バイトが終わったけど、真っ直ぐに家へ帰る気になれなかった。ここ数日の目まぐるしい出来事に、少しうんざり気味だった。僕は気分転換代わりに、夜の学校に忍び込んだ。
夜の学校は、当然のことながら、誰もいず静かだった。いや、当直の先生とか警備員はいるはずだけど、雑音の元にはならず、静寂を満喫するには最高な場所であった。
ふと、頭に浮かんだ疑問。オカルト研究部の部室のある旧校舎って、部室1つだけなのかな?それにしては、でかいなぁ。ちょっと、探検してみようかな?って、ことで一人肝試しへと向かう。
中に入って色々見て回っていると、気になるドアが1つあった。ドア一面に封印の術式プログラムが描かれている。これって機能しているのかな?ドアのノブを回すと、ドアが開いた。中に入り見回してみる。部屋の中は真っ暗であるが、何かの気配を感じた。『レミーラ』を発動して、室内を照らし出してみた。
部屋の隅にダンボール箱が1つあり、そこには赤い目の何かがいる。その目が輝いて一瞬空間が揺らぐ。次の瞬間、箱の中にいた者は箱の外に出て、ダンボールを引き摺って、どこかに行こうとしていた。僕はその者の腕を掴んだ。
「なんで?時間を止めたのに、動けるの?」
捕獲した者は、僕の行動に驚いているようだった。捕獲したのは、かわいい少女だったので、僕も驚いたり。なんでこんなところに?なんで時間を止めた?
「空間が揺らいだみたいだけど、なぜか僕には、君の術は効かなかったみたいだよ」
苦笑してアゴをかく僕。
「そんな人、初めてだよ」
僕のことを恐れているのか、涙目で見ている少女。
「僕はシュウ。君の名前は?」
「僕は、ギャスパー・ヴラディ。ヴァンパイアと人間のハーフです」
「そうか、ギャスパーちゃんかぁ。ねぇねぇ、友達になろうよ」
「僕のこと、怖くないんですか?自分の能力をうまく制御できないて、ここに封印されて…そうだ、封印されているのに、どうして入って来られたんですか??」
驚くような表情で訊いてきた。
「封印?あぁ機能していないみたいだよ。ドアがすんなり開いたし…それにギャスパーちゃんのこと怖くないよ。それどころかかわいいし♪」
僕はギャスパーを抱きかかえた。しかし、ギャスパーの股の部分に違和感が…
「もしかして、ギャスパーちゃんって、男の子かな?」
「そうですけど…」
それはそれでショックだ。こんなにかわいいのに…そうなると疑問が沸々と湧いてきた。
「暗闇で女装趣味って…見えないじゃん」
「女の子の服ってかわいいでしょ?」
「そうだけど…似合っていると思うけど、暗闇でこんな場所に閉じこもりでは、意味が無い気がするよ。それよりも、ここに一人でいるより、僕の家で一緒に住まない?」
たぶん、ここに彼を一人封印するより、僕の家、黒歌とオーフィスがほぼ常駐していて、防御結界もここより固いと思うし、きっと安全なはず。
「僕は能力の制御できない危険な存在ですが…」
少し考えて、彼の頭を撫でながら、提案をする。
「ここに一人でいるより、僕の家の方が安全だと思う。たぶん、君より危険な存在がいるからねぇ」
苦笑しながら、黒歌とオーフィスを思い浮かべる。
「ダメですよ。僕より危険な存在って、いないと思います」
涙目になって否定するギャスパー。
「SS級の元はぐれ悪魔と龍神様だけど」
僕の言葉に、きょとんとしたギャスパー。その表情もいいなぁ~。
「それは、僕より危険というより凶暴そうですね」
「あと、旧校舎に封印されているってことは、オカルト研究部の関係者かな?」
「リアス様の眷属で『僧侶』です」
「そうか、リアスの眷属か」
リアスの眷属って、僕の家で一緒に住むことになっているし、問題なさそう。
「シュウさんは、リアス様とどういったご関係ですか?」
僕の顔をのぞき込むようにして質問してきた。
