---リュー---
「リュー、シュウ達をギルドに案内しておやり」
ミア母さんに用を言いつけられた。店主のミアさんの事を、私達店員は「母さん」と呼んでいる。みんな、それなりに訳ありな部分もあるしので。
「わかりました」
私は、新しい同居人のシュウと、シュウに肩車されている、黒髪で黒のゴシックロリータ調のドレスの少女の三人でギルドを目指した。
この街は中央に、摩天楼バビルがそびえ立ち、そこを中心に円形状に発展している。ギルドは、通称『冒険者通り』と呼ばれている北西のメインストリート沿いあり、形状は、白い柱で作られたパンテオン(万神殿)である。ギルドでは、ダンジョン(迷宮)の管理、この街の運営、そして、この街の住民としての地位と権利を約束する冒険者登録を行っていて、冒険者達へのアドバイザー業務も行っている、この迷宮都市の心臓部のような場所だ。
受付の窓口に着いた私達。
「すみません。新しいファミリアを作りたいんですが…」
シュウが申し訳なさそうに声を掛けた。奥から受付嬢らしいハーフエルフの女性が現れた。
「はい?新しいファミリアですか?」
「そうです」
「では、この申請書に記入してください」
受付嬢から1枚の羊皮紙を受け取ったシュウ。申請書を書き始めた。それを私は覗き見た。
『主神:『無限の龍神』オーフィス ファミリア名:オーフィス・ファミリア
ホームの場所:豊饒の女主人2階
団長:『神殺し』シュウ・ヨハネ 種族:鬼と天使のハーフ
団員:リア 種族:アンドロイド
団員:白音 種族:猫しょう』
え?何?この種族は…この世界の人ではないみたいだ。
「書き終わりました。団員は今後増えると思います」
「シュウ・ヨハネさんですね。私は担当アドバイザーのエイナ・チュールです。今後もよろしくお願いします……えっ!なんですか?この二つ名は…」
驚くよね。あれは…私も初めてだ。神を殺すなんて、重罪人しかいないと思うし。
「うん?神様が付けた物です」
「あ…ヨハネって、あの神の遣いの?」
「そう、その一族の者です」
「あのぅ…ちょっとお待ちください」
エイナさんは、奥に行ってしまった。しばらく待つと、エイナさんは太めのエルフと戻って来た。
「このギルドの責任者のロイマン・マルディールです。天界から知らせは届いています。解らないこと、困ったことがありましたら、このエイナに申しつけてください」
シュウはロイマンの近くに行き、手をかざした。
「内臓疾患があるようでしたので、治しておきました。養生してくださいね」
そういえば、ロイマンの顔色が良くなった気がする。
「あれ?身体が軽い。ありがとうございます。私のような末端の種族に、施しをしていただいて。私に出来る事があれば、エイナを通じて申しつけてください」
ロイマンはシュウに深々と礼をして奥へ引き下がった。
「何をしたの?」
シュウに尋ねた。
「うん?腹黒いオーラが渦巻いていたから、浄化をしてあげただけだよ」
笑顔で答えてくれたシュウ。うそっ!浄化能力があるんだぁ。浄化能力は一般ジョブでは得られない。高位の僧侶クラスか、高位の聖騎士でないと、身に付かないと言われている。
「そうそう、これを渡さないと」
シュウは懐から1枚の羊皮紙を出し、エイナに渡した。これはシュウの能力表…何コレ?
「え…これって…レベル測定不能、ステータス測定不能、能力、スキルは書き切れない…って…あなたは何者ですか?」
「僕は聖者だよ」
「聖者って、神様の…」
エイナはシュウに向かって祈りを捧げた。シュウは一本の細身の剣を両手で掲げ上げ、黙祷を捧げた。その瞬間、暖かいオーラに包まれていく。嫌な記憶、嫌な想い出、怒りや哀しみが浄化されていく。心はより穏やかになっていった。
暖かいオーラが徐々に消えてくると、私は涙していた。私だけでなく、ここにいた者総てが…すごい浄化能力だ。剣を使うってことは、高位の聖騎士なのか?
「そういうことだから、よろしくエイナさん。明日から潜る予定だから、潜る前に寄るようにするよ」
「わかりました。お待ちしています」
ギルドを後にした私達。
「ねぇ、私もあなた達のファミリアに入っていいかな?」
この人なら、きっと…
「勿論、良いよ」
もう一度、ギルドに戻り、団員名を書き残してきた。
団員:『疾風』リュー・リオン
と…
◇
「さて、一気に帰るとするか」
私達はいきなり光に包まれ、光が霧散していくと「豊饒の女主人」の前にいた。
「転移魔法陣という、移動用の魔法だよ。行ったことがある場所、仲間がいる場所に飛べる便利な魔法だよ」
と、シュウが説明してくれた。凄い、魔法使いでもあるのか…私は彼に心を奪われたかもしれない。シルとミア母さん以外の誰にも懐かない私が…
お店に戻るとミア母さんに、シュウのファミリアに入ったことを告げた。
「そうかい。踏ん切りがついたんだね。彼の事を頼むよ」
私は力強く頷いた。
◇
その日の夜から、白音さんとリアさんはお店に出た。昼間は私とシュウで潜るので、昼間もお店に出てもらうことになった。リアさんはメイドとしての教育を受けてきたそうで、そつなくなんでもこなせるようだ。白音さんは、お店のマスコットかな。
夜になると、最大派閥のロキ・ファミリアの一団がお店に来て、忙しくなった。事件はそんな時に起きた。
「やめてください!」
ボカァ!
