元に転移した。
-------
部長はオカルト研究部の部室にいた。
シュウさんは、部長が座っている椅子を蹴り飛ばした。その衝撃で座っていた部長も飛ばされた。
「何をするのよ?」
部長の目は、怒りの色に染まっているみたいだ。その場にいる朱乃先輩は、シュウさんの突然の振る舞いに驚いている。
「何する?今、イッセー君を助けて来たんだけど」
「え?イッセーを助ける?どういうことよ?」
「統括しているんだろ?この町を!どうなんだ?リアス・グレモリーよ!」
「そうよ、この町は、私の統括地よ」
「では何で、眷属を危険に晒すんだ?このクソ女がっ!」
「意味が分かるように話くれませんか?それに、私はクソ女じゃありません」
「そうですよ。お姉様は、バカ王ですよ。シュウさん、クソに失礼です」
物凄い口撃が部長に襲い掛かっている。いや、シュウさんとクリスさんの怒りのオーラも半端なく、部長を飲み込んでいた。
「バカは『王』になれないってルールを付くって貰わないといけないねぇ、クリス」
「クリス、シュウさん。この地の統括主に罵声?これ以上の無礼は許しませんわ」
二人の怒りのオーラの前で、声が震えている部長。
「万死に値するって?僕にはリアスの攻撃は効かない!」
「僕もお姉様の攻撃なんか怖くないし♪」
リアス部長がイラだっている。本当に攻撃が効かないのだろう。
「プライドの高ピーな王様にお聞きしますが、転移も攻撃も出来ない眷属を、エクソシストが待つ家に送り込むって、どういう理由ですかね?僕には理解が出来ません」
俺を見る部長に頷く。部長の顔色が青ざめていく。
「イッセー君は大丈夫でしたか?」
心配そうに俺へ言葉を掛けてくれたのは、朱乃先輩だった。
「シュウさんに助けてもらいました」
「朱乃!イッセー君に、悪魔の弱点とか、戦ってはいけない相手とか、教えてあげたのか?」
「いえ、まだです」
朱乃さんは悔しそうに、身体を震わせていた。俺なんかの為に…
「おい、そこのプライドだけ高ピーな王様よ。そういう基本を教えないで、仕事に出すってどういうことなんだ?朱乃、この世界の眷属悪魔では、それが基本か?」
「違います。私はシュウさんに、基本を総て習った上で、リアス・グレモリー様の眷属悪魔として仕えています」
「だから、お姉様。言ったでしょ?基本を教えてからでないと、アレコレは無理だって。朱乃、祐斗だって、シュウさんに悪魔の基本叩き込まれたから、お姉様の指示通りに動けるけど、イッセーは無理だからね」
「朱乃、今度の週末は、アウロスの家に眷属みんなで来てくれ。基本を教え込む」
「わかりました」
俺なんかの為に、シュウさん、クリス先輩が心配してくれていたのか。すごく感激です。リアス部長は、顔色が青ざめたまま固まっている。俺みたいな素人悪魔を眷属として動かしたことが無いんだなぁ。クリス先輩を選べば良かった…そういえば、チーム選択場面で、リアス部長のチームを選んだ時に、死ぬかもしれないって…そういうことなんですね。本気で心配してくれたシュウさんとクリス先輩を、涙目で見る俺。
「泣くなよ、イッセー。大事な後輩を簡単に死なせないから。たとえチームが違ってもねぇ」
ありがとうございます、クリス先輩。
「さて、リアス。この件はサーゼクスさんに報告しておくからな」
「なんでよ!シュウさんは関係ないでしょ?」
「あぁ、今後、リアスとは関係は無いよ。それで良いな?でも、朱乃、木場、白音、イッセー君は、大事な仲間だ。口は出す。救援信号にも応える」
シュウさんは転移された。
「お姉様、謝るなら早いほうが良いですよ。あなたは、たぶん一番怒らせてはいけない人物を怒らせてしまったんですからね」
クリス先輩が、俺に笑顔で手を振りながら転移された。
「リアス、クリスの言う通りよ。謝って来なさい」
朱乃先輩がリアス部長に命令口調だ。大丈夫なのか?このチームは…