「僕は、リアスの婚約者だけど」
ギャスパーは驚いて、目が点になっている。おもむろに『兵士』の駒を当ててみるが入っていかない。コイツってリアスより能力が上じゃん…と、思って『女王』の駒を当ててみる。今度は抵抗なく吸い込まれていく。
「な、何したんですか?」
怪訝な表情のギャスパー。
「僕の眷属の『女王』になってもらったから。あっ、リアスとの眷属関係も維持されているから、心配ないよ」
リアスが『兵士』でギャスパーが『女王』って、知ったらリアス驚くだろうな…
そして、ギャスパーを僕の家にお持ち帰りした…きっと驚くリアスの顔は、かわいいんだろうなって思いながら…
家に帰ると、僕がお持ち帰りした者を見るなり、リアスが驚いている。お持ち帰りされたギャスパーも僕の家に、リアスがいることに驚いているけど。龍神様は持ち帰った獲物を不思議そうに見ている。
「なんでギャスパーがいるの?封印した部屋にいたはずなのに」
「封印?してなかったよ。すんなり入室できたし。あと、眷属にしてお持ち帰りしました。あんな暗闇いたら、こんなにかわいい娘の意味がわからないし」
「眷属にしたの?この子、まだ自分の能力がコントロールが出来ていないのに」
心配そうなリアス。ここで驚愕の事実を伝える。
「『兵士』の駒ではダメだったので、『女王』になってもらいました♪」
「はぁい?意味がちょっとわかないけど」
リアスの頬にいや~な汗が流れているみたいだ。
「潜在能力は現時点でリアスより上ってことだよ。たぶん、リアスがスカウトした時より、能力が上がったんじゃないかな?」
じゃなきゃ、眷属に出来無いはずだ。
「え?そうなの?」
落ち込むリアス。この表情もいいなぁ。
「現状、能力のコントロールができないので青田買いだけど。リアスは良い眷属を持っているなぁ」
「褒められている気が、しないんだけど」
少し涙目になっている彼女の表情が好きかも。僕ってエスなのかな。
「ギャスパー、地下のトレーニング施設なら頑丈な防御結界が張ってあるから、トレーニングにいいと思うよ。とりあえず、黒歌に気の扱いを習うと良いと思う。頼むぞ、黒歌」
「にゃん♪」
黒歌は、かわいい弟子ができて、喜んでいる。
「あと、ギャスパーの部屋にも結界を張って、能力が外に漏れないようにしよう。術式プログラムを展開しておくから、リアスとソーナで魔力を注入してね」
「「はい!」」
「リアスの眷属なんだから、彼の事一番わかっているのは君なんだから、彼が心細くならないように注意してくれよ」
リアスに注意を促したのだが、黒歌とソーナが驚きの声を上げた
「彼って言いましたよね?この子は男の子なの??」
「女の子かと思ったにゃ~」
その時、ふいに空間に揺らぎが生じ、ギャスパーの能力が発動した。リアスとソーナの動きが止まった。
「これがギャスパーの能力らしい。時間を止められるんだって」
白音、黒歌、オーフィスは動けていることに、ギャスパーが驚いている。
「僕の能力が、効かない人がこんなにいるの??」
「ギャーくん、能力が暴走しても大丈夫だよ。私達は問題ないみたいだから」
白音が優しく声をかけた。
「少し安心しました。ここで、コントロールが出来るようにがんばってみますので、みなさんよろしくお願いします」
ペコっと頭を下げるギャスパーの頭を優しく撫でてあげる。するとオーフィスが、私もって感じで横から頭を突き出してきたので、彼女の頭も優しく撫でてあげる。
「で、この二人は、どうするにゃん?」
未だに停止しているリアスとソーナを指さしている。僕は黒歌の耳元で、悪魔の囁きをした。
「気づいたら、濃厚なキスをしていたなんてシチュエーションに加工できる?」
「まかしてにゃん♪そういう悪戯大好きにゃん♪♪」
黒歌に細工を頼んで、僕は次元旅行に出かける準備をした。