---シュウ---
地獄の鬼さんチームのリーダーから連絡があった。
「あのロキっていう人間…痛めつけようがないです。そそらないというか…オーラが黒すぎて、近寄るのもイヤというか…」
あぁ、元が悪神だから、種族を人間にしても、オーラの質は変わらないのかな。で、地獄から引き上げることにした。さて、どうしようかな?ロキの嫌がることってなんだろうな?
あっ…いい事を思いついた…ふふふ…
◇
「うん?ここはどこや?」
「ここは、街外れの門の前だよ、ベート君♪」
「はぁ?ベートやないぞ、ロキや」
僕は目の前の者に手鏡を渡した。
「なんでや…顔がベートやないか…」
「そうだよ。ベートとロキの頭を交換してみた。種族は人間のままだ」
「なんてことを…」
「ベートの魂の入ったロキの頭部は、とある場所に展示してある」
「どこや?」
「見つけても入れ替え出来るのは、僕だけだよ。ふふふ」
「おっ、お前…」
「この街にはもう、ロキの居場所はない。好きにしろ。反省したら、考えてやる。じゃあな」
僕は、お店に転移した。
◇
お店に戻ると、夕方の定例連絡会の時刻で、みんなが集まっていた。そこで、ロキに施した新たな罰を伝えた。
「シュウ、恐ろしいことをするなぁ。親指の震えが止まらないぞ」
フィンがの親指が久しぶりに震えていた。
「顔がベートかぁ…で、ベートの魂入りのロキの頭は?」
リヴェリアが苦笑いをして訊いてきた。
「異端児達の森の湖の畔に、置いてある。異端児達の会話の練習用だ」
「それは鬼ですねぇ」
と、アスフィ。
「人間を怖がらずに会話する度胸が付けばよいかと、ははは」
「ロキは反省するのか?」
フィンが訊いてきた。
「無一文で放置してきた。神族としての能力も使えないし、オーラもない。この街では、ただの失業者って感じだ。旧ロキ・ファミリアのホームに行っても、オーディンが対応してくれることになっている。神酒を求めてソーマの所に行けば、結界には入れるけど、結界からは出られない罠を設置してある」
「結界に囚われたらどうするんだい?」
「反省無しってことで、次の罰を与えるよ、ふふふ」
「鬼畜なことするんですね」
と、アスフィ。
「鬼畜なことってことでもない。とにかく、使い道を考えたいんだよ。あの身体じゃ、そそらないしねぇ♪」
「身体を改造するんですね?」
と、身体改造プレイの経験者のロリ乳。
「そうだよ、ロリ乳。みんなの良い部分を継ぎ合わせて、そそる身体にして、試食を繰り返すって感じだな。他に使い道が合ったら、教えてくれ」
誰からも、案が出てこなかった。そして、他に連絡事項がなく、散会した。
---フィン---
翌朝、オーディン・ファミリアのホームに出勤すると、ベート頭のロキがいた。
「フィン、会いたかったでぇ」
僕の顔を見つけて、近寄って来た。あの身体にあの頭はアンバランスでしょ…とっても、不気味な雰囲気が醸し出されていた。
「どなたですか?」
冷たく、突っぱねた。
「何をいうてんの?ロキやで。お前の主神のロキや」
「申し訳ありません。僕の主神はシュウです。お引き取りください」
「洗脳されとんのか?で、オーディン・ファミリアって、なんや?」
「ここはオーディン様が主神のファミリアです。入団希望ですか?」
「フィン、何を揉めているのだ?」
後ろからオーディン様の声がした。
「このウェアウルフがロキと名乗って、困っています」
「ここは私のファミリアのホームだ。入団希望者以外の立ち入りは困る、出て行け!」
オーディン様から電撃放たれて、ロキに命中した。シュウが天界から連れてきたので、神としての力の制限を受けていないようだ。なので、神としての攻撃が出来るそうだ。
「お、お前…力の制限をされておらんのか…ルール違反やろ?」
「私は遣い人様の眷属として、この地に来たのだ。ガードとして、攻撃が出来ないと意味をなさないだろ?」
「ギルドに提訴してやる…」
ロキが走り去って行った。
---ティオナ---
迷宮までの道すがら、噂のベート頭のロキに遭遇してしまった。
「ティオナ、ティオネ…ロキや、帰ってきたでぇ」
帰って来なくていいよ。私を…うっ、涙が出て来た。
