アガレスさんにより、焼き鳥オヤジことフェニックス卿は、ご乱心故、隠居との裁定が下りたそうだ。当主を失ったフェニックス家は、ルヴァルが当主になったみたいだ。
地上では5月が近づき、GWという長期休暇がやってくる季節になった。
僕は忍者を極めて「分身の術」などを会得して、今は侍として異世界で鍛錬を積んでいる。悪友イッセーはリヴァさんと黒歌のおかげで、神滅具「赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)」を発現出来るようになった。
そんなある日、リアスがGWは冥界で過ごそうと言い出し、今僕たちは冥界行きのグレモリー家専用列車に乗っている。冥界には転移術で行く方法も有るけど、正式な手段は列車での移動だそうだ。家の近くの駅に、冥界行きの列車が発着するホームが有ることに驚く僕。まるで、ハリボタみたいだ。
「冥界に着いたら、ソーナ、ライザー、レヴェルはどうするの?」
「俺達は、とりあえず家に帰る。兄貴が当主になってから、まだ会っていないからな」
「シュウ様と、しばらく逢えないのが、残念です」
と、フェニックス兄妹から返答が返ってきた。
「私も椿姫とシトリー家に戻ります。どこかに出掛ける際には、一緒に行動しようと思っています。お声を掛けてくださいね」
と、ソーナ。
「一緒にいなくても、日々の鍛錬は忘れないでね。ライザー、ルヴァルに勝って来いよ」
「あぁ、異世界でいっぱい鍛錬できたしな。お前には感謝しきれないよ」
「レーティングゲームに参加できたら、頑張ってくれれば良いよ」
なんて話をしていると、むくれているヤツが一人いた。いや、むくれた顔も好きだけどね。
「なんで、私には話を振ってくれないのよ!!」
怒れる紅髪。
「だって、話す話題は無いし…」
「話題?話題なら一杯有るでしょ?」
「すまない、思い浮かばない」
「もう!!!」
とっても怒っているなぁ。どうしてやろうかな。
「前に言っただろう。怒っているリアスの顔は好きでは無いって。そんなに怒っているなら、ソーナの家で過ごしても良いよ。僕的にはね」
「是非、来て下さい」
ソーナは嬉しそうだ。行こうかな?
「そっ、そ、それは困ります。ソーナの家にもお連れしますが、私の家で過ごしてください」
涙目で訴えるリアス。その顔も好きだよ。怒っている顔も嫌いでは無いし。
「まぁ、当初の予定通りにするよ。お兄さんに会いたいし」
僕の傍には、ボディガードを買って出たオーフィス、アポ、リヴァさん、ティアさんがいる。最強クラスのドラゴンに、護られていると思うと心強い。
イッセーは車中でも黒歌、白音に気功を習っていた。「赤龍帝の籠手」を発現はできるのだが、僕同様に魔力があまり無いので、気で補おうとしていた。発現出来ても使えない状況と言うか。後、毎晩黒歌とよろしくしているようで、以前みたいな「ハーレム王に俺はなる」的な発言は無くなっていた。毎晩精力を吸い取られ、浮気どころでは無いらしい。
朱乃さんは朱璃さん(天界に知られるとまずいので、家で不思議な袋に入ってもらい、車中で袋から出ていただいた)と、楽しく会話している。ぱっと見は姉妹みたいな感じだ。冥界の堕天使領に朱乃さんの父親がいるそうで、親子3人で過ごす予定だそうだ。
ホームに着くと、降り口には赤い絨毯が敷かれている。その上を、リアスを先頭に歩く僕達。フカフカすぎて歩きにくい。駅の出口の前には馬車が…どんだけ貴族なんだ?
ライザー、レイヴェルとソーナ、椿姫は馬車には乗らずに、転移魔法陣でそれぞれの家に帰っていった。
初めての馬車。あまり乗り心地の良い物ではない。庶民には無理。こういう歓迎は困るよな。実は社長の城に列車で行ったことがあったけど、城の地下に入線する為、馬車移動は経験したことが無かった。
やっと、目的地に着いた。目の前には、お城のようなお屋敷がそびえていた。馬車の降り口にも、また赤い絨毯。はぁ…
従者がいっぱい。あっ、お兄さんがいる。少し安心。
「ただいま帰りました」
リアスの声に反応するかごとく、小さい男の子がリアスに走り寄ってきた。
「ミリキャス、良い子にしていたかしら」
「はい。リアスお姉様」
リアスの弟かな?
