---フィン---
ティオネの部屋のドアをノックすると、アリーゼが顔出した。
「フィンさん、お見舞いですか?」
部屋に入れてもらうと、アリーゼとリューが部屋を後にした。
「フィン…会いたかった…」
ベッドに横たわっていたティオネが起き上がって、僕に声を掛けてきた。
「あぁ、ティオネ…もう、大丈夫なのかい?」
「うん、大丈夫。アリーゼさんとリューさんに手厚く看護されたから」
「そうかい」
「ねぇ、フィン。結婚して欲しい…」
はぁい?何を言っているんだ?今更…
「もう、別れ別れの世界は嫌っ…」
「悪いけど、結婚は出来ない。もう既にしているから」
少し間が空いてから、ティオネが訊いてきたきいてきた。
「えっ?何ですか?もう一度お願いします」
「もう結婚をしている。妻子ある身の上なんだが…」
少し間が空いてから、ティオネが再度訊いてきた。
「意味がよく判らないんですが…どういうことですか?」
う~、どういえば良いかな?親指に震えが無いことを確認して、
「違う世界のリヴェリアと結婚をして、娘がいるんだ」
「え…」
ティオネは瞼をパチパチを開閉して、僕を何度も見直している。
「フィンだよね?」
「そうだけど…僕と同じ種族になってくれたリヴェリアと結婚したんだ。所謂、出来ちゃった婚って言うやつなんだが…」
「フィンが…どうして…あっ!シュウに感化されたのかな?君は…」
まぁ、そうなるな。
「そうなる。すまない」
ティオネは何かを考えて、僕に提案をしてきた。
「ねぇ、フィン夫妻のメイドにして?」
「浮気はしないよ。いいのか?」
「うん!フィンの傍にいたい。どうかな?」
「僕の一存では決められない。シュウに相談してみる」
「なんで、シュウが関係するの?」
少し不満げなティオネ。
「この世界から、連れ出すには、シュウの許可がいるんだ。」
と、伝えた。
---リュー---
アリーゼと、私達の部屋に戻ると、部屋の前でシュウが倒れていた。
「どうしたんだ、シュウ?」
アリーゼと共にシュウに駆け寄る。シュウの顔色はものすごく悪かった。
「ごめん…アリーゼとリューの顔を見たくなって、立ち寄ったんだけど、めまいがして…」
二人で、シュウをベッドに休ませた。
「どうしたんだよ?」
「二人の顔を見たら、元気が出て来たよ」
シュウは起き上がろうとしたが、アリーゼがそんな彼を押し倒した。
「ただじゃ、帰さないよ」
アリーゼは、シュウに抱きつき添い寝の体勢になり、片手で私を誘ってきた。私は、アリーゼの反対側を陣取り、抱きつき添い寝の体勢になった。
「二人とも…僕は、ヤル気力がないんだけど…」
「私達の玩具っていうのは、どうかな?」
アリーゼは衣類を脱ぎ捨てると、シュウの手を自分の胸に当てた。
「シュウ、介護してやるよ。リューと二人でね」
私は、アリーゼに目で合図を送ると、自ら衣類を脱ぎ捨て、シュウの衣類を脱がせ、スキンシップを楽しみ始めた。
シュウは、性癖の破綻したエスプレイヤーと聞いていたが、私達とはノーマルなプレイとなった。殆ど、私とアリーゼが主体で、シュウをリードした感じだ。
「次回は、責めるよ。リュー、アリーゼ」
たぶん、リヴェリアさんへの治療で、気力、魔力を使い果たして、へたばったんだろう。私とアリーゼと交わることで、徐々に血色が良くなってきたシュウ。
「二人のおかげで、エネルギーが溜まってきたよ。ありがとう」
エロプレイをすることで、エネルギーを溜める、ど変態なシュウ。シュウなら悪い気はしないけどね。
いつものシュウに戻り、私達の部屋を出て行った。
---シュウ---
リヴェリアの部屋にいる。ベッドに横たわるリヴェリア。ヒール能力を全開にして、リヴェリアの治療に当たっているのだが、彼女の状態は思わしくない。
原因はわかっている。身体の一部を、食べられてしまったことが原因だ。戦いでの怪我であれば、どんな深手も治せるのだが、食べられた場合は、僕の回復能力では駄目なのだ。
食べられた箇所は、怪我扱いにならず、食料って扱いになるらしい。食物連鎖の理に於いて、食べた部分を修復するのはチート行為と見なされてしまう。例えば、魚を食べて、修復すれば、また食べられるのだが、その食べられて修復された魚は、もはや生物とは認められず、食物と言う物体に分類されてしまうらしい。
だから、アストレア・ファミリアの食べられてしまった皆も、甦らせることができなかった。そういう想定をして、魔術の勉強をしていなかったのが、敗因とも言えるか。
「シュウ…もういい…私を治療しなくていいよ」
「でも…」
リヴェリアの顔は、穏やかだった。
「それよりも、頼みを聞いてくれないか?」
「僕に出来ることなら、なんでもする。言ってくれ」
彼女の手を、優しく両手で包む。
「シュウ…お前と交わりたい。お前と肌を合わせながら、逝きたい。後、私の魂を、フィンの彼女に同化吸収させてくれ。お前達の傍にいたいから…なぁ、シュウ…」
「わかった。一度、僕に吸収させて、運ぶ。もう、亜空間移動に耐えられないから…」
弱々しく頷くリヴェリア。彼女を全裸にして、僕も全裸になり、身体を合わせる。彼女の身体は愛撫すらできないくらい脆くなっていた。身体を合わせるだけしかできない。
「ごめん…これしかできなくて…」
「謝らないで…こんな身体に…身体を合わせて…くれただけでも…幸せだ…ねぇ、キスを…」
荒々しい呼吸の合間に言葉を発するリヴェリア…キスかぁ…それは…たぶん致命的な行為になりそうだ。こんなに呼吸が荒いのに、口を塞いだら…でも、望みなんだよね?
