---シュウ---
祐一の荷物を段ボールから出して、記憶を読み取りながら、部屋に収納させていく。まったく、この街を感じさせるものがないなぁ。単調な作業に飽きてきた、その時、祐一の荷物と思えない物が大事に仕舞われていた。
紅いカチューシャ…
祐一の想いを受け継いでいく。そうか…そんなことが…また、大事に仕舞われている物が出て来た。
鈴のついたキーホルダー…
また、祐一の想いを受け継いでいく。そんな…どうしろって言うんだ、君は…物哀しい想い受け継いでしまったかな。
少し散歩をしよう。向こうから寄ってくるかは疑問であるけど。この身体の魂は祐一の魂ではないので、相手が祐一と認識できるかが問題であった。鈴のついたキーホルダーだけを身に着けるか。
念話で、白音、ギャスパーに連絡をして、サポートを頼んだ。部屋を出ると、名雪が立ち尽くしていた。
「名雪、何しているんだ?」
僕の声で我に返ったような名雪。
「あっ、祐一…何でもないよ」
そういうと、自分の部屋に入っていった。何でもないなら、いいっか。階段を降りると、秋子さんがいたので、声をかけた。
「少し散歩をしてきます」
「いってらっしゃい、祐一さん」
◇
散歩と言っても、行く宛てが特に有る訳ではない。そもそも、どこに何があるかもわからない。念話で白音と会話をする。
『帰りたいよ~』
『珍しいですね。シュウさんが弱音を吐くなんて』
『想いを受け継いだんだけど…これって物哀しすぎるって。僕向きではないよ』
『シュウさん、次左です』
地図を見ながら、行くべき方向へ誘導していくれる白音。
『ここは商店街かな?』
『そうです』
商店街をぶらつく。うん?テレビの箱…あれってブラウン管のだ…いつの時代のだ?あれ?動いている。
驚いている僕にテレビの箱が飛びついてきた。
「見つけた!祐一…許さないからね」
箱の中から女の子が出て来た。
「君は誰?」
「祐一…ひどい…私を忘れるだなんて…」
そんなことを言われても、僕の記憶にも祐一の記憶にもないんだが…
「ねぇ。人違いなんじゃないの?僕はこの街に今日着いたばかりなんだけど」
「あなたは相沢祐一でしょ?」
「そうですが…」
「人違いじゃないわ…私は、沢渡真琴よ。忘れたの?」
見た目は小学生だ。祐一がこの街を訪れたのは、7年前…おい!お前、まだ赤ん坊だぞ。でも、沢渡真琴っていう名前に覚えが…たしか、近所にいた沢渡さんちのお姉さんの名前…
「真琴さんは、僕より歳上のはずだけど…」
「それがどうしたのよ…私じゃ不満なの?」
こいつのオーラ…人間ではない。
「不満というより不安かな?だって、まだ7つ位だよね?」
「そうだけど…それがどうしたのさ」
「僕は7年ぶりに帰って来たんだよ」
やっと、矛盾に気づいたのか、目の前の女の子がトーンダウンした。
「あぅ…」
「もし以前会っていたとしたら、君は赤ん坊だぞ」
「あぅ…でも、祐一が憎いんだよ。私を捨てたじゃないの」
捨てた?あぁ…この子がそうか…僕は、目の前の少女と転移した。
「ここは?」
「天国だよ、真琴さん」
僕は天使の翼を展開した。
「祐一が…天使に…」
真琴さんも、本来の姿に戻っていた。そのことに本人は、気づいていないみたいだけど、スルーしておく。
「君の探している祐一君は、飛行機事故で死んでしまった」
「あぅ…もう、会えないの?」
「会えない。甦らせようにも、魂がロストしてしまったんだ」
「あぅ…もう会えないのね」
僕は祐一君の荷物から持ち出した、鈴付きのキーホルダーを出した。
「でも、祐一君は、君の事を忘れていなかったと思うよ。ほら、これって君との思い出の品だよね?」
キーホルダーを見て、それを手に取って、鈴の音を懐かしみ、涙で濡れていく女の子。
「祐一君は、それを大事に持っていたんだよ。彼の想いが伝わるかな?」
「あぅ…私を捨てたんじゃなくて、自然に戻してくれたのね。祐一の帰る場所には、自然がないから…それなのに…私は恨んでいた。ず~っとず~っと。それで命と引き替えで人の身体を得て、祐一に復讐しようって…ひっく…」
祐一君の想いを、引き継いでくれた幼弧。そんな彼女を優しく抱きしめた。
「なぁ、僕で良かったら、一緒に暮らさないか?」
「えっ…」
「祐一君のような心ではないけど、君の寿命を延ばすことは出来るよ。どうする?」
「うっ…祐一がいないんじゃ…」
僕は、キャットテール、キャットイヤー付きの半猫状態の白音、黒歌、銀華を召喚した。
「なんで…猫さんなのに…」
「彼女達が友達になってくれるよ。真琴のような狐ではないけど。そうだ、狐もいるよ。九尾の狐が仲間にいるんだ」
「尻尾が9本の?」
「そうだよ。どうする一緒に暮らす?それとも、ここでお別れする?」
真琴は悩まずに答えてきた。
「あぅ…一緒に暮らしたい。祐一の分まで、もっと生きたい」
「わかった。汝の願いを叶えよう」
僕は祝福の聖剣を頭上に掲げて、祈りを捧げる。
「この幼狐の心の闇を浄化し、この幼弧にかかった災いを消滅させ、この幼弧に新たな生を与え賜え!」
光のオーラが幼弧を暖かく包み込む。光のオーラが霧散していくと、人型になり眠っている幼弧の姿があった。
「黒歌、銀華、沢渡真琴を、ベースキャンプに連れて行って、生活にならしてくれるかな?あぁ、九重を呼び出して上げて。落ち着くと想うから。白音は引き続き、僕のサポートを頼むよ」
仲間達に指示を出した。これで1個目をクリアかな?