あゆちゃん達を送り届けて帰ると、リビングに知らない少女が、駿河と戯れていた。
「駿河、誰、この子は?」
リビングで全裸で抱き合っている片方に訊いてみた。
「あっ、先輩。あなたのエロ奴隷、神原駿河はガールハントして、あなたに供物を捧げようと思いまして…」
こいつ、初登校日に何をしているんだ?
「で、なんで、リビングでやっているんだ?」
「戦場ヶ原先輩に追い出されまして…」
あぁ、あっちはあっちでmなさっているんだね…少し説明しておこう。
エロ奴隷を自称している神原駿河、結構裕福な家の娘で、身体能力抜群なアホである。勉強に関してはそこそこなのだが、趣味がアホである。愛読書はBL本オンリーで、基本、ユリである。趣味はガールハントで、愛している女性は戦場ヶ原ひたぎ…しかしひたぎさんは、僕の愛人を自称している関係で、僕のエロ下僕を自称して、僕達と暮らしている。アホでしょ?まぁ、一緒に暮らすことに関しては、両家の親は了承しているので、問題はないのだが…そうなった原因は、自分のエゴ、ひたぎさんと一緒になりたいという願いを悪魔と契約して、悪魔に魂を売って…願いが叶うことなく成敗されたのだった。悪魔と分離した後、神原家では育て方に問題があったとして、僕の父様に彼女の身柄を預けたのだ。結果、僕達と住む事になった。
次に神原駿河の想い人、戦場ヶ原ひたぎは、母親は宗教にはまり、家の財産を食いつぶした挙げ句、両親は離婚。ひたぎさんは父親に引き取られて、質素な生活をしていたのだが、ある時出逢った重し神という八百万の神もどきに、軽くなりたいと願い、心の重み、精神の重み、身体の重みなどの重みを供物として捧げた。しかし、彼女はその総てを受け入れる決心をしたのだが、神は供物を返さずに、彼女に取り憑いたままであった。憑依する神を父様が分離したことで彼女は普通の人間に戻れたのだが、神もどきが憑依する前まで、付き合っていた羽川翼のことが忘れられず、僕の愛人を自称して、僕と婚約までして、僕達…いや、羽川翼と住むことになった。
最後に、僕の最愛な人、羽川翼…実の父を幼い頃に失い、実の母が再婚した直後に亡くなり、義父が再婚することで、両親がいたが、一緒に住んでいた両親は、彼女と血の繋がりはない上、心の繋がりもなかった。ただ、世間体の問題で一緒に住んでいる他人という認識のようで、彼女には自分の部屋を与えず、寝るのは廊下、目覚まし時計はルンバという、可哀想な境遇であった。別世界において、僕は別世界の彼女にお世話になっていたので、この世界の羽川翼さんを保護した。彼女の両親と父様が交渉をして、彼女の身柄を譲ってもらい、僕達は結ばれた…しかし、彼女には彼女がいたのだ。羽川翼もまた基本ユリであった。その彼女は戦場ヶ原ひたぎだった。
要するに我が家にいる人間の女性は全員、ユリなのだ…そして、僕は女性不信気味に…我が家の人外の女性は全員、恋愛に興味ないし。食欲優先と言うか…
男に興味のない女性達と暮らしている理由なのだが、僕のエネルギー摂取方法は父様譲りな特殊なもので、女性がオーガズムに達する時に発生するエネルギーをドレインするのが基本であった。彼女達は僕の特殊性を知っているので、僕がエネルギー切れを起こしたときは、率先して供物となってくれる。そんな関係である。しかしながら、翼さんとは愛を語り合うときもあるけども…
◇
で、僕と話している間も駿河は少女を、いたぶっていた。コイツ、僕達の前ではエムだが、基本エスという、人によってプレイスタイルを変える変態である。
「それで、この子は誰?」
「同じクラスの…何だっけっかな?う~、はて…そうだ。天野美汐さんです」
天野美汐?どこかできいた名前だけど…リビングに隣接している書斎に向かい、今回の事案の資料、父様にいただいたデータなどに目を通していく。あぁ、あった。狐に魅せられた少女か…真琴さんと同じように、彼女に会うために人化した狐がいたそうだった。何かの想いで狐が人化するには、記憶と命を代償にその能力を得られる場合があるらしく、もし、人化しても命の灯火は一瞬の煌めき程度で、長くは生きられないらしい。
きっと、彼女が再会した狐も…父様、救えませんか?
