---シュウ---
「僕は悪夢の道化師…悪夢の原因がわかったよ。名雪さん、君が呪いを掛けたんだね?」
目の前の名雪は、驚いた表情をして、僕を見ていた。
「残念だけど、君のお母さんは、助けたよ」
「なんで?そんな余計なことを?」
目の前の少女の顔には、怒りの色が浮かんでいた。
「君の願いは無意味だから…祐一君と二人っきりになることは、もう叶わない願いなんだよ」
「なんで、言い切れるの?そんなことない。祐一は私といてくれるわ。だって、お母さんも、あゆって女も、あの狐も、あと舞って女も呪ったんだから」
やはり、こいつが元凶だ。
「なぁ、呪いを願い、何を差し出したんだ?」
僕には予想できていた。きっとアレは報酬にされたんだ。
「身体の弱い友達の妹の命…名前は…え~っと…そうだわ、美坂栞の命!」
そこにも関わっていたのか…
「なぁ、報酬ってさぁ、願者(願い出た者)の大事にしているモノを差し出すんだよ。そんな、願者にとって必要でないモノは、報酬にならないんだ」
目の前にいる、悪意の固まりとも思える少女に、説明をした。
「そんな…では、お母さんにしてもらうわ」
こいつのせいで…
「舞の心の病、あゆの大怪我、栞の原因不明の病、真琴の命をかけた転生…そして、秋子さんの原因不明の大怪我、全部、お前のせいだ。だから、ロストしたのか…報酬として…」
やはり、人間は愚かで醜い生き物である。こんなにも悪意のある願いを、本能でしてしまうとは。
「何が言いたいの?」
「祐一の魂。それが報酬だったんだよ。だから、祐一の魂はロストをして、甦らせることもできなくなった。総ては、お前のせいだ、名雪!」
「何を言っているの?祐一はさっきまで、一緒にいたのよ」
「そう思うなら、そう思え。お前はこれからの人生、悪夢と共に生きろ。お前のせいで、大勢の者が不幸になった。祐一、舞、あゆ、真琴、栞…そして、秋子さん…なんてこった…今、秋子さんが旅立ったみたいだ…くそっ…」
名雪が口走ったことで、秋子さんに再度、呪いが発動したようだった。きっと、奇蹟をおこすはずだった祐一の魂は、価値のある物で、おつりの分を消化する為に、呪いが受諾されていくようだった。秋子さんの大怪我を、僕が回復したことで、もう一歩踏み込んだ不幸、原因不明の即死をさせたんだと思う。
秋子さんを甦らせることは出来たが、あえてしないことにした。甦らない方が幸せなことがある。きっと、甦らせれば、さらなる不幸、今度は苦しみながらの死になるかもしれないから。
僕は、祝福の聖剣を取り出し、名雪の魂に細工を施した。
「お前の魂に、天命を全うするまで、死ねない呪いをかけた。自殺しようにも、死ねない呪いだ。死んで逃げることは許さない。しっかりと、行いをみつめ直せ!」
そう名雪に告げると、僕は物見の丘に転移した。そこでは、ギャスパーと白音が待っていた。
「後味が悪い任務だったなぁ…とりあえず、任務終了だ。さぁ、僕達の世界に帰ろう」
僕達は、頭を下げている秋子さんの魂に見送られて、僕達の世界へと帰路に着いた。
---名雪---
意識が朦朧としている。何かが大量に鳴っていた。目をうっすらと開けると、目覚ましが鳴っていた。寝ぼけながら、1つずつ確実に止めていく。
あれ?今日は、祐一は起こしに来てくれないのかな?ベッドから起き上がり、隣の部屋、祐一の部屋のドアを開けて、室内を見た。掃除をして塵が落ちていない部屋。本棚もラックボードもただ置かれているだけ。本も、小物も何を置いていない。がらんとした広い部屋。
祐一はもう起きたのかな?階下に下りていくと、呼び鈴がなった。玄関へと向かうと、運送屋さんが段ボールを何箱か持って来ていた。
「お届け物です。これにサインか判子をお願いします」
受け取り証にサインをして、荷物を受け立った。配送伝票には、「相沢祐一」の文字がある、祐一は何をこんなに買ったのかな?
リビングルームに向かう。食卓に祐一の姿はいなかった。台所に向かうと、そこにはお母さんもいなかった。二人で、どこかに行ったのだろうか?
お母さんの部屋に行くと、お線香の香りが漂い、祭壇があり。お母さんの写真が、額に入って飾られていた。なんで?私って、悪夢でも見ているのかな?
玄関のドアが開く音がして、玄関に向かうと…
「なんだ、祐一君の遺品を、まだ部屋にあげていないのか?名雪、母さんの最期ってどうだったんだ?」
喪服を着たお父さんが、玄関に立っていた…