彼女としばし、見つめ合った。苦しいはずなのに、笑顔を絶やさない彼女。そして、呼吸を整えたのか、リヴェリアは首を縦に振り、僕に合図を送ってきた。
意を決して彼女の唇を舐めて、水分を与えて…彼女と唇を合わせ、舌を絡めていく。段々、彼女の舌の動きが鈍くなり…、動きが止まっていく。
僕は彼女の体温が感じなくなるまで、身体を合わせ続けた。そして、立ち上がり、祝福の聖剣を取り出して、両腕で上に掲げて、祈りを捧げ、黙祷をして、彼女の身体の上の空間に印を刻み込む。
そして、招魂をして、僕の身体に彼女の魂を招き入れた。
『ありがとう…シュウ…』
彼女の声が僕の心に届いた。当分、一緒にいるから…
彼女の身体を、聖なる布に包み、聖堂に運んだ。そして、用意をしてあった棺に彼女の身体を横たえた。
フィンやアイズ、フレイヤ、ヘスティア…仲間が続々と集まってきて、彼女の亡骸に別れを告げていく。
「シュウ、彼女はどうするんだい?」
フィンが僕に尋ねた。
「僕の世界のエデンの園に埋める。魂は彼女の遺言により、フィンの奥方に同化吸収をさせる。いいよね、フィン」
静かに頷くフィン。
◇
僕達が喪に服している頃、ベート達は逃亡に成功して、街の中に逃げ込んだらしい。オッタル達が捕らえようとした時、ベート達は逃亡をしたそうで、それを追跡していたオッタル達は、予めベート達が仕掛けた罠に嵌まり、取り逃がしたようだ。
その後、ベート達はモンスター・トレイン(複数のモンスターから逃げ切れずに、後ろを追尾され続ける状態)と化し、地上を目指した。どうも、肉片でモンスター達を手なづけてモンスター・トレインをしたようだと、オッタルから報告があがってきた。
安全地帯と言われた18階と地上階は、ベート達とモンスター達が冒険者を襲い、混乱に拍車がかかったようだ。
◇
「シュウ様…このままにするんですか?」
喪に服し続けていた僕は、最高神に呼び出された。街は荒れ果てているようだった。
「どうしろと言うのかな?僕は、街にいる神族達に落とし前をつけろと、伝えた」
「そうですが…ガネーシャ、ロキ、フレイヤの各ファミリアは主力が迷宮内の混乱の鎮圧をしているために、街に手を出せないようだし、ヘルメス・ファミリアは何もしないし」
「だから、僕にどうしろと言うのだ?なぁ…教えてくれないか?僕は依頼者である、君達の方針で動くと伝えたはずだ。なぜ、方針を決めた時点で手をつけなかったんだ?」
「それは…」
「最高神なら、その位の事できるでしょ?」
「そうですが…」
「なぜやらない?僕には理解できない。この世界は、このまま歴史を刻むんだな」
「今更ですが…オラリオを無くしてもらえませんか?」
「現状はどんな感じなんだ?」
失態をおかした維持新は泣きそうな顔で、現状を報告し始めた。
「イシュタル・ファミリアは全滅です。アマゾネスの味を覚えた、ベート一味の襲撃に遭いました。ベートに説教をしに行ったロキは返り討ちに遭い、ベートは新たに神族の味を覚え、神族狩りを始めたようです」
「あ?そこまで酷いのか?なんで、最高神で手を打たない?」
自分の手は汚したくないのだな?お前らは?
