出逢い Part1
友達がおらず、バイト先でしか会話をしていない僕。実の両親を知らない。産まれて直ぐに、実の両親が知り合いに預けたのだが、子育ての経験の無い独身老人だったらしく、直ぐに違う人に預けられた。でも、そこも子育て経験の無い若い男性らしく、僕はリレーのバトン、駅伝のたすきのように、色々な人達へと手渡されていったそうだ。
ある女性の手に渡った時、名前をつけてくれたそうだ。彼女はマリア・ヨハネという聖女であった。僕は彼女によりシュウと名付けられた。でも、聖女故、世界各国各地を巡礼しているので、名前だけくれて、次の養い親に渡された。彼女を尊敬する神父の家だったのだが、彼には娘が既におり、二人は面倒をみれないという理由で、仲間の神父に手渡された。
その神父は独身であったが、彼女がおり、僕も物心が付いてきた頃と相まって、その神父と彼女の事は今も覚えている。確か、彼女が誰かに殺されて、神父は神の道を外れて復讐をするとかで、また僕は違う者に手渡された。それが、現在の僕の養い親であるアジュカ父さんである。
僕は父さんの経営する会社で働いている。父さんの会社はゲームの運営、保守などをする会社で、僕も運営、保守を手伝っている。
「なぁ、シュウ…学校へ通わないでいいのか?」
僕は学校へ通っていない。戸籍という物が無いので、義務教育の案内のハガキが来なかったのだ。なので、小学校へは通っていない。まぁ、ネットを使えば、独学でも勉強は出来るし、父さんのお友達に習ったりしているので、問題は無いと思う。
「うん♪大丈夫だよ。友達はいないし」
「学校へ行かないから、いないんだろ?」
父さんが心配そうに僕を見ている。
「そうかもしれない…まぁ、行く気になれば、行くよ。その時は学費をお願いします」
「金の心配はするなよ。腐る程あるからな。で、この術式なんだけど…」
父さんが術式の書かれた羊皮紙を、手渡して来た。それを受け取る。
「う~ん、あぁ、北欧系の魔法使いの文字です」
「そうなのか…シュウは凄いな。術式で使われている文字の殆どを、読み書きできるもんな」
何故か僕にはそういう能力があった。悪魔文字、神格文字、精霊文字など、普通の人間には理解不能な文字を理解出来る不思議な能力だ。
「あっ、こんな時間か。シュウ、上がっていいぞ。子供が遅くまで出歩いていると、補導されるから」
「世間を知れ」と、父さんは僕の家として、隣の駅の傍に部屋を借りてくれた。通うことで、電車の乗り方とか、買い物の仕方などを覚えろってことかもしれない。
電車に乗り、隣の駅に着く。駅前には楽しそうに会話をしている人々がたくさんいる。あんな風に話せる相手が欲しいなぁ。と、たまに思う。家に帰っても誰もいないし。コンビニで弁当を買って、食べて、お風呂に入って、寝るの繰り返しだし。まぁ、学校に通わない自分のせいだとわかってはいるんだけど。
広告のビラ配りの女性が、笑顔で僕にビラをくれた。彼女の手に一瞬触れたのだが、柔らかくて暖かい…そんなことも忘れている自分に驚く。そうだ、他人の手に触れる機会なんか無かったもんな…マリア母さん以来かな?いや、クレーリア母さんも僕にスキンシップをしてくれたよな。なんで、あんな優しい人が…やりきれない怒りを帯びる僕。八重垣の父さんが復讐に走った気持ちを、今の僕にはわかるような気がした。
家に帰り着き、鍵を開けて家に入り、
「ただいま!」
と、言っても返事は無い。一人暮らし故の現象。座敷童とか住み着いてくれないかな?そんなことを思う時もある。要するに、僕は寂しいのだ。
