---シュウ---
シーグヴァイラことヴァイラは、駒王学園中等部へ、僕と同じ学年、クラスに編入した。
「学校内では私が彼女だからね♪」
って、ヴァイラから言われた。リアスとケンカされては困るので、了承した僕。リアスがやってくる昼休み、放課後以外の休み時間は僕に貼り付く彼女。クラスメイトから冷やかされたり…悪い気はしないので、スルーしているけど。
リアス達2年生の帰りが遅くなった日、ヴァイラと共に帰宅。道草をしながらだけど。ヴァイラは、地上で流行っているロボットシリーズが大好きだそうだ。あの日も、狙っていた超合金フィギュアを買いに行っていたそうで、そうとう熱の入ったコレクターのようだ。
今日は家とは逆方向にある玩具屋詣でをしてみた。フィギュアを前にして、目が輝いている彼女。その度に、お財布と相談していたり…
「足り無かったら、少しくらいなら、援助できるよ」
と、声をかけた。
「えっ?いや…そこまでは…あぁ、アレ…いいなぁ…」
惚れ込んでしまった1体があるようだ。少し高額の為、買う決心が中々付かない彼女。埒が明かなそうな気がして、彼女に買ってあげた。どうせ、小遣いはオーフィスのバナナくらいしか使う機会が無いし。
「いいの?ありがとう…♪」
フィギュアの包みを持って、顔を紅潮させているヴァイラ。かわいいから、良しにしよう。
そして、帰り道。なんか、懐かしい道を見つけた。記憶を辿って、道を進んでいく。すると、古ぼけた教会の前に出た。廃墟のような教会。看板にかかれた文字を見て、固まる僕。
「どうしたの、シュウ?」
心配そうに声を掛けてきたヴァイラ。
「僕が育った教会…こんなになったんだ…」
義母が殺され、義父が仇討ちをしに行き、主のいなくなった建物は荒れ果てていた。建物の周囲には雑草が生え放題だし。僕は、敷地に入った。ヴァイラは悪魔なので、僕の後に付いてこない。廃れていても教会には、聖なるオーラが纏っている場合が有り、悪魔が迂闊に入り込んで良い領域では無いのだ。僕はしばし考え込み、ヴァイラの元に戻った。
「ねぇ、ヴァイラ、僕の駒を入れていい?」
『王』の資格を持つ彼女には、入れたくは無い。でも、一緒にいて欲しい。僕の迷える想いを彼女に選択してもらう。
「入れれば、一緒に行ける?」
彼女も同じ想いのようだ。
「たぶん…転生人間とかになるんじゃないかな?」
確実では無いけど、悪魔にはならない気がする。少し考え込み、結論に辿り着いたヴァイラは、僕の前に跪いた。
「駒を入れて下さい。一生、仕えますから、お願いします」
彼女の意志を確認した僕は彼女に『兵士』の駒を1つ入れてみた。すると、すんなり、彼女に溶け込むように入っていった。
「終わったよ」
笑顔の彼女を立たせて、彼女の手を握り、一緒に教会の内部に入って行った。外観と同様に、内部も荒れ果てていた。蜘蛛の巣がいたる場所に張ってあり、人の出入りが全くないことがわかる。奥の扉をあけて、住居部分へと向かった。そこも、昔の面影はあるものの、荒れ果てていた。
僕と八重垣の父さん、クレーリア母さんで囲んだ居間のテーブル…埃塗れだったけど、今も残っていた。父さんの部屋…本棚に聖戦士関連、エクソシスト関連の書籍が、あの当時のまま残っていた。母さんの部屋…
母さんの微かな残留オーラを感じ取った。僕の目から涙が…母さんの元気な姿が浮かび上がる。
「母さん…」
母さんの幻影に抱きつくが、抱きつくことは叶わなかった。呆然と立ち尽くす僕。
「シュウ…」
ヴァイラが僕を優しいオーラで包み込んでくれた。
「懐かしい想い出が、ここにあるのね。ねぇ、ここを掃除しましょうよ。少しでも昔の面影に戻そうよ」
彼女からの有り難い提案。そうだね。昔の様にすれば、父さんが帰って来るかもしれないし。
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次の日から、放課後にヴァイラと二人で、教会の掃除を始めた。時には黒歌と白音とオーフィスが手伝ってくれた。リアスと朱乃さんは悪魔の為、手伝えなかったけど。リアス曰く、廃れても教会自体の持つオーラは、悪魔にとっては避けたいそうだ。そうだよね。かと言って、リアスには駒は入れたくないし…彼女には優しい魔王様になって欲しいから。
壊れた箇所は、僕の創造能力で修復していく。拭き掃除はヴァイラと白音が担当してくれた。黒歌は良く無い気を浄化していってくれた。オーフィスは、アクシデントに備えて、索敵をしていつでも迎撃できるようにしながら、バナナを食している。
