---アジュカ---
シュウ君が出かけて2時間くらい経つ。何も連絡が無い。なにやら、嫌な予感がする。僕が「穏便に話して」なんて言ったから、あの子は、やられ放題やられているのでは?万が一…冥界は半日で廃墟になるだろうな。不安にかられてばかりでは、何も解決しない。意を決して、行動する。まず、サーゼクスに連絡を取ってみた。
「夜分にすまない」
「アジュカ、どうしたんだ?こんな時間に、君からかかってくるとは珍しいな」
「シュウ君が、そちらを訪ねて、もう2時間経つけど、彼は今どうしているんだい」
「僕は会っていないけど、ちょっと待って……グレイフィア、シュウ君がうちに来ているみたいなんだけど、見かけたかい?……え?そうなの。あ、アジュカ、グレイフィアも見かけていないみたいだ。本当にうちに来たのかい」
僕は経緯を話した。
「君に言われたのなら、来たはずだね。正直な子だし。ちょっと、使用人に訊いて、連絡し直すよ」
「そうしてくれるか?夜明け前までに、彼をうちに戻さないとまずいぞ。抑えられる限り抑えてみるけど、僕の力をもっても、30分も保たない気がする」
いや、ヘタすれば、一撃かもしれない…脳裏には、最悪な光景ばかり浮かぶ。
「わかっている。フェニックス家の二の舞いはゴメンだ。じゃぁ、後で」
---サーゼクス---
会いに来たとすれば、父上か。父上の部屋に行くと、もう寝ていて会えない。じゃぁ、誰に会っていたのか??グレイフィアからの連絡によると、門番はシュウ君を屋敷に入れたそうだけど、帰るのは見ていないという。やはり、この屋敷内のどこかにいるはずだ。何かが引っ掛かる。用もなく他の部屋にいるとは思えない。絶対に、父上には会っているはずだ。会ったらどうなるか?トラブルになる可能性大だ。父上もシュウ君も互いにキレていた。その場合、どうする。考えるのだ、サーゼクスよ…そうだ!衛兵を呼ぶはずだ。父上では勝てない相手だし。グレイフィアに、衛兵の聞き取りをしてもらうように頼んだ。
---グレイフィア---
サーゼクスより、衛兵への聞き取り調査を頼まれた。衛兵達の控室に向かう。
「今夜、旦那様に呼ばれた衛兵の方は、いらっしゃいますか?」
オドオド手を挙げる衛兵が1名。
「旦那様に何を命じられましたか?」
「リアスお嬢様を誘拐した犯人を、牢屋にぶち込みました。そして、腹切りの刑を命じられ、執行しました」
衛兵の目には涙。嫌々、旦那様の命令に従ったようだ。あれ?
「ちょっと待て!リアスお嬢様は誘拐されたの?」
「そのように、旦那様より聞きました」
「その者の名前は?」
「すみません。旦那様に口止めされているので、これ以上は、私の口から言えません。すみません」
衛兵は泣いていた。理不尽だとわかっていても、旦那様の命令は絶対なのだ。私は、サーゼクスへ連絡をした。
「サーゼクス、シュウ君は牢屋に入れられて、腹切りの刑だそうよ。鍵は旦那様様がお持ちだわ」
「困ったなぁ。シュウ君を夜明け前に無事に返さないと、冥界が…」
「わかった。牢破りしてみるわ」
「えっ?」
私は、サーゼクスとの連絡に使っていた魔法陣を閉じ、移動を開始した。地下の牢屋に行くドアの前に辿り着くと、鍵を魔法で……あぁ~、壊れない。仕方無いなぁ、ドアの隣の壁を魔法で壊した。そして、地下牢へと降りていく。そして、数ある牢の中からシュウ君の入っている牢を探し出した。
「シュウ君!!」
呼んだけど返事がない。最悪の事態が頭をよぎる。そのとき後ろに人の気配が。振り返ると総司がいた。
「大丈夫、生きているよ。問題は、どうやって出すかだが」
ここの牢は頑丈で、魔法でも武器でも壊せない。鍵が無いと出られないのだ。どうするかを思案していると、総司は刀を軽く振って、丸みをおびた斬撃をシュウ君目がけて放った。
