---ベート---
女性陣のテントからは、寝息が聞こえる。目指す建物も灯りは消えていた。俺はサポーター達を引き連れ、深層にはそぐわない場違いな建物に向かって歩いていた。
もちろん、寝ているアイズを襲うために!
サポーター達にもアイズ以外の女性を襲わせるつもりだ。
「いいか。度胸が大事だ。交わってしまえば、文句は言わない。そういう物だ、メスと言うものは」
と、コイツらを焚きつけて、進軍してきた。
ドアのノブに手を掛けると、カギがいっちょ前に掛けられていたが、俺の手にかかれば、簡単に壊れた。そして、
「野郎共、食べるぞ!」
と、俺を先頭に奇襲をかけた…はずだった。
---シュウ---
罠にかかったベートは、予想通り、寝込みを狙って奇襲をしてきた。リューとアリーゼは地上に戻して、残りのメンバーで、武装をして待ち構えていた。
あっ、リューとアリーゼを送りに行ったついでに、ギルド員を数名、連れてきていた。目撃証人にするために。
建物内部を破壊して、アイズを探すベート達一行。僕らは、隠し部屋から、監視していた。ほぼ、破壊されて、玄関に戻ってきたベート達に、襲いかかった。
「ベートよ、奇襲かい?死ぬ覚悟はあるんだろうな。ふふふ」
驚いた顔のベート、恐怖で顔が引きつるサポーター一同。僕達は、構わず峰打ちで、捕縛していった。
押し入った全員を捕縛し終わり、ギルド員達に向けて言った。
「目撃された通りです。安全地帯で、治安をまかされているファミリアは、こんなマネをしているんですよ」
「ひどいファミリアだ。損害を請求しても良いですよ。だいぶ、コイツらは破壊しまくりましたね」
「そのつもりです。ギルドの方からもペナルティーをお願いします」
「わかりました」
僕はギルド員達を地上に送っていった。
---フィン---
「さて、君達は犯罪者だ。50階から地上まで、拘束したまま移動するのは、大変なのはわかるよね?そこで、51階に置き去りの刑をすると、我々の団長が決めた」
ベートとサポーター達の前で、刑の内容を説明した。
「おい、待て!この状態で、置き去りだと?死刑より惨いだろう?それに、単なる押し込み強盗程度で、なんだ、その罰は?」
ベートが悪びれることなく、のたまわっている。この世界のベートは屑だな。
「連帯責任で、テントで寝ている、君達の仲間も同じ刑になる。団長が帰りしだい執行するから」
ベート達を建物の外に固定して、建物の中に移動した。
---リヴェリア---
外が騒がしいので、目が覚めてしまった。テントの外に出ると、この場に不釣り合いの建物の前から、ベートの声がした。アイツは何をやらかしたんだ?急いで駆け寄った。
後ろ手に拘束され、その場に固定されているベートと先遣隊のサポーター達。
「ベート、何があったんだ?」
「ちょっと、やんちゃをしただけで、死刑だと。アイツらにそんな権限はないだろうに」
”やんちゃ”?まさか…お前ら、夜襲を掛けたのか?この安全地帯で…呆れて物が言えないわ。
「これはこれは、ロキ・ファミリアの団長様。こんばんわ」
後ろから、あの男が声をかけてきた。振り返って、声を掛けた。
「おい、この状況はどういう事だ?」
「夜襲を掛けた夜盗共を捕縛しました。うちの女性陣が襲われましてね。ロキ・ファミリアでは、安全地帯なら何をやらかしても良いってことですか?」
「そういうことは、認めない」
「ほぉ~、では、コイツらは、処分しても文句なしでお願いします」
「いや、処分はこちらでする。引き渡しを頼む」
「嫌です!」
相手は笑顔ながらも、目は笑っていなかった。
「壊した物は補填する。それでどうだ?」
「はぁ?僕の仲間は物扱いですか。天狗になっているファミリアは、仰ることも天狗様なんですね~ふざけんなよ。僕の仲間は物じゃない!」
「どうしたんですかぁ~」
遠くからレフィーヤの声がした。この騒ぎで目が覚めたのだろう。
「では、どうすれば、彼らを引き渡しでもらえるのだ」
「コイツらは、この状態で51階に置き去りの刑です。ご希望なら、58階でも良いですよ。ふふふ」
後ろでに拘束した状態で、置き去りだと?怪物達に無抵抗で喰われるじゃないか。
「お前は、血も涙もないのか?よく、そんな残酷なことを言えるな」
「あぁ、僕には血が通っていませんからね。しょうがない事ですよ」
血が通っていない?コイツは何者なんだ?