「オーフィス、バナナの皮はゴミ箱に入れてね」
「うん♪踏むと危ないし♪」
白音のおかげで、オーフィスのしゃべり方は補正された。黒歌のニャー言葉は治らないのかな?まぁ、方言と思えば、苦では無いからスルーしているけど。
そして、みんなのおかげで、昔の風景に戻った。最後に看板を洗い、清掃終了だ。その日、綺麗になった居住スペースで、僕だけがお泊まり。残留オーラを懐かしみながら…
夜中に人の気配で、目を醒ました。索敵をして、侵入者の元へ行くのだが…このオーラは…闇墜ちしているけど…侵入者に声をかけた。
「父さん…」
男性は僕の方を振り向いた。
「シュウ…シュウなのか…」
僕を僕と認識してくれて、声を掛けてきた侵入者。闇墜ちのせいで人相は変わっていたが、纏うオーラで、僕にはわかる。
「うん、父さん…」
「シュウ…大きくなったな。きれいにしてくれたのは、お前か?」
「仲間と一緒にだよ。きれいになれば、父さんが帰って来る気がしたから」
「そうか…でも、俺はもう…」
闇墜ちした事を悔やんでいる父さん。この局面で、貧弱な脳細胞に浮かんだ魔法陣。それを使い、父さんに対して浄化術を施してみる。父さんの身体から汚れたオーラが湧き出ていき、良く無い物が昇華していった。それに伴い、父さんの表情には明るさが、いや昔の人相に近づいていった。
「シュウ…いつの間に、そんな術を…」
僕の成長に驚いている父さん。
「必要な局面で、思い出すんだよ。いつ、覚えたのかを思い出せないけどね」
父さんは、ゆっくりと僕に近づき、僕を力強く抱きしめてくれた。そうだ、母さんがいれば、もっといいな。あの頃に戻れる気がする。僕の貧弱な脳細胞がある可能性を閃いた。
「父さん、母さんを呼び戻そうよ」
「お前…言っている意味がわかっているのか?」
怖い顔で僕を睨む父さん。でも…母さんがいれば、父さんは再び闇墜ちすることは無い。僕が背負えば良い問題だと思った。父さんをスルーして、作業に取りかかる。僕の周囲に結界を張り、父さんにジャマされないようにしておく。
「おい、シュウ!ダメだ!止めろ~!それをやったら、お前は…いいか、人間にはやって良い限界があるんだぞ!お~い!シュウ!」
父さんの必死な叫び声。とても有り難い。でも、父さんに恩返しをしたい。僕に初めて家庭とか親子とかを学ばしてくれた、父さんと母さんへの恩を返す時だと思うんだ。
脳細胞が魔法陣を発現していく。僕はそれに魔力を撃ち込み発動していく。まず、母さんの魂を招魂した。天から舞い降りてきた1つの魂。懐かしオーラを感じる。舞い降りてきた魂は僕の周囲を飛び廻る。手の平を出すと、そこに降り立った。
「おい、まだ間に合う。止めろ~!それ以上はダメだ、おい、シュウ!」
父さんの声が聞こえる。止めないよ。僕に出来ることは、総てやる。次に魂の記憶から、身体という魂の器を創造していく。徐々に母さんの身体が発現していく。
「クレーリア…」
父さんの絞り出すような声が聞こえた。
「もう、いい…シュウ、ダメだ。本当にこれ以上先には、踏み込むんじゃ無い。頼むから…」
父さんが僕の為に泣いてくれている。やり遂げないと。父さんに贈り物をしたい。そんな気持ちが強くなっていく。
器が完成した。全裸の母さんだ。このままだと母さんが驚くかぁ。そうだ。僕の記憶に残る母さんの服を纏わせていく。それから、魂を器に入れる為に、入魂の魔法陣を母さんの身体の上に発現させて発動させた。静かに身体に溶け込むように入っていく魂。ここまで作業すると、父さんは母さんの姿に釘付けだった。僕は超えてはいけない領域に踏み込み、止めることを諦めたようだ。
母さんの左胸の辺りに、再起動の魔法陣を発現させて発動した。これにより、母さんの心臓は、再起動していく。母さんの身体は、一瞬痙攣して、それから心拍音と呼吸音がしだした。それらを見届けて、周囲の結界を消滅させた。
「シュウ…お前…俺達の為に…人間を…」
僕を見つめる父さん。
「父さん、僕は、人間であることに拘らない。やっと、夢で出逢っていた紅髪の少女に出逢えたんだ。僕にとって大事なことは、彼女を護り切ることだけだし、父さんが闇墜ちしないで済めば、良いと思うんだ」
人間としてやってはいけないこと。いや、たぶん、神以外が行ってはいけない行為なんだと思う。死者を蘇らせるなんて行為はね。僕は死んだら、確実に地獄行きだろうな。これって大罪だと思うし。でも…
母さんは、うっすらと目を開けている。周囲を眺めるような仕草をしていた。そして、父さんに気づいた。
「あなた…」
消えそうな声で、父さんに呼び掛けた。