「シュウ君、目覚めなさい」
飛ぶ斬撃がシュウくんの身体に当たり、彼がモゾモゾ動き出した。意識を取り戻したようだ。
「あ。沖田さん、グレイフィアさん。どうしてここに?あっ、腹切りしようと思ったんだけど、聖なるナイフで、僕は傷つかなかったよ。どうしよう?どうすれば、腹切り出来るかな?」
「シュウ君、腹切りはしなくて良いから、アジュカ様の所に帰れるかな?」
刺激しない為か、総司が暖かいオーラを纏いながら、シュウ君に指示を出した。
「たぶん、帰れると思います」
「そうか。アジュカ様が君に用があるって事なので、アジュカ様の所に、すぐに帰って欲しいのだけど、大丈夫かな?」
「沖田さん、わかりました。すぐに帰ります」
シュウ君は、呪文を唱えると、姿が消えた。
「しかし、旦那様もひどいですね。シュウ君に腹切りを命じるとは…一応、僕の愛弟子なんですけど…」
私は総司の言葉に頷いた。
---アジュカ---
突然、シュウ君が目の前に現れた。
「社長、沖田さんに聞いたのですが、ご用件は何ですか?」
くったくのない笑顔。シュウ君、良かった無事だったんだね。僕はシュウ君に抱きついた。彼の無事な姿を抱き締めると、涙が出てきた。前に涙を流したのは、何年いや何十年いや何百年前だろうか。とても久しぶり涙を流した。
「いや、君の帰りが遅いから、心配しちゃってね。無事なら良いんだよ」
「社長に言われた通り、穏便に……手を出さなかったです」
あぁ、やっぱり、そういう事なのだね。理不尽な目に遭わしちゃったみたいだ。一緒に行けば良かった。
「明日、リアス君を連れて、僕も一緒に行くから、もう一度、グレモリー邸に行こう。いいね」
「でも、僕を誘拐犯だって言われて牢屋に入れたんですよ。その上、腹切りを命じられたし。あっ、牢脱けもしちゃったよ…」
腹切り?なんで?そこまで、グレモリー卿はキレているのか?そんな場所に、シュウ君を一人で行かしたのか、僕は後悔…これも久しぶりにした気がする。
「君は僕の息子なんだから。僕が護るよ。この冥界にいる間は全力でね」
「ありがとうございます、しゃ…いいや、お父さん♪」
初めて僕の事を、『お父さん』って呼んでくれた。ありがとう、シュウ君。君が息子で本当に良かった。
---シュウ---
朝まで、少し仮眠。隣にはリアス。服を着ての添い寝って、初めてじゃないかな?コイツは、基本的に全裸でないと寝られないヤツだし。
昨夜はコイツのおかげでエラい目に遭ったというのに、幸せそうに寝ている。そんなリアスの額に、お約束のデコピンを一発!
パシッ!
「痛っ…」
額を撫でながら、目覚めるリアス。
「おはよう、リアス」
「あっ、おはよう…って、もう少し優しく起こせないの?毎回、毎回、デコピンかよ!」
寝ぼけていた顔が、怒りでヒートアップして、いつものリアスの顔になっていく。
「起こせません。嫌なら、別の相手を探しなさい」
「イヂワル…嫌じゃないよ。でも優しく起こしてね」
僕の言葉で一気に弱々しい表情になっていく。感情がジェットコースターだよな。僕はそんなリアスの百面相が好きではある。デコピンで赤くなった彼女の額に、軽く口づけをした。
「なんで、額?他にもする処あるでしょ?」
そして、怒り顔。
「嫌なら、もうしません」
「嫌じゃないって。だから、もっと一杯してね♪」
そして、凹み顔からの笑顔…日常の風景に戻ったようだ…でも、やらないといけないことがある。
「リアス、午前中にグレモリー邸に、乗り込むぞ」
「なんで?あれ?ここって、うちじゃないの?」
不思議そうな顔をするリアス。昨夜の事を忘れたのか?そもそも、ここをグレモリー邸だと思っているのか?
