週末の土日は、学校もバイトも休みである。しかし、悪魔稼業は忙しいようで、彼女の都合で夜しか逢えない。
そうそう、白音とはあれから毎日逢っている。一宿一飯も対価のうちといって、2日に1回お泊まりして、朝食を食べて帰っている。そういう対価っていいのか?って僕は心配してしまう。
いつもの時間に起きたので、白音と逢うまで、時間がたっぷりある。なので、隣町のなじみの骨董品屋さんに行ってみることにした。
大通りから一本路地に入って、まっすぐいくと、そのお店はある。一見、何を売っているお店かわからない佇まいで、すごく怪しい。いつものように注意深くドアを開けて入っていくと…店の奥からゴシックロリータ風の衣装を着用した黒髪の女の子が笑顔で猛タックルしてくる。受け止めようするが、腰から床に落ちていく。いつものことである。
「シュウ、肩車」
と、いいながら、床に座った状態の僕に乗っていく。これもいつものことである。この状態から立ち上がるのに、下半身が悲鳴を上げたり…そうこうしていると、奥から作務衣を着た胡散臭そうな店主が出てきた。
「本当に、ボウズはオーフィスに気に入られているよな。そいつは、ボウズにしか笑顔を見せないんだそ」
店主が言ういうには、この少女、オーフィスは、「無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)」というドラゴンの仮の姿らしい。こんなかわいい女の子なのに…今でもあまり信じていないけど。でもね、力は人間離れしているので、少し信じてはいるんだよ。
オーフィスを肩車して、店主のそばに近づくと
「おっさん、なにか珍しいものある?」
「それよりも、この前あげた白い十字架のネックレスはどうだった?」
おっさんは、売れそうもない物をよくくれる。が、大半は怪しい眉唾物ばかりであるが…だから、売れないんだよとも言えず…
「あれ?あぁ、サマエルっていう、上半身が堕天使、下半身が東洋のドラゴンのような堕天使ドラゴンが封印されていたよ。形状を変えてドラゴンスレイヤーになるんだけど、毒々しい気が出ていて、うかつに十字架の状態から変形できないよ」
少し、苦情めいたことを言う。
「え?龍喰者サマエル?……なんだとぉ~!」
おっさん、顔面蒼白状態。
「なぁ、ボウズ。あれ返しくれないか?」
って。。。え?価値を知らずにくれたんかい。
「もう、返したくても返せないよ。サマエルが僕のことを主認定しちゃったもの」
「そうなのか、残念」
おっさんは肩を落として残念がる。
「それより、サマエルの毒気を抑える聖なる物ものって無いかな?」
護身用に身に着けたいのだが、禍々しさが気になるので、普段遣いが出来無い。しかし、僕の問いに、おっさんは俯いたまま
「うちには聖なる物ものはあまり無いないんだよ」
元気だけが取り柄そうに見えるおっさんは、力なく椅子に座った。まるで、灰になりそうな感じで。相当なショックなようだ。そうか、あれは貴重品だったんだ…
そんなおっさんを尻目に、オーフィスを肩車しながら、店内を散策していると、僕の目に二振りの刀が映り込んできた。
「おっさん、この刀は?」
「あぁ、それは…誰も鞘から刀身が抜けないんだよ」
って、抜けたんだけど……おっさんに見せてみる。
「ぼ、ボウズ……抜けたんかぁ……」
おっさんの目が飛び出さんばかりに驚いている。
「軽く抜けたけど……なんか、これも妖気がムンムンするんだけど」
僕の頬に汗が流れ出す。
「そうか、抜けたんかい……なら、ボウズにやる。使えるヤツが使った方が価値は出るからな」
おっさんは気に止めていない。これらの刀の価値がわからないようだ。
「ありがとう……でも、禍々しい物ばかりもらっているような……」
刀の鍔に視線を落とし、記憶と照らし合わせる……
「あ……これって、もしかすると妖刀の村雨、村正かも。妖刀辞典で見た覚えが有るけど」
「なんだとぉ…しっかし、お前は暗黒系の武器に好かれているなぁ」
いや、村雨は妖刀であるが聖属性だったと思う。おっさんのお店にも妖刀辞典があったので、鍔をチェックしてみると、僕の記憶は正しかった。妖刀村雨は刀身から聖水が浸み出す対悪魔用の聖刀で、妖刀村正は刀身に触れた魂を喰らう魂喰刀である。
「暗黒系に好かれるのって、あんまり嬉しく無いだけど」
と、苦笑い。まぁ、貰える物は貰っておこう。バイト先の社長に頼んで、武器系の術式プログラムを習って、手なずけるのも良い勉強になるし…社長にもらった倉庫空間使用の術式プログラムを起動して、貰った物をしまい込む。僕には魔力が無いので、魔力を入れたカプセルを使って起動しているのだ。これは、会社で支給されている。
その後も、ガラクタ?店主が価値のわからないもの?を沢山もらって、オーフィスを肩から降ろして、帰る支度をする。
そうそう忘れてはいけない。
「おっさん、悪魔の女の子にプレゼントしたいんだけど、何か無いかな?」
