バイト先にて社長の前に座り、社長に僕の駒を調整してもらっている。個別眷属の属性変更機能を簡易操作をできるように。僕が念じるだけで、変更できると、気力、体力が減らずエコであるから。ただ現状がメンドーなだけというか。
「ねぇ、社長。僕が展開した術式プログラムに、眷属の誰かに魔力を送ってもらって、発動って、出来ますかね?」
魔力の上限の少ない僕の代わりに、誰かに発動してもらえると、戦力アップになりそうである。現状では、念じることでオーラを流し込んで発動しているのだけど、魔力のように膨大には流し込めないのだ。オーラは気力に比例するので、減ると問題がある。しかし、魔力は気力とは別なエネルギーな為、ここ一番で叩き込み易いようだ。
「うん?できると思うけど。今度、試してみてね」
丸投げ状態の社長。経験上、こういう言い方の時の社長は、その事案を考えたことが無い場合が多い。
「あと、黒歌の妖力、気力を魔力にコンバートすれば、発動できますかね?」
魔力は基本、魔法使いや悪魔など魔属性のエネルギーである。黒歌は猫しょうという妖怪なので、魔力より妖力の方の上限値が高いのだ。
「出来るんじゃないかな?今度、試してみてね。あと、この前、君が構築した妖力魔力コンバーターと、気力魔力コンバーターは展開できるようにしてあるから、それぞれ試してみてね」
まぁ、社長は魔力が豊富にあるから、そういうことに興味も関心も無いのだろうな。会話中も作業をしていてくれた社長の手が止まった。
「これで種族変更が簡単にできるよ。あと、デフォルト設定って機能もつけたから」
「何ですか?それ??」
僕の希望以上の機能を付与していれたようだけど…何だろうか?
「たとえば、リアス君のデフォルトを悪魔にしておけば、種族変更しても、デフォルト設定ONって念じれば、悪魔に戻る機能だよ」
「あぁ、便利ですね。アイツの涙目を見ないで済みます。社長、ありがとうございます」
社長にお礼を言いながら、頭を下げた。
「君には、新しい機能満載の駒のテストプレイをしてもらっているんだから、不具合は言ってくれれば、すぐに改良するからね」
「了解です」
「あと、レーティングゲーム実行委員会の人と話し合ったのだが、通常の試合ではなくて、エキスビジョン的な試合に、参加できることになったから。そこで、君の冥界での身分はアジュカ・ベルゼブブの養子ってことで、チームの名称なんだけどベルゼブブ眷属で登録してある。何か不満とかあるかな?」
「冥界のことは右も左もわからないので、すべて社長におまかせします」
「では、そういうことで」
しばらくすると、部屋のドアが開き、魔法少女姿のお姉さんが現れた。僕、このお姉さんが苦手である。僕の事をかわいがってくれるのは良いのだが、なんせ魔法少女姿なものだから、二人で外を歩くと注目の的。カメラ小僧が群がって、目的の場所、近所のおいしいアイスクリーム屋さんに辿り着けないこと、しばしば。集中して仕事している僕の隣に座っては、あれこれ話しかけてきて、ついには仕事の手が止まってしまうこと、度々。そのたびに社長に助けてって目を向けるのだけど、返ってくるのは微笑みだけ…お姉さんに悪気が無いのがわかっているので、怒る訳もいかず…あぁぁぁぁ~。
「セラフォルーお姉さん、こんばんわ」
いつもなら、笑顔で挨拶してくれるお姉さんなんだけど、なんかプンプンしている。何があったんだ?何かやらかしたかな?お姉さんがプンプンするなんて、珍しい。いや、ここまでのプンプンは見た事が無い。
「サーゼクスちゃんに聞いたのだけど、リアスちゃんと婚約したんだって?」
目付きが恐い…こんなお姉さんは見た事が無いぞ。サーゼクスお兄さん、なんてことを、なんて人に…血の気がひくのを感じる僕。きっと、あのお兄さんのことだ、自慢げに話したのであろうな。
「すごくうれしそうに話していたよ。どういうこと?」
聞いたことのないお姉さんの低い声。相当お怒りのようだ。うん?でも、なんで怒っているんだ?思い直して考えると、それは疑問である。
「どういうことって?」
「弟のようにかわいがっていたのに、私に一言も断り無く婚約って…ひどい」
今度は、泣き始めた…あぁ、どうしよう…そんな困っている僕を社長が手招きをしている。近づくと、僕の耳にごにょごにょ…っと。
「えっ?それって、まずくないですか?相手は泣いているのに、火に油を注ぎそうですが…」
社長のアドバイスは、僕の考えの及ばないことだった。
「こういう場合は、ショックを与えると、泣き止むものだ」
ショックねぇ、確かにリアスもショックを与えて、怒りが鎮まったけど…なんか、結果に嫌な予感しかしないんですが…
「嫌な予感がするので、問題起きたら、社長が責任を取ってくださいよ」
「大丈夫、問題ないよ。起きたら対処はしてあげるから」
と、社長と話しこんでいたら、お姉さんのプンプンが爆発した。
「そこっ!男二人、泣いている女の子に、手を差し出さないで、なんで無粋に話し込んでいるのよ#」
泣き止んだと思ったら、青筋を立てて、更にプンプンしだした。さっきより怒気が強い。
「早く!」
社長が提案の実行を、僕に促した。嫌な予感しまくりながら、『僧侶』の駒をお姉さんに当てた…あぁ、吸い込まれていったよ。大丈夫かな?
