---シュウ---
あの神との戦い以来、リアスは僕で無くてイッセーを頼るようになっていった。それに伴い、リアスの気持ちはイッセーへと傾いている気がする。何か切ない…愛せない僕より、愛せるイッセーの方が、リアスを幸せにできるだろう。
その後、何か色々な事案が発生しているようだけど、僕の耳に届くことは無くなった。リアスがそう指示を出したようだ。僕に関わらせない為に。僕はガードとして失格したのかな。
しかし、そんな僕にも届く事案が発生した。邪龍軍団が、世界各地で猛威を振るい始めたようだ。邪龍達は、赤龍帝の鎧を着たイッセーのコピー体を大量に作り、神滅具兵器として、世界を破壊し、制覇し始めたようだ。
彼らはアレを復活させたらしい。僕は、アザゼルの元を訪ねた。
「お前が出る幕では無い。家で大人しくしていろ!」
「僕がいけないの?」
「お前は悪くない。だから、留守番をしていろ」
そのとき、机の上にある計画書が目に飛び込んできた。
「これは?」
「お前には関係ない!」
何か、嫌な予感がする。僕は結界の中に籠もり、計画書を熟読していく。
「おい、結界を解け。お前が見るものじゃない」
そこには、恐るべき計画が書かれていた。これは、ダメだよ。リアスが悲しむ。ソーナが悲しむ、グレイフィアが悲しむ、ヴァーリが悲しむ…みんなが悲しむ…そんなの許せない!僕の中の何かが熱く燃え始めた。
「この計画、変更するよ」
僕は、そこに書かれている術式を変更して、発動していく。
「おい、お前…何をしているんだ?やめろ~!」
「だって、これって、悲しみを生み出す計画だよね?」
「しかし、これしか無いだろ?」
「そうでも無いよ。誰も悲しまない方法が1つだけ有る。その方法に向けて、術を発動した。ロックもかけた。変更は利かないから」
「お前…何をしでかすんだ?」
「誰も悲しまない方法だよ、アザゼル」
僕は僕のやるべきことを見つけた気がする。この為に、僕はここにいる気がする。
「まさか…お前…」
アザゼルの顔から血の気が引いていき、目には涙が見えた。
「僕一人でいい。消えるのは…リアスにはイッセーがいる。ソーナには匙がいる。シーグヴァイラだって、僕なんかより幸せになれる相手は見付かると思う」
「ダメだ。そうじゃないんだ、シュウ…」
「僕からみんなが去って行った。僕は一人だよ。消えても誰も悲しまない」
「だから、違うんだ、シュウ!お前の元を去った訳じゃない」
「みんなの為になれるのは、嬉しいことだよ、アザゼル」
僕は用済みになった計画書を消し去った。
「おい、落ち着け!リアスはお前を見捨てていないんだ」
「新しい計画を実行すれば、僕のことなんか、みんな直ぐ忘れるよ。僕は誰も愛せないから…誰も幸せにできないから…だから、みんなの為になれるのが嬉しいよ。ありがとう、アザゼル。こんな機会をプレゼントしてくれて♪」
僕は計画を変更したという記憶と僕に関しての記憶を、アザゼルの記憶に対して封印した。ジャマされたくないから。それから、僕はその場から、計画を進める準備をする為に転移した。
---サーゼクス---
計画の決行日が近づいて来た。今回の計画は、決行寸前まで参加者以外には秘密である。引き留められる可能性があるから。
出現したトライヘキサを絶対隔離領域というフィールドに閉じ込めて、参加者全員で倒すのだ。その間、絶対隔離領域からの出入りは出来無い。トライヘキサが逃げる可能性があるから。完全に隔離したフィールドにした。
「アジュカ、絶対に逃げる心配は無いんだな?」
参加しないアジュカに訊いた。魔王の内、彼だけが残る。各勢力共に、トップ陣が参加するが、万が一の為、一人ずつ残すことにしたのだ。天界サイドでは、ガブリエルだけが残る。堕天使サイドはアザゼルだけが参加ではあるけど。
「破られないはずだ。シュウ君の専用フィールドを改造したから」
