着いた場所は、どこかの家の応接間だった。目の前に年配の夫婦らしい方がいる。
「私達の両親ですの」
なんだか上からものを言っているような口調で、レイヴェルが紹介してくれた。まぁ、名門のお嬢様だから、そんな感じなんだろう。リアスと初めて会った時もそんな感じだったし。
「突然、連れてきてすまなかったね」
と、フェニックス卿。すまないと思うなら連れて来るなって…言える雰囲気では無さそう。たぶん、ここは冥界だろうと思う。相手を怒らせたら、家に帰れなくなりそうだし…
「いえ、ヒマですから」
無難な返答をしておく僕。
「一応、息子達はプロなんだが、デビュー前の君に瞬殺されたようだね」
「あれでプロなんですか?」
しまった…余計なことを言ったかも。レイヴェルが睨んでいる。
「ははは、面目無い。まぁ、たまに負けるのは、良いことだと思う。二人とも不死身という、特性を過信していたようだから」
「精神までは不死身では無いですからね」
「君の言う通りだ。それでね、愚息のライザーがリベンジしたいと言っていてね。眷属有りで再戦をお願いできないだろうか?」
ふと、疑問が浮かび、尋ねてみる。
「ライザーは僕の眷属ですが、問題は無いんですか?」
「どういうことかな?」
怪訝な顔付きのフェニックス卿。
「ライザーは僕の眷属で『兵士』ですが、『王』である僕と対戦って出来るんですか?」
この場にいる僕以外は驚いている。まぁ、普通に考えて『王』が、別の眷属の『兵士』になるってことは、今まで無かったに違いない。
「君は何者なんだい?」
今までの優しい目付きが、一変して敵対する物になってきている。そうだ、社長に訊けばわかるか。レーティングゲームの元締めみたいな者だし。
「僕の義理の父に、そういう事例でゲームが出来るか、確認してもらえますか?」
「君の義理の父って、どなたかな?」
僕の冥界での立場を知らないようなので、フェニックス卿の目をまっすぐ見て、僕は名乗った。
「僕は、アジュカ・ベルゼブブの養子で、ベルゼブブ眷属『王』のシュウです。義理の父に確認お願いします」
「なんてことだ…アジュカ様の息子様でしたか」
突然、僕に向かって、僕以外の方達が跪く。まるで黄門さまの印籠を出したみたいに。
「ただの養子ですから?そんなに畏まらないで下さい」
「レイヴェル、彼のお相手をしてくれないか?アジュカ様に確認をしてくるから、頼むぞ。粗相の無いようにな」
フェニックス卿夫妻はこの場から、姿を消した。きっと、社長に僕の身元照会とルール確認をするんだろうな。
「あのぅ、お茶でも飲みになりますでしょうか?」
レイヴェルが、上目づかいで僕を見つめている。俯いていて表情がよくわからないけど、耳がピンクがかっている。
「緊張しなくてもいいよ、レイヴェルちゃん」
頭を軽く撫でてあげた。
「お茶をもらえるかな?」
頭を軽くポンポンと叩いた。見上げた彼女の顔は真っ赤だった…え?この程度で、この赤さって…
「はい、ただいま、お持ちしますわ」
レイヴェルもこの場からいなくなってしまった。話す相手もいなくなり、ボォ~っとしていたら、目の前に大きめの魔法陣が展開されて、大勢の人達が出現した。
「迎えに来てくれてありがとう。僕の転移魔法じゃ帰れそうもなかったから」
苦笑いする僕。目の前には僕の眷属のほとんどと、オーフィスがいた。
「我 シュウを 迎えにきた」
「ありがとう、オーフィス」
オーフィスを抱きしめて、肩車した。喜んでくれている小さな龍神様。
そのとき、食器が割れる音がした。レイヴェルが飲み物を持って戻ってきたようだが、大勢の招待していない客が増えて、驚いたみたいだ。
「あなたたち、ここをどこだと思っている?ここは名門フェニックス家のお屋敷なんですの。招待していないのに勝手に入ってくるのは無礼ですわ!」
レイヴェルのただならないオーラを感じて、ライザー、ルヴァルが駆けつけた。
「失礼なのは、あなたみたいな人を言うのよ、フェニックス家のお嬢さん。私達の『王』を連れ去るとはいい度胸だわ。理由によっては万死に値するわよ!」
こういう時のリアスは心強い。レイヴェルの売り言葉に一歩も引かない。
「ライザーが眷属込みで再戦したいんだそうだ。どうする、みんな?」
「ここに来た者はみんな戦う気は満々よ」
と、リアス。心強いみんな、ありがとう!
