昼休み、窓から青空を見ていると、また涙が出てきた。自分にとっては、一大事なイベントだったのに、イベント内容の記憶が全くないとは…嬉しい出来事では有るが理不尽さを感じてしまう。人生はうまく行かないなぁ…
「よぉ♪何、黄昏れているんだ?」
悪友のイッセーが近寄って、僕に訊いた。
「人生で一度きりのイベントが、僕の知らないうちに終わちゃったよ。ぐっすん…」
「人生で一度きりのイベント?…まさか…をぃをぃ…」
イッセーは青醒めている。こいつが青醒めることでは無いと思うんだけども。
「いつの間にガールフレンド作って、そういう関係になったんだ?おい…」
こいつ、声が震えているぞ。どうしたんだ?
「そういう関係になったのは昨晩。僕が爆睡している間に…その間の記憶が、僕には全くないのが哀しいよ~。彼女の喘ぎ声や身体の感触なんかの記憶が、一切無いんだよ~」
「そんな、羨ましいことをしたのに、泣くなよ、相棒。それより、頼む!その彼女の友達を紹介してくれないか?」
とっても嬉しそうな顔で、僕にお願いをしてきたイッセー。おいおい、犯された僕のことを心配してくれないのか??この悪友は。それに、相棒になった記憶は無いぞ。
「心の整理がついたら、考えておくよ。あと、僕はイッセーの相棒で無いぞ」
「まぁまぁ、そういうなよ。頼むよ、相棒♪」
だから、相棒で無いって…悪友は嬉しそうに自分の席に戻っていった。イッセーの気楽な性格が羨ましいや。
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放課後、紅髪の上級生らしい人が教室を覗きこんで、誰かを探している。それに悪友が反応する。
「あれは、噂に聞く2大お姉様の一人、リアス・グレモリーお姉様だぁ♪」
コイツ、なんか舞い上がっているみたいだ。コイツが何かをしでかす前に、僕は彼女の方へ歩いて行った。その姿の確認したのか、表情が緩み笑顔で人目を気にせずにリアスが僕に抱きついてきた。
「僕に用?」
「もちろん、あなた以外は目に入らないわ」
質問の答えになっていないけど…
「その割には、探していたみたいだけど」
「そういうイジワルを言わないのよ」
って、僕の頬に接吻をしてくる。柔らかい…リアスの唇と白音の笑顔は、どうしても勝てない僕の弱点かもと、その時思った。ふと、視線に悪友が入ったけど、目が点になって固まっている。まぁ、放っておこう。その場をリアスと去っていった。
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連れて行かれたのは、理事長室。ドアをリアスがノックして室内に入る。理事長席に座っていたのはサーゼクスお兄さんだった。僕達を笑顔で迎えてくれた。
「わざわざ来てくれて、ありがとう。じつはシュウ君に頼み事があってねぇ」
頼みごと?人間の僕が、魔王であるお兄さんの頼みを、叶えてあげられるとは、思えないけど。次のお兄さんの言葉に、僕の目が点になったかもしれない。
「僕をシュウ君の眷属にして欲しい。僕のささやかな願いを叶えてくれるかな?」
何を言っているんだ?この魔王様は…
「はぁい?あのぅ、意味がよくわからないのですが…最強と言われている魔王様がなんで、単なる人間である僕の眷属になりたいんですか?」
僕は頭に浮かんだ疑問をぶつけた。デメリットは有っても、メリットは無いはずだけど。
「だって、アジュカとセラフォルーは眷属になったんだろ?僕だけ仲間ハズレみたいで、イヤなんだよ」
って、お兄さんは頭をかいている。
「私のお兄様のワガママを、叶えてくれないかな?私からもお願いします」
リアスが僕に頭を下げた…この兄妹って…あいた口が塞がらない。仮にも魔王様が進んでお願いして来る内容とは思えない。悪魔の考える事は、人間である僕には、理解が出来無いのだろう。
「叶えてくれなかったら、先日の件、処分を下す事になるけど、いいかな?」
脅し…悪魔って、理不尽過ぎないか?お願いか罰の2択って…
「ちなみに処分って、重いのですか?」
木場の顔を抉る怪我負わしちゃっているし、そうだよな。重いよなぁ…って、眷属にすれば、処分無しって、職権乱用じゃないのか?う~みゅ、叶えた方が良いみたいだな。さすが悪魔の王様、究極の2択かぁ。と、感心したり。
「どうかな?」
笑顔で迫られてもなぁ…でも、入学早々、処分は嫌だし。父さん達に迷惑もかかるかな…
「わかりました。眷属にします」
僕は『戦車』の駒を手にして、お兄さんに当てると吸い込まれていく…あぁ…
「ありがとう、シュウ君♪」
とっても嬉しそうな魔王様が目の前にいらっしゃった。しかし突然、今まで笑顔だったお兄さんが、真顔になった。今度は何事かと、僕は身構えた。
「あと2件、シュウ君に話す事が有るんだけど」
「なんでしょうか?」
イヤな予感しかしない…
「シュウ君宛に、2件果たし状が届いているんだよ」
お兄さんが溜息をする。はぁい?僕に果たし状?木場と朱乃さんかな?と、考えていると、僕自身が忘れようしている事柄が起因していた。
「1件は、リアスの元婚約者のライザー・フェニックス君、もう1件はセラフォルーの妹のソーナ・シトリー君だ」
「はぁい?なんで??」
なんで、リアスの元婚約者?
