※この作品はR-18です。

神器なき男 (再編集版)   作:もっち~!

88 / 260
1-2 シュウ・ヨハネの章
あいつをさがせ


 

 

長い年月を耐え抜いてきた祠。今にも壊れそうな祠の周りを人々が囲んでいた。100年前に、この祠に身を置いた者を迎え入れる為に…封印する為に置かれた、呪文が幾重にも刻まれた重い石をどかす。

 

祠の内部に入ると、床には、魔法陣が刻まれた大きな石が、蓋のように置かれていた。それも取り除く。すると、そこには穴が出現して、下へと降りる階段があった。

 

トーチに火をつけて下に降りていく。穴の底には、四角い石の箱が有り、それを囲むように蝋燭が6本燭台に設置されている。術者らしき者が、トーチの火を小さなトーチに移し、燭台に有る蝋燭を次々に灯していく。

 

『この者 無限と夢幻の体現者なり 限りある夢を見ようとも それは無であり幻である この者の魂よ 霧厳を体現せよ』

 

術者は術を唱えた。

 

石の箱が光の粒子に分解され、それは霧のようなモヤのような物へと変化していく。やがて、それは人の形へと形成されていく。光の粒子が総て消えると、一人の者がその場に立っていた。

 

 

 

---リアス---

 

今、はぐれ悪魔を追っている。イッセー、小猫、朱乃と私で、廃墟の館に追い込んだ。さて、どうしよう。館の外観からすると、部屋数は多そうだし、隠れる場所も多いみたいだ。ツーマンセル(二人一組)で動くかな。イッセーと小猫、私と朱乃で館へと踏み入る。私は滅の力を具現化して剣を手にした。私達は1階、イッセー達は2階を捜索することにする。恐る恐る部屋を捜索していると、大広間の方から音がする。急いで向かうと、そこには、灰化していく途中のはぐれ悪魔と見覚えのある人物がいた。私達が近づくと、見覚えのある人物は館を後にしようとしていた。

 

「シュウ!!」

 

大声で叫ぶ私。その人物は振り返る。でも彼の視線は…私ではなくて、小猫を見ている。彼は静かに小猫に近づいて、彼女の頭を撫でながら言葉を吐いた。

 

「白音、久しぶり♪」

 

そう一言言うと、彼は館を後にしていった。

 

驚きのあまり、小猫はきょとんとしている。しかし、イッセーが反応してくれて、直ぐに彼の後を追ってくれた。自分でわからなかったけど、泣き崩れている私を朱乃が支えてくれていた。

 

 

 

---イッセー---

 

あれは確かにシュウだ。小猫ちゃんを、白音って呼んでいたもんな。シュウが走り去った方向へ走っていたが、前方にいたはずのシュウの姿が無い。あれ?って思った、その時、背中に激痛が走った。後ろを振り向くとシュウがいた。

 

「シュウ?シュウだろ?」

 

あいつに尋ねる俺。

 

「君は誰だい?見覚えが無いけど」

 

シュウにしては、表情が穏やかである。違うのか?

 

「俺だよ。イッセーだよ。小学校の時の親友のさぁ」

 

「すまん。思い出せない」

 

そういって、俺を置いてどこかに行こうとしている。ドライグ、力を貸してくれ!

 

『バランスブレイーカー(禁手化)』

 

ドライグは俺の想いに反応してくれ、俺は赤龍帝の鎧を装備して、アイツの後を追いかける。

 

「待てよ!思い出せよ!お前を待っている人達がいるんだぞ!!」

 

「待っている?」

 

シュウの歩みが止まった。シュウが振り返ると同時に、いきなり俺は後方へ飛ばされ、壁にめり込まされた。直ぐにダメージをチェックするが、多大なダメージを負っているなぁ。おいおぃ…ドライグの鎧がボロボロだよ。なんだよ、この威力は…

 

地面に倒れている俺の横を小猫ちゃんが、走り抜けていく。

 

 

 

---白音---

 