僕の行動を見て、固まってしまったお姉さん。そんなお姉さんをぼぉ~っと見ていると…突然、僕を強く抱きしめてきた。
「あぁぁぁぁ~ありがとう。私も眷属にしてくれて…私、うれしいよ♪」
目に涙を溜め込んでいるものの、笑顔になっているお姉さん。その変わり身の早さに戸惑う僕。
「はぁい?」
泳いだ目で社長に、助けてって合図を送った。すると、社長はおもむろに立ち上がり、僕達の方へ近づいてきて…おいおい?僕たちを通り過ぎて…えっ?部屋から出て行ってしまった。お~い、逃げないで、しゃちょぉぉぉぉぉ~!!この責任は社長に取ってもらおう…と、心に刻む僕であった。いや、刻むだけだ。社長はきっと、この出来事を覚える気は無いので、記憶から消すのだろうな。現状、この先、どうなるかの心配でいっぱいな僕。
お姉さんの目尻には、まだ涙が残っていたが、笑顔で僕を抱きしめ続けている。柔らかい胸が気持ち良い。一時の幸せ感を味わっておこう。この先の展開がまるで見えないから。
気分が落ち着いたのか、僕の肩に手を載せ、顔と顔が向き合う位置に僕を立たせた。
「私ってかわいいのに魔王って立場だから、まったくって言う程、フレンドリーな男が近寄って来なかったの。でも、キミは嫌がる素振りも見せずに、私が近寄っても話しかけても、いつも笑顔で応えてくれていた」
かわいいのは認めるけど…フレンドリーな異性がいないのは、たぶん魔王だからでなくて、その衣装に問題がある…とは、魔法少女大好きお姉さんには言えない。後、いつも笑顔だったのは、苦笑いも含まれていると思うんだけど…まして、社長の友人だし、無視する訳にもいかないし。
「だから決めていたんだ。キミとずっといようって♪」
「はぁい?」
どうしてそうなる…僕は怪訝な表情を浮かべた。意味がわからない。一緒にいたい理由がよくわからない。魔王様が、一介の普通の人間の少年と、ずっと一緒にいたいって…僕は玩具枠なのか?
「そんな顔しないでね。私はキミのことが、大好きなのは本当だし。今でも弟のように思っているよ」
弟属性なら悪夢が再来することは、無いなぁと安心した僕だけど、次のお姉さんの言葉に固まった。
「いつまでも、私の弟でいて欲しいから、私の妹と婚約してね♪」
「……」
ただただ、展開に驚き、何も言葉が浮かばなかった。リアスとの婚約騒動の斜め上を行く展開だ。お姉さんの妹?はぁ?妹さんが納得しないだろ?
「妹の名前はソーナ・シトリーって言うのよ。キミと同じ高校で、リアスちゃんと同期だから、学校でデートが出来るよ」
リアスと同期?まずいんじゃ無いかな?うんうん、絶対にマズい展開だと思う。
「それって、決定事項では無いですよね?」
一応、確認をする。サーゼクスお兄さんを通して断ろうと思ったから。
「今、私の両親を説得中。たぶん、私が魔王の立場も利用して説得しているから、決定事項になると思うよ♪」
はぁ~い~?決定事項?本人達の承諾も無く?悪魔って、恐い…いやだ!なんて言ったら、この場で殺されるかな?お姉さんは魔王様だし。人間一人くらい殺しても、罪の意識は無いだろうし。
「既にリアスと婚約していますが…」
一応、抵抗してみる。
「全然、問題無いから、安心だよ」
指でピースサインしているお姉さん。いや問題だと思う。魔王の妹ってことは次期当主の可能性が有るし。リアスのところもそうだったもの。何よりも一番の問題、ソーナって先輩に会ったことないんだけど。僕の好みは関係無いんですかぁぁぁぁ~
「これで、ず~っとシュウ君は私の弟。あっ、ソーたん、あっこれは妹の愛称。ソーたんもシュウ君の眷属にしてくれるといいなぁ」
うん?説得中?それって、以前から弟属性から義理の弟にする計画を、僕の知らないところで進行していたとは…魔王様、恐るべし。もしかして、もう一人の魔王も手を貸しているのか?
「両親に報告しよ。私もシュウ君の眷属になれたって。ついでにソーたんとの婚約も確定しておくね♪」
僕の返事を聞かずに、お姉さんはルンルン気分で転移されていった。お姉さんが帰ったと同時に、社長が部屋に戻ってきた。
「ソーナ君との婚約おめでとう」
おめでとう?
「もしや、この婚約計画に社長も1枚かんでいるとか?」
僕の疑念を、社長にぶつけてみた。
「もちろん!魔王二人からソーナ君と君の婚約話しを持ちかけられて、セラフォルーのご両親も断れないだろうな」
妖しい笑みを浮かべる社長。やっぱり、この人達は悪魔なんだって再認識。人間である僕に自由意志は無いのだろう。
「さっき、部屋から出て、どこ行っていたんですか?」
逃げたとは言わないとは思うが、確認をしておく。
「うん?あぁ、セラフォルーが君の眷属になったと、セラフォルーのご両親に伝えに行って来た」
なんですと??
「彼女達のご両親は、魔王すらも眷属に出来る程の君の『王』としての素質を、素直に喜んでくれていたよ。養父として鼻が高いよ♪」
社長の喜んでいる顔…初めて見た…をいをい…僕が関与していないのに、僕とお姉さんの妹さんとの婚約話は、既にキャンセル出来無い程進んでいるようだった。
「社長、それって詐欺でしょ?僕の力でなくて、駒の力なんですから」
たぶん、なに言っても、もう、この婚約話は破談になりそうもない。そう思うと脳みそが砂化してサラサラと崩れていく気分な僕。
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その日の夜、モヤモヤしてなかなか寝付けない。倉庫からおっさんにもらった香炉を出して、香を焚いて寝ることにした。普段、僕は爆睡するので、夢なんか見たことない。だけど、この日は夢を見た…