「ライザー、再戦を受けて立つ。今、ここでも良いぞ♪」
「ここはまずいって…」
「ここではやめてくれないか」
ルヴァルはオーフィスを見て、青醒めている。レイヴェルは、狼狽えている兄達を見るのが初めてなのだろうか?口を開けたままで、固まっているみたい。
部屋にフェニックス卿が戻ってきた。
「何事だ?これはどういうことだ?君達たちは誰だ」
家主に招待されていない殺気ムンムン(特にオーフィス)の者が、たくさんいたら、驚くよな。いくら名門の当主とはいえ。
「ライザーがご所望した、僕の心強い眷属達です。ここですぐに開戦が出来ますが、いかがされますか?」
「断りもなく屋敷内に入ってくるとは。君は眷属にどういう教育をしているのかね?」
怒り心頭なフェニックス卿。
「申し訳ありません。私達の『王』は、眷属にあれこれと言いませんから♪」
お姉さん、キレてますね…オーラがオーフィスの次に危険です。
「セラフォルー・レヴィアタン様?どういうことですか?どうして、ここに??」
「私はセラフォルー・レヴィアたん♪ベルゼブブ眷属『僧侶』です。誘拐みたいなマネで、私達の『王』を連れ出したことは、マナー違反では無いの?」
冷たい切れ長の目つきで、フェニックス卿を見た。
「現魔王様が眷属?有り得ない。何かの冗談ですか?セラフォルー様」
今度は小さめの魔方陣が展開して、社長が出現した。
「招待されていないのに、すみませんね。私はアジュカ・ベルゼブブ。ベルゼブブ眷属『戦車』です。どうして、誘拐まがいなことをされたんですか?フェニックス卿」
「まさか、魔王様の関係者とは知らずに、申し訳ありませんでした」
社長に頭を下げるフェニックス卿。
「それは、私達、魔王の関係者で無ければ、誘拐まがいな行為をして、連れ去っても良いと聞こえますが。それはそれで問題ですよ」
社長もやる気満々なのかな?
「はっきりと申しますが、私の息子の眷属全員が参戦したら、あなたの一族総出でも勝て無いと思いますよ、フェニックス卿」
「まさか?そんなに?」
顔から血の気が引いているフェニックス卿。
「とりあえず、ライザー君との再戦を認めます。シュウ君、僕達魔王抜きで戦ってごらん。全てのアイテムの使用を許可するから」
「魔王様達抜きなら…ライザー勝てよ。油断をせずに、名門フェニックス家の強さを今度こそ見せつけてきなさい」
「ライザーって、ルヴァルより弱いんでしょ?あぁ、でも眷属は強いのかな?」
「お前なんか、リアスの目の前で燃やし尽くして灰にしてやるからな」
ヘタレが何か言っている。
「グレイフィア、戦闘用の仮想世界の準備はできている?」
リアスがはグレイフィアさんに、確認した。
「出来ております」
転送された仮想世界は、駒王学園を模した所だった。グレイフィアさんの声でアナウンスが聞こえる。
「それぞれの本陣は、ベルゼブブ眷属は旧校舎オカルト研究部部室、ライザー眷属は、新校舎生徒会室です。作戦タイムは今から30分。その間に敵との接触は禁止です。兵士は敵陣内でプロモーションで昇格できます。」
現状の僕の戦力は、『女王』のギャスパー、『兵士』の黒歌、白音、リアス、ソーナの6名である。『騎士』のイッセーは使い物にはならない。無駄死になるので、参加はさせない。
プロモーションとは『兵士』が敵陣内に入ることで『女王』に昇格することらしい。『兵士』は能力の底上げは無いけど、『騎士』は速度、『僧侶』は魔力、『戦車』は防御力の底上げが出来る。『女王』はその3つ総ての底上げが出来るのだ。将棋で言うところの『歩』の成り金って感じだな。
「さて、どうしようか??ギャスパーは、まだコントロールできない?」
「まだです」
ギャスパーの元気の無い返事。
「コントロール出来無いギャスパーを使うとなると、リアスとソーナは使えないし、困ったなぁ」
「使えないって、どういうことよ?」
おぉ、むっとしている紅髪のお姫様…では、真実を教えてあげなきゃ。
「リアスとソーナだけ、ギャスパーの能力が、よく効くからさぁ。僕と黒歌と白音は問題無かったけど」
「そうだったのねぇ」
落ち込むリアス&ソーナ。
「とりあえず、開始したらすぐ、ギャスパー、白音で索敵をしてくれ。黒歌は僕の展開した魔法陣に魔力を注入してくれ。壊滅魔法を展開するので、僕より前に出ないでね」
頷く三名。多彩な魔法陣は発現できるのに、ほとんど発動出来無い僕。情け無い…
「私達は?」