「待って、お兄様!」

 

シュウ兄様は立ち止まり、私の方を振り返り、笑顔で私の頭を優しく撫でてくれる。このオーラは、間違い無いお兄様だ。

 

「ごめんな。まだ記憶がぼやっとしていて。でも、白音と黒歌とオーフィスの事は覚えている」

 

「家に一緒に帰りましょう」

 

お兄様の優しい瞳を見ながら、帰宅を促した。

 

「なんか追われているんだ。だから、記憶に残っている白音達以外は、信用できない。白音から、赤い鎧の人に謝っておいてくれないか。ドラゴンの気配を感じて、反射的に攻撃しちゃったよ。ごめんな」

 

お兄様は、その場から転移して、どこかへ行ってしまった。

 

 

 

---リアス---

 

家に帰って、みんなにシュウの事を話した。全員喜んだけど、記憶が無いことに関しては、私同様に涙する者もいた。

 

「赤龍帝の鎧状態のイッセーを、吹っ飛ばした上に鎧が半壊しているって、威力ある攻撃よね」

 

「魔法だと思うんですが、詠唱も魔法陣もなかったです。手の平が開いたと思ったら、壁にめり込んでいました」

 

シュウがいない間に、イッセーはだいぶタフになってきたよ。壁にめり込んでも会話出来ているし。

 

「でも、誰に追われているんでしょうか?」

 

「シュウに、ドラゴンの気配を感じて、反射的に攻撃って、言われたのよね?」

 

彼と会話した小猫に訊いた。

 

「そうです」

 

小猫に話したことは本当だろう。小猫に嘘を吐く理由が無いから。

 

「最上位クラスは、ここにいる以外はシュウが持っているよ。それ以外ってことだよね?」

 

とは、アポ。

 

「ここにいるドラゴンで、シュウを追った覚えのある者はいる?」

 

誰も反応しない。いないみたい。

 

「ここにいないで、しつこく追いそうなのは邪龍のどれかだよ。アザゼル、神器になっている邪龍っているかな?」

 

アポはアザゼルに問うた。

 

「ヴリトラと八岐大蛇」

 

「では、そのどちらかの所有者が、追っている可能性が大になるね」

 

「ヴリトラの所有者はソーナの眷属の匙だ。ソーナ、訊いてみてくれるか?」

 

アザゼルがソーナに指示を出した。

 

「はい」

 

ソーナは会話用魔法陣を開いて、匙に繋いだ。

 

「匙、シュウ君に何かしなかった?……えっ?なんで、勝手にそんなことしたの?……あの二人の復讐って……私に報告しないさい……そうよ、私の婚約者なんだから、攻撃しないで!」

 

ソーナは魔法陣を閉じた。

 

「巡と由良の復讐だって……たまたま見つけて、あの二人と同級生の私の眷属が集中攻撃したみたい…」

 

 

 

---ソーナ---

 

また、私の眷属のせいで、彼を…シュウ君を追い込んでいるみたいだ。そんなことを考えていると、突然、念話が聞こえてきた。

 

『ソーナ、お前のせいではない。背負うなよ』

 

えっ!シュウくんの声だ。どこにいるの?念話は続く。

 

『みんなに黙って、会いに来てくれないか?イッセーを攻撃したのは、分身した僕だ。記憶が曖昧な時に攻撃されたので、記憶が曖昧なままなんだ。本体の僕は、ほぼ記憶が戻っている』

 

『どこへ行けばいいの?』

 

『旧校舎、ギャスパーの部屋。今、ギャスパーと一緒だ』

 

『わかったわ』

 

リアスの方を見て、

 

「リアス、私は今から、私の眷属を止めてくるわ。」

 

そう言って、立ち上がり玄関に向かうと、椿姫とヴァイラが付いて来た。

 

「私達も行くよ。良いでしょ?」

 

ヴァイラの眼力に負けて、了承してしまった。ごめん、シュウ君、約束が守れない…

 

 

 

---ギャスパー---

 