「あんたねぇ、ティオナを殺しておいて、よくそんなセリフが言えたわね」
ティオネが文句を言ってくれた。
「金輪際、私達姉妹の前に現れないで頂戴。胸くそが悪いわ」
立ち去ろうとした時、後ろからロキに抱きつかれた。
「イヤ~!」
大声で悲鳴を上げてしまった。
「こんな往来の激しい所で、襲いかかってくるとはなぁ」
ティオネとベルが臨戦態勢を取っている。
「ティオナ、殺したのは、団長にした男や」
声すら聞きたくない…
「イヤ~!離れてよ~」
シュウ、助けて…
急にロキの感触が消えた。代わりに私の隣には、シュウがいた。ロキは投げ飛ばされたようだ。
「おい、ベートよ。こんな真っ昼間から、ティオナに襲いかかるって、どういう根性しているんだ?」
「ベートやない。ロキや。この鬼畜野郎が!」
ロキの言葉をスルーして、私を優しく抱きしめてくれた。
「ティオナ、大丈夫か?」
「ごめん…足がすくんじゃったよ…」
「ベル、ティオネ、今日は撤収してくれ。ティオナがこんな状態では、潜るのは危険だ」
ベルとティオネが頷いていた。ごめん、私のせいで…
「眷属を返せ!このペテン師野郎がっ!」
シュウに罵声を浴びせるロキ。罵声を無視して、私達は帰路に着いた。そんな私達の後ろをついてくるロキ。
お店に着き、中に入る。ロキも入って来た。
「おい、無一文が入って来るんじゃねぇ!」
言葉遣いから感じた。シュウがキレたみたいだ。ロキの身体がビクっとして、顔が青ざめていく。
「ティオナが、あんなにイヤがっているのに、なんでお前はわからないんだ?」
シュウがロキに手をかざすと、頭がロキになった。
「決めた、リセットしよう」
シュウの顔から笑顔成分が消えた。今まで見た事の無い冷徹な顔になっていた。ロキに近寄っていくシュウ。
緊迫した空気に包まれていく店内。それを打ち破るようにドアが開き、白音さんが入って来た。
「お兄様、ダメ…そのオーラは危険…」
白音さんの表情も今まで見た事無い、恐怖を感じているのがわかる表情をしていた。
「白音、我慢の限度が…コイツ、反省もしないで、ティオナの心を踏みにじりやがった」
白音さんが、シュウに抱きついた。
「ダメ…これ以上は…みんな、逃げて…お兄様の怒りが爆発したら、ここは壊滅する…」
白音さんが声を振り絞った声が聞こえた。壊滅…
「ごめん、抑えられないかも…」
幼さが残る白音さんの姿が、大人びた姿に変容していった。能力を解放したのだろうか?
「そうだ。離脱…ナヴィさん、お願い!宇宙空間に放り出して…」
二人は光の渦に飲み込まれて、光の渦が霧散すると消えていた。
◇
二人のいた場所に、見た事のない男女が現れた。
「あぁ、やっちゃいましたね。団長をマジキレさせるとは、この世界は愚かな選択をしましたね」
「あのぅ…あなた方は?」
ヘスティア様が尋ねた。
「僕は、チームアイ副団長の鷲尾ヤマトです。彼女は、アシスタントのリアです」
「チームアイ?」
「えぇ、絶対神様の特務機関です。あなた方的にはチームシュウと言えば、ご理解が早いですかね」
「シュウのチームの副団長?」
「そうです。で、団長がマジキレしましたが、白音さんの機転で、この世界での暴発を回避が出来ました。ここで暴発していたら、この街、いや、この大陸は消えていたでしょ」
「そんなに…」
アスフィが震えながら呟いた。
「で、今回の依頼の契約事項で、団長のマジキレによるディープインパクト、まぁ、暴発ですが、これが起きた場合、この世界はリセットするとあります。この事項を適用させていただきます」
「ちょっと、待って…シュウはどこに?」
「他のメンバーが回収に向かっています。回収しだい、ベースキャンプに戻り、この世界から、チーム全員で撤収いたします」
「この世界は、どうなるの?」
「リセットします。ロキという神族を抹消できれば、この世界は存続できますが、この世界には必要な神族らしく、抹消不可のようです。なので、この世界をリセットして、1から歴史をやり直してもらいます」
「そんなことができるの?」
ヘスティア様が質問された。
「できます。団長に何かトラブルが起きた場合、副団長である僕に権限が生じますから」
「ロキ一人のために、リセットされちゃうの?」