「はぁ?なんで悪魔の女の子?」
おっさんが、ガン見してくる。
「ガールフレンドになってもらう契約したから」
「おい、そんなちっぽけなことを悪魔と契約したのか?」
頷く僕。ちっぽけな事?僕にとっては重要な事だし。それを見たおっさんは呆れた顔だ。しばらく考え込んで、
「うちの店には無いなぁ。悪魔なんか、ここには買いに来ないし」
そうはいうけど、悪魔チックなものが多数陳列しているように思うのだけれども。
「そう。じゃぁ、またふらっと立ち寄るよ。オーフィス、おっさん、またね!」
と、挨拶をして、いつものようにオーフィスの頭を撫でてから、『骨董 あざぜる』を後にする。
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「僕の生い立ちを話そうかな」
白音に出逢ってから、数週間経ったある日の夜。白音には生き別れたお姉さんがいる話を聞いたんだよ。白音をかばって、主を殺して、悪魔の世界では指名手配されている『はぐれ悪魔』の黒歌のことを…
「生き別れても、家族がいるのは幸せだと思う」
「シュウさんの家族ってどうしたんですか?」
「うちの家族は卒業して巣立ったんだよ」
「そつぎょう??」
僕は遠い目をして、語り始めた。
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あれは、僕の小学校の卒業式の日。
卒業式の後の卒業パーティーを楽しんで帰宅した。でも、いつもとは様子が変……人の気配がまるでしない。この時間なら、いつも母さんがいるはずなんだけど。
鍵を開けて、玄関に入ると……目の前の居間には家具が一切なく、僕のボストンバッグが1つ、ぽっつんと置いてあるだけ。他の部屋を見て回ったけど、家具も日用品も何も無い。まるで夜逃げでもしたみたいな……
朝、笑顔で…父さんも母さんも、僕を送り出してくれたのに……なんで……
ボストンバッグの中を見てみると、僕の当面の着替え、僕の愛読書の『世界不思議大辞典』と一通の封書があった。
恐る恐る封書の中身を見てみると……
『息子へ
父さんと母さんは離婚をすることにしました。
これからは、それぞれ別々の家庭で結婚をやり直すことにしました。
これをもって、息子のお前の家族からの卒業を讃え、これからはお前の好きなように生きなさい。』
文面の最後には父さんと母さんの署名、捺印がされているし……おい、育児放棄だろ、これって。せめて、義務教育終わるまでは、養って欲しかったよ……頭の中は真っ白。何をどうしてよいか浮かばない。
気がつくと、いつの間にか、駅前の広場にいた。これから、どうしよう…一人で生きるには、まず仕事を見つけなくちゃって思ったんだ。高校生になった今、考え直してみると、そこは警察に行けば良かったのかもしれないけど。後の祭りってヤツだよね。
自分で出来ることを考えてみた。自転車乗れます。料理つくれます。記憶力は良い方です。コンピュータのプログラム作れます。不思議大好きです…などなど。
あれこれ考えながらだったので、どこをどう歩いたのかわからない。来たことない場所に来ちゃった。でもね、そこにはアルバイト募集のチラシが貼ってあった。
『アルバイト募集
年齢不問、未経験者OK、長期勤務できる方優遇』
って、今の僕にはぴったりだ。最低でも大学卒業まで10年くらいまで勤務できる。で、チラシに書かれている地図を頼りに勤務先に行ってみると、緑色の髪のお兄さんがいた。そのお兄さんに、
「アルバイト募集のチラシを見てきたのですけど」
と、恐る恐る伝える。するとお兄さんは、
「まだ、小学生みたいだけど。親の承諾は取って来ているかい?」
って、訊かれたんだ。そこで僕は、あの封書をお兄さんに手渡した。お兄さんは、文面を見て神妙な面持ちになる。思考の海に潜ってしまったようで、一言も発しない。
どのくらい経ったのだろうか。小学生の僕にはとても長く感じたけど、考えがまとまったようで。
「採用だ。初めの1年間は研修期間で、仕事の内容を覚えてもらうよ。中学校にも通うんだぞ。知り合いに中学校の理事長している者がいるので、そこに通ってもらう。いいな」
「ありがとうございます」
「バイト料は歩合制だけど、生活の面倒はちゃんとするから、そこは安心してよいから」
これが僕と社長との出会いの物語である。
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この前、社長に訊いてみたんだ。小学生なのに、何であの時、僕を雇ったのか。
「それはねぇ、あのチラシには術式プログラムがしてあって、この仕事がつとまる能力がありそうな者にしか見えないようにしてあったんだ。それなのに、人間の小学生であれが見えるとは、将来がとっても楽しみだったから」
満面の笑みで答えてくれた…
うん?人間の?どういうことかな?まぁ、いいっか♪