※この作品はR-18です。

神器なき男 (再編集版)   作:もっち~!

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失踪

---イッセー---

 

風呂場で想いに耽る。共同生活故、一人になれる空間は、ここ風呂場とトイレしかない。木場、ヴァーリ、由良は前世の記憶が有るようだった。たぶん、リアス部長とシュウも、うっすらとだけど、残っているのかもしれない。じゃ、俺はどうなんだ?

 

記憶をあれこれと思い返すが、一向に想い出せない。俺には前世が無いのかもな。って、思い込もうとした瞬間、

 

『前世の記憶は頭ではなくて、魂に刻まれるんだ。お前は魂から行動していないだろ?』

 

って、声がした。誰の声だ?そもそも、どこからしたんだ?

 

『はぁ~、耳を澄ましても無駄だ。俺はお前の魂に宿る者だ。お前の魂に直接問い掛けているんだぞ』

 

相手の声は呆れているようだ。はぁ?魂に問い掛けている?意味が分からない。

 

『俺はドライグだ。よろしくな、相棒!現状の価値の総ては、俺のおかげだぞ』

 

価値…あぁ、俺自身に価値は無いって言われたような。コイツは何者だ?

 

『俺は赤いドラゴンだ。あのヴァーリというヤツに宿る白いドラゴンのアルビオンとは、ライバル関係だ』

 

ヴァーリにも宿っているのか?ならば、

 

「なぁ、俺の前世について知らないか?」

 

『あぁ、良く知っているぞ。お前が前世を終末に導いた原因だからな』

 

俺が?終末の原因?何で?

 

『まぁ、お前が知らないのも当然だ。あのお人好しは、今世のお前が過去を引き摺って、後悔した生き方をしないように、お前の魂の記憶を封印したのだから』

 

お人好し?俺の記憶を封印?何で?

 

『何で?知れば、お前の選択肢は2つだ。前世のようにケダモノになるか、後悔して懺悔の毎日を送るかだ』

 

前世のようにケダモノ?おい、俺って…もしかして…

 

『そうだ。リアス・グレモリーの貞操を奪い、アイツの精神をズタズタにした張本人だ』

 

俺…俺なのか…シュウをあんなのにしたのは…だから、俺をみんなは睨んでいたのか?

 

『前世でお前は、俺の存在を知り、強くなったと勘違いをした。更に、強ければ、何でも奪えるとも勘違いをしたんだ。その結果、リアス・グレモリーは、汚れた自分の消去を望み、アイツはリアス・グレモリーだけでなくて、世界も消し去ったんだ』

 

俺は…そんなことを…いい湯加減のお湯に浸かっているのに、全身が震えてきた。

 

『今世では間違えを起こすなよ。アイツは壊れる寸前だ。前世のような、お前にお情けを掛ける余裕は無いかもしれない』

 

アイツが俺の記憶を…今まで、俺がノー天気で生きていられたのは、アイツのおかげなのか?うん?壊れる寸前?

 

『そうだ。壊れれば、アイツは暴走する。何をするかの予想はつかん』

 

だから、みんな、アイツを支えているのか?

 

『薄々感じているのだろう。アイツが一人で背負ったことで、アイツの負担は増しているし』

 

負担?

 

『感情を封印して、人間を辞めて、孤独に向かおうとしている。アイツは、護りたい者を護る為に、総てを捨てて来たヤツだ。お前に、その覚悟が有るのか?』

 

誰かを護る?そんなことはしたことが無い。自分を護ることで手一杯だったし。まして、感情なんか捨てられない。人間を辞められない。孤独なんかに耐えられない。

 

『それが普通の者の考え方だ。アイツは普通では無い。クレージーな領域にいるんだ』

 

人間を辞めたって?アイツは人間では無いのか?