そう言えば、シュウ君に、最近会っていない。リアス達も彼を巻き込まない為に、距離を置いているそうだし。彼はどうしているんだろ。最後くらい、一緒に戦いたいなぁ。リアスとシュウ君はゴールインするのかな。どんな子供が出来るのだろうか…涙があふれ出てくる。
「サーゼクスちゃん、泣いてんだ~♪」
セラフォルーが茶化すように言う。場の雰囲気が少し和む。
「ソーたんは、シュウ君とゴールインするかな。う~ん、私とゴールインして欲しい気もするけど…彼は待っていてくれるかな…」
セラフォルーの目にも輝く物が生じた。
「音声と映像は送り合えるから、たまに会話する機会は作るよ」
と、アジュカ。それならいいか。彼らの成長話を糧にがんばれるな。
---リアス---
シュウと距離を置いた結果…シュウと連絡が取れなくなった。どこにいたのよ~。何かやらかしていないよね?不安が過ぎる。
「シーグヴァイラ、どこにいるか知らないの?」
彼のお目付役のシーグヴァイラに訊いた。
「ごめん。戦況が気になって…気づいた時にはいなかった」
う~ん…困ったなぁ…アーシアは貼り付くように言われていたのに、任務が果たせていない事で、泣いている。泣いても戻って来ないよ~、アーシア。
グレイフィアとガブリエルは、前線で戦っているので、ここにはいない。ヴァーリや翼紗達も戦場に出ていた。なので、シュウの監視はシーグヴァイラとアーシアに任せていた。
「そう言えば、オーフィスは?」
オーフィスも消えていた。二人で何かをやらかしているのか?この局面で何をやらかすのだ?
「リアス、シュウ君のことは後にしようよ」
ソーナが提案してきた。そうだよね。明日は大掛かりな作戦の決行日である。全ての勢力で、一気に叩くらしい。
---シュウ---
いよいよ、作戦の決行日になった。今まで一緒にいてくれたオーフィスの頭を撫でた。
「シュウ 我も戦う」
「オーフィスは、リアスを護ってくれ。もう、僕は彼女を護れないから。ね、頼むよ、オーフィス」
「う、うん…でも…」
「生きて戻るよ。その為の準備をいっぱいした。だから、リアスを護りながら、待っていてくれるよね?」
今回使うフィールドは、リアル時間と同じ時間軸で時が過ぎるフィールドだ。フィールドの強度を上げる為の処置をした結果、そうなった。だから…リアスの生きている間に帰れない可能性もある…でも、リアスには幸せになって欲しいから。愛し合える相手と一緒になって欲しいから。
僕に出来ることは、みんなを悲しませないことだと思う。愛せない故、僕に課せられた宿命だと受け止めているので、哀しくもない。
---サーゼクス---
作戦が決行される。一緒に戦ってくれた相手を労う。
「イッセー君、君と一緒に戦えて嬉しいよ。後はまかせるぞ」
「何言っているんですか?これからだって、一緒に戦えるでしょ?」
「いや、リアス達には言っていなかったけど、絶対隔離領域にトライヘキサを封じ込めて、そこで俺達がアイツらと戦う。倒しきるまで帰れない。それがどの位かかるか見当もつかないんだ。イッセー君、リアスとシュウ君のことを頼むよ」
俺は、絶対隔離領域へと転移する光に導かれて、地上を離れていく。
「えっ?何を言っているんですか?」
イッセー君に笑顔だけ返す。言葉が浮かばない。これが永遠の別れでは無いと分かっていても。でも…
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しかし、俺達は絶対隔離領域へ転移は出来無かった。どういうことだ?
「おい、アジュカ!失敗したのか?」
アジュカの顔からは血の気が感じられない。何か遭ったのか?
「やられた…シュウ君に…」
まさか…
「彼が一人で向かった。誰にも別れの悲しみを抱かせない為に…」
なんでだ?
