---シュウ---
「アスフィから訊いたのが、君達のホームは凄いらしいな」
案の定、アスフィを伴ってヘルメスが来た。アスフィを睨むと、手で口を押さえて顔面蒼白である。しょうがないバレたのなら。
「で、お客さん1泊ですか?ふふふ♪」
ヘルメスは何かに気が付いて
「宿には泊まらない。50階はカンベンしてくれ。神には戦う能力があまり無いんだ」
神では無く、お前は神族だろうに。
「分かりました。傘下にした主神を全員集めてください。ヘルメスだけでは不公平ですからね」
「傘下にした主神って、俺とガネーシャとヘスティアとロキか?」
「あと、フレイヤと、傘下ではないが協力関係のヘファイストスだ」
「はぁ?フレイヤとヘファイストスだって…この街の主なファミリアが、ほとんどじゃないか。君にはますます逆らえないなぁ」
言葉に心が伴っていないヘルメス。
「うん?裏切る気が出て来たか?」
村正を手にした僕。
「ちょっと、待て。いや、待ってください。逆らう気なんか無いって…アスフィからも言ってくれよ」
「では、このお店での修行の件は?」
「了承したよ。将来的には、俺のホームにも得になるし」
「アスフィ、こいつを送還すれば、改宗で悩むこともなくなると思うが」
「それも良いなぁ」
真剣に悩み始めるアスフィ。
「おい、アスフィ…俺を見放すなよ…」
主従の関係が逆転したかな?悪そうな顔をしているアスフィ。
◇
翌日、お店の品物をチェックしていると、ヘルメス達が来た。神々を下宿先である2階の部屋に案内した。そして、壁の扉を開いて、ホームへと誘った(いざなった)。
「ここはどこ?」
「なんや、湖に森って、けったいな場所やな」
「きれいなお花畑…」
神々から色々な感想が聞こえてきた。
「ここの大地が僕達のホームだ。場所は次元の挾間といわれている異空間」
家の中のリビングルームに招き入れた。メイド達が、神々にお茶とか焼き菓子を配っていく。
「ロキ、ここには酒はないから。アル中になったら、ここに幽閉するから」
一応、イエローカード状態のロキに釘を刺す。
「で、質問あったら、答えるけど」
「なんで、こんな場所に?」
「オラリオには、まとまった土地が無いから。ここなら増設し放題だし」
「チームはどの位の規模なんだ?」
「その前に、女性陣をあそこに案内してあげて、リア」
「はい」
ロキを除いたフレイヤ達を、リラクゼーションスペースに案内してもらった。
「なんでや?私はダメなんや?」
「ロキは、女性姿のオヤジ神だからダメだ」
メイド陣に手を出しそうだし。
「あぁ、規模の質問だったね。ヘルメス。規模は100名弱かな。裏方も入れてね」
「裏方?」
「僕のチームは、チーム内で総てを、まかなえるようにしてある。秘密保持の関係でね」
「総てをまかなうとは?」
「この世界で例えるなら、全ファミリアの能力を併せ持つってことだ。当然、それぞれの分野は特化してだ。相手の規模や、正体のわからない敵が多いから、自前で情報収集し、装備を開発し製作し、戦士を育成し、それらを維持するための財産を殖やし、それぞれがそれぞれの道で、鍛錬をしていくんだ」
「探検系、商業系、医療系、農業系などに特化しつつ、それらを1つのチームで統括しているのか」
「そういうことだ。なので、優れた人材であれば、スカウトしているよ」
「あのドラゴンやモンスターはなんだね?」
「仲間だよ。僕らは異種族共存コミュニティーだから。志が同じなら種族は問わない。っていうか、ノーマルの種族は少ないよ。仲間には神もいるし、魔王もいるし、精霊もいるし。他のコミュニティーでは有り得ない組み合わせだと思う」
「イレギュラー集団ってことか?」
