---クリス---
家に戻ると、お兄様とお父様に呼ばれた。今後の身の振り方を訊きたいとおっしゃっている。
「今後、クリスがどうしたいか、訊きたいのだ。悪魔にとってのイレギュラーになってしまったクリスには責任は無い。なので、クリスの好きな道を選んで良い。このまま、グレモリー家で次期魔王候補になるか、天界に養子に行くか、シュウくん達が帰る時に一緒について行くかなど、色々な道があると思うが、クリスはどうしたいのか?」
お兄様は僕の今後を考えてくださっているようだ。銀髪のグレモリーはイレギュラーな存在であるのは、自分でも分かって来ている。その上での選択であるけれども…
「まだ、将来のことを考えていません。このまま、グレモリー家に、いられないのであれば、シュウさんについて行くことも考えてはいます。でも、僕はお父様やお兄様の傍で暮らしたいです」
お父様は、何やら考え込んでいらっしゃる。そして、
「この家に残りたいのであれば、フェニックス家のレイヴェルとの婚約を決めても良いかな?」
「それで良いです」
僕の心はレイナーレに向いているのだが、堕天使との婚約は認められないと思うし。家のメンツも大事だと思うし。
「では、その方向で話を進めるぞ」
ドアがノックされて、執事が入ってきた。お父様に何かを言伝して去って行った。
「クリス、フェニックス卿がいらした。お前も一緒に来なさい」
僕はお父様と一緒に応接間に向かった。そこにはお母様とリアスお姉様もいらした。
「グレモリー卿、うちの愚息のライザーが大変失礼なことを、クリス君に言ってしまったようで、その謝罪に来ました。申し訳無かったです」
フェニックス卿とルヴァルさんは頭を下げていらしたけど、ライザーは頭を下げない。そのことに気づいたフェニックス卿は
「おい、ライザー。頭を下げて謝罪をしなさい」
「はぁ?俺は悪い事なんか言っていないです。この場ではっきりさせましょうよ。なんで銀髪がグレモリー家に生まれたんですか?」
ライザーの言い分もわかる。僕だって知りたい。なんで僕は、銀髪なんだ?お母様が俯いて、部屋を後にしていった。
「グレモリー夫人が原因なんですね?」
こいつ、人に家の事に土足で…お兄様とお父様の視線は殺意を纏ってライザーに向いていた。
「フェニックス卿、クリスをレイヴェル君にと思ったが、取りやめにします。もちろん、リアスの件も無しにして頂きますが、よろしいですね?」
口調は穏やかであるけど、お父様のオーラは…
「グレモリー卿、ちょっと待ってください。ライザーには言って聞かせますから。純血同志の結婚は大事なことです」
「ライザー君は、クリスの出生に疑問を持たれている。まるで、クリスが我が家の子供では無いような言い方をしている。そんなことを言うような家には、私の子供を出す訳にいかない。どうぞ、お帰りください」
「オヤジ、いいじゃないか。どこの馬の骨かわからないクリスなんか、レイヴェルの相手になんか相応しく無いからさぁ」
ライザーを睨む、フェニックス卿。頷いているルヴァルさん。
「ルヴァル君も、ライザー君と同じ考えなんだね」
お兄様がフェニックス兄弟を睨んでいる。
「魔王輩出家がすることでは無いですよ」
ルヴァルさんの一言に、お兄様が一歩出ようとしたのを僕が止める。
「お兄様、やめてください。僕はここにいちゃダメなんですね?僕がいるとグレモリー家は、バカにされ続けるのですよね」
僕は、お父様に礼をして、家を出た。
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人間界に戻って来た。僕は教会の前にいた。レイナーレに会いたかったから。とっても逢いたい気分だ。僕は教会に入っていこうとしたら、肩を掴まれた。振り向くとシュウさんがいた。
「クリス、次期魔王候補が教会に、何の用だ?」
僕はシュウさんの胸に飛び込んで泣いた。
「サーゼクスさんから連絡を貰った。クリスが家を飛び出したってね。だから、助言したのに、何をやっているんだ?お前の兄貴は」
シュウさんが助言してくれた?お兄様がおっしゃっていた、僕のこの先の選択肢のことですね。あれはシュウさんが…いつも僕を見てくれている、シュウさん。ありがとうございます。
「たぶん、この先も焼き鳥兄弟は言ってくると思う。普通は死んだら改心をするんだけど、ライザーはダメだなぁ」
「僕はどうしたらいいですか?」
「天界に養子も有りだと思う。ガイアを預かってくれている、ガブリエルっていう大天使のところとか…レイナーレには逢えなくなるけどな」
え?レイナーレのこともバレているの…シュウさん、恐るべし。
「僕が僕の世界に戻るときに一緒に行くか?それまではレイナーレと暮らして、想い出を作れよ」
「レイナーレは、一緒には行けないんですか?」
「僕の世界のレイナーレは、もういないから、可能かもしれない」
僕に希望の道が開いた気がした。
「お願いします。レイナーレと一緒に、シュウさんの世界に連れて行ってください。天使の翼を持つ悪魔が暮らせる世界へ、連れて行ってください」
僕はシュウさんにお願いをした。
「レイナーレ、お前もそれでいいか?」
え?レイナーレ?
