---アザゼル---
戦闘の様子はモニタ用の魔法陣で見ていた。何だと?言葉だけで、二天龍の一角のアルビオンを撃破って…有りえねぇ。で、駒を入れられて、チェックメイトとは…戦闘狂のヴァーリらしくねぇなぁ。
しっかし、こんな戦術は、今迄見た事が無いぜ。何もかも驚かせてくれるボウズ。今度、ボウズの家に遊びに行って、アレコレ話しこみたいぞ。
参加したみんなが、仮想フィールドから戻って来た。頭を抱えて蹲っているヴァーリ。こんなヴァーリは、初めて見る。よっぽど、ショックだったのだろう。なんたって、アルビオンが相手にビビって、『禁手(バランスブレイク)』を解除しちゃうんだから。さすがの俺もたまげた。
「おい、アルビオン。どうしたんだ?ヴァーリがショックを受けているぞ」
『相手が悪い。オーフィスにグレートレッド、ティアマット、リヴァイアサンだなんて…殺される自信があっても、勝てる気がしない』
「あのボウズは、配下ドラゴンを全部出していないぞ。ドラゴンイーターもいたんだけど」
『なんだって??それじゃ、あれが正解だ。絶対に殺されていたな』
「アルビオン、グレートレッドだって?おい、そこのお前、グレートレッドも仲間なのか?」
いきなり、お前呼ばわりかよ。カチンと来たようなシュウ。
「僕の名前はシュウ。そこのお前ではない」
ヴァーリに怒気を孕んで返事をした。
「それは悪かった。シュウ、グレートレッドも仲間なのかい?」
ヴァーリはシュウの怒りを感じ取り、柔らかな言葉遣いにした。まぁ、眷属になったんだ。それが、正解だと思う。
「この紅髪の少女が『真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)』グレートレッドだよ。呼びにくいから、アポにしたんだ」
紅色の服を着た紅髪の少女を指差すボウズ。
「そんなのも、仲間なのか?ボウズ、反則手並の戦力だな」
「そうなの?僕は良く分からない」
まぁ、人間には知って良い領域が狭いからな。知らないのは罪にはならねぇよ。
「ヴァーリ、お前の完敗だ。ボウズの眷属として、鍛えられて来いや。お前の戦いたかった相手もいるみたいだし」
「そうだね。完敗だったよ。まさか、攻撃での攻防が一切なくて、俺のバックをすんなり取るなんて、はぁ…」
ヴァーリから溜息が漏れる。まぁ、アレはショックだよな。相手の言葉だけで、アルビオンの心がへし折られて、禁手を解除するなんて…
「アルビオンよ、赤いのも仲間にいるから、いつでも戦えるぞ」
グレートレッドがアルビオンに話しかけた。
『ドライグも心を折られて眷属にされたのですか?』
アルビオンからは、二天龍だという威厳さがまったく感じ無くなっている。おぃおぃ…
「宿主に発現する前に、青田買いした感じだよ。眷属にしていから発現して、リヴァが教育という名の調教している最中だ」
え?赤龍帝ドライグを調教だと…
「サマエル様、そうなると二天龍が眷属にいる事になるんですか?」
「そういう事になるな。後、これからの成長待ちだが、魔神バロールを宿している者もいるぞ」
「はぁい?そのような者もですか???」
一体、ボウズの眷属、仲間はどこまで桁違いなのか?俺ですら計り知れない。訳のわかない輩に持って行かれるより、サマエル様サイドに集まるのは驚異ならない分、安心ではあるが。
「アザゼルよ、感謝する。お前の計らい、しかと受け止めたぞ」
「まだまだ、恩が返しきれていません。もし良かったら、ボウズの眷属のトレーナーにしてもらえませんか?神器の使い方や能力を伸ばすことに協力したいです」
「それは助かるよ、アザゼル。頼みよ」
「おっさん、お願いします。で、神器って何?」
そこからか…
「神器は、人間の血を持つ者だけが、得ることが出来る神並の能力だ。ヴァーリの場合だと、アルビオンが宿る鎧がそうだ」