「そういう括りがあれば、そうだよ。レギュラーな者では限界は自ずとくるが、イレギュラーだと、限界といえる目安が無いからね。僕なんかも同じ種族はいないイレギュラーだし」
「天使とギガンデスのハーフなモンスターだっけ?」
「まぁ、そんな感じだ。いないでしょ?」
「この世界では、天使もギガンデスも空想上の生物だよ」
「ギガンデスではなくて、正確には鬼だけどね」
「鬼?地獄にいる生物と、天界にいる生物のハーフだって?」
ヘルメスとガネーシャの顔が段々青白くなっていく。
「どうした?」
「弱点なさ過ぎだろ?地獄でも天国でも問題ないって…」
「聖魔光闇系統の魔術も使えるけど」
「神を超越しているぞ」
「神族よりは、超越していると思う」
「神の能力だと、創造と破壊だけだろ」
「持っているよ。創造なら出来る。破壊はできないけど、破壊神が仲間にいるから問題はないし」
「絶対神の遣い人となると、当然な能力なのか」
「あぁ、赴任先に最高神がいない場合もあるのでね。さてっと、君達をリラクゼーション施設に案内してあげるよ。ガネーシャ、大きなお風呂屋さんに取り付けようと思っている施設なので、希望があったら改善するから」
ロキを含めて、男湯につれて行った。女性に対して目の肥えた男神二人は、ロキの裸なんかを見ずに、お風呂を満喫している。
ロキは女湯を覗こうと必死だけど、女湯は下のフロアーなんだよ。残念でした。
◇
「アスフィがここに住みたい理由がわかった気がする」
ヘルメスは満足しているみたいだ。
「体験してもらった物を、アポロンの跡地に作ろうと思うんだ。どうかな、ガネーシャ」
「俺がガネーシャだ」
と、頷くガネーシャ。良いってことだね。
「女湯を除ける穴を希望する」
って、ロキ。いや、お前は女湯に入れるんだぞ。女神達にも評判は良かった。
「「ここに住みたい」」
「フレイヤは最上階に住んでいるだろ?」
「ここのお風呂が良いのよ。あそこに、この施設は難しい気がするわ」
排水処理の問題もあるし、最上階に設置は難しいなぁ。
「ここに住むことは認めないけど、週に何回かは利用できるようにするよ。ここに住むとファミリアとの連絡がしづらいと思うからね」
「シュウ、あの白音さんのマッサージもお願いします」
フレイヤの要望。
「わかった。それだと夜になるよ。今日はミアさんのお店が休みだから、昼間にいるけど、いつもはお店が終わらないといないから」
「お願いします」
「私のホームにつけてくれないかな?」
ヘファイストスの要望。
「職人さんの疲れが癒やせると思う。身体は無理かもしれないけど、精神的には良いよ」
ヘファイストスの要望は叶えてあげることにする。ロリ乳も何か言いたげだけど、口に出さなかった。
「ヘスティアは、調教の後にお持ち帰るするから安心しろ」
「はい」
まぁ、隣だし。お駄賃みたいなものだ。
◇
神々が帰って行った。あぁ、リアに設計図をまた頼まないとなぁ。お店にヘスティアと戻る。ショーウィンドーを覗いている年老いたドワーフみたいな者がいた。
「すみません。今開けますから。手に取ってご覧下さい」
お店を開けて、ドワーフを中に入れた。ヘスティアから念話で、彼がゴブニュという鍛冶系の神と教えられた。彼が手に持って見ているのは、『草薙の剣』またの名を『天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)』と、言われている剣(つるぎ)だ。八岐大蛇(やまたのおろち)退治に使用されたドラゴンスレイヤーの1種である。でも、ここで売るのはオリジナルではなく、同じ製法で作られ、オーラを込めれば、相手の防御力を少し下げられるという効果を付加した剣であるけども。
「う~…」
ゴブニュは刃先を見て唸っている。
「なぁ、この刃先の金属は、この世界で手に入らない物じゃないのか」
