※この作品はR-18です。

神器なき男 (再編集版)   作:もっち~!

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ありすメモリーズ(想い出)

 

 

---翼---

 

目覚まし時計のアラームで目が覚める。ルンバに起こされることはもうない。布団から抜け出して、ベッドから転げ落ちる。あぁ、ベッドで寝ていたんだ。部屋には、朝日の陽光がカーテン越しでも差し込んできている。カーテンを開くと、太陽の光が私を包む。こんなに朝日って暖かかったんだ。窓を開けると、朝の空気が気持ち良い。気分を明るくしてくれる。

 

洗面所に向かおうと部屋を出ると、真琴さんとあゆさんが私に泣きついてきた。

 

「有栖が…」

 

有栖君に何かあったらしい。彼女達に手を引かれて、リビングに向かうと、弱々しく床に座り込んでいる有栖君と、彼の腹部に手を当てている少女…吸血鬼の絞り粕で成れの果ての少女がいた。

 

「あ…翼さん…朝食…作らな…きゃ…」

 

彼は立ち上がる力すら残っていないようだった。

 

「どうしたの?」

 

「大丈夫…忍さんが…徹夜で看病…してくれた…から…」

 

息づかいが荒々しい。全然大丈夫じゃないよ~

 

「デカ乳娘、お前、有栖の事が大切か?」

 

元吸血鬼が振り向いて言った。デカ乳?見回すと…私の事のようだ。あゆさんも真琴さんもまだ発育途中みたいだし。

 

「勿論、大切です」

 

「なら、アリスと交わって欲しい」

 

うん?どういうこと?

 

「忍さん…翼さんにも…好みがある…僕じゃ…ダメだよ…」

 

有栖君はそういうと、首をうなだれ、ぐったりとしてしまった。

 

「有栖君、死んじゃうの?」

 

元吸血鬼に向かって訊いてみた。

 

「いや、単なるエネルギー切れじゃ。女性のオーガズムに達する時のエネルギーを与えれば、良くなる。まったくもって、けったいなエナジードレインじゃ」

 

はぁ?そんなエネルギーを摂取しているの?

 

「まぁ、時間はかかるが、放っておけば、自然回復するじゃろうがな。かっかっかっ」

 

ここに置いておくには忍びないので、せめてと思い、私は彼を彼の部屋に運んだ。彼の部屋は、殺風景だった。テレビとビデオの再生機だけが、ぽつんと置いてあるだけ。テレビはアンテナを繋いでいなく、ビデオの再生だけをしているみたいだ。ベッドはなく、薄い布団が敷いてあるだけ…私の…私の頂いた部屋とは大違いだった。

 

「翼さん…ビデオを再生して…見れば元気が出るから…」

 

彼に言われるまま、ビデオを再生した。記録されていたのは、複数の首を持つ化け物と、ソレと戦う者の戦い。戦っている者は、身体の一部が斬られようが、爆ぜようが、潰されようが…再生を繰り返し、決して怯むこと無く戦い続けている。

 

「僕の宝物…父様の勇姿だよ。僕も…あぁ成りたいんだ…」

 

ビデオを見ていて私の脳裏に1つの童話が浮かんだ。

 

最強な魔物が現れた世界。強すぎて誰も戦いを挑もうとしない、そんな時に、一人の元戦士の男が立ち上がった。愛する者の為に、愛する者が生きていく世界の為に、その男は、最強の魔物に勝つ為に修行を積んでいく。修行を積むにつれ、気づく。最強の人間では、最強の魔物に勝て無いことに…そこで、男は人間を捨て魔物となり強くなっていく。そして、ついに最強の魔物を倒した男…だったのだが、最強の魔物を倒した自分も魔物で、倒した時点から自分が最強な魔物になったことに気づいた。男は悲観をしたが、すぐに思い直して、自ら命を絶った。そんな男を不憫に思った神は、男を星にして、男の愛する者が住む世界から見えるようにした。たしか、そんな話だったかな。

 

「それは、まさに、父様の戦いがベースだよ」

 

私の心を読んだ有栖君が、テレビの画面を見ながら言った。

 

「でも、現実はそういうハッピーエンドでは無かった」

 

え?これってハッピーエンドでは無いんだけど…

 

「父様は、自らの命を絶ったつもりだったが、最強な魔物故、自殺くらいでは死ななかったんだ。見て分かる通り、再生能力を持つ、ほとんど不死身な身体だったからね。戦闘能力が上がるにつれ、父様の身体も進化していった。最凶な戦闘に特化した魔物に…そして、仲間の者が見てはいけない姿になってしまった。見ただけで恐怖を感じ、死を予感できる身体になってしまったんだ。ある戦いの後、母様はその見てはいけない姿を見てしまい、あまりの恐怖から気が触れてしまった。それ以来、父様は母様に逢えないでいる」

