---リアス---
シュウは天界の医療機関へと搬送されていった。ガブリエルさんの判断で…その後、連絡があり、命は助かったようだけど、当分入院らしい。
シュウの願いを叶えてあげたい…私でなくてもいい。誰かと愛し合えるようになって欲しい。どうすれば良いかな?
今回の件は、現場にいなかった朱乃、祐斗、ギャスパーですらショックが大きいみたいだ。シュウを護りたいと願っていたのに、こんな結果になったのだから。
その後、お兄様達の現場検証により、1つの事実が判明した。疑問だった。シュウは何故、あの場所に立ち、槍を2本も受けたのか。いつものように何故『催淫』なり『脱衣緊縛』を唱えなかったのか、疑問であったのだ。
シュウはあの場所にいないとダメだった。あの場所の後方には、アーシアがいたそうだ。シュウはアーシアを護る盾として、仁王立ちをしていたそうだ。その事実を知らされた彼女は、顔面蒼白になり、その場で崩れるように倒れた。
「そんな…」
思いも寄らない事実に彼女は、精神ダメージを受けた。
「あと、あの場にいた者で、あの槍を受けたら、シュウ君以外だと死んでいたと思う」
お兄様から更なる事実を告げられた。堕天使の主要武器である光の槍は、悪魔に致命傷を負わしかねない、対悪魔兵器である。人間よりも強固な身体を持つ悪魔でそんな感じであるので、人間は即死だろうと言う。
私とソーナの眷属は転生悪魔であるが、シュウの眷属は、種族の変更は無い。あの場には悪魔と人間しかいなかった。種族不明のシュウを除けば…
「彼のみんなを護りたいという気持ちが、あの槍攻撃を総て防ぐという行動に出たのだろう。術を発動しなかったのは、かかるまでのタイムラグを恐れてだろうな。速効性は無いから」
『催淫』も『脱衣緊縛』も、意識を持っていくには時間が少しかかる。かかる迄の間に、槍を投げられたら…匙もアーシアも生きていなかったであろう。
「一命を取り留めたそうだから、一安心だ」
一安心ではあるけれども…あの時、シュウの手が冷たくなっていく過程を、私は私の手の中で感じ取ってしまったから…もう、逢えないのかな…
---イッセー---
堕天使が光の槍を手にした時、足が竦んで動けなかった。本能的に、あれは危険な物と分かったから。なのに、シュウは迷うこと無く飛び出した。あれが『護る』ということなのだろう。
言葉で言うのは簡単だった。心に誓うのも簡単だった。でも、行動で示すことは無理だった。シュウは護り慣れているのだろうか。
そして、サーゼクス様からの情報により、シュウは『護る』為に、全員の位置の把握もしていたようだった。まさか、シュウの後方にアーシアたんがいたなんて、俺は気づきもしなかった。アーシアたんは、シュウの身体を槍が突き抜ける様子を、直視していたようだった。でも、いち早くシュウの元に駆け寄り、シュウを『救う』という行為をした。
俺は何をやっているんだ。シュウのやられる様子を見て、怒りで魂が震え、その結果ドライグの力は、次のステップへと行けたけど。匙も俺と同じで悩んでいた。ヴリトラの力は次のステップへと行けた。でも、シュウがやられた後であったから。そして、シュウが重体になった原因は匙にあると思っているようだ。
「俺がうかれていたから…心のどこかで、シュウにみせつけようと思っていたのかもしれない」
っと。匙はソーナ会長の逆鱗に触れ、お説教をされたそうだ。罠の可能性もあるので、まず自分の『王』へ報告しないさいと。そうだよな。他の高校の女子に告白なって、有り得ないものな。よく考えると。罠臭がプンプンする気がする。匙もそうだが、匙の春に俺達もうかれていたのかもしれない。反省点が満載だよ。
---リアス---
悩んでいても仕方ないので、寝ることにする。ベッドに目をやるが、そこにはシュウの姿は無い。一人で寝られるかな?
『寝られないの?』
えっ?シュウの声がした。部屋の中を探す。目だけでなく、彼のオーラを索敵する。まさか…微量ではあるけど、彼のオーラを感じる。私の目の前だ。
『寝ないと、身体に悪い。一緒に寝よう♪』
姿は見えないけど、声だけが聞こえる。幻聴かな?でも、微量のオーラが感じるんだけど…残留オーラかな?
