※この作品はR-18です。

神器なき男 (再編集版)   作:もっち~!

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最凶なる母娘

 

 

---有栖---

 

翌日、舞と香里のおかげで、どうにか動けるレベルには回復した。でも、戦うのはきついかな。下手すると、人化が解ける気がする。

 

未だに、家の周囲には式神が、うようよいる。通学が出来るのか?

 

『今日は全員、家から出るな!』

 

父様から念話が届いた。父様が首を突っ込むって、結構ヤバい状況のようだ。

 

「みんな、すまないが、今日は学校を休んでくれ」

 

ガイア兄様が、みんなに父様からのメッセージを伝えた。みんなの顔が青ざめた。

 

「それって…すごく深刻な状況なんですか?」

 

声を振り絞ったのだろうか、少し裏返った声で、香里が質問をしてきた。

 

「そういうことだ。昨晩のうちに減らすことが出来なかった。寧ろ、増えている。九重さん、真琴でこの家の結界を維持している。この家の中なら、当分安全だよ」

 

当分?どういうこと?

 

『ロスヴァイセさん、ルフェイさんは重体だ。式神が、口と鼻を塞いだようで、脳が酸欠状態だ。今回の敵はマズイぞ』

 

ガイア兄様から念話が届いた。え?元人間の転生ドラゴンはダメなのか?

 

『あぁ、俺達悪魔とかじゃないと無理だ。九重おばさん、真琴もダメかもな』

 

式神恐るべし…そう言えば、濡らしたティッシュペーパーで人を殺せるとか聞いたことがあったっけ。

 

『一反木綿みたいに長いヤツだと、絞め殺される可能性もある。紙は厄介だよ』

 

珍しく兄様が、泣き言のように言っている。それだけ厄介な敵なのか。

 

『この局面を打破できる者はいるんだけど…呼吸しなくても大丈夫な人…』

 

あぁ、ダメだろ。また、ペナ喰らうって…手加減は出来ると思うけど、暴走しまくるからな…父様は…

 

『ラスボス様は、来る気が満々だよ。どうする?暴走したら…シルキーもシーナも療養中だし』

 

シルキーは僕の姉で、シーナは僕の双子の妹だ。イッセさんは?

 

『この世界を崩壊させていいなら呼ぶけど』

 

だよね。ラスボス対決は無理だな。イッセとは最強の部類に入るハーフドラゴンである。そうだ、白音さんは?

 

『別案件でいない。でも、万が一に備えて、呼び出しは掛けたよ』

 

白音さんは、父様を無力化できる唯一の人だ。父様は彼女の笑顔を弱点に上げているし。

 

『父さんが、乱入する前に、こっちでどうにかするしかないだろ?』

 

そうだね。どうするか…

 

 

 

---相沢祐一---

 

以前、来た時と何かが違う水瀬家。なんだろうか?そう言えば、一度もおじさんに会ったことが無い。名雪の父親に当たる人。何をしている人なのかな?いや、死別の可能性もあるよね。で、遺産でこの家を買ったのだろうか?母娘の二人暮らしには不釣り合いすぎる大きな一軒家なのが、不思議だけど。やっぱり、おじさんはいるって、思うのが普通だよな。

 

いや、もっと根本的なことが…僕は両親とこの家に来たことが無い。なんでだ?僕の記憶が消えているのだろうか?全く以て思い出せない。そもそも水瀬家って、母方なのか、父方なのかが分からない。

 

僕は、知っているようで知らないことが多いことに、気が付いた。そして、問題にも…名雪と結婚は出来る。だけど秋子さんとは法律上はアウトのはずだ。なのに、僕は秋子さんの中に出しまくった…ダメだろうに。いや、抜け道というか、未だ見ぬ叔父さんが、僕の両親の兄弟の場合なら、血縁上は問題は無いか。

 

そもそも名雪は、母親と僕との関係は問題にしていない。それも、おかしい気がする。彼らに相談してみようかな。

 

って、学校に行くと、彼らは全員、欠席していた。なんでだ?何か遭ったのだろうか?

 

◇

 

放課後、名雪は部活に行き、僕一人で帰宅することにした。校門を出た処で呼び止められた。

 

「相沢祐一君…だよね?」

 

声を掛けてきた人達を見ると、大学生くらいの男女だった。

 

「そうですが、あなた達は?」

 

「君の疑問を、一緒に解消しようと思ってね」

 

男の人が答えた。僕の疑問?なんで、この人達は知っているんだ?

