---イッセー---
シュウの事を見直した匙と共に、ヴァーリを師匠にして、内に秘めたドラゴンの力を使いこなせる様に、鍛錬をしていく。匙はシュウの事を信頼しつつあったのだが、
「いまだに、感情が読み取れないや」
シュウの表情から読み取るのは、難しい。行動や仕草などから読み取るしかない。リアス先輩クラスだと、雰囲気や漂わせるオーラでわかるらしいけど。俺も匙も、そういうことも含めて、まだまだ未熟な領域なようだ。
ドラゴンの力の初歩的な使い道は分かって来たが、まだまだ実戦で使いこなせる域に達せずあせり始めた頃、
「ドラゴンの力が進化するには、何かしらのきっかけが必要だ」
ヴァーリがステップアップに大切なことを言う。
「何か?」
「神器は魂に呼応する。だから、魂を揺さぶられるようなことが必要になるんだ」
う~ん…以前の俺だったら、ヴァーリに抱きつかれたり、腕を極められた程度でも、魂が揺さぶられていたのだろうけど、エロき心と性欲を抜かれた今、何もときめかない。
簡単な剣術は木場に習い、魔力の扱い方は朱乃さんに習い、気の流れやオーラの制御は黒歌さんに習っていった。しかし、魂は揺さぶられない。エロき心さえ戻れば…
そして、シュウは相変わらずだった。俺からエロき心と性欲を奪ったはずなのに、自分からどうこうしようとしない。相手まかせであるのだ。来る者拒まずって感じではある。好みの女性って概念も無いのかもしれない。
女性陣は、シュウの溜まった性的欲望…シュウ的には疲労らしいのだが、定期的に抜くことが大事だと言う。シュウ的な過労状態は、シュウの暴走を起こしかねない。起こしてしまうと、後が大変だから、献身的に介護目的で抜いているそうだ。うらやましい限りだ。
匙的には、ソーナ会長がそういうことに従事するのに抵抗があるものの、シュウの傍で多くの時間を過ごすにつれて、シュウの抱えている問題に向き合い、ソーナ会長の行為を容認していった。
シュウは感情障害故、エロき心が有ろうとも、性なる快楽による悦びすら感じないらしい。抜いてもらっても、暖かさだけを感じ、生きていると実感しているだけとか。そんなシュウが、匙には不憫に思えてしかたないらしい。
「ソーナ会長とあんなこと、そんなこと、こんなことしているのに…それが感じないって…」
「匙、俺にはお前の思いが分かる。リアス部長にあんなこと、そんなこと、こんなことしているのに感じないって…もったいない、男性として、損していると思う」
叶わぬ恋を抱く同志と語らう、シュウの不憫さ。
「俺には、性欲とかエロ心を抜かれたのに、未だにそう考えるイッセーの方が、凄いと思うぞ。どうして君はそういう妄想がまだ浮かぶんだ?シュウに教えてあげて欲しいよ」
ってヴァーリ。確かに妄想だけは浮かぶんだよ。性欲は全く湧かないのに…俺も不憫な気がする…
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高校2年になった。同じクラスには、シュウ、シーグヴァイラ、ヴァーリ、翼紗、桐生、そしてアーシアたん♪そう、クラス替えは無かった…
進級して、直ぐの頃、匙が放課後やって来た。
「俺にも春がやって来たんだよ~♪」
嬉しそうに話す匙。他校の女子高生にラブレターを貰ったと言う。で、今日の夕方、学校近くの公園で、お返事をするだと。
「良かったな、匙♪」
無表情のシュウが、嬉しそうに話しているようにみえる。
「うん♪でね…初めてだから…アドバイスを欲しいんだよ。念話で指示してくれないか?」
初デートでシュウにアドバイスを貰う?危険が一杯だと思う。たぶん、ハーレム所持っていう点に置いては、女性の扱いはそれなりだと思うのだが、シュウ本人のヤルは交わりでなく、拷問、調教のことであるし…
「自信は無いけど…」
「いいんだよ。見守ってくれているだけでも。なぁ、頼むよ」
まぁ、シュウが傍にいる安堵感は重要かもしれない。ただ、いるだけで安心に思えることも多いし。
そして、夕方。シュウだけでは不安って言うこともあるが、匙の彼女を見たいというヤジ馬根性が働き、シュウと俺のクラス内の仲間達で見守ることになった。気配は消す方向で…匙の彼女に不安を抱かせない配慮である。
そして、匙の彼女は現れた。
「夕麻ちゃん…返事だけど、オーケーだよ♪」
とっても嬉しそうな匙。しかし、シュウから念話が入った。
『索敵をしろ。匙のジャマをさせるなよ。何かがいる』