「この世界は、団長に何度もマジキレさせていますよね?ティオナさんの死、ティオナさん姉妹、アイズさん達へのパス・パレード、そして、今回…鬼の顔も三度までって言うでしょ?鬼の次…神としての役割を果たすまでです」
「シュウの役割って?」
「創造神です。その役割をするためには、この世界をリセットしないといけないのです。おわかりですか。そこで固まっているロキという悪神を恨みなさい。明日の日の出の頃にリセットをします。それまでに、チームシュウ入りの決まっているメンバーは、こちらで回収していきます」
「決まっていないメンバーは?」
「この世界のリセット後に、この世界で転生します。同じ過ちをしないように、維持神にはきつく言っておきます。では、明日の日の出まで、あと半日ありますが、良き人生を過ごしてください」
目の前の二人は、消え去って行った。そして、フレイヤ様が現れた。
「もう少しこの世界で、生きられると思っていたのに…ロキ、貴様を恨むぞ」
ロキを睨みつけているフレイヤ様。
「とりあえず、私とオッタル、フィンはチーム入りが決定している」
「私は?」
「ティオナは…」
首を横に振られてしまった。何度も助けてくれたのに…恩返しが出来ていないよ~
「この世界のリセット後、転生する世界を維持するのに必要な人材は、連れていけないそうだ」
「フィンはなんで?」
ティオネが泣き叫んでいた。
「彼は既に、チームメンバーとして、一緒に行動をしている」
「私は?」
ヘスティア様が尋ねた。
「ヘスティアは、転生後もベルを育てないといけない。なので、ダメだそうだ。メンバーに選ばれなかった者よ。シュウも苦渋の選択をしているのだ。わかってやってくれ」
私はそれでも一緒に行きたい…
「フレイヤ様、私も一緒にお願いします」
「ダメだ。ティオナはシュウにとって、大切な友人だ。一緒に戦う仲間とは思っていない。要は戦力外なんだ」
戦闘能力が不足しているのかぁ…くそっ…
---シュウ---
ベースキャンプで目が覚めた。隣に白音が、僕の腕を抱いて寝ていた。記憶があいまいで、なんでここにいるのかが分からない。そもそも、なんで白音と添い寝しているんだ?
部屋のドアが開き、ヤマトが入室してきた。そして、状況の説明を受けた。あぁ、ロキにマジキレしちゃったんだ。今回の任務の契約事項に書かれた注意書きが、適用されたようだった。白音の機転で助かったのか、あの世界は。隣で寝ている白音の頭を撫でる。
「あぁ、連れて行くメンバーか…フレイヤ、オッタル、フィンが確定だ。あとは…」
「団長、差し出がましいですが、ティオナさんはどうします?」
ヤマト、そこは悩みどころだ。転生後にいなくて、世界は回ると思うけど…
「あと、ヘスティアさん。天界の方ではお持ち帰りOKって言われてますが」
「ヘスティアをお持ち帰りにすると、ベルもセットだな。う~む」
「向こうの世界で同化吸収すれば、ヘスティアさんとヤレますよ」
「それはそそるが…」
ヤマトは僕の性癖をくすぐってきた。さて、どうするか。
「あと、どの位だ?」
「ラスト1時間くらいかな?」
「アイズに、迎えに行ってもらうように指示をして。僕はたぶん、まだ能力が使えないと思うから」
「了解です、団長♪」
ヤマトが部屋を出て行った。
---ティオナ---
もうすぐ夜明けだ。転生後に、シュウといた時間の記憶って残るのかな?ティオネはフィンとは、転生後に出会えない。私もシュウとは出会えないのだろう。
静まり返った室内に、ドアをノックする音が響き渡った。ドアを開けると、アイズが立っていた。いつもとは違う雰囲気がするアイズ。
「お迎えにまいりました。一緒に旅立ちましょう」
え?死後の世界にかな?もう…覚悟を決めて、部屋を出た。階下に降りると、ヘスティア様とベル君がいた。
「この世界からは、この三名様だけを追加でお連れします」
目の前のアイズは、紅い翼を展開した。
「この世界のアイズではないの?」
「違います。うふふ。では、行きましょう。これからの旅路は、辛いこともありますが、覚悟していてくださいね」
そして、私達は光の渦に飲み込まれて行った。
この世界のフィンと次章のリヴェリアとの子供が、フィアナです。