一息吐いて、駅前でもらったビラに目を通す。あの女性の笑顔が、脳裏に浮かび、彼女の手の感触が思い出されていく。妄想をしばししてから、ビラに視線を落とすと、
『あなたの願いをかなえます』と大きな文字で書かれていて、その文字の下には魔法陣が描かれている。魔法陣はどこかの紋章が描かれていて、紋章の下に『グレモリー』と悪魔文字で書かれている。悪魔の召喚用かな?まぁ、悪魔でも友達は欲しいかな。出来れば女性がいいなぁ。柔らかい感触の女性…夢で良く見る紅髪の少女を思い浮かべて、『ガールフレンドになって欲しいです』と念じた。
夢で見る紅髪の少女は、会った記憶も見た覚えも無いのだが、よく夢に出てくるのだ。僕を愛してくれるのだが、僕は彼女を護り切れずに、彼女を失う夢。彼女を失った瞬間に目が覚めるという、僕にとっての定番の夢なのだ。
僕の目の前に転移陣が発現した。ビラに描かれている紋章と同じ紋章が浮かんでいる。そして、誰かが転移してきた。
え?なんで?……目の前には、夢でよく見る紅髪の少女が立っていた。
「えっ…どうして…そんな…」
彼女も僕を見て、驚いている。
「あの…どこかでお会いしたことがありましたか?」
僕は恐る恐る訊いてみた。
「無いはずですが…ほぼ毎日見ているんです」
戸惑っている彼女。ほぼ毎日?まさか…
「僕もほぼ毎日、あなたを見ています。夢の中で…」
「えっ、あなたも?私もそうです。夢であなたと逢っているんです」
こんな偶然って有るのだろうか?お互いの見た夢の内容を、話しあった。彼女の夢で、僕は彼女の最後の願いを叶える為に、命を捨てるらしい。
「前世の記憶なのかしら?」
彼女が呟いた。
前世かぁ…その時、僕は彼女にとって何者だったのだろうか?
「ねぇ、リアス。僕は君にとって何者だったんだろうか?」
彼女に訊いてみた。何気なく訊いたつもりだったのが、彼女の表情は驚いているようだった。
「どうして…どうして、私の名前を知っているの…」
「あれ?どうしてかな?つい、口にしただけ…なんだけど…」
「あなたのお名前はなんと言うのかしら?」
「僕はシュウ・ヨハネだよ」
「シュウ?聞いたこと無いなぁ…」
「リアスさんは、リアス・グレモリーさんでいいのかな?」
「なんで、そこまで知っているの?」
更に驚いているリアスさん。
「だって、悪魔文字で書かれていたから…」
ビラに書かれている箇所を指差した。
「悪魔文字が読めるの?」
「うん♪一応、術式プログラマなんで、他にも神格文字と精霊文字とかも読み書きできるよ」
僕の顔をマジマジと見ているリアスさん。
「シュウは凄いんですね…あっ、私の名前にさん付けしなくても良いですよ」
うっすらと頬が赤らんでいるリアス。
「あぁ、そうそう願いは何ですか?」
「リアスは悪魔だから、報酬は命を差し出せば良いのかな?」
「命は要りませんよ。願いの価値と同等の報酬で良いんです。で、シュウの願いは?」
「今度こそ、リアスを護りきりたい…」
脳裏に浮かんだ言葉を口にする僕。あれ?なんで、そんな大それたことを言うかな。
「わかりました。では、対価は私の彼氏になってください。お願いします」
真っ赤な顔で俯いたリアスは手を差し出してきた。僕はその手を両手で握りしめた。う~柔らかい…
「頬を触っていいですか?」
更に大それたことを言う僕の口。
「えっ…それは…いいですよ…もちろん…」
更に真っ赤な顔になっていくリアス。僕は握っていたリアスの手を、僕の頬に触れさせた。
「あっ…そっちかぁ…」
うん?なんか残念そうなリアス。
「ねぇ、シュウはどこの学校?」
「僕…学校に行ったこと無いんだよ」
僕のカミングアウトに驚くリアス。
「小学校も無いの?」