「ライザー君は、リアスを人間のシュウ君に取られたことが、彼のプライドを傷つけたようだ」
「そんなことを言われても…僕の方からプロポーズした訳では無いし、それって難癖でしょ?」
そんなことで、果たし状をもらっても困るよ。そうなると、ソーナさんの理由もなんとなくわかる。
「まぁ、難癖なんだけど。ライザー君の家って名門だから、彼ってプライドが高いんだよ」
「ソーナさんは、逢ったことが無い相手と婚約させられたことですか?」
「正解!よくわかったねぇ♪理解が早くて助かるよ、シュウ君」
はぁ~…おいおい。それも僕の方から望んだことで無いし。悪魔の思考回路って、よくわからないよ。無我夢中で「誰か助けて!」って念じると、突然空間に割れ目が出来て、そこからオーフィスが出てきた。
「我、シュウを虐める者、許さない!」
僕をガードする体勢に入ったオーフィス。ドラゴンのオーラを全身に纏い、お兄さんを睨む。その圧倒的なオーラを感じて、お兄さんが青醒めて後ずさりをしている。
「この娘は誰だい?シュウ君。魔王の僕が、とてつもない威圧感を感じるんだけど…」
声が震えている魔王様。オーフィスの醸し出すオーラに、やられたようだ。
「オーフィスです。無限の龍神と言われているウロボロス・ドラゴンです」
さらっとオーフィスを紹介して、僕は彼女の頭を撫でた。それが引き金となって、オーフィスを纏っていたオーラが消失していった。
「何だって?オーフィス?シュウ君って何者だよ」
お兄さんの顔が引きつっている。
「僕はただの人間ですよ~♪」
助けに来てくれたオーフィスを肩車してあげると、小さな龍神様は、喜んでいるようだ。
「まっ…まさかとは思うけど、オーフィスも眷属なのかね?」
オドオドと聞いてくる魔王様。
「残念ながら、眷属には出来ませんでした。僕の駒では力不足みたいで」
「それって、私達魔王よりも能力が上ってことかな?」
「そうなりますね」
お兄さんは思考の海に潜ったみたいに、何かを考えている。展開について行けないでいるリアスは、僕の左腕を抱いている。ただただ愛おしそうに優しく包んでくれている。こんな真剣なシーンで、不謹慎と思いながら、肘辺りに当たるリアスの柔らかい胸が気になってしょうがない。そんなこんなで、やっと思考の海から顔を出したお兄さん。
「話を戻すけど、二人と戦って欲しい。彼女が乱入すれば、楽勝だろうし」
オーフィスが本気になれば、たぶん楽勝だろうけど。僕的には、オーフィスは戦闘要員で無くて妹みたいな存在だ。現実的には、僕より遥かに強くて、僕を護ってくれる存在だけども。
「1対1ですか?眷属有りですか?」
「眷属有り?それは、弱い者苛めになるかと思うけど」
お兄さんが苦笑い。確かに、魔王様が3名いるし、その上オーフィスが乱入してきたら、反則かな。僕も苦笑い。
「1対1かぁ…」
でも、人間である僕一人では、勝ち目は無い気がする。
「とりあえず、納得してくれたかな?では、準備しようか」
「まさか、今から?」
それは不利でしょ?作戦タイムとかは?
