---シュウ----
春休みになり、リアス、朱乃さんと共に、リアスの実家へと向かう。駒王町の地下鉄の駅に悪魔専用のエレベーターがあり、そこから地下に降りると、プラットホームが有る。既にそこには、グレモリー家専用の列車が入線していた。その列車に乗り込む僕達。しばらくすると、列車は走り出した。長いトンネルを抜けると、青く無い空が広がる世界に出た。悪魔と堕天使の住む世界である冥界である。
僕は冥界は初めてでは無い。アジュカ父さんに連れられて、父さんのお城に何度か来ていた。なので、もう感動も驚きも無い。
駅に着くと、列車の下り口に赤い絨毯が馬車の乗り口まで続いていた。馬車は初体験だ。父さんの専用列車だと、お城の地下に直接到着するから。
で、リアスの実家が見えてきた。父さんのお城にひけを取らない大きなお城である。
「シュウ、疲れてない?長旅だったから…」
リアスが心配そうに、僕の顔を覗き込んできた。
「大丈夫だよ、リアスと一緒だから♪」
と、言いながら、朱乃さんの手を握っている僕。少し前に、朱乃さんの手が震えているのに、気がついたから。何らかのプレッシャーが、朱乃さんに重くのし掛かっているようだ。
お城に着くと、お城の入り口まで、赤い絨毯が敷かれていた。僕達を出迎える為なのだろう、使用人の方々が待っていた。リアスが降りると、
「お嬢様、お帰りなさいませ!」
と、一同が口を揃えて、彼女に挨拶をした。僕達は、リアスの降りた反対側の扉から降ろされ、僕達の滞在する部屋に案内された。
「私達は、リアスの使用人扱いなのよ」
と、朱乃さん。下僕って、そういう扱いなのか…僕と朱乃さんは同じ部屋だった。大きめのベッドは1つ有り、それなりの広さではあるが、日当たりが悪いのかじめじめしていた。
「シュウ君、寝る時は一緒に寝る?」
笑顔で朱乃さんが訊いてきた。
「僕は父さんの城で寝るから、朱乃さんがベッドをお使いください」
と、伝えた。父さんの城には、僕の部屋が用意されていた。ベッドに馴染めない僕の為に。和室仕立ての布団で寝る方式だ。
「シュウ君のお父さんって、悪魔なの?」
「うん♪養い親だけどね」
夕食の時間までフリータイムのようだったので、朱乃さんに魔力の扱い方を習っていく。
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そして、待望のディナータイムが来た。僕と朱乃さんは正装をした。正装といっても、駒王学園の制服なんだけどね。そして、ディナーをする部屋に案内された。大きなテーブルの向こう岸に、リアスの両親、リアス、サーゼクスさんとその家族が座っていた。僕と朱乃さんは、彼らに一礼をして、席に着いた。
「リアス、彼が君のナイトか?」
リアスの父親がリアスに訊いた。
「彼氏です。お父様!」
怒ったように言うリアス。
「彼氏?何度言ったら分かるんだ?認めないぞ。お前はフェニックス家から婿を貰うんだぞ!」
親が、勝手に決めた婚約者がいるのか?
