その日の夜、白音が魔法陣から現れて、黒歌と再会をした。姉妹猫はお互いの顔を見ながら、目で会話するかのごと、言葉を発しなかった。抱き合い、身体を寄せ合い、お互いの存在を確認しあっているようだ。
感動の再会を間近で見ていて、涙がこぼれそうになった僕は、オーフィスと二人で別の部屋に移動した。ぼくのかいた胡座の上に、ちょこっと座って、お菓子をほおばっているオーフィスの背後から、なにげに『女王』の駒を彼女に当ててみた…が、駒は入っていかない。そこで、開発者用のスキャナー(社長と僕しか持っていない)で、オーフィスのデータを取り込んでみた。しかし、種族はドラゴン、邪悪度が0で、残りのパラメータはすべてエラー…おっさんの言うとおり無限の龍神様って、本当なのね。
そうこう考えていたら、部屋の隅に魔法陣が現れて、蒼い顔の社長が出現した。
「データをモニタリングしていたら、すべてエラーって。君は何を取り込んだのかな?」
あ、社長はバーチャルレーティングゲームを通して、この世界を監視しているんだった。データに異常値がある場合、その対象物を監視の対象にする為である。データに異常って規格外=驚異な存在ってことだから。なので、全世界にいる全プレイヤーが、移動式の監視カメラってことになるのだ。
社長に敵意が無い事がわかっているみたいで、オーフィスは社長の出現に驚きもせず、黙々とお菓子をほおばっている。
「オーフィスのデータをスキャンしたんですが…」
頬を掻きながら苦笑いする僕。
「オーフィスって、あのウロボロス・ドラゴンかい?」
「みたいです…はい」
社長は、目の前でお菓子を、黙々と頬張っているゴシックロリータ風の衣装を着用した黒髪の少女を見つめて、思考の海に潜った…しばらくして
「この子は、どうしてここにいるのかな?」
僕は経緯を説明した。
「君はアザゼルと知り合いなのか??」
こんなに驚いている社長は、初めてである。僕の眷属にしてしまった時でも、こんなに驚かなかったのに。
「おっさんとは、以前古本市で知り合って、意気投合して、それからはおっさんのお店に通っていました」
「そういうことか。君の巡り会い能力は驚異的だね」
社長が苦笑いしている。
「おっさんと社長って、お知り合いですか?」
「アザゼルは堕天使の総督…トップだよ」
「え?あのおっさんが…種族のトップとは思えないですけど」
そういう僕に社長は
「きっと、君のことを気に入ったんだろう。その上で、友人みたいに接していたんだろうな。あの男はそういうやつだ。逆に敵対すると殺気が満ちあふれる厄介なヤツだけど」
僕は気に入られていたんだ…だから、あんなにたくさん眉唾物をくれていたのかな?
「アザゼルの頼んだ通り、オーフィスを他の勢力に渡らないようにしてくれ。頼むよ」
社長の頼みに頷く僕。
「あ、そうだ。これ、黒歌から出てきた駒です」
黒歌から取り出した『僧侶』の駒2個を社長に手渡す。
「眷属に出来たのか。あとは妹の方だな…妹の主は情愛が深いんだが、手離さないかもしれないよ」
「情愛が深いなら、姉妹を一緒の眷属にして欲しいなぁ」
「貴重な戦力だから手離さないだろうな。かといって、黒歌を眷属に出来るほどの駒の余りも無いだろうし…どうした良いものか」
「考えたんですが、2重眷属に出来無いかな?」
怪訝な顔つきで社長が
「どういうことかな。それは??」
「僕の眷属で、しかも現在の眷属を維持出来無いかなって」
それを聞いて思考の海に潜る社長。
「試してごらん。君の想いの強さに駒が応えてくれるかもしれないから。そういうイレギュラーな動作もある程度出来る隠し要素は入れて有るから。君に入れて託した駒は今後の駒の在り方を考える為の試作品みたいな物だからね。黒歌が出逢ったような心が腐っている『王』から眷属を保護することも必要だしね」
大汗をかきながら説明する社長…なんか眉唾な物をくれる時のおっさんみたいだ……とりあえず試してみよう。なんか、あったら社長がどうにかしれくれるって期待をして。なんたって、社長はレーティングゲームのルールブックだし。
そんな考えをしていたら、大汗をかきながら社長は魔法陣を展開して帰っていった。
社長が帰った後、居間に戻ると、白音が嬉しそうに、僕に抱きついてきた。
「シュウさん、ありがとうございます。お姉様と再会させてくれて♪」
「白音の気を辿って来たら、この家に辿りついて…ここっては暖かい気で溢れていて、つい寝ちゃったにゃん。でも、おかげで白音に会えた…シュウ、ありがとにゃん♪」
姉妹から交互に感謝の意をうけた。
「良かったね。白音、黒歌。そこで、白音にあることをする。成功すれば、二人とも一緒に居られるよ」
怪訝な顔つきの二人を尻目に、僕は念じながら『兵士』の駒を白音に押し当てた。すると駒は白音に入っていく。しばらく、待ったけど元々の駒は出てこなかった。
「成功した。これで白音も僕の眷属で、元々の眷属を維持する2重眷属だよ」