っと。索敵ができる桐生、翼紗、ヴァーリが対応をしているみたいだ。
「元ちゃん、お願いがあるの」
匙の彼女が、匙に甘えるように言った。
「なぁ~にぃ~♪」
その声を聞いて、のぼせたような匙。
「お前の命をよこせ!」
えっ?匙の彼女が、いつの間にか光の槍を持っている。それを匙に投げ放った。突然の事で、匙は動けない。しかし…
「匙を騙したのか?堕天使よ!」
匙のいた場所にはシュウがいた。匙に向けて放たれた光の槍が、シュウの身体を突き抜けて刺さっていた。匙は、シュウにより草むらまで飛ばされて無事だが…
「貴様…何者だ?」
「匙のダチだよ。それが何か?」
匙の彼女は堕天使に姿を変え、再度光の槍を持ち、シュウと対峙する。
「悪魔では無いのか?光の槍であまり苦しまないな」
「あぁ、一応聖属性だからな」
『我が剣よ ここに』
シュウが呪文を唱えると、手に光り輝く剣が発現した。その剣を見て、狼狽える堕天使。
「聖剣だと?」
「はぁっ…はぁっ…いや、タダの聖剣では無い」
苦しいのかシュウの息づかいが荒くなっていく。周囲を見回すと、ヴァーリが白い鎧を纏い大柄な堕天使と、翼紗、ヴァイラは小柄な堕天使と抗戦していた。
『我が闇よ 剣に力を』
更に呪文を唱えたシュウ。聖剣の放つ光が神々しさから禍々しい物へと変貌していく。
「えっ…ダークエクスカリバー…」
顔を強張らせていく堕天使が呟いた。シュウはその堕天使目がけて斬り込む。避ける堕天使だったが、シュウは狙い定めたように、堕天使の翼を根元から斬り落とした。
「うっぐっ!」
顔を歪める堕天使。苦し紛れに放った光の槍は、またもシュウの身体に突き刺さった。それにより、地面に膝を着くような体勢になるシュウ。
「「シュウゥゥゥゥ~!」」
俺と匙はほぼ同時に叫んだ。堕天使が3本目の光の槍を手にしていたから。シュウの反応がおかしい。マズい気がする。そんな時だ。俺の魂が震えている気がした。そして、
『バランスブレーカー』
ドライグの声がして、俺は赤い鎧に身を包まれていた。
『宿主よ。その怒りを、あの堕天使にぶつけろ』
ドライグがカウントを始めた。匙を見ると、アイツも黒い鎧で身を包んでいた。
「ライン!」
匙から黒いラインが伸び、堕天使の槍を持つ手を拘束した。
『カウントアップしたら、あの堕天使の顔に拳をぶつけろ!』
ドライグから指示が出た。俺は右手を握り締め、その拳にオーラを流し込む。そして、堕天使に向かって歩き出した。
堕天使の傍まで行くと、匙のラインが外れず、ソイツは藻掻いていた。そして、ドライグがカウントアップを知らせてくれ、拳に集まっているオーラに『倍化』の恩恵を『譲渡』してくれた。
「てめぇ~!俺達のシュウに何をしてくれたんだぁぁぁぁ!」
腰の回転を使い、全体重を拳にのせて、堕天使の顔にぶち込んだ。俺の拳と地面にサンドされたソイツの頭部はつぶれて、四方八方へと肉片やら骨片やらが散らばり、息絶えたようだ。光の槍を発現した堕天使が死んだことにより、シュウに刺さっていた光の槍は消滅し、槍が栓の役割をしていた傷口からは、大量の血が吹き出した。
アーシアたんがシュウの元へと駆け寄り、治癒術で止血をしつつ、傷を治していく。
「シュウさん…しっかりしてください」
アーシアたんが声を掛けるも、シュウの声は聞こえない。
ヴァーリ達も交戦した相手を屠り、シュウの元へと集まってきた。
「匙は…無事か…」
絞り出すような声でシュウが言った。
「俺は大丈夫だ。お前は…大丈夫か…」
見た目、大丈夫に見えないシュウに、声をかける匙。
「そうか…無事か…良かった」
皆でアーシアたんの方を見る。首を横に振る彼女。手に負えない状態のようだ。
「もう少し、がんばってください。救援信号を出しましたから」
自力で体勢の維持が出来無くなったのか、アーシアたんの身体に身を預けるシュウ。アーシアたんは、必死に励ましているのだが、シュウのオーラが萎んでいく。
「シュウ!」
部長の声がした。俺達の周囲にたくさんの転移陣が現れていき、仲間達が次々に駆けつけてきた。
「あぁ、リアス…ごめん…また、ダメかな…」
「ダメじゃない!しっかりして!ねぇ、シュウ」
シュウの手を握り締める部長。握り締めた瞬間、彼女の顔が歪んだように見えた。何かの異変を感じ取ったのかもしれない。
「リアスを…愛したかった…」
部長の手から、地面に向けて力無く落ちていくシュウの手…
「シュウゥゥゥゥ!」
リアス部長は渾身の力を込めて、シュウに声をかけた。