「イヤです。私はシュウと一緒になります」
父親とリアスの間に母親が仲裁として入り、言い合いは終わった。そして、一品目が運ばれて来た。スープのようだ…でも、これって…朱乃さんもリアスも美味しそうに飲んでいるけど…僕には無理だな。
「どうしたのですか?何故、手を付けない?」
母親が僕に対して訊いてきた。
「これって、何かの悪い冗談ですか?」
母親に言い返す。
「冗談?これはグレモリー家伝統のコンソメスープですよ。一口も飲まないと言うのは、失礼では無いですか?」
失礼?ソッチがだろうに…リアスは戸惑っているようだ。
「お言葉ですが、人間の肉を使ったスープを、美味しく食べる文化は、僕にはありません」
と、拒否の理由をはっきりと伝えた。僕の発言ではっとした朱乃さん、リアス、サーゼクスさん。
「ほぉ~、どこでわかったのかしら?」
「残留オーラです。グレモリー夫人」
「なかなか、能力は高いようね。サーゼクスでも、わからない微細なオーラなのに」
「で、何の冗談ですか?」
「あなたがグレモリー家に相応しいかのテストよ♪結果は残念だけど、不合格ね。ささっと、この場から立ち去るが良い」
「お母様、何てことをするんですか?」
リアスは立ち上がり、母親に抗議してくれた。
「聞けば、彼はあなたの眷属では無いそうじゃない。そんな者は、グレモリー家には必要ありません」
リアスは、今にも泣きそうだ。許せない…僕の中で何かが外れた…
「おい、そこの悪魔風情よ!リアスを泣かすことは、僕が許さない」
「悪魔風情だと?貴様は何様のつもりだ!」
グレモリー卿が怒鳴るがスルーだ。僕にとって大事な事は、リアスを護ることだから。
「魔王に問う。悪魔の契約の報酬を、契約した悪魔以外が奪う行為はどうなんだ?」
サーゼクスさんに訊いた。
「それはいけない行為だ。でも、何故、今それなんだ?」
「リアスへの契約の報酬は、僕が彼女の彼氏になること。それをジャマする悪魔風情は、リアスから報酬を奪う行為と等しい。違うか?魔王よ!」
はっとしたリアスとサーゼクスさん。
「何を偉そうな事を!グレイフィア、眷属と共に、アイツを殺せ!」
グレモリー卿の一声で、サーゼクスさんの奥様らしき者は頷いて、ドレスを脱ぐ。ドレスの下には戦闘服を纏っていた。更に、僕の周囲に強そうな者のオーラが集まってきた。さて、どうするか?考えると直ぐに、何かの術が軟弱な脳細胞に閃く。迷わず、それを発動した。
『四肢損壊』『催淫』
術の効果は抜群だった。直ぐに部屋には悲鳴と喘ぎ声が多数響き渡っていく。何の術だったんだ?あれって?閃いたので発動しただけの僕には、効果が今一わからない。すると、効果が記憶から呼び起こされてきた。あぁ、そういう術なのか。
リアスと朱乃さんは無事だ。サーゼクスさんとその息子以外の男の悪魔の手足は、砕けちっている。リアスと朱乃さん以外の女の悪魔は、無限とも思える絶頂地獄へと誘われた。
「シュウ…何をしたの?」
リアスが心配そうに訊いてきた。
「リアスを護るのに、弊害のある悪魔を、粉砕した。命までは取っていない。しばらくは痛さは残るだろうけどね」
「シュウ君…」
朱乃さんは青い顔をしていた。既に何度も嘔吐をしている。まさか、アレにあんな物が入っていたなんて思いも寄らなかったのだろう。でも知ってしまって、身体から出そうと必死のようだ。僕は朱乃さんに治癒・浄化の術を施した。
「ありがとう…シュウ君…でも、なんで、陰陽師の術を知っているの?」
「何でかな?記憶が、呼び覚まされてきたみたいだけど」
あれって、陰陽師の術なのか…なんで知っているんだ?
「シュウ君、妻を、グレイフィアを助けてくれ…」
サーゼクスさんが頭を下げてきた。
「あと、5分もすれば、意識を失います。寝れば治るレベルです」
「うん?どういう術なんだ、あれって?」
僕の説明が、現状の見た目よりも、効果が軽そうに思えたらしいサーゼクスさん。
「5秒間隔で絶頂を迎える女性限定の術です♪」
「え?そんな術有るの?」
「有るみたいです。使えたから…ははは。で、サーゼクスさん、あなたのご両親に罪を問うてもらいますか?理由は先程申した通りです」
「リーアの報酬の件か…わかった。君とリーアに良い結果を導けるように、説得する」
罰では無くて説得なのか…少しがっかりだ。
「こんな状況では、ここにいられないと思いますので、父さんの城に行きます。リアスと朱乃さんも連れて行って良いですか?」
「許可するよ」
僕は彼女達と父さんの城へと転移した。
---アジュカ---