「無いんだ。そもそも、僕は年齢を知らないし」
僕は僕の歩んだ道を、彼女に話した。
「実の両親を知らないの?」
「うん…知らない。だから、僕は人間かどうかも怪しいよ」
自分のことをまるで知らない僕。
「ねぇ、私、駒王学園の中等部に通っているんだ。シュウ…良かったら、一緒の学校に…」
「通いたい…」
「そう♪わかった。私のお兄様が、学校関係者だから、頼んでみるわ」
「あ、ありがとう…リアス」
「いいえ。これは対価へのお釣りです♪じゃ、お兄様に頼みに行くので、今日はこの辺で失礼します。また、明日来ても良いですか?」
「うん♪お願いします」
リアスは笑顔で転移していった。
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「えっ?学校に通いたいって?どうしたんだ、シュウ」
学校に通いたい旨を、アジュカ父さんに伝えた。
「学費とか教材費とか弁当代とか、全部自分で払います。給料の前借りをお願いします」
父さんに頭を下げる。
「頭を上げなさい、シュウ」
父さんの手によって、頭を上げさせられた僕。
「お金の心配はしないで良い。そう言っただろ?君は真面目に働いてくれているし、学校に通って欲しいのは、僕の希望だしね。で、どこの学校に通いたいんだい?」
「駒王学園の中等部です」
驚いたような顔の父さん。
「どうして、そこなのかな?怒らないから言ってごらん」
「友達が出来たんですけど…そこに通っているって…」
「ふ~ん、友達ねぇ…男?女?」
「えっ…えぇ~っと…」
「シュウが言い淀むとは珍しいなぁ。女かぁ…で、どんな女なのかな?」
声と口調と纏っているオーラは怖いが、目が笑っている。予想は付いているのに、僕の口から直接、聞きたいんだろうな。
「どんな…あ…う~ん…紅髪の…」
「はぁ?紅髪だって?それって、サーゼクスの妹じゃないのか?」
サーゼクスとは、父さんの悪友だそうで、たまに遊びに来て、僕にも優しいお兄さんである。あっ!サーゼクスさんも紅髪だったねぇ…
父さんは会話用魔法陣を開いて、サーゼクスさんを呼び出したようだ。程無くして、サーゼクスさんが父さんの隣に転移してきた。
「アジュカ、何だ?用件は?今、忙しいんだよ。リーアに願い事をされてな」
「その願い事なんだけど、OKだよな?」
父さんが、含み笑いをしながら訊いた。
「な、何だよ?やけに上機嫌だな、アジュカ…うん?なんで、願い事知っているんだ?」
「それって、妹さんが、お友達を駒王学園に通わしたいとか」
「えっ?何で、それを…」
サーゼクスさんが驚いている。父さんは、僕を指差した。それに気づいたサーゼクスさん。
「まさか…シュウ君のことなのか…」
サーゼクスさんは、どこかに会話用魔法陣で連絡をし始めた。たぶん…そして、彼女が転移してきた。
「お兄様、頼み事の最中に逃げないで…えっ?なんで…シュウ…」
僕に気づいたリアスは、顔を紅潮させて、俯いた。
「ほぉ~、まさか、リーアの彼氏がシュウ君とは…俺は応援するよ、リーア。既に、シュウ君は僕の弟みたいな存在だし♪」
「えっ、え~?お兄様はシュウの知り合いなんですか?」
真っ赤な顔を上げたリアスが、驚いた表情をしている。
「だって、彼の今の養い親は、アジュカなんだよ♪学校に通わない分、俺とアジュカで小学校の参考書をプレゼントしているし」
「そ、そうだったんだ…あ、あのね…シュウ…通えるよ、一緒に♪」
リアスが僕に走り寄って来て、抱きついた。そして、優しさを感じるオーラで僕を包み、僕の頬に自分の頬を擦り寄せてきた。
「今度は護りきってね。私のナイトさん♪」