---アイズ---
買い物には、私とシュウさんと二人の予定だったのに、他の3名も付いてきた。
「へぇ、色々なファミリアがお店を出しているんだね。僕達のファミリアでも商売しようかな…今は無理だけど」
「無理なんですか?」
あの飲み物を売って欲しい私が訊いた。
「あぁ、まだ依頼をこなすメンバーと、調査しながら稼ぐメンバーが、決まっていないから。お店を運営するメンバーが決まらないんだ」
「あの飲み物は売って欲しいですわ」
ティオネが希望を出した。
「あれは、無理だな。この世界では手に入らない食材だから。まぁ、向こうの世界から持ち込めば可能だけど…まぁ、それも含めて、すぐには無理だ」
残念そうな三人…え?ガレスも?
「たまに遊びに来てくれたら、また飲ませてあげるよ。大人数だときついけどね」
「「是非!」」
「食材関係だけでいいんですか?冒険に必要なお店を案内していませんが」
私は、彼に訊いた。
「装備とか薬とかは自前で、どうにか出来るから」
自前で?装備も薬も作れるってこと?
「そう、作れるよ」
心が読まれている…
「えっ?心が読めるんですか?」
「読めるよ。心も、その人の持つ腹黒さとかもね。腹黒い神は、即送還するつもりだよ」
「隠し立ては出来ないんですね」
「うちのメンバーはみんな、心が読めるから、注意してね。腹黒さを出すと痛い目に遭うからね」
「怖っ!」
って、ティオネ。腹黒い考えを持っていたの?
「あと、未来予知できる者もいるから、大体の罠とかも事前にわかる」
「神以上の能力持ち集団ってことか?」
と、リヴェリア。
「ある意味そうかもしれないなぁ。うちの子供なんか生後半年くらいで、神を屠ったし」
生後半年で…『神殺し』親子か。
「そうだよ。『神殺し』親子だ。アイズさん」
あっ、読まれるんだった。読まれた恥ずかしさで、顔が紅潮してきたのがわかる。
「ねぇ、どこに一服できるお店はないのかな?」
「あっ、ご案内します」
私は、女主人のミアさんが切り盛りしている酒場、豊饒の女主人へお連れした。
「へぇ、色々なメニューがあるんだ。ここは奢るから好きな物を頼んで」
しかし、彼の頼むモノはすべて、この世界に無い物ばかりで、ミアさんも困っていた。
「ウチで出来るモノを、頼んでくれないか?異国の人よ」
「お酒の入っていない飲み物をお願いします。はぁ…当分、自分のホームでしか飲み食いできないかな」
凹んでいるシュウさん。私はジャガ丸くんを頼み、シュウさんに少し分けた。
「あぁ、これおいしいなぁ」
シュウさんの口に合ったようだ。
「そうだ、この町には要らない腹黒い神がいたら、教えてくれないかな?」
え~、そんなことをいわれても…いたとしても言えないよ。
「居ても言えないかぁ。一柱ずつ会うしかないか。さて、この後、どうする?アイズさん」
「シュウさんは?」
彼の予定に合わせようと思っていた私は尋ねた。
「すでに仲間が潜っているので、合流する為に迷宮へ行こうと思う。アイズさんも来ます?」
「ちょっと、待ってくれ。アイズだけでなくて、我々も連れて行ってくれないかな」
と、リヴェリア。
「いいですよ」
シュウさんが支払いを終えて、お店の外に出て、近くに寄るように指示した。私達は光に包まれて、一瞬で迷宮の中にいた。
「これって魔法?」
リヴェリアが驚いている。いや私達みんな驚いている。こんな魔法は見たことない。
「そう転移魔法だ。一度行ったことがある場所か、仲間のいる場所なら転移できる。で、ここは150階だ。ヤマト、どんな感じ?」
え?150階…見たことがない大きなドラゴンやら魔獣がいる。それを一瞬で灰にしていった。迷宮のモンスターは、胸部辺りに魔石があって、倒してそれを取り出し、ギルドで換金するのだ。
「クリスとガイアだけで、まだ行けます」
「ヤマトの能力で一撃でいけそうだぞ。モンスターから魔石を『強奪』してみて」
「了解!」
前方からデカイモンスターの群れが襲いかかってきた。ヤマトと言われた少年が短い詠唱をすると、一瞬でモンスターの群れが灰になって消えた。
「シュウさん、これチートでしょ。迷宮で無敵かもしれないですよ」
「大群の時は、ヤマトもソレで屠って行ってな」
「とりあえず999階あたりまで、一気に行けないかな?」
空中に紋様のある円が2つ浮かび上がった。そこから2匹の巨大すぎるドラゴンが出現した。100m以上ありそうだ。
「あと、ムゲン頼む」
ムゲンと呼ばれた少年がドラゴンになっていった。私達は恐怖から地面にへたり込んでしまった。恐怖から声も悲鳴も出ない。
「ムゲン、オーフィス、アポ、一点集中で地面に、出来るだけ深い穴を開けるぞ」
「「了解!!」」
ど、ドラゴンがしゃべった…彼の声にドラゴンが返事している…彼の背中に翼が展開して、空に浮かぶと、彼の身体を光が包み込んだ。そして、一点に向けて一人と3匹から様々な色の光の束が撃ち込まれた。光の束が当たった箇所は爆ぜて、穴が開いている。
「アポ、オーフィス、ムゲン、サンキュー!」
シュウさんが私達の前に降り立った。
「シュウさんって、ヒューマンでは無いの?」
「僕は鬼と天使のハーフだよ」
鬼?天使?なんだろう
「あぁ、この世界には鬼も天使もいないのか…ギガンデスとエンジェルのハーフと言えばいいのかな?」
え?魔物とエンジェルのハーフ?何?その組み合わせは…
「よく言われるよ。その組み合わせは、チートだろうってね」
苦笑いしている彼。
「一番チートな組み合わせは、ヤマトなんだけどね。なんたって、最高神とヒューマンのハーフだし」
え?最高神様の子供?それって、私達の主神より上の位じゃない…
「シュウさん、僕をチートと言わないでください。シュウさんのチームは全員チートなんですからね」
笑って答えているヤマトさん。
「どこまで抜けたかな?」
「ねぇ、シュウさん。シュウさんの能力の、重力系ので抜いた方が、速いと思いますよ」
「ヤマト、それ名案だよ」
地面に落ちている小石を拾って、穴の上に放るシュウさん。穴の上に到達した小石が、勢い良く落下していった。
「取り合えず、10万倍で落としたけど。よし、下へ行くぞ。アイズさん達は飛べるのかな?」
飛ぶ?