サーゼクスから連絡が来た。サーゼクスの両親が引き金になり、シュウの能力が解放されつつあるようだ。効果は抜群らしい。最上級クラスのサーゼクスの眷属達が一瞬で戦闘不能にされたようだ。
たぶん、能力の封印は解けたのだろう。彼をラスボスにしない為にも、彼を保護しないと…
---シュウ---
リアスと朱乃さんを、城内の僕の部屋に連れて行った。
「あっ、畳がある~♪」
朱乃さんが、畳に横になった。
「ベッドは無いの?」
和室仕立てなのでベッドは無い。僕は押し入れを開けて、布団を見せた。
「旅館みたい…それを、ここに敷いて寝るのね」
「そういうことだよ」
緊張がほぐれたのか朱乃さんは、スヤスヤ寝ている。
「ごめんなさい。シュウにイヤな思いをさせてしまって」
リアスが謝ってきた。
「僕はいいんだよ。リアスが無事ならばね。僕の願いを叶えさせてね♪」
リアスの額にキスをした。真っ赤になるリアス。
「うん♪約束だから…」
そうだ、腹減ったなぁ…何か食べ物が欲しい。念じた訳では無かった。思い浮かべただけであったのだが、僕達の目の前に、おにぎりと味噌汁が現れた。
「えっ?差し入れ?」
突然の現象に驚くリアス。僕も驚いているけど。幻なのかな?おにぎりを頬張ると、美味しかった♪まるで、クレーリア母さんが握ってくれたみたいだ。少し涙ぐむ僕。
「どうしたの?何で泣いているの?」
「懐かしい人を思い出したんだよ。もう、いない人なんだけどね」
「いない?死んだの?」
「殺されたんだよ…いつか、きっちり復讐はするよ。って、誰に殺されたかは知らないのが問題だけどね」
リアスが何かに気づき、僕に抱きついて来た。
「お願い。闇に心を堕とさないで…たまに、シュウは…ね、一緒にいてくれるんでしょ?」
どうもクレーリア母さんのことを思うと、闇墜ちしていくようだ。そうだね、リアスと一緒にいる為に、注意しないとダメだな。
「おにぎり、美味しいよ」
リアスにおにぎりを薦めた。
---アジュカ---
グレモリー家の城を訪れた。シュウの件の事後処置だ。シュウのキレた大元の原因、コンソメの材料を確認した。シュウの指摘通り、人間の肉だった。
「あの人間はどうされたんですか?」
「狩ったのだ。久しぶりのハンティングで、愉しめたよ」
両手両足に大怪我を負ったグレモリー卿が、自慢げに話している。
「人間狩りが、禁止になったのは知っていますか?」
「はぁ?対外的な事だろ?昔はよく狩りをしたもんだよ。懐かしいな」
反省の色は無い。
「サーゼクス、問題有りだが…」
「あぁ、そうだな。父さん、今後はしないと約束してくれるか?」
「何を言っているんだ?サーゼクスよ!あの料理はグレモリー家伝統の料理だ。他の肉では作れない。お前も、リアスも大好きだろ?」
「あぁ、大好きだったよ…人間の肉だって知るまではね」
「お前は魔王なんだから、血の滴る人間の生肉を食え。精が付くぞ!」
旧来の悪魔らしい考えだ。今の時代にそぐわない。
「サーゼクス…どうなんだ?」
俺は、サーゼクスを睨む。アレが大好物だったという後ろめたさを持つ彼は、項垂れていた。
「知らなかったんだ。まさか…俺は、シュウ君にどう償えば良いんだ?」
「シュウは大丈夫だ。問題は朱乃君だろ?」
シュウの話では、相当なショックを受けたそうだ。彼女は人間の血を半分持っている。ソレなのに知らなかったとは言え、共食いをしていたのだがら…
「朱乃君…そうだな」
「あと、シュウとリアス君の問題だ。認めないのか、グレモリー卿」
「認める訳ないだろ?眷属でも無いし、ただの人間風情に、娘は渡せぬ。純血交配をする為にフェニックス家の三男と結婚の約束をしている」
「はぁ…言って置くが、シュウはただの人間では無い。俺達悪魔よりも上の存在だ。それでも拒否か?」
俺の言葉に驚いた表情を浮かべたグレモリー卿。
「そんなはずは…オーラはただの人間だったぞ!」
「あれは偽装だ。実際は違う。あと、リアス君の眷属になろうとしたが、彼女よりも価値高かったので、眷属に出来無かったんだ。その上。サーゼクスよりも価値は高いぞ」
「え…サーゼクスよりも…最強の悪魔だぞ、俺の息子は!」
「だから、悪魔よりも上の存在だと言っているでしょ?その気になれば、サーゼクスは一瞬で灰になる。その位の能力持ちですよ」
「…」
驚きのあまり、声が出ずに口をパクパクさせている、グレモリー卿。
「認めないんですね?」
「認める…なぁ、灰にしないでくれ…アジュカ様より、頼んで下さい」
自分で頼めないほど、シュウに恐怖を抱いたようだ。俺は、アイツを恐怖の対象にしているのかな…