『美坂』と書かれている表札のある家の呼び鈴を鳴らした。ドアから顔を出した香里さん。
「有栖…」
香里さんの後を追うように、家の中に入り、香里さんの部屋と思しき部屋に通された。
「で、どうする?」
香里さんに尋ねた。
「妹の変調の原因を探れるかな?」
「やってみるよ」
僕は床に座り、瞑想状態になり、彼女の妹の栞のオーラを探る。オーラを見る限り、異常はない。どこが悪いんだ?栞を中心に彼女の周囲の空間を調べる。式神の気配はないなぁ。じゃ、なんで変調したんだ?
次に栞自身の回復力を確認する。うん?回復力が無いない…抵抗力をチェックするも、これも無い。呪いか?彼女の魂を調べたいが、残念ながら僕にはその能力は無い。父様、お願いします。
『まかせろ!』
と、父様からの念話が届いた。
そうだ、父様のことを話さないといけないですね。僕の父様は、元々第8宇宙の地球という星で産まれ、人間として育てられていた鬼と天使のハーフである。様々な戦いを経て、経験を積み、英雄、英霊、エロ神と、ランクアップしていき、今は、この世界がある第13宇宙を司る絶対神として君臨している神様であるのだ。
『命の蝋燭が弄ばれている。蝋燭を頑丈な物に交換しておいた。で、実行犯は邪悪なる者自身だ。式神には命の蝋燭は触れられない。燃えてしまうからね』
『命の蝋燭って、どこにあるんですか?』
『普通は魂の中だ。実行犯は僕と同じで、ネクロマンサー系の能力者かもしれないが、陰陽師の可能性もある。とにかく厄介な敵だ。気をつけろ、有栖』
瞑想状態を解いた。
「ねぇ、どうだった?」
香里さんが訊いてきた。
「呪いみたいだ。病気じゃないよ、これは」
僕はカバンから護符を取り出して、香里さんに手渡した。
「どこまで防げるかわからないけど、呪い除けの護符だ。妹さんに渡して、身に付けてもらって」
「わかったわ」
そういうと、香里さんは着ている物を脱いでいった…何をしているんだ?
「こういう事のお礼って、供物を捧げるのよね?私の身体を有栖に捧げます。だから、妹、栞を助けて…」
全裸となった香里さんが、僕に抱きついて来た。突然のことで、僕は為す術もなく、彼女と身体を合わせた。服の上から、彼女の身体の温かさ、柔らかさが伝わってきて…悶々としていき、僕も全裸となり、そして交わった。
「私の全身を好きなように食してください。この身体は、この先もあなたに捧げます」
言われるまま、唇を合わせて、舌を絡める。耳を指でなぞり、乳首周りもなぞる。香里さんの口から喘ぎ声、とっても甘い声が漏れてきた。
「あぁん…身体に力が入らない…あっぁぁ…浮遊しているみたい」
僕が動く度に、僕のアンダーヘアが、彼女の大事な箇所を刺激していく。それに伴い、彼女の身体から潤滑液が湧き出し、よりスムーズに動けるようになっていく。
「吸って…」
彼女も胸を揉みながら、乳首を咥えて、吸ってみる。身籠もらないと出ないはずの母乳、彼女にとっても初乳が出て来て、僕のノドをうるおしていく。
そして、オーガズムに達した瞬間、エナジードレンを。彼女は安らかな顔で果てていた。僕は1枚の羊皮紙を発現させて、香里さんの腿を伝う赤い液体を指につけて、契約書を書いていく。
「有栖…何をしているの?」
意識を取り戻した香里さんが質問をしてきた。
「香里さんのバージンブラッドで契約書を書いています」
「契約書?」
不思議そうな顔をする香里さん。
「僕は神ではないので、供物では願いを叶えられないんです。ですので、悪魔との契約書を書いています。香里さんの願いを叶える報酬として、香里さんの身体をもらうって感じです。まぁ、形式的な物ですから」
「悪魔の契約書?なんで?有栖って天使だよね?」
「うん?僕は鬼と天使と悪魔のクォーターです」
悪魔の羽と天使の翼の両方を展開させて見せた。
「悪魔であり、天使であるの?」
「そういうことです。普通の聖水を掛けられてもダメージを負わないし、闇に幽閉されても大丈夫。たいていの敵には対処できます。それに、僕がダメでも父様が叶えてくれます」
「有栖のお父さんって?」
「神様…僕の願いなら、供物はいらないから。僕が力不足でダメな時は、父様が引き継いでくれます」
「神様…本当にいるんだぁ…」
「内緒だよ。いいね、香里さん」
頷く香里さん。
「ねぇ、香里で良いから…呼び捨てにして…」
頬を赤らめて視線を外して言う香里さん。
「いいの?」
「うん。お願い…」
「わかったよ、香里…」
書き上げた契約書に、香里さんの血判を押して貰うと、羊皮紙は自然発火して燃え尽きた。