「あぁ、お仲間が詠唱していますよ。僕を屠るつもりですね。そして、何もなかった事のように、地上で大手を振るって威張るのか。勉強になるなぁ。天狗の鼻をお持ちのファミリアの団長さんの行動っ」
アイツが言い終わる前に、レフィーヤの攻撃魔法が直撃して、アイツは消し飛んだようだ。不意打ちだが、ベート達を見殺しには出来ないからな。
---シュウ---
レフィーヤの魔法が直撃する寸前に、地上に転移した。なるほど、ジャマ者は消すってことか。アストレア・ファミリアを、罠にはめたヤツらと同じ穴の狢だな。
「で、結末はどうなったんだ?シュウ」
ホームに戻ると、フィンに尋ねられた。僕は包み隠さずに話した。
「酷い仕打ちだな。この世界のリヴェリアは」
「本当だよ。フィンの奥方のリヴェリアとは大違いさ」
少し照れているフィン。他の世界のリヴェリアを孕ましたフィン。僕が司祭となって、二人を夫婦に認定する儀式を執り行った。
「子供を身籠もっているから。フィンのリヴェリアは、ここには連れて来られないけど。しかし、あぁ出るとはなぁ。ベートを放し飼いしすぎているだろう?」
「この世界のベートは屑だな」
あまり悪態をつく発言をしないティオナの口から出た。
「ティオナの言う通りだ。安全地帯なのに、夜襲って。どんだけメスに、飢えているんだ?あの狼男は。まぁ、朝になったら、ギルド員とロキを訪ねてみる。その対応で、ロキの調教内容を決めるよ。別世界ではロキは隠れ処女神だったから、それの確認が楽しみの1つかな?」
「あいかわらず、鬼畜だな」
アイズが呟いて。まぁ、鬼の子供だから、誉め言葉として受け取っておく。
◇
翌朝、ギルドを訪れて、昨晩目撃証人となってくれた、ギルド員の方々と協議した。賠償金、罰金をあわせて、資産の2/3を没収。そして、3ヶ月の遠征の停止と道徳の学習という重い処分になった。
安全地帯での暴挙だから、遠征をさせるわけに行かないという判断だ。道徳の学習は、ギルド員が講師となり、やってはダメなことを、教え込むことになる。そして、3ヶ月後にテストをして、合格しない物に関しては、冒険者としての資格を破棄の上、オラリオからの追放が課せられることになった。
これらを、僕と一緒にロキ・ファミリアのホームに出向いた、ギルド員の口からロキに伝えられた。
「はぁ?なんや…その重すぎる処分は?」
「安全地帯での暴挙の結果です。これ位しないと示しが付かないです。治安を護っているはずのファミリアなんですから、受け入れてもらいますよ!」
「ベートの野郎~」
「ベートだけじゃない。僕はレフィーヤに魔法を喰らったんだよ、安全地帯で。有り得ないでしょ?」
「あぁぁぁぁ、どいつもこいつも、顔に泥を塗りたくりやがって。しゃーないヤツラや…くそっ!」
眷属への怒りを露わにしているロキ。この世界のロキはまともかな?