一昨日、ここに来て居着いてしまったシュウさん。良いのだろうか?みんなに知らせなくても。なんか、誰かに追われているみたいで、匿ってくれって。

 

シュウさんは、昼寝を棺桶で僕と添い寝している。永い間、光の当たらない場所に居たらしく、暗闇が落ち着くそうで…でもね、僕専用の棺桶は小さめで、二人では狭いんですけど…ぐっすん。安眠できない…

 

でも夜中には、話相手になってくれるので、嬉しいですよ。シュウさん♪

 

 

 

---ソーナ---

 

3人で、夜の旧校舎に来てしまった。怒られるかな?いやきっと、約束を破ったんだもの、怒られるよね。目の前に魔法陣が描かれている扉がある。ノックをするとドアが少し開いた。そのドアから、私達は室内に入ると、目の前には…

 

「シュウ君!」

 

私達は彼の元へと、走り寄った。

 

「ごめんな、ソーナ、ヴァイラ、椿姫。ずっと、暗闇に居たもんだから、明るい場所にいるとつらいし、疲れるんだよ。ここなら、昼間はギャスパーと寝ていても、見つからないし」

 

笑顔で楽しそうに話すシュウ君。本当に帰ってきたんだ。

 

「イッセーを倒したシュウ君って?」

 

「僕の分身。ソーナには念話で話したけど、記憶が戻る前に襲われて、とっさに分身の術を使っちゃったんだ」

 

「なるほど」

 

「向こうにいた時はありがとう。ヴァイラ、椿姫。みんなと、再度やっていけそうだよ」

 

「100年かかって、何を会得したの?」

 

とは、椿姫。

 

「無限なる力と夢幻なる力、そして霧厳なる色々とチートな能力とか…後は、今は言えないかな♪」

 

「え?本当に?」

 

「代償は大きいけどね。もう人間で無くなっちゃたよ♪」

 

一瞬、哀しそうな表情をするシュウ君。

 

「ドラゴンにでもなったの?」

 

「違うよ。鍵だよ」

 

「???」

 

「きっと彼らは、これが欲しかったんだと思う。最後の一手にする為に」

 

遠くを見つめるシュウ君。

 

「なんの鍵?」

 

彼の表情がたまらなく感じ、質問した私。

 

「獣門を開ける鍵だよ」

 

「獣門って?」

 

「ソーナ達は質問ばかりだね。1回だけしか使わない鍵だよ」

 

「ごめんなさい。質問ばかりで」

 

シュウ君の顔が険しくなった。質問責めに嫌気が差したのかな?

 

「ここに来る間、誰かに見られた?」

 

「見られていないと思うけど」

 

「そっか。ギャスパー、彼女達のことを頼む。護ってあげてね」

 

そう言うと、扉から室内を出て行ってしまった。私達も後を追うが、扉が開かない。

 

「たぶん、隔離結界を発動されたんだと思います。この部屋は、現在隔離された状態です」

 

ギャスパー君が私達に告げた。

 

 

 

---シュウ---

 

はぁ、戦いたくないのに。無抵抗でやられればいいのかな?魂だけでも、鍵にはなれるみたいだし。まぁ、最悪、アレができるし。

 

僕の周りを複数の人影が囲む。

 

「やぁ、巴柄、翼紗、元気だったか?」

 

囲んでいる者達は、鋭く僕を睨み、殺気立っている。

 

「会長と旧校舎で、何をしていたの?」

 

翼紗が訊いてきた。

 

「プライベートに関するご質問には、お答えできません」

 

「会長に何をして、婚約したのよ??」

 

今度は、巴柄が聞いてきたけど

 

「お答えできません」

 

「由良さんと巡さんに暴行をして停学しているくせに、ソーナ会長とデート?ありえない。ソーナ会長がそんなことするはずない。おまえ妖しげな術で操っているんじゃないのか?」

 

更に匙が…でもね、

 

「お答えできません」

 