次に、厳格そうなおじさんが近寄ってきた。
「お父様、ただいま帰りました」
この人がリアスの父、グレモリー卿みたいだ。僕達には、グレイフィアさんが近づいてきて、
「長旅お疲れ様です。皆様のお部屋にご案内致しますので、こちらへどうぞ」
って、僕達の荷物は、従者の方々がそれぞれの部屋に運んでくれた。案内してもらった部屋…一人では広すぎる。オーフィスとアポが、自分達の枕を持って僕の部屋に入ってきた。そして、僕の枕の横に置いた。
「ガードだから、同じ部屋に寝るよ」
「我 シュウと寝る」
「ありがとう」
二人の頭を撫でてあげる。喜んでいる二人。
---アザゼル---
ボウズが、グレモリー邸に着いた頃なので、迎えに行く準備をする。サーゼクスに話を聞いた時は、流石の俺も驚いた。バラキエルの妻、朱璃が生き返ったなんて。今も朱乃と二人で仲良く暮らしているなんて。この目で見るまで信じられないが、一応朱璃の亭主のバラキエルにも伝えると、目を点にして驚いていた。死体無き死者蘇生だなんて、天界を敵に回すような能力だ。どうやったのかは、ボウズに訊いてみるか。
転移陣を出てみると、サーゼクスと朱璃、朱乃がいた…
「朱璃…」
俺は驚き、絞り出すような声で、彼女を呼んだ。朱璃と朱乃は笑顔で俺の方を振り向いた。
「アザゼルさん、お久しゅうございます」
確かに朱璃だ。笑顔で俺に挨拶をしてくれた。
「サーゼクス、ボウズを少し借りたいんだが、呼んで来て貰えるかな?」
「少し?夕食までに返してくれるかな?今夜は歓迎のディナーなんだ」
「解っている。サマエル様に少しだけ恩を返したいんだよ」
「解ったよ」
そう言うと、サーゼクスはボウズ達を連れて来てくれた。
「おっさん、ボディガード付きだけど、良いかな?」
「もちろんだよ」
早速、俺達は堕天使領へ転移した。
まず、パラキエルの家。家の前でアイツ、うろうろしてやがる。そんなアイツに朱璃が優しく声をかけた。
「あ、な、た♪」
朱璃の声がアイツの耳に届くや、豪快な男泣き…
「朱璃、朱璃かい?しゅりぃ~」
アイツは朱璃に駆け寄り、優しく深く抱きしめた。朱乃のヤツも泣いている。この休み中は、三人で過ごして、失った時を徐々に取り戻すのだろう。あっ、俺ももらい涙が出てきている…
「シュウ君、皆の帰る日までに、グレモリー邸に戻ります」
朱乃がシュウに言葉を掛けた。
「解りました。家族団らんを楽しんで下さいね」
バラキエル一家を残して、俺達はグリゴリの研究所に転移した。静かな場所、俺の部屋に案内して、寛いでもらう。
「なぁ、ボウズ。朱璃は、どうやって生き返ったんだ?」
俺は疑問を口にする。
「創造神に、朱璃さんの身体を創造してもらって、僕が復活の呪文を掛けたんだ」
創造神?復活の呪文?おいおい、すげぇ事をさらっと言ってくれるなぁ。
「創造神って、創世記の創造神か?」
「そうみたい。でも、詳しいことは、サマエルから聞いていないよ」
サマエル様だけでなくて、創造神も仲間にしているのか。一体どんだけの人物が、仲間になっているやら。
「で、復活の呪文とは?」
「異世界で鍛錬して身につけたんだ」
はぁ、異世界?こいつ、想像以上に、すげぇボウズだ。ゆっくり時間をかけて、話を色々聞きたくなったぜぇ。
「ボウズは、異世界に行けるのか?」
「航路の神様が、僕を導いてくれるんだよ」
こいつ、何柱の神様と仲間になっているんだ??現状でも凄まじい戦力を持っているんじゃないか?