誰かに手を引かれて、ベッドに誘導された。
『ほら、横になりなよ』
彼の声に従う。全裸になりベッドに横になった。身体に彼の感触が感じられる。なんで?
姿はまるで見えない。どうして?
『幽体離脱してきたんだ♪』
嬉しそうに語る彼。幽体離脱?
『そう。別名「魂のコピー体」というか』
なんかチートな事を言っている。う~ん…
『僕の身体は当分動けない。内部の損傷が酷くてね、再生能力が追い付かないんだよ』
ますますチートな事を…まぁ、シュウからチートな能力を抜いたら、変態しか残らない気もするけど。
『まだ、リアスを護れそうだよ。退院したら、全力で護るからね』
彼の見えないアレが身体に入ってきた。感触だけ感じる。まぁ、体内に入れた物は見えなくても支障は無いかな。彼の肉棒の感触を感じ、リラックスしていく私の心。そして眠気が…
朝、目覚めると、彼のオーラは感じなかった。今夜も来てくれるかな?
---アーシア---
あの場面が夢に何度も出てくる。シュウさんの背中を突き破って、槍の先端が出てくる夢。サーゼクス様からの情報。シュウさんは私を護る為に、槍を自ら受けたみたいだった。私が受けると、私が死んじゃうから…
守護対象者に護られるなんて…私を派遣された教会の幹部の皆さんに叱られた。ガブリエル様は、私をかばってくれたけど。
「聖女アーシアさんは、回復役です。対象者を護る能力は無いんですよ。今回のような万が一の時の最終兵器であって、通常の兵器のような使い方は無理です。盾の役目は私にあります。なので、以後聖女アーシアさんではなく、私を責めなさい」
って…大天使のガブリエル様を、責めることができる教会関係者はいないのだけど。
盾の役目…私にできるのかな?
『アーシアはアーシアの出来ることをすれば良い』
シュウさんの声が聞こえた。えっ?なんで?天からの啓示かな?
『天からで無いよ。僕はアーシアと共にある』
シュウさんの暖かい優しいオーラが感じられる。傍にいてくれているようだ。
『悪夢は昇華させる。アーシアが苦しむことは無い』
暖かく優しいオーラに包まれていく。心が穏やかになっていく。悩みが昇華していく。
気づくと朝だった。夢だったのかな?ふと鏡を見ると、乳房にシュウさんのキスマークが…夢では無かったようだ。
---シュウ---
極秘裏に退院をして、姫島神社で療養している。朱乃には口止めをしてある。バレると療養どころでは無くなるから。陰陽師の術を使う僕には、天界よりも神社の方が相性が良いようだった。天界の聖なる雰囲気より、神社の持つ厳かな雰囲気が心地良い気がする。
姫島神社には朱乃と朱乃の母親の朱璃さん、そして朱乃の父親のバラキエルさんが住んでいた。そこに僕が転がりこんだのだ。三人は僕を歓迎してくれた。僕の為に部屋を用意してくれ、僕の療養をアシストしてくれている。バラキエルさんはアザゼルの仲間で、堕天使組織『グリゴリ』の幹部だそうだ。なので、匙を罠に嵌めた奴らについて、調べて貰っている。
わかったことは、『グリゴリ』所属の堕天使ではなくて、『教会』という組織に所属する堕天使だったこと、純血の堕天使だったこと、狙いは神器だったことが判明した。神器は人間もしくは人間の血の入ったハーフ種族にだけ与えられる、不可思議な能力で有り、彼ら純血堕天使やリアス達のような純血悪魔などには、宿らないそうだ。
「『教会』のトップは誰ですか?」
「すまない。まだ、判明しないんだ」
バラキエルさんに訊いてみたが、まだ調査中のようだ。
「それよりも…朱乃のことはどう思う?」
「どうとは?」
「う~ん…恋人にどうかな?」
「う~む…リアスがいますが…」
「そうだけど…そこをなんとか…」
「お姉さん枠じゃダメ?」
「ダメでは無いんだけど…」
ばきっ!
バラキエルさんの側頭部に朱乃さんの拳が…
「お父さん…何をシュウ君に言っているんですか?彼は療養中ですよ!」
「いや…彼のような息子もいいかなって…」
ばきっ!