「あぁ、飛べないのか。リア、ヴァリ、ガイア手伝って上げて。さぁ、アイズさん行くよ」
え?私を抱えて、穴にダイブしている彼。翼を使って緩やかに降りて行ってくれた。翼いいなぁ。
「アイズさん、翼が欲しいのかぁ?ヤマト、アイズさんにあの翼をコピーしてあげて」
「了解!」
ヤマトさんから赤い玉が飛んできて、私の身体に吸い込まれた。
「アイズさん、翼をイメージしてみて」
イメージして、背中に力をいれると…私の背中に炎の翼が展開した。
「それはフェニックスの翼だ。使いこなせれば、炎系のダメージを防げる。ゴメン…髪の毛が赤くなってしまった…」
あぁ、翼と同じ色かぁ…
「翼とセットですね…気にしませんから。寧ろ嬉しいです♪」
「アイズ、翼をもらったのか?」
と、リヴェリア。頷く私。
「さて、ここは何階だ。リア」
「900階です」
「キリがいいから、今日はここまでにするか。この階を探索して、帰ろう」
「了解!」
初日に900階を制覇って…「重傑」といつ二つ名を持つガレスでさえ、その場の雰囲気から来る恐怖により、その場を動けないでいた。その後5分くらいで地上、ギルドのあの奥の部屋に転移した。
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「また、豪快に稼いできましたね。ギルドには、こんなに沢山支払う能力は無いです」
ギルド員のミカエルさんが嘆いていた。
「じゃ、ギルドに貸しねぇ」
「億越えして兆になりそうだわ。はぁ…で、何階層まで到達しました?」
「初日だし900階で止めたよ」
「初日で900階層ですかぁ?はぁ…そんだけ深く潜れば、あれだけ稼げるのは納得です」
「参加メンバーのレベルは測るの?」
「そんな無駄なことしません。どうせ計測不能でしょ?はぁ…」
「じゃ、また明日ねぇ。ミカエルさん。ヤマト達は先に帰って。僕はアイズさんのホームに行くから」
「了解!」
「私達のホームに、何か用か?」
リヴェリアが尋ねた。
「今後、アイズさんに会いに行くのに、転移を出来るようにしたいからだよ♪」
私に逢いに?顔が紅潮していく。嬉しい…
「翼の使い方をレクチャーしないと、宝の持ち腐れになるからね」
手とり足とり…あぁ、想像しただけで、とても嬉しい気分だ。
---フィン---
アイズ達が噂の人物を連れて来てくれた。色々訊くことがあったので、好都合だ。アイズ以外は相当疲れているみたいだ。あのガレスでさえ顔が蒼白である。アイズの顔は紅潮しているし。なんでだ?
「リヴェリア、迷宮に行ったのか?」
「あぁ、900階層まで」
「おい、900階層って、ありえないだろう」
60階層に到達したファミリアは未だに無い。それが事実だとしたら、コイツは何者なんだ?