白音は、目が点。僕が何をして、どうなったか、理解出来ていないみたいだ。
「さすが、シュウのチートな駒。そんな事も出来るのにゃん♪」
「出来たね」
って、理解不能な白音を除き、黒歌と僕が喜んでいると、部屋の片隅に魔法陣が浮かんで、知らない紅髪の女性が出現した。それと同時に、オーフィスが何かを感じ取って、お菓子を片手に僕をガードするように、僕の前に立っていた。
「小猫、無事?」
「あ、リアス様」
白音は、その女性の前に跪く。
「おい、誰だ。勝手に僕の家に入って来るなよ!」
その女性は冷たい眼で僕を睨みつつ、僕に名乗った。
「私はリアス・グレモリー。小猫の主。私のかわいい下僕に何をしたのかしら?返答しだいでは、あなたを消すわよ」
「おい!白音を下僕扱いするな!!何が情愛が深い主だぁ。高飛車なヤツじゃん」
「下僕を下僕と言って何が悪いのかしら?人間風情には、わからないことだけどね」
無性に腹がたった僕は、『兵士』の駒をリアス目がけて投げつけた。駒はリアスの肩に当たり、吸い込まれていった。
「えっ?何をしたの?」
僕の行動と結果に、動揺しているリアス。
「これで、お前も人間風情の仲間入りだよ。その上、僕の眷属だ。お前は僕の下僕だってことだよ」
「どういうこと?」
「こういうことだぁ!」
僕はリアスの唇を奪った。口の中に舌を入れて舐めまくった。リアスは『王』である僕に抵抗は出来無かった。更に僕はリアスの豊満なバストを乱暴に揉む。お尻を掴み、彼女の下腹部を僕に押し付けた。
「うっ…あぁぁぁぁぁ…」
うめき声しか出ないリアス。太股を震わせ、左右の脚を閉じようとしている。
「どうだ?『王』の玩具になった下僕の気持ちがわかったか?おい、高飛車女よ!」
そして、僕の前では、リアスと対等な立場となった白音が、彼女に状況の説明をする。
「え?私が転生人間に??それで、小猫の契約相手の下僕に??」
目を見開いて驚いているリアス。自業自得だろって感じで、白音&黒歌姉妹が見ている。
「リアス様。いや、シュウさんの前ではリアスさんとお呼びします。あなたは、シュウさんに酷い事を言いました。人間風情って言い方は無いと思います」
「小猫、あんた、私に意見する気?」
白音を睨むリアス。
「私はシュウさんの前では小猫では無くて、白音です。リアスさん」
「主になんて言葉遣いをするの?」
「シュウさんの前では、立場は同等です。シュウさんの眷属で『兵士』同士ですし」
白音が勝ち誇ったようにリアスに言い放つ。白音の言い分は正しい。
「まぁ、説明した通り、リアスさんだったかな?あなたは転生人間で、僕の眷属の『兵士』になりました。僕が許可した時だけ、今まで通り白音を眷属としてレーティングゲームに参加させる事が出来ます。おわかりですか?下僕のリアス・グレモリーさん」
リアスは涙目で僕を睨みながら、会話用魔法陣を展開して、誰かを呼び出した。
「私のお兄様は、魔王なんだから…あんたなんか処分するのは、簡単なんだからね。謝っても遅いんだからね」
涙声のような震える声で言い放つリアス。おぃおぃ、魔王って…二人ばかり顔が浮かんだ。
転移用魔法陣が浮かび、顔が浮かんだ内の一人が出現した。
「お兄様、この人間が私に酷い事をしたの。あの者に罰を与えてください」
現れた人物に縋るようにリアスが言う。でも、僕は
「サーゼクスお兄さん、こんばんわ。僕の家にようこそ♪」
って、挨拶をした。
「やぁ、シュウ君、こんばんわ♪これはどういうことかね?」
妹の手前ちょっと困りつつも、いつもの温和な笑顔で、僕に訊いてきた。僕とお兄さんの親密さを見せつけられて、呆気に取られているリアスを前にして、ことの経緯を説明する。
「妹が人間に転生した事以外は問題は無いみたいだね。リアス、シュウ君とは仲良くしなさい。彼は僕のかわいい弟みたいな存在で、アジュカの片腕なんだからな」
絶句しているリアス。
「アジュカから君の駒のことは聞いている。ちょっとチートだけど、おもしろそうな機能満載だってな。リアス、アジュカにはせめてハーフ悪魔くらいにしてもらえるように頼んでおいてあげるから、安心していなさい」
サーゼクスお兄さんは、僕に目で合図して、この場から転移していった。
「そんな…お兄様と知り合いだったなんて…その上、アジュカ様の片腕?どんだけ、チートな存在なのよ!」
頬をかきながら苦笑いする僕。たしかにチートだと思う。僕の悪魔の駒って、プライドの高い人ほど、ダメージが大きい気がするし…って、悪魔の駒って武器だったっけ??
などと、あれこれ考えていた僕に、突然降りかかる災難…
「責任取りなさいよ!」
「責任?何の?」
「私を転生とはいえ、人間にしてしまったことの責任…もう、純血悪魔としては結婚出来無いかもしれない。だから、あなたが私と結婚しなさいよ!」
その場にいたリアスと、結婚の意味がわからなそうなオーフィス以外のみんなが、目が点になるほど驚いた発言だった。
どうして、そうなる?