※この作品はR-18です。

神器なき男 (再編集版)   作:もっち~!

235 / 260
少女へのお礼

 

 

---シュウ---

 

夕日で茜色に染まる商店街に戻ってきた。すると、僕の方に走ってくる少女がいた。

 

「祐一君、助けて~!悪人に追われているんだよ」

 

へっ?誰?この子は?

 

僕の腕を掴み、一緒に走るハメになった僕。どこに行くんだ?悪人?念話で、ギャスパーに悪人の正体を、確認してもらうことにした。

 

しばらく走ると、ポプラ並木の道路に出た。ここはどこだ?

 

「ここまで来れば大丈夫かな?ねぇ、祐一君も食べるでしょ?たい焼きを」

 

手にした紙袋から、たい焼きを1匹くれた。

 

「ここのたい焼きって、おいしいんだよね」

 

たい焼きを頬張る少女。ギャスパーから念話が入った。悪人の正体は、たい焼き屋のおじさん。お金を払わないで持ち逃げした少女を追いかけていたそうだ。ギャスパーに代金を払ってあげてと頼んだ。

 

「なぁ、お前。誰だ?」

 

「え?何言っているんだよ。祐一君、ボクを忘れたのか?」

 

キョトンとした表情の少女。忘れた?少女をマジマジと見ると、羽の付いたランドセルを背負っていて、ダッフルコートを着ていて、髪には紅いカチューシャ…えっ?まさか…なんでランドセル?

 

「月宮あゆだっけ?同い年の?」

 

「そうだよ。祐一君が覚えていてくれて、ボクは嬉しいよ」

 

「で、このたい焼きのお金は払ったのか、あゆ?」

 

テンションが落ちた声になった。

 

「うぐぅ…ちょっと、お財布を忘れてね…」

 

「払っていないんだな?」

 

「次行ったら、払うよ。もう、祐一君の意地悪…」

 

少し涙目の少女。

 

「で、あゆ。ここはどこだ?僕は7年ぶりにこの街に来たので、土地勘がまるでないんだけど」

 

「えっ?!」

 

周りを見渡すあゆ。そして、なんか俯いていて、顔を上げないんだけど

 

「もしかして、あゆもわからないのか?」

 

「うぐぅ…祐一君の意地悪…」

 

顔を上げたあゆは、2匹目のたい焼きをほおばっていた。

 

「あゆ…」

 

僕は拳であゆのこめかみ辺りをグリグリしてあげた。

 

「痛っ、痛いよ、祐一君」

 

「はぁ?迷子になったかもしれないのに、のんきにたい焼きを食べているから」

 

「うぐぅ…だって、食べたいんだよ。暖かいうちに食べないと、おいしく食べられないから」

 

「はぁ…」

 

溜息をもらすと、クスクス笑う声がした。後ろを振り返ると、あゆよりも細くて、青白い顔の少女が笑っていた。この子…

 

「あゆのせいで、笑われただろう?」

 

「うぐぅ…そんなこと、言われても…」

 

グリグリしたこめかみを摩っているあゆ。

 

「あっ、ごめんなさい。笑ってしまって。あなた達の会話が、楽しそうだったから」

 

「僕は相沢祐一、このへんちくりんは月宮あゆ、君は?」

 

「へんちくりんじゃないよう」

 

って、あゆが抗議しているがスルー。

 

「私は、美坂 栞です」

 

「栞ちゃん、商店街って、どう行けば良いのかな?」

 

商店街への戻り方を訊いた。

 

「ありがとう、栞ちゃん。このお礼は、いつかするからね」

 

「このくらいの事で、お礼だなんて、大げさ過ぎますよ。祐一さん」

 

「じゃぁ、またね!」

 

栞ちゃんと別れて、商店街に戻った、僕とあゆ。

 

「そうだ。ボク、探している物があるんだ。祐一君、またね♪」

 

あゆは、夕闇が迫る商店街の奥の方に消えた。

 

◇

 

名雪の家に戻る途中、物見の丘という場所で、ギャスパーと白音と合流した。

 