「愛せない自分に出来る事、愛したいみんなの為に出来ることだって…」
作戦開始直前、アジュカの元にオーフィスが手紙を持って、転移してきたそうだ。その手紙には、作戦開始後、リアス達の記憶から自分の記憶を消すとあった。誰も愛せない自分が消えても、問題無いと…明日になれば、作戦参加者の記憶からも消えるともある。おい…何をやっているんだよ…シュウ君…
---シュウ---
あれから、どの位経ったのだろうか。みんなとの想い出も糧に戦い続ける。心が折れない限り、戦える。僕は絶対に帰るんだ。待っていてくれるオーフィスの元へ…
持っている能力を全て解放する。かかっている封印を全て解放する。僕は僕で無くなっていく。でも、想い出は消えない。これが僕の唯一の糧だから。
今ならリアスを愛せると思う。愛していると言いたい。ソーナにもシーグヴァイラにもヴァーリにも…みんなに言いたい。手遅れだけどな…
無邪鬼に最後のお願いをする。僕の全てを捧げる代わりに、コイツらを全滅させて欲しい。全滅できる力が欲しいと願った。彼に願ったのは初めてだ。僕の身体は僕で無くなっていく。戦う為の身体へと変貌していく。
リアスは元気かな?ソーナは姉妹仲良くしているかな?シーグヴァイラは良い人に巡り会えたかな?
「亘、私も戦うよ♪」
姉ちゃんが転移してきた。
「姉ちゃん、ありがとう♪」
「うん」
姉弟で敵を屠る。屠り続ける。心が折れたら負けだ。姉ちゃんとの思い出を糧にしていく。
そして…
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姉ちゃんは神の間へ戻り、僕だけ地上へと戻った。あれから、どの位年月を重ねたのかわからない。僕に面影は残っているだろうか?みんなに面影はあるのだろうか?
そこは僕のいなかった世界。みんなの記憶から僕の記憶は消えている。だけど、みんなに逢いたいのだ。どうなったか、気になるから。
僕達の住んでいた家は無かった。リアスは結婚したってことだな。ソーナの家も無い。みんな結婚したんだな。駒王学園へ向かう。旧校舎は無くなっていた。新校舎は旧校舎になっていた。どの位の年数が過ぎたんだ?タイムスリップって、こんな感じなんだ。僕にとっての昨日は、みんなにとっての大昔なんだろう。
う~ん…オーフィスのオーラが検知出来無い。どこに行ったのかな?それとも、オーフィスの寿命でもダメなくらい年数が経ったのかな。
あてもなく彷徨う僕。知り合いのいない世界。つらい…封印を解いた影響で、色々な感情が交差していく。哀しい…でも、僕の望んだこと、後悔はしていない。今まで愛せなかった罰を受けていると思えばよいんだよな。
思っていた以上に、器の損傷がデカイ。後どの位保つのだろうか。器が無くなっても死ぬことは無いらしいけど、この世界には居られなくなる。だから、一目、誰でもいいから、逢いたい。
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冥界へやって来た。ここなら、何かしら痕跡があるかもしれない。首都にある歴代魔王の墓を見て廻る。サーゼクスさん、アジュカさん、セラフォルーさん、ファルビウムさん…みんな逝ってしまったのか…彼らの墓の前で祈りを捧げる。
首都を見て廻ると英雄の墓という物があった。そこも見て廻る。イッセー、ヴァーリ、匙の墓が合った。間に合わなかったようだ。彼らにも祈りを捧げる。
「あの…お父様の知り合いですか?」
知らない女性に声を掛けられた。ソーナに似ている女性。その後ろには…
「…帰ってきてくれたんだね…シュウ君」
知らない老女に声を掛けられた。えっ?このオーラ…
「ソーナか?」
「うん♪」
うっすらと面影もある。
「倒してくれたんだね…ありがとう…背負ってくれて…」
「えっ?お母様、この方が…」
ソーナの娘がソーナに尋ねた。
「そう、私の想い人よ♪待ちきれないから、違う相手と結婚しちゃったけど」
幸せなオーラを彼女の娘さんから感じる。きっと、ソーナも幸せなんだろうな。
「ねぇ、リアスには逢ったの?」
「逢っていない。ソーナが初めての再会だ」
「ねぇ、逢ってあげて」
ソーナ親子に病院へ連れて行かれた。リアスは病気なのか?ソーナの娘が、車椅子の載った老女を連れてきてくれた。
「シュウ…帰ってきてくれたのね」
自慢の紅髪からは鮮やかさが消えていた。しなやかだった髪の毛は、固そうに見える。過ぎ去ってしまった年輪を感じる。
「リアス?リアスなのか…」
「そうだよ…おかえりなさい」
「ただいま」
リアスに抱きつく。身体は骨と皮だけに近い。何かの病気なのかな?