「人札みたいな物かな?」
「まぁ、あれの物バージョンだな」
って、なんで人札を知っているんだ?ボウズって何者だ?サマエル様の仲間だから、ソレ相当な者であると思うのだが…人間ってことが引っ掛かる。昔、サマエル様に聞いたことが有るような…
まぁ、休みが終わったら、ボウズの家に行く事にするか。グリゴリの仕事はバラキエルに押しつけてよ。ヴァーリは、休みが終わったら、ボウズの家に行って、一緒に鍛錬するようだし。自分より強い者が多い環境が、気に入ったのかもしれない。
夕食の時間が近づいてきたので、ボウズ達をサーゼクスの元に送り届けるか。
---シュウ---
おっさんに、グレモリー邸まで送ってもらった。GW休みが明けたら、僕達の家におっさんとヴァーリで来る事になった。門を潜って玄関まで行くと、サーゼクスお兄さんが、玄関まで迎えに来てくれた。
もう夕食の時間って言う事で、サーゼクスお兄さんは、僕を大広間に連れて行ってくれた。僕達が大広間に入ると、屋敷内にいた僕の仲間達は、既に着席していた。僕達は決められた席に、案内された。
グレモリー卿の合図で食べ物が次々と運ばれてきたが、箸無いのかな?箸が無くて悩む仲間もいる。アポとオーフィスは手掴みだぁ。
「すみません。箸は無いですか?僕の家では箸で食事しているので、仲間も四苦八苦して食事しているみたいなので、用意していただけませんか?」
僕はグレモリー卿に懇願した。
「貴族の家に婿入りするなら眷属共々、こういう食事のマナーを身につけなさい」
あれ?って、僕はいつ、婿入りするって言ったよ??
「あのぅ、いつ、僕が婿入りすると言いましたか?」
僕は立ち上がって、リアスの父親に顔を向けて言う。僕の怒りのオーラに反応して、黒歌、白音が戦闘態勢に入った。オーフィス、アポは食べる方優先で、オーラだけ高めている。相当のプレッシャーを掛けているのに、リアスの父親は我関せずだ。鈍感なのか?強者なのか?
「次期当主を継がせる大事な娘を、人間の家に嫁がせるよりも、当家に君が来る方がステータス的に良いのではないだろうか?」
ステータス?何を言っているのだろうか?そんな物に興味は無い。何故、婿入りしないといけないんだ?理不尽だろ?僕からプロポーズした訳でも無いし。目の前にいる悪魔の理不尽さに対する僕の怒りのオーラに気づいて、サーゼクスお兄さんが間に入ってくれた。
「父上、それは言い過ぎですよ。シュウ君にはシュウ君なりの価値感が有るのですから、それを大事にしてあげないとダメですよ」
「サーゼクスよ、お前の買っている人物だから婚約を許したが、リアスは当家の跡取りだ。婿に入ってもらわないと困るだろ」
何を言っているんだ?このオヤジは…僕は人間であることに誇りを持っているんだ。何故悪魔の家に婿入りしないといけないんだ?人間って、意志を通したらダメなのかな?僕の心は闇に沈んでいく。限界だ…お兄さん、ごめんなさい。ごめん、リアス…
「それなら、リアスとは結婚しない。僕からプロポーズした訳では無いし。別にグレモリー家の後ろ盾もいらない。リアスとはただの友達で良い。失礼させてもらいます。おい、みんな荷物を持って、玄関に集合だ」
リアスは何が起きているか理解できないのか、微動もせず固まっている。リアス、悪いけど、こんな言い方されたら…僕は生みの親に捨てられたけど、でもねぇ、僕にもちっぽけなプライドがあるんだよ。人間としてのプライドがねぇ…例え、世界を敵に回しても、白音と黒歌という家族だけがいれば良いし。それで、殺されるならしょうがない。
「「了解!」」
仲間達は僕の指示に従ってくれるようだ。
「おい、待て!失礼だろ、その言い草は!人間風情に、当家の娘との婚約を、寛大な心で認めてやったのに」
このオヤジの方が失礼だろ?
