世の中には神が多い。神には2つある。本当の神と呼ばれる存在と、人々が信仰している神とだ。後者は神族という種族である。見分け方は性別である。全知全能なる神には性別など無い。神族は男神と女神がいる。これは種族を増やせるよう、交配する為である。種を残す必要の無い神は、必要に応じて神を創造する。その神もまた性別は無い。ただし、神以外と交わる事により、ハーフ神と呼ばれる者を世に送り出せる。愛の結晶だと言う神もいる。
神は配下として天使を創造した。その天使と神が交わることで、神族が産まれたと言われている。始祖神族に関しては、記録が無いので、言われているだけで、本当かどうかを調べる術は無い。
僕は神として神に創造された。役目は、神族の暴走を押さえる役目だった。神族は時として、地上の者達へ猛威を振るう事があったのだ。些細な理由で。ムシャクシャしたからとか、気分が悪いからとか、信仰する者が少ないとか、力を見せつけたいとか…
僕は僕より上の神より、『神殺し』という特権を得ていた。これは神族を殺せる能力である。純粋な神より、神と天使のハーフである彼らの方が頑丈であり、神の命令を無視する神族が出始めたのだった。
『神殺し』として恐れられていた僕は、二人の女性と知り合い、愛し合い、子宝に恵まれたのだが…
「おい、注意しろ。神族達はお前を消そうとしているぞ」
上司の神に言われた。理由は、僕の愛した女性達の種族にあった。一人はドラゴン、もう一人は鬼である。ドラゴンも鬼も神族の忌み嫌う生物であったのだ。日頃、僕の役目に不満を持っていた神々は、この事実を盾に、僕の粛正を求めて来たらしい。
「なんで、ダメなんですか?異種族共存があなたの理想ですよね?」
上司の理想を叶える為、神族の横暴、気に入らない種族の根絶を、やめさせていた僕。そんな時に彼女達と知り合えた。
「そうなんだが…」
僕は神に創造された物なので、神族に殺されることは無い。しかし、あいつらは…妻達と子供達を人質に取るという暴挙に出た。彼らの要求は妻達の前で、無抵抗でいろという要求だった。僕は言われるまま、彼ら神族達の前で無抵抗でいた。最初は殴る、蹴る程度だったが、次第にエスカレートしていき、武器を使い、魔法を叩き込むなど、僕へダメージを与えていった。そして…
「おい、俺達では殺せないみたいだな。お前、自害するのと、妻と子供を殺されるのと、どっちがいいんだ?」
そんなの決まっているだろ…僕は神殺しの能力を使い、自らを傷つけていく。
「やめて~、あなた~!」
妻達の叫び声が、徐々に遠くなっていく。
「お父さぁ~ん…」
子供達のオーラが感じ無くなってきた。
「おい、しっかりしろよ!」
誰だっけ?誰かに抱き抱えられた。太い腕、優しいオーラ…鬼族か…
「妻達と子供達は?」
「無事だ。だから、気をしっかりと持て!」
そうか、無事なのか…目の前が暗くなっていく。何も感じ無くなっていく…
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何かの振動で意識が覚醒していく。ここはどこだ?暖かいオーラに包まれている。でも、何も見えない。何も感じ無い。僕は消えたのでは無いのか?
「おぉ、やっと目覚めたか」
懐かしい上司の声が聞こえた。
「ここはどこですか?」
「人間の女性の子宮の中だ。お前の魂は人間の受精卵に着床したのだ。なかなか、お前が着床できるイレギュラーが産まれなくてな」
人間?
「僕は人間に転生するんですか?」
「転生では無い。お前には魂は無かったからな。お前の死後、お前の記憶を取り出して、新たに作った魂へ、お前の記憶を移植した。なので、転生では無く、誕生だ」
「そうだ。妻達は?子供達は?」
「妻達はお前の後を追った。子供達は無事だ」
「後を追った?どういうことですか?魂の無い僕を追うって」
「お前と共に生きたいと願いをされた。供物として命を差し出すと…」
まさか…
「その願いを叶えることにした。お前は不完全な神となった。我々神には魂は無いからな。魂を持つとはそういうことだ」
不完全な神?魂を持つ?
「お前の妻達の魂を1つにした。お前を愛おしいと思う気持ち、心で満たされていたから、合わせても問題はなかった。それで、不完全なお前の片割れとした。お前と彼女達、2柱1対な神となり、役目をはたしてもらう」
役目?神殺しか?
「お前の妻達は、現世ではお前の姉として生を受け、既に産まれている。後、お前が神であった記憶は消すぞ。神としての能力は全ロストしている。スキルとして『神殺し』だけがある状態だ。これから、現世に出て、能力を復元していってくれ。ほぼ全て復元できれば、記憶は甦る。そうなれば、お前の妻達とも通じあえるだろう」
「子供達は?」
「現世にいる。お前のオーラに寄り、近づいて来るかもしれない。だが出逢っても、お前には彼らの記憶は残っていない。彼らはお前に懐くだろうけど」
それでもいい。子供達が元気であれば…
「では、記憶を消すぞ!」
そして、僕は僕であることを封印され、神の器では無くなった。