ギルドの通達を、受け入れることを選択したロキ。目撃証人がギルド員数名ってことが大きかったみたいだ。
---白音---
今回は大人バージョンの姿で任務についた。子供の姿では、お兄様の怒りを鎮められなかったから。私は、リューさん、アリーゼさんと共に、ホームの隣にある『豊饒の女主人』でバイトをしている。他の世界で経験しているので、お客さんのあしらい方も、前回とは違い上手にできているはずだ。
今夜は、お兄様の宿敵とも言えるロキが、酔いつぶれ寸前であった。きっと、ギルドからの通達による自棄酒なのかもしれない。ミア母さん以外、誰も寄りつこうとしなかった。何かされそうな雰囲気だし。
「お~い、もっと酒を持ってこんか!」
まだ飲むのか?ミア母さんが近寄っていく。
「もう、止めた方が良い。アンタ、神としてのオーラすら感じなくなっているよ」
赤ら顔のロキはミア母さんを睨む。
「はぁぁぁ?神でもない者に、神の大変さがわかってたまるか~もっと、酒を出せや~」
「もう、帰ってくれよ。他の客がビビって、寄りつかなくなっているのよ」
ミア母さんがロキに文句を言う。
「はぁい?金ならいくらでも出したるわ。酒を持ってこ~」
「じゃ、ここまでの代金を払って」
ミア母さんがロキに請求書を叩きつけた。
「おい、これは暴利だ。神から金を取るんじゃねぇよ。っと。ふっはぁ~、酒はまだか~」
頭を抱え始めたミア母さん。
「ダメだ。ロキがあぁなると」
「リュー、どうしたんだ?」
そこにお兄様の声がした。
「え?なんで?心で叫んだだけなのに?」
目が点になって驚いているリューさん。
「バイトに出ている三人のことが心配で、心を読んでいるよ」
「え?勝手に心を読まないでよ~」
急に顔が紅潮し始めたアリーゼさん。
「アリーゼ、あなた…バイト中に何を思っていたの?」
ははは、リューさんがつめよっている。お兄様の事を考えていたのね。
「あぁ、ヨッパのロキに恐怖を抱いたんだね、リューは」
お兄様が手をかざすと、ロキは強制転移された。
「はい、ミアさん。ロキの財布だけ抜いて、あいつは、アイツの部屋に強制転移させたよ」
ロキの財布をミアさんに手渡した。
「足りるのかな?」
「足りないねぇ」
「不足分は、明日取り立ててくるよ」
「ありがとねぇ、シュウ」
「持ちつ持たれつですよ、ミアさん。お隣だし。妹とリューとアリーゼをバイトで雇ってくれたし。僕も感謝しています」
---リヴェリア---
どうやっても、ベート達を拘束している器具が外れなかった。
「早く外してくれよ。アイツらをボコりに行くんだから」
ベートは相変わらず、口だけは元気であった。手が使えないのでは、食事も満足に摂らせられない。どうしたら良いか?
「魔法で破壊しましょう。多少の怪我はこの際、我慢してもらって」
レフィーヤから案が出された。
「そうだな。やってみよう」
二人で、拘束具に向けて、魔法を放っていく。その結果、雷撃系の魔法で拘束具がはずれたのだが、人体への影響も大きかった。両腕の麻痺、死の一歩手前に迫るのか、息も絶え絶えになる、自由な身になった者達。
しかし、ベートの拘束具だけは外れなかった。
「雷撃系ではないのか?」
目の前のベートの全身からは煙が立ち上っていた。ここまでの状態になると、さすがのベートも無口になっていた。
「あと、何があるかな?レフィーヤ」
「あと…試していないのは…」
「それは、死ぬほどの恐怖を与えれば、はずれるようにしてある」
この場にいない、いや、生きているはずのない者の声がした。声の主の方へ振り返る私達。
「何驚いた顔をしているんだ?レフィーヤごときの魔法で、死ぬ訳ないだろう?ふふふ」
「はっ、はずしなさい!」
「リヴェリア、僕に命令形か?これは驚いたよ。僕を誰か知っていて、命令しているのかい?ふふふ」
ばきっ!