「ガレスの表情が物語っているだろ?恐怖で顔が蒼白なんだぞ♪」
リヴェリアがガレスを指差した。そういえば、ガレスの身体が小刻みに震えていた。力強いドワーフ族の彼が、こんなになるなんて、見たことがない。
「あのぅ、主神のロキさんは、どちらですか?」
「ロキ様は不在だ。なに用だ」
「地上に置いて良いかの判断をしようかと」
「どう意味だ?」
「そういう意味です。僕に敵意を向けて来ていますが、やりますか?そこのウェアウルフさん」
彼が言い終わる前に、ベートが動いた…が、反撃に合いベートの首は、綺麗に落とされた。彼の手には一振りの刀が握られていた。
「いつの間に斬ったのだ?見えなかった」
「見えたのでは遅いですよ」
「おい、なんの騒ぎだ」
あぁ、このタイミングで主神のロキが帰ってきた。
「なるほど、腹黒くは無いが怠惰みたいだな。今日のところは、保留にしておこう、ロキよ」
「はぁ、貴様、何様や?神に向かって…って…おいおい…その紋章は…」
酔って赤ら顔だったロキの顔が蒼白に染まっていく。
「天界からの刺客。『神殺し』シュウだ。ロキよ、もう少し精進しろ。でないと送還するからな。アイズさんには世話になったので、今日は保留にしておく。じゃ、アイズさん、また明日ね♪」
そういうと、彼は目の前から消えた。
---アイズ---
ガレスだけでなくて、主神のロキも顔面蒼白で身体が小刻みに震えている。
「ベートをどうするか?アイズ、彼に頼んで、生き返らせてくれないか?」
リヴェリアに頼まれた。ベートが先に襲ったのに、頼みづらいよ。
「リヴェリア、彼は蘇生能力を持っているのか?」
フィンの問いに、リヴェリアが頷いた。
「彼は神以上の能力を持っている。実際、ガレスの蘇生する場面を見ている」
リヴェリアが証言をした。私は主神を睨んで、
「これから、お詫びに行きましょう。そしてベートのことを頼んでください」
フィンが主神を支えて、私の後に続いた。
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シヴァファミリアのホームに着くと、私達の主神は縮こまった。彼の主神ってロキよりもエライ神様だったのだ。
「で、一般の神風情が、私に何の用だ?」
放たれるオーラで私達3名(正確には2名と1柱だけど)は縮こまった。神々しい上に恐怖心を煽るオーラだ。
「あっ、私の子供が無礼な振る舞いをして、首を跳ねられたそうです。すみませんでした」
いつもの怪しい方言を使わず、謝罪の言葉を述べているロキ。
「謝って済むなら、戦争は起きないと思わないか?こんな都市、一撃で塵に出来るのだぞ。シュウ様が、それじゃまずいっていうから、我慢しているのになぁ」
え?エライ神様がシュウさんに『様』付?エライ神様より偉いのね。宇宙神様の秘蔵っ子は。
「アイズさん、僕は偉くないよ」
あっ、また読まれちゃった。
「ロキ、今回の件は許してやる。その代わり、シュウ様のお気に入りのアイズって子は、私達のファミリアにもらう。あと、ロキファミリアは、私のファミリアの傘下に入ってもらうぞ。いいな?異論、反論は認めないから。こんな裁定で良いかな?シュウ様♪」
「ありがとう、シヴァさん。アイズさん、おいで。君の住む部屋に案内するから」
「ちょい、待ち~や!アイズたんは渡さへんでぇ~!」
「私の裁定に異論、反論が有るのか?それが何を意味するか、わかっているな」
「新参者の神に言わと~ないわ!」
その瞬間、この空間の空気が一変した。息苦しい。押しつぶされそうな威圧感…何が起こったの…
「「おい、シヴァさんに謝れ!」」
ヤマトさんと彼が、声を上げた。
「天界に送還されて、良いってことだな?」
彼の目つきが鋭くなった。身体から放たれているオーラは死を感じる物になっていた。
「天界にまでアイズさんは連れていけないぞ。どうするんだ?酔いどれ神よ!」
主神のロキの目は泳いでいるようだ。パニッくっているのか?
「あぅあぅ…」
あまりの恐怖に、泡を吹いて失神してしまった主神…ロキ…
「しょうがねぇなぁ。こんなの天界に送還しても、役立たたないだろうな」
シヴァ様に視線を向ける彼。
「決めるのはシュウ様です。私はあなたのアシストをするだけですよ」
「う~ん、どうしよう。そこのパルゥム(小人族)は、団長さんかな?」
「そうだ。団長のフィンだ」
フィンも顔色が悪い。私は…私の頭に、彼の手が置かれた瞬間から、暖かいオーラに包まれ、普通に息が出来ている。
「先ほどの条件を飲んで欲しい。あなた方の主神ではお話にならない。断れば、主神は送還する。どうする?」
シヴァ様がフィンに迫る。
「わかった。団長として主神の代わりに、その条件を飲む」
「見返りになるかわからないけど、首をはねた者を蘇生して、ロキは保留のままにしておく。それで良いかな」
「それでお願いします」
「では、送ろう。ガブ、アイズさんを部屋に案内しておいてくれ」
「了解♪」
彼は、フィンとロキと一緒に転移して、少しして戻られたようだ。ガブさんに部屋に案内してもらった。3階部分に私の部屋があり、ドアには私の名前が書かれていた。
ガブさんから、この家のルールを習った。お風呂が男女別にあることが嬉しかった。そして、お風呂が広くて数人一緒に入れるのも嬉しい。ロキファミリアでは1つしかなくて、ゆっくりと身体を洗うことはできなかったから。あと、身体を洗う液状石鹸と髪の毛を洗う液状石鹸もあるのが嬉しい。私は思う存分、洗い場で全身を洗い、湯船という物に浸かった。