「ソーナでチェックメイトにする。ライザーの本陣に行くまでに、空中から仕掛けられたまずいので、ドラゴンを2匹出す。ライザーの傍まで行ったら、あいつを水の柱に埋め込んでくれ、ソーナ」
「わかりました。それでねぇ、椿姫が失礼なことをしたみたいで」
「その話は後だ。今は目の前の戦いに、専念してくれるかな。後で一杯お仕置きをしてあげるからね、ソーナ♪」
この後、ソーナとどんなプレイをしようか考えていたら、一人だけ指示が出されないことに、ご立腹されているリアス。
「婚約者1号の私を、無視しないでくれる?」
「あぁ、リアスには大事な作戦が…ライザーを誘惑できないかな?元婚約者だろ?」
「嫌よ、シュウ以外を誘惑するなんて、有り得ないわよ」
今度は涙目。
「ライザーの隙を作って欲しいんだけど…成功したら…でも、リアスじゃ無理みたいだな」
って、意地悪っぽく、耳元で囁く。
「しかたないわねぇ。シュウの頼みなら、善処するわよ」
渋々了解してくれた。でも、ライザーの目の前で、リアスをいじり倒して、気を引くのも有りかなっと…
「会話は念話でする。あと、作戦通り行かない場合は、作戦を変えて行くから、指示通りに変更を頼む」
そうこうして、作戦タイムが終わり、戦いの幕は開いた。
外に出て、まずグランドの先にある新校舎に向けて、広域壊滅用魔法陣と広域殲滅用魔法陣の2つを展開して、黒歌に魔力を注入してもらい、他人まかせのフルバーストを打ち込む。これにより、目の前にあった総ての建物、木々などの立体物は無くなった。
次に、黒歌と白音とギャスパーに索敵をしてもらう。体育館に3名、森に2名、空中に2名の敵を発見。オーフィスと天使ドラゴンサマエルを召喚(オーフィスは空間を裂いて出て来た)。
「サマエル、空中に居るヤツを地上に落とせるかな?」
「ライザー以外は倒して良いな?」
「まかせるから。オーフィスと小猫は体育館の敵を頼む。終わったら、新校舎のあった場所に行って、プロモーションしてきて」
「了解!」
「オーフィス、白音をガードしてあげてね」
「まかせて 我 白音をガードする♪」
僕は妖刀村雨を装備した。閃いたことがあったので、移動魔法の『ルーラ』を唱えて、ある場所へと行き、レイヴェルと共に同伴帰還した。
「リアス、作戦変更。人質を攫ってきた♪」
「私って、人質ですか?」
と、紅潮した顔のレイヴェル。
「いつの間に?」
と、リアス。
「見たことない魔法ですね」
と、ソーナ。
兎に角、ヘタレをおびき出さないと。空中戦では、サマエルしか攻撃役がいないし。
「サマエル、ライザーで無い方を倒したら、森のヤツを空から狙撃しておいてね」
「了解だ」
「サマエル以外に空中戦出来る人いますか?」
誰からも返事が無い。やっぱりいないみたいだ。地上に降ろすしかないかぁ。
「ライザー!お前のかわいい妹を預かった。返して欲しければ、降りて来い!」
ライザーの代わりに巨大な火の玉が落ちてきた。村雨を引き抜き、玉をみじん切りにして事なきをえた…危なかった。
「ライザー!!降りてこないなら、妹を切り刻むぞ」
レイヴェルの服のボタンを斬り落としていくと、今度はライザーが降りてきた。
「貴様、卑怯だぞ!」
「誘拐はソッチが先だろ?これで、おあいこだと思う」
「戦闘要員以外を巻き込むのは、ルール違反だ」
「そんなルール書いてないよ。書いてあるっていうなら、ルールブックの何頁目だか答えてみろ」
「はぁ?」
僕の小学生並の挑発に、呆れかえるライザー。
ソーナに合図を送り、僕は『ドラゴラム』を唱えて龍化して、すぐにライザーに向かって、『輝く息』を吹き付けた。ソーナも僕に続いて、水の柱にライザーを埋め込む。
「シュウ様って、ドラゴンに成られるのね」
レイヴェルの瞳が輝いて見えた気がしたが、『輝く息』の影響かな?
ライザーは、水を蒸発させようと身に炎を纏う。黒歌は、柱からライザーが出られないように柱の周囲に結界を張ってくれている。プロモーションして戻ってきた白音は、オーフィスと共に、森の方へ向かってくれた。
空中戦はサマエルが制した。相手は光に包まれて消えていく。
「森に向かう」
サマエルから念話があった。氷の柱に閉じ込められたライザーの周囲は水蒸気で満たされていった。
「リアス、水の柱の周りの空気だけ消して真空にして。黒歌、結界をリアスの魔力を通るようにしておいて」
二人が頷く。真空で囲まれて、氷の柱はついに爆発した…ボロボロになったライザーは光に包まれて消えていった…