 

「僕達は心が読めるんだよ。僕は…太郎、彼女は…豆子だ、よろしくな♪」

 

この人達と一緒にいると、暖かい気分になる。悪い人では無いようだ。怪しいけどね。

 

「僕も豆子も陰陽師の家柄でね。君に纏わり付いている物が、気になっちゃって」

 

僕に纏わり付いている?何が?

 

「う~ん。何って…ここじゃ、危険だ。場所を移動しよう。あぁ、僕達と一緒なら安全だよ。結界を張って君も含めて、防御しているからね。あと、さっきも言ったけど、僕達は心が読める。だから、君は声に出さないでも、心で思えば、会話が出来るからね」

 

そうか、結界内だから、この人達のオーラに包まれて暖かいのかな。

 

「うん♪理解の早い子は好きよ♪」

 

彼らと一緒に場所を移動した。ここは?『月宮神社』と書かれている。神社なのか。こんな場所に神社があるとは。

 

「ここなら、しばらくの間は、安全だと思う。君の疑問の一つ、おじさんの存在だけど、役所で調べてみたが、水瀬秋子は未婚だ」

 

えっ?じゃ、名雪は…

 

「父親に認知されていないとか、娘が生まれる前に死んだ可能性も、否定はできないけど。まぁ、役所に残っている書類を見る限りは、そういうことになる」

 

あぁ、そうですよね。調べようがないですよね。

 

「次に家の登記簿を調べてみた。これが不思議なんだけど、登記されていなかった」

 

どういうこと?

 

「本来、あそこには家が無いってことだ。家を建設したなら、登記すべきことなんだけど」

 

でも、現実に家はあります。

 

「そう、だから、不思議な事なんだ。次に調べたのは娘の出生の記録だ。戸籍にはあるけど、どこで産まれたのか不明だった。本籍は二人共、最初からあの家の地番だけど」

 

言っている意味がわからない。

 

「登記上、何もない場所に、あの二人は産まれた時から住んでいるってことだ。君の両親は、どちらかがあの場所に住んでいたのかな?」

 

どうなんだろう?

 

「記憶を消されているのか…それとも、記憶に元々無いのか…判断は難しいな」

 

「来たわ!」

 

豆子さんが声を上げた。僕達の周りで、火花が飛んでいた。

 

「結界で防御しているから、大丈夫。敵の攻撃が結界に当たって、火花が飛んでいるだけだ。心配しないで大丈夫。祐一君、神社にいる間は君を護るから」

 

神社から出たら?

 

「護るのは難しいかな。結界を張った神社に、アイツらは侵入できるんだから、神社を出たら、今周囲に張っている結界だけでは難しいかな」

 

そんな…

 

「うざいな…『ファイヤーウォール(火の壁)』。結界の外を火の壁で覆った。これで結界に火花は飛ばないはずだ」

 

太郎さんは魔法が使えるようだ。僕を護ってくれる、この二人って何者だ?

 

「僕達か?クラスメイトに有栖っているだろ?その関係者だ」

 

「そうだ、有栖君達は、今日はなんで欠席したんですか?」

 

今日の不思議な出来事の真相を、確かめようとした。

 

「あぁ、家から出られないんだ。さっきの火花の原因に、家を包囲されてね。香里くんやあゆくん達も一緒に有栖の家に避難していたので、全員欠席になったんだよ」

 

僕だけでなくて、有栖君達も襲われているのか…

 

「この街では何が起きているんですか?」

 

「う~ん、この街ではかぁ…事実を知ると、君はこの街に、いられなくなるかもしれないが、それでも知りたいか?」

 

どういう意味だ…

 

「この街の秘密になるのかな?って、来ちゃったよ~」

 

って、誰が…え?火の壁は消えていた。そして、目の前には名雪がいた。

 

「祐一…その女は誰?ねぇ、私の祐一を返して!いや、返しなさい!」

 

何かが振動する音がしている。

 

「マジかよ…僕の結界が破られそうだ。まいったなぁ…」

 

困った風なことを言いながら、笑みを浮かべる太郎さん。次の瞬間、僕達は違う場所にいた。

 

「あぁ、月宮神社を壊滅か。やることがひでえな、祐一君の従兄弟は」

 

窓の外を見ている太郎さん。僕も見てみると、煙がもうもうと上がっていた。え?ここって空の上?