 

有栖君の声は哀しそうだ。

 

「たぶん、母様の最期の時にしか逢えないんだろうな…でも、父様は哀しがらない。母様の住む世界を護れたことを喜び、これからも護っていくことに生きがいを感じているし、母様のことを忘れないでいてくれている。だから、今回のような、他の世界からのちょっかいには敏感なのさ。平和な世界を覗き込んで、何をしようとしているの?この世界の人達は?ねぇ、教えてください」

 

有栖君は泣きながら、私に抱きついてきた。私は彼を優しく抱きしめることしか出来ない。私の知識では、彼の疑問には答えて上げる事はできないから。

 

抱き合ううちに、彼の感情が落ち着いてきたようだ。彼の顔と私の顔は見つめ合っていく。そして、どちらからでもなく、唇を唇で出迎えに行った。そして…

 

どうしてこうなったのか、記憶が定かではないが、私は彼と交わっていた。私が上にいることから、私がリードしたんだと思う。自然の流れで、こうなったんだろうとしか思えない。彼の身体の一部、私の中に差し込まれている部位から、暖かなオーラを感じる。そのオーラを受け入れていると、私の中の嫌な想い出や、しがらみが昇華して消えていくようだ。言葉では言い表せないが、とても幸せな気分である。

 

私は私のしている行為に驚いている。完全に彼をリードしている私。何度、果てようとも、彼を求め、またリードして行為に及ぶ。こんなにも、私は飢えていたのか、っと思えるくらいに

 

 

 

---阿良々木暦---

 

羽川が、そのような行為をしていると知らない俺は、忍野の処にいた。忍野の先輩である臥煙伊豆湖さんもいる。30代くらいだと思うのが、見た目は20代前半に見える。いや、10代後半にもいそうかな…なんといっても、スタイルも良さそうだし、美味しそうな女性だ。

 

「こよみんは、この件から手を引いて欲しい」

 

俺のことを「こよみん」と慣れ慣れしく呼ぶ。まぁ、お友達にしたい女性から、そう呼ばれることに抵抗は感じないので、その点には文句は言わない。

 

「はぁ?妹も母も父もアイツにやられたんですよ?今更、手を引けって言われも、困ります」

 

「こよみん、妹さんもご両親も、やられる理由があるだろ?一方的にアイツがやったのならば、しょうがないが、そうでないなんだ。君の家族の方から、仕掛けたんだよ。そのリスクは受け入れてもらわないと、バランスが取れないんだよ」

 

「仕掛けた?」

 

「そうだろう?妹さん達は果たし状を出さなければ、あぁはならなかった。ご両親も、拳銃を発砲しなければ、あぁはならなかった。彼は被弾した被害者だよ」

 

「はぁ?被害者?人間でもない奴が被害者になる訳ないでしょ?」

 

「それを言ったら、こよみんと、下の妹さんは被害者から除外になるよ」

 

下の妹?月火ちゃんか?

 

「なんでですか?」

 

「はぁ…こよみんは頭が弱いのかな?こよみんは、吸血鬼もどき、下の妹…月火は、怪異だからね」

 

え?月火ちゃんって怪異?そんなことは…

 

「月火ちゃんが怪異の訳ない。俺の妹だぞ」

 

「いや、怪異だ。不死鳥、フェニックスと言った方が分かるかな?こよみんより、再生治癒能力は上だ。だから、アイツはそれを知って、エナジードレインだけしたのだろう」

 

え?月火ちゃんって…アイツのしでかした事よりも、月火ちゃんの事の方が重大な問題だ。

 

「なんで、月火ちゃんは怪異に?」

 

「こよみん!今はその話は後だ。アイツに対する善後策が先だよ」

 

 

---伊豆湖---

 

私と私の血縁な者を供物として差し出せか…そんなことは、出来る訳が無い。ならば、どうするか…

 

「先輩、何を探っていたんですか?」

 

ネネが尋ねてきた。

 

「あぁ、神をも殺す殺伐者を生んだ世界って聞いて、どんな世界かと覗いただけだ。まぁ、未遂だけどな。チャネリングで探れない世界って初めてだよ。様々な結界で護っていやがる」

 

あの厳重さは、とても気になる。どんな秘密が、隠されているんだ?

 

「先輩、先手必勝とか考えないで下さいよ。一応、窓口は僕で、被害がこっちに来るからさぁ」

 

30過ぎのおっさんが、アロハにバミューダにサンダルって、そんな若作りな恰好をするなよ、みっともないなぁ、こいつは…

 

「アイツらの世界に侵入するとかは?」

 

「ダメです。刺激をしないでくださいよ、まったくもう…」

 

コイツは、慎重過ぎるのが玉に瑕だな。

 

 

 

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