匙から、黒いラインが伸びてきて僕を縛る。

 

「やっと捕まえたぜ。これで身動きは取れない。何笑っているんだ?こんなに不利な状況で笑えるなんて、おまえはおかしい」

 

不利?どこが?まぁ、前回はこちらに非があったので、今回は無抵抗でいこう。いきなり月光が煌めく一線の輝きを見た。うん?なんか目が回る…

 

 

 

---匙---

 

こんなに不利なのに笑うとは、不敵なやつだ。攻撃しても受け流す気なのかもしれない。巡さんが刀を抜いて、横一線に斬る。あいつのことだ、避け…え?避けないの??首切断しちゃってますが…僕はラインを急いで解いた。

 

「なんで?巡さん、殺しちゃまずいでしょ?」

 

「避けると思ったのに、避けることをあきらめたみたい…」

 

 

 

---ソーナ---

 

外で何かが落ちる音がすると、急に扉が開いた。みんなで外へ向かうと、私の眷属の輪の中心にシュウ君が…首を斬り落とされたシュウ君がいた…

 

私の中に殺意が生まれた気がする。無意識のうちに、シュウ君に貰った氷の剣を握りしめている。

 

「誰が、こんなことをしたのよ!!」

 

私は大声で叫んだ。

 

刀を抜いているあの子が、巡がやったのね。彼女に近づこうとして、誰かに押さえられる。身体を見ると、匙の黒いラインが私を縛っている。

 

「目を覚ましてください。ソーナ会長はソイツに、妖しげな術で操られていただけなんですから」

 

匙…なんで解ってくれないの?

 

「あなたたちの方こそ。誰かに洗脳されたみたいだわ。私の大事な人を2度も…許せない!」

 

怒りに飲まれ、自分の眷属への殺意で塗れた私達に、念話が飛んでくる。シュウ君からだ。

 

『怒りに飲み込まれるな!僕の好きなソーナの顔で無くなるぞ!』

 

だって…

 

『生あるものは、いつか壊れるんだよ』

 

再会したばかりで…

 

『大丈夫!!ソーナ、僕の頭と身体を、ギャスパーの部屋に移動させてくれ。椿姫、ヴァイラも手伝ってね』

 

ヴァイラ達にも念話が届いていたようで、私達三人は、急いで彼を回収したが、私の眷属達に取り囲まれた。匙のラインもつながれたままだし。

 

「それを持ってどこへ?復活の儀式でもするんですか?」

 

その時、空から声がした。

 

「私の愛しい人を傷つける行為、万死に値するわ!」

 

リアス…援軍が来てくれた。リアスは降り立つと、滅の力を具現化した剣で、ラインを切断してくれた。

 

「ここは引き受けた。早く行って!!」

 

私達は急いで、ギャスパー君の部屋に向かった。部屋に着くと

 

『ギャスパーの棺桶に入れて、24時間経ったら開けてね♪』

 

言われた通り、棺桶にシュウ君の頭部と身体を入れて閉めた。

 

 

 

---リアス---

 

私の眷属、そして彼の眷属が、ソーナの眷属を取り囲む。

 

「妖しげな術を喰らっているのは彼らだ。嫉妬心を利用されたんだな」

 

アポが状況を解説してくれた。

 

「取り除く方法は?」

 

「精神の浄化かな。出来るのはシュウだけかな」

 

アポの言葉を受けるように、シュウからの念話が、私達に届く。

 

『白音、僕の分身が近くにいる。ソイツに浄化してもらってくれ!』

 

小猫は索敵モードの猫耳をピコピコ動かして、彼の分身を探す…探し当てたみたいで、そこへ向かう。

 

「お兄様、彼らの精神を浄化してください。お願いします」

 

小猫がシュウの分身体に、頭を下げてお願いをした。

 

「わかった」

 

シュウの分身体が、何やら呪文を唱えてソーナの眷属に放つと、彼らはその場に倒れ込んだ。その直後、彼の分身体も、煙に包まれて消えていった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。