「認めてもらわなくて良いです。婚約は破棄させてもらいます。どうぞ、この家に見合う家柄の男をお探しください」
リアスが号泣して、広間から飛び出して行った。ごめん…リアス…また、護れない…
「ここを出ても行く宛てが無いだろうに。謝るなら今のうちだぞ」
はぁ?何言ってんだ、このオヤジ。サーゼクスお兄さんの関係者で無かったら…でも、一応リアスの父親だし、ここは我慢しないと。お兄さんに申し訳無いと目でコンタクトをして、
「行く宛てなら、いっぱいありますよ。心配していただき、ありがとうございます、グレモリー卿。では、ごきげんよう!」
玄関に集まったリアスを除く仲間と、社長の城に転移した。
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社長、アジュカ・ベルゼブブの城に転移した僕達。門番の人に挨拶して、中に入っていく。門番の方から連絡が行ったのか、玄関前で執事の方達が、僕達を出迎えてくれた。僕は、簡単にここに来た理由を話した。執事の方は頷いた。
「若様らしいですね。お部屋は準備してありますので、仲間の皆様も若様の家と思って、ゆったりとお過ごし下さい」
このお城では、僕は『若様』と呼ばれている。社長の養子って立場だからのようだ。メイドさん達が出て来てくれて、僕達をそれぞれの部屋に案内してくれた。社長のご厚意で、社長の城の中に、僕達の家が再現されているエリアが有り、冥界でも普段通りの生活が出来るようになっていた。
「若様、旦那様も今夜、こちらにお見えになるそうです」
「社長が見えましたら、呼んで下さい」
「わかりました」
ここに来ると、冥界に来た気はしないけど…
---サーゼクス---
父上はなんで、あんな言い方を、したのだろうか?リアスは自分の部屋から出てこない。ドアには鍵がかかっているし。シュウ君の性格を考えれば、あそこで暴発してもおかしくなった。たぶん、僕の事、リアスの事を考えて、我慢してくれていたに違いない。一歩、対応を間違えると、アガレス邸のようになっていたかもしれないし。シュウ君は人間としてのプライドを大切にしているから。
父上の席の前に立った。
「何故、あのような言い方を、されたのでしょうか?父上」
「当家の次期当主と一緒になるとは、そういうことだぞ、サーゼクスよ」
「次期当主については、ミリキャスって選択肢も有ると思います」
隣にすわっている母上、ヴェネラナ・グレモリーが口を挟む
「サーゼクス、あなたは魔王という立場。気楽ですよね。あなたは次期当主の継承権を持っていないのよ。次期当主継承権第1位はリアス、第2位がミリキャスよ」
「それはわかっています、母上。しかし、リアスの気持ちも考えて欲しいです。あのリアスが自らプロポーズした相手を、怒らせた上に婚約破棄ですよ!!リアスの気持ちは関係無いのですか?」
「婚約破棄?良いじゃないか。また、フェニックス家の三男と婚約させれば良い。やはり、リアスの婿は純血悪魔が良いな」
何も今の情勢が解っていないのだ。この方達は…
「お言葉ですが、ライザー君はシュウ君の眷属です。うちのリアスも僕もシュウ君の眷属ですよ。『王』を侮辱した者の言う事を、眷属がきくとお思いですか?」
「なに??どういうことだ、サーゼクス。何故、魔王や『王』が一介の人間の眷属になるのだ??いや、なれるのだ?」
シュウ君の価値に気づいていない父上。
「彼は一介の人間では無いです、父上。冥界での立場は、アジュカ・ベルゼブブの養子です」
「ま…さか?」
「本当です。大公殿に確認されても良いです。たぶん、ここを出て、今はアジュカの城にいるんだと思います。あそこには、彼の部屋も有りますからね」
「まことか?」
「魔王たるもの、ウソはつきません」
「…」
黙っている父上を、母上が窘める。
「ねぇ、あなた!!彼を呼び戻しましょうよ。眷属になっているのなら、縁を切れないでしょうね。リアスの心が壊れきる前に、さぁ、早く!!」
母上もリアスの心が心配のようだった。
---シュウ---