『息子の頼みだ。その願いは受けた。ピロの魂に同化吸収させておく。あとで、会わせてあげなさい。真琴には僕の方から言っておく。彼女ならわかってくれるよ』
っと、父様から念話が届いた。僕は書斎を後にした。
リビングに戻ると、駿河と美汐は果てていた。
「おい、駿河。まき散らした体液は、明日の朝食までに掃除しておけよ」
駿河は喋る体力すらないのか、手をあげて応えるのが精一杯みたいだ。次に美汐の傍に行き、
「君の心の隙間を埋めてあげる」
彼女をひきづって、ピロの近くまで連れて行った。魂は同化されたみたいで、美汐の匂いに反応するピロ。僕はピロを美汐に触れさせた。彼女の匂いを嗅ぎ、彼女を舐めるピロ。そんなピロに気づく美汐。
「なんで…あの子がここに?」
「魂を同化させてあるだけだ。この家からは出せないし、他言は無用だ。わかるな?」
頷く美汐。
「その代わり、約束を守ってくれれば、いつでも会いに来て良いから」
「ありがとうございます…あなたは何者?こんなことが出来るなんて」
僕は言葉に出さずに、天使の翼を展開だけした。
「あっ…ありがとうございます…天使様…」
美汐をピロの部屋に連れて行く、添い寝をさせた。僕は僕の部屋で、仕事の疲れを癒やすように爆睡した。
◇
朝、けたたましい怒声で目が覚めた。何事かとリビングに向かうと、いまだに全裸で寝ている駿河、それに対して、文句を怒鳴り散らしているひたぎさん、戸惑っている翼さん。ピロの部屋も騒々しい。あっちはなんだ?ピロを抱えて離さない全裸の美汐、取り戻そうとしている真琴さん。あたふたしているあゆさん…なんだよ朝から、カオスだなぁ…あれ?忍さんは?探してみると、キッチンの隅で、ドーナツを食しておられた。
なんだよ…朝から…はぁ…
忍さんと共に、キッチンの隅で朝食を終え、学校へ行く支度をする。支度を終えて、あゆさんとともに家を出る。
教室に着くと、香里さんとあゆちゃんと北川が寄ってきた。
「なぁ、今日は俺も遊びに行ってもいいかな?香里がさぁ、どんな家か教えてくれないんだよ」
今日はたぶん、てんやわんや状態だしなぁ、あれじゃ…と、朝の風景を思い浮かべた。
「北川、それはダメだよ。今日は私の家に来て貰うから」
って、香里さん。そんな約束したかな?はて?
「あっ…私の家にも来てくださいね♪」
って、あゆちゃん。
◇
で、放課後。商店街を歩く僕達。北川も一緒である。
「なんで、あんたがいるのよ」
北川に文句を言う香里さん。
「僕も同じ帰宅部だよ」
動じない北川。こいつはメンタルが強そうだ。
「アリス~」
うん?僕を呼ぶ声がした。声のする方を見ると、あゆさんが猛ダッシュで近づいてきて、僕にタックルを喰らわした。あゆさんを抱くようにして、後ろに倒れ込む僕。
「アリス、いい所に来た。ボク、たい焼きが食べたいんだけど…」
「あぁ…お小遣いが足りない?」
「うぐぅ~」
困った顔のあゆさん。
「取り敢えず、立ち上がってくれるかな?財布が出せない」
あゆさんは立ち上がり、僕も立ち上がった。僕はたい焼き屋さんで、たい焼きを購入して、香里、あゆさん、あゆちゃんにプレゼント。
「なぁ、俺の分は?」
「男にエサは撒かない」
「あのお店のたい焼きはサイコーだよね、あゆちゃん」
って、あゆさんが美味しそうにたい焼きを頬張っている。
「そうですよね。私もあの店のたい焼き大好きです♪」
彼女達の事情を知っている香里さんは暖かい目で、二人の「月宮あゆ」を見守ってくれている。
「なぁ、有栖…」
僕に縋る北川。
「自分で買って喰えば良いだろ?」
「おごられるのが良いんだよ~」
訳がわからんことを言うヤツだな。
「あゆちゃん、学校の帰りに買い食いはダメです」
って、知らない声があゆちゃん?に、掛かった。
「栞ちゃん、大丈夫だよ。ボクのお兄さんの差し入れだし」
栞?そう言えば香里さんの顔が強張っている。この子か。
「あゆさん、紹介してくれるかな?」
「はい。同じクラスのお友達で、美坂栞ちゃんです」
栞ちゃんも香里さんに気づいたようで、顔が…
「うん?美坂って…香里の妹か?」