「私も、クリスと一緒に生きたいです。私も連れて行ってください」
顔を上げると、レイナーレが僕の目の前にいた。
「じゃぁ、そういうこととで。お前ら二人は、アウロスの家に住め。ヤマト達は、アジュカさんの城に移って貰う事にしてあるから。並行世界へ帰る手立てを考えるには、術式プログラムが組める環境が必要だからね」
先のことまで考えて動いてくれていたシュウさん。感謝です。レイナーレの方を見ると、固まっているけど。それに気づいたシュウさん。
「あぁ、レイナーレはアウロスの家は苦手だよな。メイド修行中に逃げ出した家だものなぁ。今度はメイドでなくて、クリスの嫁さんとしてだ。もっと、厳しいかもよ」
レイナーレの顔は青い。グレイフィアさんに鍛えられて逃げたんだね。僕はレイナーレを抱きしめた。
「この先、一緒に生きてください」
僕はレイナーレの耳元に囁いた。彼女は頷いてくれた。
「さて、クリスを追い詰めてくれた焼き鳥兄弟をどうしてやろうかな」
シュウさんが考えを巡らしていた。
---ライザー---
クリスは、次期魔王候補の座を放棄して、グレモリー家を出て行ったそうだ。これでフェニックス家にも次期魔王のチャンスが出て来た。俄然、やる気がみなぎってくる。俺と兄貴で魔王になれなかった方が次期当主になると約束はしていた。
クリスの家出後、グレモリー家の動きがやけに静かであった。まるで、何事もなかったような振る舞いをしているようにも見える。まぁ、厄介者がいなくなって、せいせいしているのかもしれないな。
そんな俺達兄弟の思惑に反した出来事が起きた。レイヴェルが家出をしてしまった。クリスを家出するまでに追い込んだ俺達を許せないと。これには兄貴も親父もまいってしまったようだった。俺だってそうだけど。
グレモリー家で匿っているのではと、俺と兄貴で探りに行くが、門前払いを食らってしまった。そのことから、レイヴェルはグレモリー家にいると思われた。兄貴と俺の眷属を使って、グレモリー邸を監視をすることにした。
---クリス---
レイヴェルが家出をして彷徨っているところをシュウさんが見つけて、アジュカ様のお城で匿ってもらっている。僕は、レイナーレと暮らしているので、会いには行っていない。アジュカ様のお城から戻っていらしたシュウさんから
「レイヴェルと会って貰えないか」
と、打診された。僕はレイナーレに会いにいって良いかを相談した。
「あなたのことを心配して、家出されたのですから、お会いになって来て下さい」
と、背中を押された。僕は、シュウさんとアジュカ様のお城に転移した。
お城に着くと、シュウさんはヤマトさん達と、帰還するための研究をしに、部屋を出て行ってしまった。しばらく待つと、レイヴェルが部屋に入ってきた。
「クリス、元気だった?」
涙目のレイヴェルが僕に抱きついてきた。
「うん、僕は元気だよ。将来の不安も払拭できたし」
「将来どうするの?グレモリー家を追い出されたって聞いたけど」
心配そうな顔をしてくれているレイヴェル。
「僕は、天使の翼を持つ悪魔が、普通に暮らせる世界に行くことにしたんだ」
「それって…」
レイヴェルが寂しそうな顔をした。
「シュウさんのいた世界だ。何年先になるかわからないけど、シュウさん達が帰還される時に一緒に行こうと思っている。この世界では僕のせいで、お父様もお母様もお兄様もリアスもバカにされてしまうから」
「私も連れて行ってくれる?」
シュウさんから、レイヴェルは連れて行けないと聞かされていた。シュウさんの世界のレイヴェルは邪龍にされ、シュウさんの手で魂以外を浄化されてしまった。だから、帰還後、蘇生するから、この世界のレイヴェルは連れて行けないと言われたのだ。
「ごめん、レイヴェルは連れて行けない。シュウさんの世界にレイヴェルがいるから、ダメなんだ。ごめんね」
ショックを受けたのか、大泣きしてしまった。僕はレイヴェルを抱きしめて、髪を愛おしく撫でる。こんなことしか、出来ないや。
「こっちにいる間、結婚したら、どうだ?」
突然、後ろに現れたシュウさんから声が掛かった。
