幕間
彼は瞑想するように考え込んでいた。私はマリア・ヨハネ。彼に仕える使徒の一人であり、彼の恩恵を授けられた一人である。
「マリア、前半部は残そう。後半部は、見た事を忘れなさい」
私には不思議な能力があった。過去に行われたこと、これから起きることを夢として見る能力があるのだ。見た夢は起きてから、覚えている限り記録として記していた。その記録を彼へ渡し、彼に使っていただいている。
「ヨハネ、創世記と対に成るように、巻末に黙示録として載せて欲しい」
彼は、私と同じ名前を持つ男性の使徒に命じた。
「わかりました」
彼は跪き、両手で私の書いた記録の束を受け取った。彼の死後、教典として出版する書物に載せるようだ。
「後世に判る者が見て判れば良い」
前半部分は終末の様子が描かれている。後半部分は、過去の出来事のようだった。私は意味を知らずに、見たままを記録している。そこに何が隠されていたかは。彼のみぞ知るのだろう。
「今後のことだが、マリアには生き延びて貰う。彼女の中にいる者を護る為だ」
私の中には彼との間の子宝が入っている。彼は私に、子孫を、血族を絶やすなと命じられた。産まれるであろう子孫は特別な存在に、いずれ成ると言うのだ。
「マリア・ヨハネは歴史から姿を消して貰う。代わりにマグダラのマリアが歴史に残るのだ。いいな」
「はい」
マグダラのマリアが跪き、返事をした。
「ヨハネよ、黙示録の作者は、ヨハネとしておいてくれ」
「わかりました」
ヨハネも彼に跪き、返事をした。
「ユダよ、お前は裏切り者の汚名を着て貰う。そして、ヨハネ達から離れ、マリアを護って欲しい。辛い事になるが、頼めるか?」
「そのようなお役目を頂けるとは…そのお役目を受けます。必ず、マリアの血筋を後世に残すようにします」
ユダは彼に跪き、彼の手を両手で握り締めた。
「ヨハネよ、裏でユダを支援してくれ」
「わかりました」
ヨハネは頷いた。
「私は、もうすぐ殉教者になる。三位一体なる神になる為に…しかし、実際は…父は邪教の神、サタンとされ、神の御使い達に殺された。私は殉教と言う名の死刑に処せられる。残る一位が実質的な神となるのだ。いいか…三位一体なる神の正体を人々には言うな。時が来れば、きっと元の天界へと戻されるはずだ。それまで耐えるのだ」
皆が彼に跪き、頭を垂れた。
「マリア…頼むぞ。いつか、生まれるであろうメシアの為に…」
これから死に逝くのに、彼の表情は明るい。まだ見ぬ子孫の顔が見えているようだ。
「ユダ、鬼族と龍族だけは信用できる。彼らを頼れ」
「わかりました」
「では、最期の晩餐の用意をしなさい。ユダとマリアの旅立ちを祝うぞ♪」
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ユダの裏切りにより、彼はクーデターの首謀者として、処刑された。しかし、実際は…ユダの影武者が行ったことであった。私はユダと共に、アイツらの手の及ばない地を目指す。アイツらの信仰する神格とは違う神格の管轄するエリアを目指す。
途中、サタン様の配下だった物達に護られ、人がいない地帯を進んでいく。私のガードには、鬼族の者が数名ついてくれた。私に宿る子宝は、大切な物だと実感していく。安息なる地に着く頃には、人間であったユダは召されていた。私は彼の恩恵により、転生天使となっていたので、ユダよりも寿命は長かった。そして、途中で産まれた子宝は、すくすくと育っていた。双子を授かり、マリアとヨハネと名付け、代々名前を受け継ぐように言い聞かせておいた。産まれ出た子供達も転生天使のようだった。幼いながらも、天使の翼が展開できたから。
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私の見た後半部…野望を持った天使により、絶対神、創造神、維持神は追放された。心優しい大天使は堕天されドラゴンへと姿を変えられた。その大天使を慕う天使達は冥界に堕とされた。そして、天界は、野望を持った天使が大天使として仕切っている。そんな感じであった。
絶対神、創造神は何かに封印されて、どこかの宝物庫に封印された。維持神は、人間との間に子供を作り、私の身体にその子供で処女懐妊という奇跡をもたらした後、サタン様にされてしまった。
その奇跡の子が大きくなり、私と愛し合い…そして…
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私はマリア・ヨハネ…子供達、孫達に看取られて、彼の元へと旅立った。