 

『護りたい者を護るために、人間が超えてはいけない領域を、アイツは迷うこと無く踏み出したんだ。その結果、アイツは普通の生物ではいられなくなった。アイツは死んでも、天国へも地獄へも行けない。不死の魂を得た。なので、転生もできない』

 

転生出来無い?じゃ、アイツは…

 

『前世で死んでいない。たぶん、今世で受精して産まれたって訳ではない。前世のまま、今世に来たと考えた方が良いな』

 

死んでいない?受精していない?あいつは、生物では無いのか?既に…

 

『お前に力を貸す用意はある。あとは、お前の心掛けしだいだ』

 

俺の相棒の声は、今宵はここまでだった。そう、俺はのぼせたようだ。

 

 

------

 

翌日、木場に昨晩聞いた内容を話した。

 

「だから?どうしたいんだ?」

 

いつもの爽やかな笑顔はなく、ハンターのような目付きで俺をロックオンしている。

 

「どうって…リアス部長に謝った方がいいかな?」

 

「リアス様は、前世の記憶が無いのに?混乱するだけだと、思わないのか?」

 

あぁ、そうだな。汚れた記憶は消されているって話だったな。

 

「それより、これから、どうするんだ?」

 

俺の返答次第で、斬り捨てる気か?殺気がビシビシ飛んでくる。

 

「どうって…どうすれば良い?」

 

「やれやれ…その答えは君が見つけてくれ。他人が言っても、「はいそうですか」に、ならないだろ?」

 

まぁ、そうだな…木場は俺の前から去って行った。どうすれば、いいんだ、俺は…

 

 

 

---シュウ---

 

最近、生徒会室に入り浸っている男子生徒がいる。匙元一郎とか言う、僕と同学年らしい。彼の目当てはソーナらしいのだが、当のソーナはスルーしている。そんな彼のライバルは僕らしく、僕が生徒会室に行くと、睨んだり、絡んだりする。

 

「匙、シュウ君に因縁をつけないで!私の大事な人なんだから♪」

 

「こいつ、色々な女性と付き合っているんですよ。浮気男で男のクズですよ!」

 

言いたいことは分かる。でも、そこまで言われるとは…

 

「彼はクズでは無いわ。そういう匙の方がクズだわ」

 

そう匙に言うと、僕をエスコートして奥の部屋へ連れ込まれて行く。30分コースを終えて、奥の部屋から戻ると、匙に襟首を掴まれた。

 

「貴様、ソーナ会長に何をしているんだ?」

 

「調教だけど…」

 

正直に言う僕。

 

「はぁ?調教だと!有り得ない…何で、皆さんは、こんなヤツを野放しにするんですか?」

 

椿姫達に意見を求める匙。

 

「言葉が過ぎるぞ、匙。彼は何も悪く無い。ソーナ会長の求めに応じているだけだ」

 

椿姫が匙に返答をした。

 

「求め?調教なんか求めていないでしょ?品行方正なソーナ会長に限って、そんな事をする訳がない」

 

「お前は、ソーナ会長の何を見ているのだ?惚れるのは勝手だし、自由だと思うが、自分の物のように決めつけるな。いい加減にしないと出入り禁止にするぞ!」

 

激高状態の匙に、それなりの対応を伝えた椿姫。

 

「なぁ、僕はどうすれば良いんだ、椿姫」

 

「されたいようにでいいですよ。ソーナのことはよろしくお願いします」

 

匙に対してと違い、僕に対しては柔らかいトーンになる椿姫。

 

「なんで、副会長も、ソイツに甘いんですか?洗脳ですか?催眠術ですか?」

 

うん?よくわからない単語が出た。

 

「なぁ、桐生、洗脳って何だ?あと、催眠術って?」

 

クラスメイトの桐生に訊いた。

 

「う~んっと…シュウは知らないでいいことよ。調べたりしないで良いから」

 

そうか、必要無い事なんだな。

 

「コイツ、そんな事も知らないのか…良く高校に入れたな!」

 

匙の言葉はスルーする。興味無いし。

 

「匙、それ以上失礼な事を言ったら、お前は出入り禁止、いや、停学とか退学するわよ」

 

奥の部屋で、余韻に浸っていたソーナが、戻って来た。

 

「なんでですか?会長!」

 

「彼は私の求めに応じているだけ。彼からしたいとは言われない。言って欲しいのに…ねぇ、シュウ君、たまには求めてよ~」

 

僕に甘えてくるソーナ。肩を抱いて、頭を撫でてあげると、喜んでいる。

 

「なんで、ソイツだけ、態度が違うんですか?」

 

匙がまだ質問をしてくる。

 