「そうだよ。面倒事の先延ばしは良くないからね」
って、僕の心の準備がまるで出来ていないよ。そんな僕の心の内を読んだのか、リアスが僕の耳にささやく。
「私みたいに眷属にしちゃえ!」
リアス、それって悪魔の囁きだぞ…って、こいつも悪魔か。お兄さんが、誰かを呼び出したみたいで、床に魔法陣が浮かび上がり、そこからメイド姿の女性が現れた。
「リアス、あの方は誰だい?」
メイドの正体をリアスに訊いた。
「グレモリー家のメイドのグレイフィア。レーティングゲーム用の仮想フィールドの簡易設置とかが出来るのよ」
清楚そうで物静かで、きりっとしていて美人、あぁいう女性が、お姉さんだといいなぁ。現状のお姉さん、魔法少女姿のセラフォルーさんと比較してしまう。
「で、ライザーとソーナさんって、強いのかな?」
リアスに、情報を貰う為に訊いてみた。
「ライザーは冥界の名門フェニックス家の三男で、不死身の身体を持っているの。ソーナはシトリー家の次期当主で冷静沈着で優しい子よ」
「ライザーって、空飛べるかな?僕の眷属って、空中戦要員がいないんだけど」
「炎の翼を持っていて、空中戦できるよ」
「じゃぁ、決まりだな。リアスのいう通り、戦わずに勝とう」
問題は近寄れるかどうか…しかし、空中戦要員は欲しい…
グレイフィアさんとお兄さんの話し合いが終わって準備が出来たみたいだ。
「では、ゲームする場所に転送するけどいいかな?」
僕は肩からオーフィスを下ろして、彼女に語りかける。
「オーフィス、しばらくリアスの傍にいてくれるかな?ちょっと、僕は行かないといけない場所があるんだ」
「我、この者とシュウを待っている」
良い子だ。オーフィスの頭を、また撫でてあげる。嬉しそうなオーフィス。この彼女の姿に、心が安らいでいく。あぁ、一応、対悪魔用の妖刀村雨を左手に転移させて、持って行く。
「お兄さん、準備OKです」
「では、ご武運を」
その言葉と共に僕は転移した。
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目の前には、チャラそうな男がいる。こいつがライザーか。
「お前が俺のリアスを奪った野郎か?」
しゃべり方もチャラそうだ。
「奪った覚えは無いです。プロポーズだって、リアスの方からだし」
「なんだとぉ。リアスの方からだと。ありえない。お前、何か術を使って、リアスを操ったんじゃないのか?」
こいつ、木場並みの思考回路か?単なる人間の僕が、魔王様の妹に術なんか掛けられる訳無いだろうに。しかし、現実を分かってくれない目の前のヤツの怒りは増しているし。
「あと、お前って名前でなくて、僕の名前は八重垣周太郎、冥界での立場は、アジュカ・ベルゼブブの養子でシュウ・ベルゼブブだ!」
「アジュカ様の養子だと…」
チャラ男くん、怒りのオーラが急に消え去り、顔が青醒めている。
「そうですが、何か?」
名門の三男より魔王様の養子の方が、立場は上だろうし。こいつもしかして、身体は不死身でも、精神はヘタレかも。
思い直した顔付きで、でも弱々しい声で
「たかが人間が、そんな訳が無いだろう!」
「なら、君も人間になっちゃえ!」
話ながらライザーとの距離を狭めていた僕は『兵士』の駒をライザーに当てた。吸い込まれていく駒。その様子をみたライザーが僕に叫んだ。
「何をしたんだ?!貴様!」
「君を僕の眷属にしただけ。あっ、僕の眷属は転生人間になるからね。この状態で、君が僕を殺すと、悪魔に戻れないし、はぐれ人間になるから、注意してね♪」
呆気に取られているライザー。そんなライザーが、光で包こまれていく。光が消えると、そこには眼鏡をかけた黒髪の女の子がいた。たぶんこの子が、2試合目のソーナさんなんだろう。