「どうしようかな」

 

「どちらを先にこなしますか?」

 

白音が尋ねてきた。

 

「あゆは、まだ不明な点がある。あの子は何だろう?人間ではなかった。魂もなかった。でも、実体はある。何者だろうか?」

 

「シュウさんと別れた後の彼女を追ったのですが、途中で見失いました。転移とかそういうのじゃなくて、闇に溶け込んだというか」

 

闇の力を使えるギャスパーでも、よくわからない現象のようだ。

 

「そうだ。魂を無くした兵藤君と同じオーラかぁ。そうなると、本体はどこかにあるんだろうな。白音、生き霊って探索できるか?」

 

「難しいです」

 

「あゆの探索は?」

 

「先程からしているのですが、わからないです。こんな事は初めてです」

 

「そうなると、あの月宮あゆは、僕達の知らない存在ってことだな。厄介だな。紅いカチューシャはプレゼントしていないはずなのに、既に装着しているし。何者だろうか?」

 

「この街は、なんらかのパワーで覆われているみたいです。あの幼弧にしても、普通は命と引き替えで、あのような姿にはならないんです。誰かと契約したならともかく」

 

「オリジナルの祐一君かな?」

 

「普通の人間ですよね?」

 

「のはずだ。もらった資料によると。でも、ねぇ…援軍をもう少し呼ぼう。誰が適任かな…」

 

「椿姫さんとかは?」

 

「退魔系は逆効果かもしれない。退散させるのではなく、情報を探れる者だ…シャボン玉使いの兄ちゃんならどうだろう?」

 

「あぁ、過去の記憶を呼び覚ませますね。でも、オリジナルの祐一さんがいないとダメでは?」

 

「いや、もう一人事情を知っていそうな人がいるんだ」

 

僕はデュリオ兄ちゃんを召喚した。

 

「え?僕で出来ることってあるの?」

 

突然、赴任地に召喚されて、驚いているデュリオ兄ちゃん。

 

「今夜、水瀬秋子さんが寝ている時に、過去の記憶を探ってきて欲しいだ」

 

「そこに、今回の案件を解く鍵があるのかい、シュウ君」

 

「たぶん…まぁダメ元だよ」

 

「わかった。やってみよう」

 

デュリオ兄ちゃんがこの場を後にした。僕は分身の術で、僕の分身を1体創り出した。

 

「君は、先に帰って、名雪達を心配させないようにしてくれ。僕は用事を終えたら帰宅するからね」

 

「了解!」

 

僕の分身も、この場を後にした。

 

「さてっと、白音とギャスパーで、この辺りのパワースポットを探してくれるかな?たぶん、思い入れとか念とかの系統のパワーだと思うんだ」

 

「「了解!」」

 

二人は探索に出かけた。さて、僕も出掛けるか。

 

◇

 

僕は、栞ちゃんの部屋に着いた。僕を見て、驚く栞ちゃん。

 

「どうやって、ここに来たの、祐一さん?」

 

彼女の問いはスルーして、

 

「お礼に、君の病を治しに来ました」

 

僕の言葉に驚く、栞ちゃん。

 

「私の病気は原因不明で、治らないのよ」

 

哀しそうな顔をする栞ちゃんを、僕は天使の翼を展開して、彼女を翼で包み込む。一瞬、彼女は驚いたが、すぐに平常心になっていった。

 

「祐一さん、あなたって、天使なの?えっ…暖かい…ここはどこ?」

 

「あなたが病んでいる原因がわかりました。これから、あなたの病の元を取り除きます」

 

僕は、祝福の聖剣を掲げた。

 

「この少女に取り憑く心の闇よ、彼女から消え失せろ!彼女の身体よ、細胞の再生力を上げたので、彼女の生きたい願望に従え給え!」

 

そして、黙祷を捧げて彼女の身体にエールを送る。

 

次第に、顔色が良くなり、笑顔で眠りにつく栞ちゃん。そして、彼女の記憶から、僕の記憶を取り除き、この場を立ち去った。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。