何かが壊れる音がした。音の方を見ると、ベートを拘束していた器具が壊れて、ベートの両腕が変な方向に曲がっていた。
「命令された通り外したぞ、リヴェリアよ」
「ベートの腕を折ったの?」
「折ったと言うか、折れたんだ。そこまで、脆くなっていたとは思わなかったからね」
「あなたは何者?」
「僕か?教えてあげないよ。タダではねぇ」
アイツの視線は、私の頭からつま先を舐めるように移動していた。
「なるほど…それが代金代わりってことなのかしら?」
「何を想像したかわからないので、返答は控えておく。あぁ、また魔法を撃ち込まれても困るから、君達の魔法は封じ込めておいたから。ふふふ」
ティオネが得物を握り直して、アイツを急襲した。
ずっこ!
蹲るティオネ。
「闘気を出し過ぎだ。それでは、これから襲いますと、宣言しているのと同じだ。アマゾネスよ」
ティオネの攻撃を紙一重で避けて、拳骨を彼女の腹部に撃ち込んだ。
蹲ったまま、動かないティオネ。
「僕は戦士ではないので、あまり戦うことは好きではない。でも襲われたら、それなりに反撃するよ。ふふふ」
「戦士ではないのであれば、何者だ?」
アイツに再度問うた。
「タダではねぇ」
また視線を感じた…いや、視線だけで…あっ…そっ、そんな…身体の内部から熱い物が湧き出て来た。股を閉じて…閉じないと…あぁ…ダメっ…その場に座り込んだ私。
「リヴェリア、大丈夫?」
レフィーヤの声が聞こえた。上体を上げることができない。まだ、彼の視線を感じている。息づかいが乱れていく。胸を揉まれているような感覚を感じ始めた。こんな局面でなんで?イヤッ…はっ…はっ…はっ…お尻の肉と肉の間を舌のような物が舐めている。そっそんな…記憶に残ったのは、そこまでだった。
---レフィーヤ---
急にリヴェリアの様子が一変した。何かの術を掛けられたのだろうか?
「貴様、リヴェリアに何をしたんだ?」
「うん?お前も体験したいのか?」
体験?まずい、アイツの術にはまる。その場から動いた。しかし、急に脚が動かなくなって、その場に倒れ込んだ。
「焚きつけて置いて、逃げか?」
逃げじゃない…身体が自由に動かなくなっていく。私の意志を無視した動作をしている。なんで?
「いいなぁ、その恐怖で歪む表情…」
アイツの顔が近くなっていく。そして、アイツと口づけ。私の方から舌を絡めていく。アイツが衣類を脱がし易いように、私の身体が手伝う。いやぁ~そんなことはしたくない。
四つん這いになり、頭を下げて…お尻を上げて…アイツの肉棒が入って来た…入って来た瞬間、記憶が…色々な事を思い出した。まるで、走馬燈を見るように…アイズさん…フィンさん…そして、シュウとの想い出、ロキのせいで別れを…あぁ…涙が出て来た。
「レフィーヤ、思い出してくれたみたいだな」
シュウの優しい声の囁き。とても懐かしい気分になれる。
「僕と交わることが記憶を覚醒するキーなんだよ」
「なんだよ、その覚醒するキーは?このぉ~ド変態!」
「うん、よく言われるよ」
「じゃぁ、リヴァリアも交われば?」
「思い出すはずだ。でも、今はこのままで」
「あぁ、団長だもんなぁ。記憶を取り戻したら、きっと、シュウの元に行くだろうし」
「それでは困るんだ。同じ歴史にはさせたくない」
「で、私は?」
「このまま、スパイとして残ってほしい」
「そんな器用な振る舞いはできないよ~」
「では、今一度、記憶に封印をする。今度は交わらないでも良い封印だよ」
ふっと、意識が飛んだ。