ド~ン!
白音さんがミア母さんの元に走り寄った。
「いきなり、お尻を撫でられた。お兄様以外の男に触られちゃったよ~」
ミア母さんに抱きついて泣いてしまった白音さん。
「おい、うちの店はお触り禁止だよ。触りたかったら、そういうお店に行ってくれないか?なぁ、ロキよ!」
「ベート、起きなさい。ねぇ…え?死んでいるよ…」
「何?」
死んだといわれたベートの周りに集まるロキ・ファミリアの一団。
「マジか?パンチ一撃でか?おい、そこの女!貴様、何者だ!」
白音さんに詰め寄り始めたのは、ドワーフの「重傑」ガレス。アックスを握って近づいてきた。
シャー
カチャッ
ボトン
ドサッ
一瞬の出来事であった。ガレスと白音さんの間に、刀を腰に携えたシュウがいた。目の前にいたはずのガレスの首は斬り落とされ、首無しのガレスの死体が出来上がっていた。。
「例え、神が相手であろうと、白音を苛める奴は許さない」
最初に会った時とは比べものにならない、ただならぬオーラを纏っている。
「白音を苛めた奴らの主神はお前か?」
ロキに、刃先を向ける。ロキは蛇に睨まれたカエルのように固まっていた。そんなシュウに魔法の詠唱をしている者を見つけた。私が止めに入ろうとした時、その者、リヴェリアは煙を上げて倒れた。
「詠唱するような魔法は、実戦じゃ役に立たないぞ」
リヴェリアに近づいて確認をしたアイズは、首を横に振っていた。一撃で死亡?彼女はオラリオ最強の魔法使いなのに、魔法で屠られるとは…
「おい、主神よ。どう落とし前をつけるつもりだ?」
「この野郎!」
また、シュウの後ろから、アマゾネスのティオネ、ティオナ姉妹が襲いかかったのだが、彼の背中に展開した天使の翼に包まれて、解放されたときには動かなく成っていた。
「無益な殺生はここまでにしたい。後ろの二人の動きは止めたよ」
ピクりとも動かなくなった、アイズとレフィーヤ。死んだのか?
「あとは、主神とパルゥム(小人族)の団長さんだけか?ふふふ」
団長のフィンが動いたが、シュウに頭を鷲掴みにされて、簡単に頭を潰された。一人で、ロキ・ファミリアを壊滅させたシュウ…凄すぎる。ミア母さんですら動く事ができなかった。動く前に、全て終わってしまったのだ。
「これで、主神様とゆっくり、話しが出来そうですね。申し遅れましたが、僕は『神殺し』シュウ・ヨハネ。よろしくお願いします」
その時、シュウの額の紋章が輝いた。
「おい…その紋章は…なんやて…えぇぇぇぇぇぇ~!」
急に、床へ直に正座をして土下座をしたロキ。
「すまぬ。宇宙神様の遣い人(つかいびと)様にご無礼なことを。許して下さい」
はぁ?シュウの方がロキより立場が上なのか??ロキの口調がいつもと違うし。
「天界にさぁ、送還で手を打たないか?」
「いや、それは…カンベンしてください」
ヨッパだったロキが、一気にアルコールが抜けて素面となったみたいだ。
「じゃぁ、貸し1な。いいなぁ」
「はい…」
「お前の眷属は今回は生き返らせてやる。次はしないから、眷属に教育をしておけよ」
「はい、すみません」
「あ、あのアイズって娘は貰うよ」
「え?アイズたんを…あかんって」
「そうか、では取引は白紙だ。お前を即刻送還する」
ロキの頭の上と足の下で魔法陣が発現しだした。これには青ざめていくロキ。
「あかんって…しゃない…了解や。送還はあかん」
「そうか。では取引成立だ。ただ、手を煩わしたので、お前のファミリアは僕らの傘下になってもらう。いいな」
「いや、それは…」
「お前、Cカップにしてやろうか?」
「お願いします」
「では、取引成立だ」
シュウの手がロキの胸にかざされると、ロキの貧乳がウソのような美乳に…そんな事も出来るの?
その後、ギルドでしたような黙祷を捧げると、屠られた者達は元通りの身体になり蘇った。