 

「そうだよ。浮遊する城なんだ。ここは。アイツらはここまで上昇出来ないはずだ」

 

見下ろすと、僕達が居たであろう神社は、クレーターのようにえぐれていた。

 

「まさか、結界の外周に沿って、抉るとは思わなかったよ」

 

地面が抉られたのか。結界には入れないから、名雪は…え?名雪?

 

「そういうことだ。雪、氷系統の魔法が使えるようだよ、君の従兄弟は。僕の火の壁を容易く結界の外から消すって、有り得ないなぁ。これは強敵だ」

 

「ここは安全なんですか?」

 

「安全なはずだ。でも、わからない。侵入してくるかもしれないな。親玉の方は」

 

親玉?まさか、秋子さん?

 

「そういうことだ。娘の方は上空には来られないけど、親玉はここを見つければ、来るだろうな」

 

なんか危機的な状況に聞こえるけど、太郎さんは笑みを絶やさない。

 

「上空なら、コチラも攻撃できるから、少し安心していいよ。問題は有栖達だな。どうするかな」

 

 

 

---有栖---

 

家から避難しようにも、転移ができない。転移をすると、時空の揺れを察知して、忍び込んで来る可能性があるから。困った。兄様も困っているし。

 

「結界がいつまで保つかが勝負かな」

 

と、九重おばさんが呟いた。

 

「真琴は限界だし」

 

真琴さんは、電池切れでダウンしていた。少し復活したロスヴァイセさんが、真琴さんの代わりに結界を張り続けてくれている。

 

「兄様、どうします?」

 

「どうするって…有栖は戦えないし、真琴もダメだろ?あゆは回復要員だし、あとはルフェイさん次第かな」

 

兄様は時折り家の周囲に、『滅びの霧』を発生させて、敵を排除しているのだが、湧き出るように集まってくる式神達の前に、ダウン状態だった。

 

「なんだろうね、こんなにこざかしい敵も珍しいよ。見えない上に数がトンでもなくいるし」

 

敵の本体を叩かないとダメみたいだ。でも、それをできる者は、ここにはいない。防御に魔力、妖力を集中しないと、危険な状況であった。

 

『第一ラウンド、僕も敗退だよ~♪』

 

って、父様の念話が届いた。え?参戦しているの?いつの間に…

 

『父さんは何と戦っているんですか?』

 

兄様が尋ねた。

 

『娘の方…僕の火の壁を、伊豆湖の張った結界の外から消したよ。なんだ、あの紙っぺらは?で、僕の張った結界を揺さぶってきた。あっ、月宮神社は壊滅したよ。あゆちゃんに謝っておいて…』

 

え?なんで…

 

『伊豆湖の張った結界の外周から、地面を抉りやがった。尋常じゃ無いぞ、今回の敵は』

 

え?膨大な敷地をまるごと抉ったのか?鎮守の森もまるごと…

 

「あゆちゃん…言いにくいことだけど…ごめん、月宮神社を護れなかった」

 

僕はあゆちゃんに頭を下げた。

 

「えっ…有栖君達が懸命に結界を張ってくれたのに…それでもダメだったんだ…ねぇ、頭を上げて、有栖君…相手が悪かったんだよ、きっと…」

 

『有栖…父さんの方に娘が行ったってことは…』

 

兄様から念話が届いた。そうですね。こっちには…まずいなぁ…娘ですら、父様を敗退させる力なんだよな。

 

『う~ん、相手は私よりも上なんだよね。どうする有栖?』

 

九重おばさんも弱気になってきている。どうするよ。この戦力で…

 

「私が戦おうか?」

 

舞が戦う意欲を表明した。

 

「ダメだ。舞さんの身が危ない。僕は、みんなを護りたいんだよ」

 

戦力になっていない僕が言っても、意味をなさないけど。

 

『最終手段…兄様、後のことはお任せして良いですか?』

 

最後の悪あがきをして来ると、兄様に伝えた。

 

『死ぬなよ、アリス』

 

僕は、翼とひたぎにアイコンタクトで合図を送ると、二人とも了解してくれたようだ。

 

「戻って来てよ、有栖」

 

「有栖…」

 

二人から…僕の知らないうちに婚姻をした妻達から、声がかかった。さて、行って来るかな。父様は母様に、別れの言葉を言えないで出征したけど、それに比べれば僕は少し幸せかな。

 

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