「僕が手を汚せば良いんだな?おい!」
この星の最高神は3柱とも、顔を俯かせ、僕と目を合わせないようにしていた。
「わかった。僕が手を下す。オラリオを封鎖して、誰も出すな」
「住民もですか?」
「オラリオを脱出しても、行き場がないだろ?冒険者でないのだから、ラキアまで辿り着けまい。まだ、苦しませるつもりか?」
「そうかもしれませんが…」
こいつら…煮え切らないなぁ
「なら、そちらで方針を決めてくれ。その方針に沿うように、行動する」
僕は、この場を立ち去ろうとした時に、破壊神が声をかけてきた。
「この後、どうされるのですか?」
「前回、僕と関わった者は、記憶を戻した上で、今度どうしたいかを聞いて廻ってみる。なにか、問題でも?」
僕はその場を後にした。
◇
まず、ヘルメス・ファミリア。
「おい、ヘルメス!なんで対応しないんだ?」
ヘルメスを見つけ、怒りのオーラをぶつける。
「無理だって…ウラノスが喰われ、ギルドも壊滅だ。どうにもならない。今は、どうやってここを脱出するかを、計画している」
僕はヘルメスにある術をかけた。術による変化を感じ取ったヘルメスが、僕に訊いてきた。
「おい、何をしたんだ?」
「お前を、転生人間にした。残りの人生を人間となり、苦しめ」
「そ、そんなことができるのか…」
「あぁ、できる」
「なんで、ベートにそれを使わないのだ?」
「あ?お前ら、神族で落とし前をつけろと言ったはずだ。僕には関係が無い」
アスフィが目に入り、アスフィの記憶の封印を解除した。
「シュウ…会いたかった…」
僕に抱きついて来たアスフィ。
「はぁ?今の今まで忘れていたくせに」
アスフィの鼻をツンツンしてあげた。
「だって…記憶が突然甦ったんだよ~」
僕とアスフィの仲睦まじい姿を見たヘルメスが、僕に襲い掛かってきた。
『ローリングサンダー』
雷属性の拳の連打を叩き込む。その場に倒れるヘルメス。
「おい、僕じゃなくて、ベートを討って来いよ、ヘタレ神族!」
僕はアスフィと共に転移をした。その後、アミッド、椿、ヘファイストス、ナァーザ、春姫を回収した。この世界のアイシャは、春姫を逃がす為に囮となり、ベート達に喰われたそうだ。
回収した者達の意志を確認した結果、全員、僕達と行動を共にすると言う。まぁ、ここに残っていれば、死は目の前にあるからなぁ。
◇
そして、最高神達の前に転移した。
「おい、方針は決まったか?」
3柱の最高神に向かって訊いてみた。
「シュウ様におまかせします。丸投げになりますが…」
「そうだな…わかった。ケリをつける。リヴェリアを安らぎの場所に、早く連れて行きたいからな」
僕は、キャッスルドランに転移した。隣のミアさんにも打診したのだが、この地に残るそうだ。そうなると…う~…
魔法陣を描き始める。既存の物では、ミアさん達にも苦しみを与えてしまうから。それを避けるように、仕掛けを入れていく。
僕の作業をレフィーヤ、アスフィ達が、興味深そうに見入っていた。
「すごい…魔法陣って、自作できるんだ♪」
アスフィは、初めて見たのだろう。人一倍興味を抱いて見ているようだ。
「キバットバット3世、キャッスルドランを高度5000メートルで固定してくれ」
この城の執事に命令をした。
「ツヴァイ、ユニゾンインだ」
僕は広域魔術の得意な妖精ツヴァイと融合をした。
「アギト、システムUDを起動してくれ。溜め込むだけ溜め込んで。ドライグ、発動の瞬間に倍化を譲渡してくれ」
次々に仲間達に命令をしていく。そして、
「リヴェリア、力を貸してくれ。僕だけの力では無理だ」
『私はいつでもシュウと共にいます♪』
彼女の声が、念話となり、みんなに届いたのか、涙ぐむ者が出ていた。
「さて、デカイ花火を上げて、離脱する。この場合、打ち下ろすというのが正解かな。作戦に関わらない者は聖堂で、祈りを捧げていてくれ。漂っている魂も昇華させていくから」
フィンを先頭に聖堂に向かう面々。僕は意識を集中して、キャッスルドランとオラリオの間に魔法陣を展開させた。