「それは、私がシュウ君を愛しているからよ。愛している彼にしか、向けない私の姿に、文句があるの?」

 

ソーナの心が荒れてきたな。

 

「ソーナ。止めておけ。ソーナを嫌いになりたくない」

 

はっとしたソーナ。

 

「そ、そ、そうだったわ。シュウ君の前で怒りを纏っちゃダメだよね。ごめんなさい」

 

僕の胸に頭をもたげてきた。

 

「会長!何で、そんなヤツを…」

 

それ以降、匙をスルーする生徒会メンバー。

 

 

-----

 

 

部室に向かう。そんな僕を追いかけてきた匙。

 

「待てよ!お前は、ソーナ会長をどう思っているんだ?」

 

「どうも思っていない。僕は好きなったり、愛したりする感情が無いんだ。だから、僕からは何も出来無い。君の気持ちは分かる。でも、ソーナの気持ちも分かる。僕はソーナよりの者だから、ソーナの気持ちを大事にしたいんだ」

 

正直なところを伝える。

 

「愛していないなら、もう逢わないないでくれないか?それじゃ、ソーナ会長が報われないだろ?」

 

「そうなのか…わかった。そうする」

 

愛している者を愛せないって、相手に期待与えてしまうのか。匙の言葉で、僕の考えの及ばなかった事を理解した僕は、翌日から生徒会室にも行かないし、ソーナにも逢わないようにした。

 

同じ理由から、リアスにも逢わないようにした。部室にも行かずに…次元の狭間で過ごす時間が増えていく。

 

リアスだけでは無く、ヴァイラとかヴァーリとも逢うのは、ダメかな?そう考え始めた時から、僕は次元の狭間から出ることは無くなった。

 

 

 

---リアス---

 

シュウが帰って来ない。ソーナの処にも行っていない。学校にも通っていない。どうしたんだろ?何か、気に障ったのかな?涙がこみ上げてくる。

 

シュウがいないって、こんなにも寂しく、空しいんだ。学校へ行く気力が無くなっていく。そんな私をソーナが訪ねて来た。

 

「シュウ君は?どこ?」

 

ソーナもシュウに逢えない禁断症状が出ているようだ。ヴァイラも、ヴァーリも、翼紗も、祐斗も…みんな…心が荒んでいく。シュウがいるだけで、心が癒やされていたと、皆で気づいた。でも、どこにいるのか分からない。

 

「原因は何かしらね?」

 

って、朱乃が呟いた。そうだ!意味も無く行動をすることはしない。何か原因があるのだろう。私の眷属、シュウの眷属、ソーナの眷属で、シュウがいなくなった原因を探してみる。

 

そして、原因が分かった。生徒会室に出入りする、ソーナに片思いする男子生徒の発言だった。

 

『愛していないなら、もう逢わないないでくれないか?それじゃ、ソーナ会長が報われないだろ?』

 

って…愛していない訳では無い。愛せないのだ。愛したくても、シュウには愛するという感情は無いのだ。きっと、ソーナだけでなくて、私もそして、彼を慕うみんなにも当て嵌めたのだろう。愛せないなら相手が報われない、だから逢っちゃダメって…

 

その男子生徒にソーナが、シュウの抱えている問題を説明した。唖然とした男子生徒。自分の発言で、感情障害を持つシュウを、追い込んだことに気づいたらしい。更に、みんなが彼とプレイする理由も話したらしい。溜まりすぎると危険だってことを。それには、男子生徒の目が点になったらしいけど。

 

「もう3週間…溜まっているんだろうな…犯罪を犯す前に、確保しないと…」

 

彼が溜まり過ぎて、何かを起こす前に、抜かないと…今のシュウは拷問しなくても調教があるらしいけど、どっちも犯罪に繋がるしなぁ…私達だけでは、力不足なので、お兄様とアザゼル、ミカエル様にも、探して貰う。

 

そして、1ヶ月…危険すぎる。まだ、彼が何かをしでかしたって報告は無い。でも、油断は出来無い。表面化していない可能性も有るし。

 

そして…見付かった。ヴァーリと翼紗のコンビから、シュウを確保したと連絡は来た。ただ、説得が難航しているみたいだった。私も説得に加わりたかったけど、確保した場所は、次元の狭間という特殊空間だった。そこに行くには、そういう能力が無いとダメらしい。