ゴブニュは散々唸ってから、重い口を開いた。
「そうです。お目が高いですね。ゴブニュさん」
「この世界にはない素材も扱っているのか?」
「多少なら、ございます。例えば、地金と砂鉄セットとか、ミスリル銀、オリハルコンとかですね」
「お、オリハルコン?伝説に聞く、あれか?」
ゴブニュの前に、ミスリル銀とオリハルコンを出した。
「う~…お前はどこから来たんだ?」
「異世界からです。異世界を股に掛けた商人です」
「いつから、商人になったんだ?」
あれ?声の主は、帰ったはずのヘファイストスだった。
「ヘファイストス、この店の主と知り合いなのか?」
「あぁ、彼のファミリアの傘下に入ったんだ。私はね」
え?いつの間に…初耳ですが…
「ほぉ…お前は神だったのか?」
「僕は神では無いですよ」
絶対神からもらった紋章を見せる。
「なるほど。それなら、ここにある品々に納得だ。その未知の金属を譲ってくれないか?」
「いいですよ。サンプル出荷ってことで、1つずつを差し上げます。加工できるようでしたら、値段の交渉をしましょう」
「それで頼むよ」
「私は、変わった魔石が見たい。何かあるかしら?」
「1000階までならフロア数を言っていただければ、お出しします」
「1000階だと?」
ゴブニュが驚いている。
「1000階のは、まだ加工の目処が立たないのよ。500階くらいのをサンプルでお願い出来る?」
ヘファイストスの要望に合う、500階近辺の魔石を、何個か取り出して渡した。
「遅れてすみません。ヘルメスの帰りが遅くて、留守番していて、出て来られなかったのよ」
売り子見習いの『万能者』アスフィが出勤していきた。店内に入るや、鍛冶系の重鎮の2柱の神を見て驚いている。うん?神の方もアスフィに驚いているみたいだ。
「アスフィ、ここで働くのか?」
「ヘファイストス様、ここで働きながら修行です。ここの店主に勝てないので…」
「そうか…気に入ったよ、このお店。また来る」
ゴブニュは、満足そうに帰って行った。
「シュウ、私にも金属をサンプルで貰えないかな」
ヘファイストスは、ゴブニュにライバル心でもあるのかな。ミスリル銀とオリハルコンを渡した。そして、新しい玩具に出会えた子供のように、うきうきして帰って行った。
「無料で良いの?」
ヘスティアが訊いてきた。
「サンプルだからね。加工出来るようになれば、大量に買ってくれるよ」
アスフィは、杖を見ている。パクるのか?
「なぁ、ここで仕入れている杖類は、1つのことしかできないんだが、2つ以上できる様にならないかな?例えば、攻撃と回復みたいにさぁ」
アスフィは僕の言葉をメモ書きしている。
「メモ書きは、アイデアの元を無くさないようにする為よ。『万能者』として、いつかシュウを超えてやる」
訊いていないのに、メモ書きの理由を説明するアスフィ。
「アスフィ、まずは子供が先だと思うぞ」
「どうせ、相手がいないわよ。しくしく…」
「そうだ、医療系のファミリアってあるのか?」
「医療系だと、腕は良いんだけど、性格に難のあるディアンケヒト様か、諸事情で没落したミアハ様かな」
アスフィが答えてくれた。
「性格に難のある所は嫌だな。ミアハにしよう。どうやって行けば良いかな?」
「私が案内します」
ヘスティアが手を上げたが、
「ロリ乳はダメだ。お前は店番なんだから、外に出るなよ」
「お店では、名前で呼んでください」
「調教中にねぇ♪」
苦笑いしているヘスティア。虐めがいがある、真性エムかな?
「では、私が案内します」
アイズの声だ。
「今日の鍛錬は終わったのか?」
「はい。私も行きたい場所があるので、つきあってくださいね」
「わかった」
アイズと共にミアハのホームを目指した。