「ねぇ、次の周回でも出逢いたい…私のナイト様♪」
ナイト?
「あれ?イッセーが護っていたんじゃないの?」
「え?それは誤解だよ。アイツはシーグヴァイラと結婚したんだよ」
「はぁ?」
それは驚きだ。
「私の旦那様は、シュウだよ♪」
更に驚く僕。生死不明の僕と結婚式を挙げたらしい。リアスは何をしているんだ?でも、おかしいぞ。
「確か、記憶を消したはず…」
「消えていない。オーフィスが術の発動をね、身体を張って止めてくれたんだよ」
だから、オーフィスのオーラが無いのか…
「みんなに根付いたシュウの記憶を、術から護りたい一心だったみたい」
「で、なんで僕の妻に?」
「みんなから勧められて…勢いかな。あの頃は、若かったから…」
はにかむリアス。
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リアス達と再会した夜、リアスの容体は急変して…僕は器を捨てて、彼女の魂に寄り添う。そして、彼女の魂と共に天界の門を目指す。死んだ者の魂が転生をする為に通る門である。
肉体が死んでから天界の門へ魂が着くまでの間、それまでの記憶が走馬燈のように流れて行く。リアスは生きてきた証を見ている。そんなリアスを見守る。
天界の門をリアスの魂がくぐると、一番輝いていた頃の生きていた時の姿に戻った。
「シュウ…一緒に行こうよ」
リアスからのありがたい誘い。でも、僕は一緒には行けない。
「ごめん、僕は一緒には行けないんだよ。死んでいないから」
「え…」
「僕は不死の呪いを受けた魂、だから転生できない。器を見つけて着床して、そして生き続ける定め」
「そんな…ねぇ、もう逢えないの?」
哀しそうな表情のリアス。傍に行って抱き締めたい。
「想いが強ければ、再会できると思う。次に逢えたら、一緒にいられるように努力するよ」
また逢いたい。また出逢いたい。強く願う僕。
「封印を解いたから、次は愛せると思う。リアス、愛しているよ♪今まで、ありがとう」
彼女に想いを伝えた僕は、何かに導かれるように、リアスから遠ざかっていく。リアスは何かを叫んでいるようだが、僕に声は聞こえない。徐々にリアスの姿が小さくなっていき、点になり闇に消えた。
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あれから何回か着床を繰り返し、色々な人生を過ごした。神と人間との子供だったり、転生天使と神の子との子供だったりと…でもリアスに出逢うことは無かった。もう逢えないのかな?
何度も着床を続ける。生を受けている間、僕の僕としての記憶は無い。でも、リアスに逢えれば…器を捨て着床する僅かの間だけ、僕は僕に戻れる。その短い時間にリアスのことを思い出し、生き続ける糧にしていく。
そして、時は経ち…今度、着床したのは、転生天使の母親と鬼の父親の間に産まれた受精卵だった。禁忌な交配な為、本来宿るはずだった魂は消滅して、僕の魂が着床したのだ。禁忌なる産まれし命、イレギュラーな存在な彼らが僕の着床相手になりやすい。
今度こそ、リアスに出逢えるかな?期待を胸に…その時を待つ。
このリアスとの再会編は、『神器なき男2』「あの紅髪へ」になります。