「すぐには帰れないから。悪魔の寿命から考えると、短い結婚生活かもしれないけどね」
シュウさん、レイナーレはどうするの?って、その場で訊きたかったけど、レイヴェルの手前、彼女の名前は出せない。
「婚約すれば、グレモリー邸でレイヴェルを保護できると思うし」
そうか、レイヴェルの身の安全を考えてか。僕は2重生活をするのかな。って考えていると、シュウさんからテレパシーで、
『レイナーレとは人間界で暮らせばいい。レイヴェルは冥界で会えばいい。お前を心配して、家出をしたガールフレンドを、お前は路頭に迷わすのか?』
確かに、僕の為に彼女は家出をしたようなものだ。レイヴェルのプライドを考えたら、すんなりフェニックス家に帰ることは出来ないだろう。
「レイヴェル、婚約をしよう」
泣き止んでいたレイヴェルが僕の唇にキスをしてきた。
「今のは、OKの印ですわ」
その後、シュウさんがお父様、お兄様に話を着けて来てくれた。レイヴェルの事と、レイナーレの事の両方をね。二人とも、とても驚いたらしいけど、シュウさんがしっかりと説明をしてくれた上、グレイフィアさんがレイナーレのことをフォローしてくれたようだ。お母様は娘が二人増えたと喜んでくださった。
めでたいことなので、婚約パーティーを開くことになった。
---ライザー---
グレモリー家からクリスとレイヴェルの婚約パーティーの案内が届いた。俺と兄貴ははらわたが煮えたぎる思いだ。
「なんで、クリスと婚約なんだ?」
親父に詰め寄ると、
「レイヴェルの意思を尊重した」
と、レイヴェルの意思?本当か?妖しげな術に陥ったのではないか?あのイカサマ師によって。俺と兄貴は、当日パーティーをぶち壊して、レイヴェルを奪い返すことにした。
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パーティー当日、俺と兄貴は眷属を連れて、パーティーに参加した。魔王輩出家の次男坊で、純血同士の婚約とあって、上層部や魔王が招待されていた。俺と兄貴は機会を窺う。クリスが壇上に上がった。音楽が流れて、会場の扉が開き、アジュカ様にエスコートされてレイヴェルが入場してきた。
「ちょっと、待った。この婚約は認めない」
俺と兄貴がアジュカ様の前に立ちふさがり、俺の眷属がレイヴェルと共に強制転移していった。
「どういうことかな?フェニックス家の方々よ」
アジュカ様が親父を睨む。たじろいで青白い顔になった親父。お袋は固まっている。
「イカサマ師の妖しげな術で、我らの妹を蹂躙するとは不届き者めが!」
兄貴が、シュウとかいうヤツに言い放った。
「ふん。パーティーを壊したのを、僕のせいにしたいのかな?焼き鳥兄弟よ」
「レイヴェルに何をしたのだ。フェニックス邸からレイヴェルを誘拐したのはお前だろ?」
「おいおい、えん罪もいいところだ。まぁ、焼き鳥兄弟のおつむは、そんなところかな」
「なんだとぉ!イカサマ師。今日ここで、化けの皮を剥いでやる」
兄貴とイカサマ師の言い合いを制した声がした。
「いい加減にしろ!フェニックス家はどこまで腐ったのだ」
腐った魔王のサーゼクスだった。
「腐っているのはグレモリー家だろ?ここで、クリスの出生の秘密を言ってしまえば良いと思いますよ。この腐れ魔王が!」
サーゼクスは言葉に詰まった。
「おい、魔王に対して、その口の利き方はおかしいのでは」
イカサマ師に肩入れをしているアジェカ様か。
「イカサマ師に騙されているアジェカ様もどうかしていますよね。上層部の皆様、そうでしょう?並行世界から来た化け物に騙されている、現魔王はどうかしていると思いませんか?」
上層部の方々から「そうだ。そうだ」という声が聞こえてきた。
「クーデターか、焼き鳥兄弟よ。お前らみたいな弱い者が吠えても、成功しないぞ」
兄貴が合図をすると、イカサマ師にむけて、兄貴の眷属が攻撃をしていった。それに対して、不敵な笑みを浮かべるイカサマ師。