「これで、契約は成立だ」
そして、もう1ラウンドをして、帰宅。
◇
家の中は、予想通り…
「おい、もっときれいに床を拭きなさい。駿河、あんたって、ガサツすぎるわよ」
家の中にひたぎさんの声が響く。
「お帰り、有栖」
伊豆湖さんは翼さんとティータイム中のようだ。こんな雰囲気で、のどかに談笑できているお二方は凄い。
「どうだった?」
伊豆湖さんに声を掛けられた。
「香里の妹の栞ですが、呪いみたいです。回復力、抵抗力がまるで無いので、風邪でもヤバいですね」
「そうなると、薬が効かない可能性があるな」
「父様の見立てでは、命の蝋燭を弄ばれているそうです。相手はネクロマンサーか陰陽師だろうと」
「厄介な敵だな。護符は渡したのか?」
「はい」
◇
翌朝、リビングルームは静かだった。駿河ではきれいにならないと判断した、翼さんが掃除をしてくれたそうだ。で、リビングルームには僕とあゆさんの通学組二人と忍さんだけが朝食を取っていた。
「駿河は?」
「寝不足で休むそうです」
アイツ、初日しか通っていないじゃん…僕とあゆさんとで学校へと向かった。
教室に入ると、いつものメンバーが目に飛び込んできた。眠そうな名雪、ハイテンションな北川、だるそうな香里さん。
「おはよう、香里」
「おはよう、有栖♪」
僕の呼び方の変化に気づいたのか北川が寄ってきた。
「おい、いつから香里のことを呼び捨てにしたんだい?」
メンドーなのでスルーしておく。
「なぁ、無視しないでくれよ~」
◇
放課後、帰宅部の僕達は商店街を練り歩く。
「なぁ、北川って、空気読めないのか?」
北川に聞こえるように言う。
「空気って文字書いていないだろ?有栖の目はおかしいぞ」
天然か?
「たい焼き♪」
あゆちゃんが、いつものお店の前で、僕の服の裾を掴んだ。例によって、北川以外のメンバーにたい焼きをプレゼント。
「また、俺には無しか?」
「北川なんか餌付けしない!」
「あぁ~いた~、アリス~!」
遠くから僕を呼ぶ声がした。あゆさんだ。タックルされると身構えたが、僕に達する前にこけていた。
「痛いよ~鼻の頭が擦れたよ~」
あゆさんを起こしながら、鼻の頭をペロリと舐めた。
「ツバつけたから、大丈夫だよ、あゆさん」
「うぐぅ~、たい焼きを食べないと治らないよ~」
「あゆちゃん、帰り道で買い食いはダメですよ~」
あゆさんの後ろから、栞の声がした。僕は、二人にもたい焼きを買ってあげる。
「やっぱし、たい焼きはおいしいよな~♪」
「う~、アイスの方がいいなぁ」
昨日見たよりも血色が良い栞。護符の効果はあるようだ。根本的な解決ではないけど。
「アイスか…」
アイスを買ってきて、栞の食べかけのたい焼きと交換した。
「ありがとうございます♪」
「アリス、こんなかわいい女の子と間接キスか?」
頭の方からたべていたので、尻尾をちぎり、北川の口に押し込んだ。
「餡子…入っていない…」
凹む北川。はずれだったのか…行いの問題かな?
「じゃ、北川。今日はここまでだ。香里姉妹には僕の家に来て貰う。あゆちゃんはあゆさんと帰るみたいだから」
凹んだ北川を商店街に残して帰る。
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家に着くと、玄関ではひたぎさんが待ち構えていた。
「今日はどこの娘を連れ込んだんだ?」
「人聞きが悪いですよ、ひたぎさん。香里と香里の妹です」
「あっ…そう、残念だわ。それでは、有栖をいたぶれないわね」
と、2階の自分の部屋に戻っていったようだ。リビングルームで椅子に座ると、翼さんがドーナツと紅茶を出してくれた。
「香里、妹さんはどこまで知っているんだ?」
いきなり本題に入る僕。
「有栖の事は話したわ。」
「私って…病気では無いんですか?」
栞が絞り出すような声で訊いてきた。
「違う。病気では無い。悪い箇所はなかった。ただ、回復力と抵抗力が封じられているみたいで、風邪でもヤバいことになりそうだ」
隠さずに本当のことを伝えた。
「そんな…」
哀しそうな瞳の栞。
「ねぇ、呪われるきっかけって、何か覚えていないかな?そうだな…7年前位に」
「7年前…あっ、迷子になった私を、助けてくれた男の子がいました」
「名前は覚えているかな?」
「う~っと、何だっけかな…ヨーイチだかユーイチだっけ?」
祐一かぁ…アイツが鍵だが…
「7年前に会ったきりで、その後交流はあるかな?」
「無いです」
首を横に振る栞。アイツは遠隔で、こんな呪いを発動できないよな。犯人は誰だ?