「僕は、リアスをグレモリー邸から誘拐した事になっているし、牢脱けもしちゃったし、昨晩は大変だったんだぞ。お前が幸せそうに寝ている間にね!」
「うっ…そう言えば…そんなことが…ごめんね。私のせいだよね。本当にごめんなさい」
ベッドの上で、土下座。そういう場所でされてもなぁ。まぁ、リアスだから良いっか♪
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グレモリー邸前。お父さんと僕、リアス、オーフィス、アポが立っている。お父さんが門番に用件を伝えて、通してもらう。グレモリー邸に入っていった。
グレモリー卿が、僕を見るなり、
「貴様、牢から脱走した上、腹切りは、どうしたのだ?衛兵はおるか、こいつを牢へ入れて、すぐに処刑しろ!」
大声で怒鳴るリアスの父親。
「ちょっと、待ってください。僕の息子を牢へ入れて、切腹ですか?」
お父さんが口を挟むと、グレモリー卿の顔色が青ざめた。
「アジュカ様の息子?どういうことですか?」
「シュウ君は、僕の養子、息子です」
「はぁ?ただの人間風情ですぞ。アジュカ様の眼鏡は曇りましたかな」
僕の方を軽蔑した目つきで見てきた。
「それがどうしましたか?グレモリー卿。優秀な人材は種族は関係無いと思いますよ。この度のあなたの取った行為、彼の親として看過できません。あなたは、私の息子を傷つけるだけでなく、息子の婚約者をも傷つけましたね。どう決着をつけるおつもりですか?」
お父さんは冷静な口調だけど、オーラを纏って、プレッシャーをかけている。それに伴い、グレモリー卿は大汗を流し始めた。
「父上、やりかたが理不尽ですよ。牢に入れて、刑を命じて、寝ちゃうってどういうことですか?あのまま朝を迎えていたら、冥界は消えていたかもしれないのに」
「どういうことだ。サーゼクスよ」
「アガレス邸の崩壊、あれ、シュウ君の仲間がやったんですよ。それも一瞬で」
「頑強な屋敷を一瞬で?有り得ない。サーゼクスよ、幻でも見たんでは無いのか?」
「この場で実演しましょうか?卑しい悪魔さん」
穏便にと銘じられた僕の代わりに、アポがキレた。
「失礼な言い方だな。君は誰だ?」
「私は、真なる赤龍神帝と呼ばれる存在だ」
「まさか、そんなはずは……さすが人間風情の仲間だ。ホラ吹きが多いようだな」
アポは僕を見たけど、ダメだよここは。
「お前 嫌い 嫌なやつ!」
「また、失礼な輩だな、今度は何って言うつもりだい。」
「我 オーフィス」
「有り得ないな。グレートレッドとオーフィスが、一緒にいるなんて前代未聞だよ。嘘ってバレる嘘を吐くあたり、人間って愚かな生き物だな。ははは」
グレモリー卿は鼻で笑っているようだ。
ごめんなさい。お兄さん、お父さん、リアス、グレイフィアさん。本当の事を言っているアポとオーフィスを嘘つき呼ばわりなんて、許せないです。すみません。僕は念話で、みんなにメッセージを送った上で、
「そこのクソオヤジ!僕の事をバカにするなら、我慢できるけどなぁ。仲間をバカにするのは許せない。アポとオーフィスに、今すぐに謝れ!!」
僕の周りに怒りのオーラが発生した。それに呼応して、アポ、オーフィスのオーラも増大していった。リアスは…何も出来ない自分にいらだって…また半狂乱な状態になり、滅の力を纏い始めた。
「シュウ君…限界だなぁ。僕も限界だよ。グレモリー卿、あなたを見損ないました。サーゼクス、全員を避難させろ!!」
お父さんがお兄さん達に警告を出したが、
「シュウ君の気持ちは、痛い程解るけど、ここは僕達の家だ、僕達は戦うよ。良いね、シュウ君。グレイフィア、仮想フィールドにシュウ君達と僕の眷属を転移だ。早くしろ!」
それより、早くリアスを保護してよ~滅の力を纏っているんだけど…お兄さん達もヒートアップしていて、リアスの異変に気づいていないようだ。
「はい。既に用意してあります。すぐに転移します」
僕達は仮想フィールドへと強制転移した.