って、北川…おい、空気読めよ。
「え?知らな…痛い…」
僕は香里さんの頭にチョップを入れた。
「おい、隠すなよ。事実から目を逸らすな、香里さん」
キョトンとしている美坂姉妹。
「そうだよね…有栖は知っているものね…栞、ごめんね」
香里さんが、存在を否定しようとした妹に謝罪をした。意味が判らずに、キョトンとしている北川。
「お姉ちゃん…」
「香里さん、二度とするなよ」
「うん…有栖、ありがとう…」
「有栖、何があったんだ?」
状況のわからない北川が、僕に詰め寄る。スルーしておこうか。
「じゃ、僕はあゆちゃんを送って…」
香里さんに目で合図を送ると、彼女は頷いた。
「じゃな、北川…ジャマ立てなんて野暮なことはしないよな?」
って、釘を打ってから、あゆちゃんとあゆさんと三人で帰る。
◇
あゆちゃんの家…いや、月宮家…神社だった…
「月宮神社って言うんだ。小さいけどね」
「ねぇ、あゆちゃんって巫女さん?」
あゆさんが興味深そうにきいた。
「うん」
恥ずかしそうに頷くあゆちゃん。
「いいなぁ…」
「おいおい、天使見習いの言う台詞じゃないぞ…」
「あぁ、そうだったそうだった。ボクは天使見習いだった。ははは」
あゆさんもあんな事がなければ、巫女さんになったかも…あ…そうか、そういう力を持っていたから生き霊として実体化が出来たのかもなぁ…と、あゆさんに起きたことを考察する。
「おやおや、有栖じゃないか。奇遇だねぇ」
って、知った声が聞こえた。声の主を見ると、臥煙伊豆湖さんだった。
臥煙伊豆湖…怪異(人外)の専門家グループのラスボス。「私は何でも知っている」が口癖のお姉さんだ。あくまで人間レベルでの全知全能に一番近い者であるが、父様の前で、「何でも知っている」とは言えないこと気づき、僕の協力者で、僕のエネルギー供給源になってくれた。そうそう、あの自称エロ奴隷である神原駿河の実の叔母であるが、ユリでは無いようだ。
「あぁ、臥煙さん。ちょうど良かった。連絡を取ろうと思っていたんです」
「うん?相沢祐一の件か?」
あれ?
「天からの啓示があった」
父様か…
「調査をし始めたところだ。その月宮あゆも関係者なんだろ?」
「えっ?!臥煙さんと有栖君って知り合いなの?」
うん?あゆちゃんも知り合いなのか。
「あぁ、あゆちゃん。私の…いや、なんでもない」
頬を赤らめた臥煙さん。
「うそっ…臥煙さんがライバルだなんて…」
何のライバルだ?
「いや、ライバルにならん。私は彼の下僕だからな」
「え…有栖君って…」
僕を恐怖の対象のような目付きで見るあゆちゃん。
「臥煙さん…カンベンしてくださいって…」
「たまには、有栖をいたぶらないとな。いつもいたぶられっぱなしだし」
あぁ、なんかシャレにもならんことを…
「で、簡単な報告だが、相沢家には能力者はいない。が、親戚にはいる。その辺りだと踏んでいる」
「要注意人物って居ますか?」
「まだ、断定はできない。怪異なら専門だが、マークしている者は、怪異ではないからな。もう少し待ってくれ」
「何系の能力ですか?」
「呪い系…陰陽師かもしれないな。式神使いでもあるようなので、その辺りは注意してくれ。まぁ、有栖の能力であれば、式神は問題なかろう」
「陰陽師か…影縫さんみたいだと嫌だな…」
影縫余弦…式神と共に行動している暴力系な陰陽師。人間レベルにおいて殺戮能力はトップクラスだと思うくらい、その攻撃に躊躇はなく残忍である。ただし、相手が怪異の場合ではあるけど。人間相手では、手を出さないみたいだ。呪いを掛けられていたようだけど、父様に解除されて以来、恩義を感じているらしい。
「あいつみたいだと、見つけやすいが…影から出て来ない奴だと探しにくいな。話を聞く限り後者だと思う。一応、この神社の結界レベルを上げておいた。ここを連絡場所にしようと思う」
僕を誘うような目付きで見ないでください…
「まぁ、今夜は泊めてもらうよ、有栖♪」
今夜はサバイバルかな…今朝の件もあるし。臥煙さんにはあゆさんと共に帰ってもらった。そして、僕は香里さんの元へ…