 

アザゼル情報では、次元の狭間では時間の概念が無いらしく、それが幸いして、シュウ的には2日くらいしか経っていないらしい。

 

それから半月後、ようやく帰還したシュウ。

 

「僕…ここにいてもいいの?リアスやソーナに逢ってもいいの?」

 

「当たり前でしょ♪」

 

彼を抱きしめた私。私と触れ合って、安心したのか、意識を失ったシュウ。緊張がほぐれたんだろう。彼の部屋へ運び、ベッドに寝かし付けた。そして、彼の手を握り締める。冷たい…身体にも触れてみる。冷たすぎる。何で?アーシア、白音、黒歌を呼んで、彼に癒やしの術をかけてもらう。

 

「無重力な場所だったのかにゃ?血行が良くにゃいな」

 

黒歌の見立てを聞いた。次元の狭間について、ヴァーリから情報を得た。重力という物が無いらしい。黒歌の見立て通りだった。黒歌によると、しばらく自宅療養が必要だと言う。

 

なので、皆で手分けして看病をしていく。食事は朱乃に頼んだ。

 

 

 

---ソーナ---

 

シュウ君は無事に確保されたそうで、今はリアスの家で療養しているそうだ。匙は反省をしていた。

 

「愛したくても愛せないなんて…苦しんでいたんですね、彼は…」

 

そう、匙はまだ愛せるだけ幸せである。シュウ君は、愛されていることが分かるのに、自分では愛せないことに悩んでいたのだ。そこをついた、匙の言葉で、ネガティブな思考へと向かったようだ。

 

匙と椿姫を伴い、シュウ君の元へ謝罪に行く。そこで見たシュウ君は、ただ眠っているだけ。エネルギーも気力も体力も使い果たして、たた眠るだけの存在になっていた。

 

「私を認識して、気が緩んで…それから寝ているだけなのよ」

 

って、リアスが彼の手を握っている。体力がない彼とは、誰とも交わることが出来無いらしい。交わるという行為は体力を使うから。

 

「ちょっとずつ、体温が上がっているの。もう少しで目覚めてくれると思う」

 

握り締めた彼の手を自分の頬に当てるリアス。羨ましい…私もしたい…

 

『会長、謝罪に来たんですよ♪』

 

って、意地悪っぽい声の念話が、椿姫から届いた。そうなんだけど…あぁ、リアスの手から彼の手を奪いたい…

 

 

 

---ヴァーリ---

 

一誠から話があると、部室に呼び出された。

 

「頼みがある。魂に宿るドラゴンの力を、引き出せるようになりたいんだ。鍛錬をしてくれないか」

 

こいつから、こんな頼みがあるとは…

 

「どうして、そうしたいんだ?」

 

いつもと表情が違う一誠。何かを決心した表情だ。

 

「護りたいと思える者が出来た。だから、もっと強くなりたい。護りたいと思う者よりも、強くなりたいんだ。頼む、鍛錬をしてくれ。お願いだ」

 

少し興味が有る。誰を護りたくなったんだ?

 

「誰を護りたいんだ?」

 

「シュウだ。俺も、アイツを護るナイトに成りたい」

 

シュウを?どういう心境の変化だ?

 

「どうして、護りたくなったんだ?」

 

「ドライグから話を聞いた。俺の前世の話を…俺はアイツに…謝って済む問題では無い。だから、行動で示したいんだよ」

 

そうか…ドライグに聞いたのか。俺も、アルビオンから聞いて、知ったんだけどな。

 

「わかった。明日から始める。鍛錬メニューの変更は、シュウの意識が戻ってから、報告する。きつくて、つらいが、逃げるなよ」

 

「分かっている。今回のことで、アイツの不憫さが…アイツ、つらいんだよな?きついんだよな?」

 

「だと思う。だから…俺も報われたいって思う時もあるけど、それはシュウの心をいたぶると思うんだ。だから、報われたいとは思わずに、尽くす。それだけだよ」

 

いつか、感情が戻れば…淡い期待を持っているのは、内緒だけどな♪

 

 

 

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