「クレーリア…」
父さんは母さんの手を取り、母さんの上半身を起こして、抱きしめた。これで良かったんだよな。自問自答していた僕の意識は、そこで途切れた。
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目が覚めると、ヴァイラが手を握っていた。通学の時間までに帰宅しなかったので、心配で来てくれたそうだった。
「シュウ…何をしているの…ねぇ、やったことの重大さを、分かっている?」
目を真っ赤にして、僕に怒鳴り散らすヴァイラ。
「分かっている。僕が背負えば良い問題だ。他の誰にも迷惑は掛けない」
「分かっていないよ~!私とかリアスとか、みんなの事を考えてくれている?良かったよ…生きていて。神の裁きを受けて、死ぬ可能性だってあったんだよ~」
僕に縋りつき、号泣し始めたヴァイラ。こんなにも僕を心配してくれたのか…そうか、僕の背負っている物って、僕の思っているよりも大きいんだ。
「ねぇ、約束して…もう、一人で背負わないで…こういう行為は、眷属である私に相談してよ。リアスには言いにくいだろうから。ねっ、シュウ、分かった?」
僕だけで負おっと思っていたのだが、結果的にヴァイラを巻き込んでしまった。僕は人間からクズになってしまったのかもしれない。
「シュウ、お前が悪い訳じゃにゃい。自分を責めにゃいでにゃ」
あれ?黒歌がいる。その隣には白音もいる。そして、父さんと母さんも…
「そこの姉妹が、お前に回復術を施してくれたんだ。後で、礼を言っておきなさい」
父さんに告げられた。
「黒歌、白音…ありがとう…」
「にゃんにもしていにゃいにゃ。単なる、エネルギー切れにゃ♪」
黒歌と白音の顔が赤い。照れているようだ。
「シュウ…ありがとう…生き返らせてくれて…」
クレーリア母さんが、僕の頬を撫でてくれた。暖かくて柔らかい手の平…あの頃と変わらない。
「まったく、心配を掛けないでよ~」
って、リアス。えっ?なんで、リアスがいるんだ?
「何、驚いているのよ~。私はシュウの彼女よ!ご両親に紹介しなさいよ~!」
「いや…教会なのに、いても大丈夫なの?」
その為に、ヴァイラを眷属にしたのだが…
「大丈夫なのよ!いい?あなたのお母さんは、悪魔なのよ!」
えっ?クレーリア母さんって、悪魔?天使でなくて?混乱する僕。
「シュウ、私は悪魔なの。言わなくて、ごめんなさいね。クレーリア・ベリアルっていう、リアスさんの前任者なのよ」
リアスの前任者?この辺りを統轄する悪魔の前任者?そうだ、前任者が死んだ為、リアスが引き継いだようなことを言っていたような…
「もう、聞いて、びっくりよ!前任者のクレーリアさんが、シュウの養い親だって、言うんだもの」
「じゃ…ヴァイラ…ごめんよ~」
ヴァイラに謝る僕。
「いいのよ。私はシュウの眷属になれて、嬉しいの。だってさぁ、リアスに勝った気がするし♪」
小悪魔な微笑みをリアスに向けるヴァイラ。
「ははは…この件は負けを認めるわよ、ヴァイラ。私が頼んでも、眷属にしてもらえないんだし」
ヴァイラの挑発的な行動を、意に返さないリアス。
「リアス…ごめん…」
「気にしないで…シュウ…私はシュウが傍にいてくれるだけで、幸せだから♪」
「しばらく見ない間に、両手に花?シュウ、良かったわね♪」
母さんが髪の毛を撫でてくれた。母さんのオーラに触れられて、心が軽くなっていく気がする。
こうして『八重垣教会』は、僕達の拠点の1つになった。
---アジュカ---
「まさか、死者を蘇らせる能力があったとは…」
「あぁ、神が為せる御業だな」
アザゼルと、今回の件について、意見交換をした。
「これで、違法駒の件も一歩進むんだろ、アジュカ?」
「そうだな。証人が甦ったからね。アイツらは、再び狙うのかな?」
表向きは、教会関係者との禁じられた愛により粛正されたことになっていたが、クレーリア・ベリアルは、違法駒の調査をしていて暗殺されたのだった。
「そういう事は、シュウが放っておかないと思う。そのせいで、暴走の危険度が高まるかもな」
「それだけは、避けないと…」
「万が一の時、オーフィスがアイツを次元の狭間へと、連れ出す手立てにはなっているが」
アザゼルの方で対策を施してくれているようだ。他にも策を施しておかないと、危険かな?
「禁断の術が行使できるってことは、大抵のことは出来るってことだ。あと、懸念は、天界の動きだな。魂の管轄は天界で、根回し無しに行ったから」
「アザゼルの方で、それを解決できるか?」
「あぁ、やってみる。悪魔は天界と縁が無いだろうからな」