今度は頭頂部に拳が炸裂…
「私にも選択権があります!」
「朱乃はシュウ君を嫌いなのか?」
「嫌いな訳ないでしょ?そうじゃなくて…恋人枠に囚われません!愛人だって…かまわないと言うか…」
ばきっ!
「何を言わせるの!お父さん!!」
真っ赤な顔になった朱乃さんが、バラキエルさんに猛抗議している。
「朱乃、シュウ君の前で何をしているの?」
朱璃さんが朱乃さんを注意した。
「だって…お父さんが…」
「もう、あなた!朱乃をからかわないでください!今夜は躾しますよ♪」
朱璃さんの言葉にデレデレするバラキエルさん。二人で部屋を後にした。幽体離脱をして、神社を見て廻っている時に目撃したのだが、朱璃さんはドエスの女王様で、バラキエルさんはドエムの奴隷で、姫島夫婦によるエスエムプレイが、たまに開催しているようだった。いや、朱乃さんもドエスとして参加した3Pっていうのもあった。人は見かけによらないっと実感したり。
「ごめんね、シュウ君」
僕の手を優しく握りしめてくれる朱乃さん。
「愛人じゃなくてもいい。シュウ君の傍にいられれば…」
「愛人って?」
ふと、分からない単語を質問した。
「う~んっと…恋人のスペアかな?」
「ふ~ん…朱乃さんはスペアじゃない。朱乃さんは朱乃さんだし」
「うん♪」
---リアス---
一ヶ月くらいして、シュウは戻って来た。何故か朱乃と仲睦まじく。
「うん?どうして、天界に入院していて、朱乃と帰宅なのかな?」
疑惑の目を二人に向けた。
「…」
シュウが無言であった。追い込むとアレだけど、でもあえて、
「シュウ、何か言い分はある?」
「あのね、リアス。朱乃さんは悪くないんだよ。僕にだけ言って」
朱乃を護ろうとするシュウ。
「朱乃、どうなの?」
「リアス!朱乃さんを責めないで!」
これ以上はダメな気がする。なので、シュウだけを私の部屋に連れ込む。なぜか、ヴァーリとヴァイラが付いてきた。
「どういうことかな?シュウ!」
ヴァイラも理由が訊きたいみたいだ。
「う~ん…朱乃さんは責めないと約束してくれる?」
あくまで朱乃を護ろうとするシュウ。追い込むとアレなので、頷く私達。
「天界でなくて、姫島神社で療養していたんだよ」
はぁい?何で?
「僕の術って陰陽師の物が多いって、黒歌とか朱乃さんとかに、以前から指摘されていてね、だから神社の方がオーラが馴染むかなって…」
理論的には間違いは無いと思う。けどね…
「みんなに知らせると、無茶するでしょ?特にリアスとかヴァイラとかリアスがさぁ」
私の名前が二度出ましたけど…無茶?
「お腹の中の損傷が激しかったから、その…寝る前の儀式は無理だったんだよ~」
言いたいことが分かると、耳が熱い。ヴァイラもヴァーリも耳が真っ赤であった。そういうこと?
「お腹に圧力がかかると痛いんだよ…まだ痛いけど…リアス達が限界みたいだし」
私達が限界?何が…あぁぁぁぁ~
「幽体離脱して添い寝をしていてね…そう感じたんだよ。スキンシップを欲しているって…」
私達三名、真っ赤な顔であった。毎晩、私だけで無く彼女達共、魂のコピー体で添い寝をしていたのかぁぁぁぁ。
「だって、様子見に来た時…みんな寝られない雰囲気みたいだし。僕のせいで睡眠不足じゃ申し訳ないかなって…」
毎晩、私達の心配をして、見回りに来ていてくれたみたいだった。それはそれで衝撃を受けた。危篤状態でも、魂のコピー体を作り出して、私達の心配をしてくれたって…涙が零れていく。私だけで無くて、二人もだ。
「ごめんなさい…実体が伴わないで…」
彼は私達に頭を下げた。三人で彼の頭を上げさせて、彼に縋り付く。
「ごめん…重体なのに…心配してもらって…」
彼の思いやりを知らずに、疑いの目を向けてしまったことが、恥ずかしい。
で、当分の間、夜這いを禁止する取り決めをした。シュウの腹部が完治するまで…