兄貴の眷属が粉砕されて灰となっていく。肉や骨が粉砕された時のカスや血しぶきが会場中に舞い上がっている。一瞬で会場は地獄絵図のようになった。
「おい、焼き鳥兄弟よ。お前らに勝ち目はない。お前らが乱入するのは予測済みで、並行世界の戦力を集結してある。お前らのようなクズ悪魔に負けないよ」
俺達の行動が読まれていた?兄貴と顔を合わせる。
「赤龍帝、白龍皇、グレートレッド、オーフィスが味方だからな。これ以上の戦力を持っているなら見せてみろよ」
おい、なんだって…そんな味方がいるのか?俺の頭上から、俺の眷属達の首が降ってきた。
「なんだ!首だけって…」
「胴体は喰わせたよ。トライヘキサにねぇ」
「トライヘキサだと…」
上層部から悲鳴が上がっている。
「なんだ、それは?」
「焼き鳥程度の悪魔は知らなくて良いことだ」
イカサマ師が剣を掲げて、呪文を唱えると、俺の眷属の首は灰となって、散らばっていく。
「お前!何をした?」
「焼き鳥弟の眷属全員を、祝福の聖剣で浄化した。もう蘇ることは無い」
聖剣だと…それも悪魔にとって最悪の祝福の聖剣とは…アイツが上層部の方を見上げると腰を抜かして震え始めていた。コイツはイカサマ師でなくて、正真正銘の悪魔キラーなんだ。
「そうだよ。僕はエクソシストで聖者だからね。魔王ですら浄化できる能力を持っている」
アイツは、天使の翼を展開してきた。それを見て、クリス、アイツのガキも同じように展開していた。更に、アイツの頭上には二つの門が出現していく。それに伴い、会場には恐怖心が充満していく。
「僕達を怒らせた、この冥界は詰んでいるんだよ。お前達焼き鳥野郎の為にね」
魔王達も顔が青白い。コイツの言っていることは真実なんだろう。兄貴は…その場にへたりこんでいた。戦意は砕けて、もう戦えないだろう。
「サーゼクスさん、どうします?落とし前は、どう付けてくれますか?」
「シュウ君、息苦しい…何をしたんだ?」
「トライヘキサの獣門と、サマエルの龍門を出現させました」
「伝説の最終兵器か…」
「この世界ではそう言われているのですか?でも、2匹とも、僕の下僕ですよ♪」
「頼む、心を静めてくれないか」
「僕は至って冷静ですよ。冷静で無いと祝福の聖剣は、使えませんからね」
俺は、いや俺達兄弟は、敵にしてはいけない連中を敵にしたようだ。俺も恐怖で腰が抜けて、身体中が震えている。ノドが絞められているようで、声が出なかった。アイツと会話出来るのは魔王クラスじゃないと無理な状況だった。
「どうすれば良いのだ?」
「クリスとレイヴェルの婚約パーティーは無期限延期、焼き鳥兄弟の能力を剥奪、焼き鳥に同調した上層部は粛正って感じかな」
「わかった。その条件を飲む。だから…あっ、セラフォルー」
ついに魔王の一人、セラフォルー様が倒れた。立っている分、門からのプレッシャーも大きかったのだろう。アイツの仲間の一人が兄貴と俺の肩に触れた。アイツがそれを見届けると、門は消失し会場の空気は一変した。
「はぁぁぁぁ、やっと息が普通にできるな」
と、ファルビウム様。アイツらの方に視線を戻すと、全員会場から転移をして誰もいなかった。
---クリス---
シュウさん達とアジュカ様のお城に転移した。そこでレイヴェルと再会した。
「これで良かったんですか?」
僕はシュウさんに尋ねた。
「これくらい、脅しをかけておかないと、またクリスとグレモリー家が馬鹿にされるからな。レイヴェルには悪いが、お前の兄貴二人の能力は奪ったからな」
「しょうがないです。あんなバカなマネをしたんですから」
シュウさんはレイヴェルの頭を撫でている。レイヴェルの不安なオーラが消えていく。すごい、触れただけでマイナスのオーラを消してしまうなんて。
「クリスも聖の力を鍛えれば、出来るようになるよ」
シュウさんが笑顔で答えてくれた。
「奪った能力はどうしますか?」
ヤマトさんが『強奪』でフェニックスの能力を奪っていた。
「しばらく、預かっていてくれ。使い道なかったら、ヴァリとリアに渡すのも手だし」
「了解!」
「今日は疲れたから、休もう。明日からまた頑張ろうぜ」
「「了解!!」」