「ボウズは強くなったのかな?」
「僕はただの人間だから、弱いよ。でも、仲間の皆が助けてくれるから、心強いんだよ」
「そうかぁ」
ボウズと俺で話し込んでいると、
「ただいま」
そういって、ヴァーリが帰ってきた。ちょうどよい。
「ボウズ、サマエル様、コイツはヴァーリ・ルシファー。初代魔王ルシファーの曾孫にあたる存在だ。ボウズ、コイツと戦って勝ったら、眷属して良いぞ」
十字架に収まっているサマエル様に声をかける。
「ちょっと待て。勝手に決めるな」
「このボウズには、ヴァーリでも勝てないか?」
「俺が、こんな人間に負ける訳無いだろ?」
サマエル様が発言されて、ヴァーリを値踏みするように見つめた。
「面白い。ヴァーリ・ルシファーよ。人間を侮辱した罪は重いぞ。我らの裁きを受けてもらう」
サマエル様がヴァーリに言い放ち、あの神々しい目力で、ヴァーリが後ずさりしていやがる。じゃあ、戦場へ行って来いって。ヴァーリとシュウ達を強制的に、訓練用の仮想フィールドへ転移させた。
---シュウ---
おっさんとサマエルで話を着けちゃって、僕の返事は聞かないのね。しくしく…
「シュウ、勝ちに行くぞ。是非ともほしい人材だからな」
いつになくサマエルは張り切っている。じゃ、がんばろうかな。ヴァーリはいつの間にかに白い鎧を着込んでいる空中にいる。そんなヴァーリに声が飛んだ。
「アルビオン 久しい」
と、オーフィス。
「アルビオン、ちょっと降りて話しをしようよ」
と、アポことグレートレッド。
「アルビオン、いつから無口になったのか?」
と、ティアさんことティアマット
「アルビオン、私達に挨拶無しかな?しばいたろうか?」
と、リヴァさんことリヴァイアサン。
僕のボディガード達から、ヴァーリへ…たぶん、彼の宿しているドラゴンへ、口撃が始まった…この攻撃だと、たいていのドラゴンは戦わずして、心が折れるらしい。二天竜の片割れと言われたドライグがそうだったし。
『宿主よ、こいつらには勝てない…いや、殺されるかもしれない…』
ヴァーリに宿るドラゴンの声がした。
「どうしてだ?相手は女、子供だぞ?」
『すまん。解除するぞ。殺されるのは嫌だから』
ヴァーリの白い鎧は消えて、地上に降りた。口撃が効いているのか??あの鎧は宿るドラゴンの力なのかな?イッセーの籠手のように。
『皆様、ご無沙汰しておりました』
口撃が効いているようで、声が裏返っているヴァーリに宿るドラゴン。
「何を言っているんだ?アルビオンよ。戦おうぜ!」
って、アポ。
『宿主よ、覚えておけ!あの方達の前では、二天龍は赤子同然だ』
「二天龍?お前も二天龍だっけ?もう片方の赤いのは、既に心をへし折ってやったぞ。毎日、調教…でなくて、鍛錬をさせているし♪」
と、リヴァさん。
『なんていう事を。ドライグは生きているのか?』
「おい、言葉遣いがなっていないぞ。いつからアルビオンさんは、タメ口が出来る身分になったのだ?」
『あっ、すみません。申し訳ありませんでした』
なんか、泣き声が聞こえてきそう…リヴァさんのイヂメ…で無くて、教育はハンパないなぁ。
「おい、どうしたアルビオン」
宿主であるヴァーリは、宿るドラゴン、アルビオンの弱気な態度の理由が解らないのか、アルビオンに文句を言っているけど、そこは優しくしてあげるのが、正解だよ。
話し込んでいる皆様、蚊帳の外状態の僕。ドライグと対をなすならアレかな?まったく誰も、僕の存在を忘れているようで、難なくヴァーリの背中に陣取り、『騎士』の駒をヴァーリに当てた。おぉ、吸い込まれていく♪
「いつの間に、そこにいる。おい!お前!!今、何をした?」
振り向きざまに僕へ問うヴァーリ。しかし、もう遅いよ。
「僕の眷属の『騎士』にしたの。これからは仲間だからね。よろしく、ヴァーリ♪」
唖然としているヴァーリ。その瞬間、ヴァーリは光に包まれて消えて行った。