リアスを置いて来てしまったことを、後悔している。感情の起伏が激しい子だ。心が壊れたら何をするか、自分自身を滅するかもしれない。嫌な予感ばかりが、頭に浮かぶ。高飛車で強気な発言をするけど、実際は寂しがり屋で、弱い子である。膨れあがり始めた不安は、膨れあがる一方である。居ても立ってもいられなくなってきた。
僕は白音と黒歌を連れてグレモリー邸に向かった。
グレモリー邸に着くや、物陰に隠れて気配を殺す。白音、黒歌の索敵能力で、リアスの部屋を見つけた。僕は、その部屋に忍び込み、泣き疲れて眠っている彼女を、不思議な袋に詰め込んだ。そして部屋を脱出して、黒歌達と社長の城に戻った。
僕の部屋に行き、袋からリアスを取り出す。彼女を抱き抱えて、僕のベッドの上に寝かせる。そして、僕はみんなの居るリビングへと戻ると、オーフィスとアポと白音はお菓子を食べまくっている。
「黒歌、白音、ありがとう。作戦は無事成功だ」
「「にゃん♪」」
雑談したり、お菓子を喰ったり、ゲームしたりと、まったりしていると、本館とここ別館の連絡用のインターフォンが鳴った。執事さんだ。
「旦那様が戻られました」
「了解しました。これから伺います。」
僕は、社長のお部屋に転移した。
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社長に会うと、まずグレモリー邸での顛末を説明した。社長は黙って聞いている。話し終えると、開口一番、
「それで、彼女を誘拐したのかな?」
「結果的に、誘拐になりますねぇ」
「確かに、君の考えは正解だと思う。彼女は滅の力を持っているから、精神不安定になると自分自身を消しさるだろうね。でも、誘拐はどうかな。もっと方法は無かったの?」
考え込む僕。社長の言う事もわかるけど、もう実行しちゃったしなぁ…
「わかりました。これからグレモリー邸に行って事情を話して来ます」
「一人でかい?」
「ヘタに仲間がいるより、一人の方が良いでしょう。」
「穏便に話して来なさい」
「わかりました」
僕は一人で、グレモリー邸へ転移した。
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グレモリー邸に着いて、門番の者に、グレモリー卿に会いたい旨を伝えた。直ぐに、門番の者は取り次いでくれた。僕は屋敷の中に通された。連れて行かれたのは、グレモリー卿の執務室のようだ。
「どの面を下げて、戻って来たのだ?」
どの面?って、僕の顔が見えないのかな?
「リアスをあのままにしておくと危険なので、安全な場所に移しました。それのご報告です」
「どういう意味だ?安全な場所ってどこだ?」
「リアスが自分で自分を滅さないように保護しました。僕の義父の城にです」
「親の許可無しにか?そもそも、どうやって忍び込めた。結界を張ってあるんだが」
「リアスを追い詰めた親の許可は必要無いと判断しました。忍び込んだ方法は言えません」
「おい、衛兵!!この者を牢屋にぶち込んでおけ。リアスの誘拐の犯人だから」
「え?それは…」
衛兵の者達が戸惑っている。
「貴様は、主人の命令を聞けないのか」
「わかりました」
僕は、社長に言われた通り、穏便に事を運ぶ為に、抵抗はしないで、牢屋にぶち込まれた。
「ご主人様より、これを差し上げろと…」
僕は受け取った。聖なるナイフだ…
「ご主人様が、日本の伝統に沿って、償えと…」
うん?腹切りか?あぁ、あのオヤジの考えそうなことだ。悪魔への拷問に、この聖なるナイフを使っていたのだろうな。
「わかった。見ていてくれ」
僕は、聖なるナイフで腹を切り裂いた…はずだったが、あれ?傷すらつかなかった。
「あっ、聖なる物は効かないんだ。どうしよう、衛兵さん」
「いえ、私はあなたが潔く腹切りをしたところを見ました。結果までは知りません。すみません。ご主人様には逆らえなくて…もし、無事にここを出られたら、リアスお嬢様のことをよろしくお願いします」
衛兵さんは泣いている。僕は癒やしのオーラを衛兵さんに投げた。
「泣かないでください。貴方は、ご自分に課せられた仕事を、全うしただけですから。早くグレモリー卿へ報告に行って下さい」
衛兵さんは僕に一礼して、走り去って行く。衛兵さんの持っていたランタンだけが光源だったのだが、彼がいなくなったことで、灯りの類いが一切無い地下牢は、僕を暗闇の世界に誘っていく。