「昨日、渡した護符を見せて」
護符を手渡された。それに念を送り、状態を調べる。式神が襲いに来たようだが、護符が防いだようだ。式神の紋を覚え、護符を栞に返した。
「その護符を四六時中、身に着けていて。昨晩は呪いを防いだみたいだ。だから、今日は血色がいいんだよ」
「有栖、誰が仕掛けたんだ?」
香里が身を乗り出してきいてきた。
「わからないけど、僕達の方で調べてみるよ」
「誰か、予測は付いているの?」
「たぶん、その男の子の関係者だ。彼の調査は終わっているから」
僕の言葉から、何かに気づいた香里。
「その彼って、あゆの件にも絡んでいるの?」
頷く僕。
「あゆちゃんが事故に遭った日に、デートをするはずだったのが、その彼だ。でも、彼には能力はない。うん?そうかぁ…」
「どうしたんだ、有栖?何か分かったのか?」
「推測だよ。その彼に恋する女の子がいたら、あゆちゃんも栞ちゃんも、ジャマだよね?」
「「あっ!」」
美坂姉妹が同時に声をあげた。
「その女の子と彼が結ばれることを、目指している者って推測ができる」
「その子の親とかかぁ…」
そうだ。その線は濃厚だな。真琴さんも、祐一に懐いていた。だから、底の深い箱に入れて、蓋をして捨てに行かしたんだ。そうなると祐一に命じることのできる立場の者…その女の子の親か、関係者だ。推測が当たっていると、被害者はまだいそうだな。
「有栖…」
「香里、思い当たっても、その子とは普段通りに、付き合っていてくれ。じゃないと、香里が消される可能性が出てくる」
「え?お姉ちゃんが…」
驚いている美坂姉妹。でも、用心はして置かないと。護らないといけない者が点在していると、護り切れない。
「有栖…怖い…」
声を殺して泣き始めた香里。そんな姉を心配する栞。
「お姉ちゃん…」
「香里は護るよ。僕と契約したんだ。心配するな」
「えっ?契約って何?お姉ちゃん…」
うん?契約の事は話していなかったのか?
「え…それは…栞が心配しないでいいことよ」
「有栖さん、契約って?」
「君達姉妹を護る契約だよ」
「有栖さんって、天使じゃないの?」
闇の部分は話していないのか?
「天使だけど…」
「天使って、契約しないよね?契約って悪魔のすることじゃ…ねぇ、お姉ちゃん」
「いいの。もう、契約は有効なの。栞、あなたが元気になれれば、それでいいの。今まで、栞の存在を否定していて、ごめんね」
「いや~!お姉ちゃんがいなくなるのは嫌です」
感情が暴発しそうな栞。彼女の勘違いを正しておくかな。
「なぁ、栞ちゃん。勘違いしているようだけど、契約で命は報酬にしていないから、君のお姉さんは死なないし、君の傍に居続けるよ。誰かと結婚するまではね」
「そうなの?お姉ちゃん?じゃ、何を報酬として差し出したの?」
「え…っとねぇ…」
頬を赤らめ始めた香里。なんで?
「まさか…男嫌いのお姉ちゃんが…私の為に?」
「栞…彼のことは嫌いじゃないから、苦では無いのよ」
俯いた香里の耳が真っ赤だ。どうした?
「えぇ~っと…そ、そういうことなの?二人の関係って…」
どういうことだ?
「そういうことなら、私も契約します。お姉ちゃんと同じ報酬でお願いします」
え?なんで、そうなるの?
「万が一…男の人を知らずに逝くのは、なんか悔しいというか、あはっ…」
栞は顔を真っ赤にしてから俯いた。
「香里…どうしたら良い?」
「えぇ~っとねぇ…栞の願いを聞いてもらえるかな?妹と取り合うのも良いかなって♪」
取り合う?何をかな?
「まったく、有栖はソッチ系に疎いんだから」
翼さんが、僕の肩を揉みながらそう言った。
「ソッチ系?って…あぁ、そういうこと?いやいや…姉妹でケンカされるのは良くないですよ」
「栞とケンカしたことないんだ。だから、姉妹ケンカって経験したことないんだよ」
「有栖、栞ちゃんの願いを叶えてあげたら?困っている人の願いを聞き流すのは、どうかと思うわ」
って、翼さん。そうなるよな…そして、美坂姉妹と、祈祷部屋に向かった。交わることで見えなかった物が見えるかもしれないから。