---リアス---
彼を棺桶に入れてから24時間経った。棺桶を取り囲むように、私、ソーナ、ヴァイラ、ギャスパー、小猫が見守っている。意を決して、私は蓋を開いた。聞こえてきたのは、寝息?こっ、こ、こいつ、私達の心配を余所に爆睡している…でも、首はちゃんと繋がっているようだった。私たちの気を感じたのか、彼は目を覚ました。
「あ、おはよう♪」
「ごめんなさい」
彼の声と前後して、ソーナが謝罪した。目を真っ赤に腫らして、頭を下げているソーナの後頭部を、優しく撫でている彼。
「気にするな。僕は笑顔のソーナが好きだからさ。眷属がやんちゃで、ちょっとアレだったけど。こうして、元通りになったのだからさ」
そういって、自分の首をさすっている彼。
「再生能力が有るんですか?」
ギャスパーが彼に質問した。
「まぁね。人間を辞めて再生能力のある魔獣になったから」
「なんで?」
人間を辞めた?私は理由を問いただす。
「猛攻をくらっても、ソロで突っ込めるでしょ?」
あっさりと告白する彼。
「ソロ?なんで?私が守護する。一人では行かせないよ」
哀しそう目をするヴァイラ。
「片道切符な戦いに、大切なヴァイラを連れて行けないよ」
ヴァイラの頭に手をのせ、彼女の顔を覗き込む彼。
「片道切符って?どこかに特攻をかけるの?」
私の問いかけに、困ったような顔する彼。
「ごめん、リアス達は、僕にとって大切な人達だから、巻き込む訳にいかないんだ。それに僕一人では行かないから」
彼は棺桶から抜けて、窓から夜景を見つめた。
「さぁ、帰ろうよ!僕達の家に♪」
---アザゼル---
ボウズが、俺の部屋を訪ねて来て、サーゼクスを呼べという。俺はボウズの希望を叶えてやった。
「で、用件は何だ?」
「これから話すことは、ここにいるおっさんとお兄さんだけの胸の内に、しまっておいて欲しいだんだけど」
サーゼクスは、いつになくボウズからの重い気を感じ、頷いたみたいだ。
「わかった。約束する」
いつになく真剣な表情のボウズ。
「来年、ある場所へ攻撃を仕掛けます。その際、おっさんとお兄さんの勢力は関わらないで欲しい」
サーゼクスも、俺も驚いた。こいつ、何を言い出しているんだ?
「シュウ君、ある場所とは?」
サーゼクスが訊いた。
「第四天と第七天」
「お、お前…天界のか…4と7かぁ…とうとう、動くんだなぁ」
薄々こうなる事を予感していましたよ。サマエル様…
「アザゼル、どういうことだぁ?天界にどうして攻撃をするんだね?シュウ君」
事情を知らないサーゼクスが、プチパニックを起こしたみたいだ。
「天界がひた隠しにしてきた、汚点の精算ってとこじゃないのか」
ボウズの目を見る。初めて会った時と、同じ目をしてやがる。邪な色にまったく染まっていない、無垢な瞳。サマエル様、なぜ、この子を連れて行ってしまうんですか??
「僕、100年間祠に籠もった時に、ビジョンを見たんだ。天界で行われてきた数々の人に言えないビジョンをね。だから、仲間と誓った。エデンの園の再生と、天界システムの改修をすることに、協力することにしたんだよ」
「エデンの園の再生?天界システムの改修?そんなことを、シュウ君に出来るのか?」
サーゼクスよ、落ち着けよ。
「僕には出来ないよ。でも、元々それをしていた仲間がいるから、僕達はその仲間を護りつつ、目的を遂げる為に援護するんです。」
「君の仲間?リアスもか??」
サーゼクスの顔から血の気が失せていく。
「まさか?僕の大切な人達は巻き込みません。これは、先の戦争に関わった仲間と共に行います。なので、お兄さん、おっさんの勢力は手を出さないでください」
疑問が1つ…
「ボウズ、何で来年なんだ?」
「それは僕のわがままです。このまま、みんなと別れるのはちょっとねぇ…」
ボウズは目に一杯の涙を溜めて、泣き崩れそうなのを踏ん張っているようだ。そうか、消えるのか…でも、何でボウズなんだ?!
「みんなと想い出を作る時間が欲しかった。僕と共に、行動してくれた事のお礼をしたかった。だから、サマエルに頼んで、時期を少し延ばしてもらったんだよ」
ボウズは涙を流して…手で顔を覆い、声を出さずに泣いていた。その時、大天使サマエル様が出現した。
「もう、シュウは話せる状況にないので、私がこの先を話そう」
「なんで、こんなまだこれからってヤツを、連れて行くんですか?」
俺も涙が出かかっている。こんな結末は…
「彼は天界の最終兵器の鍵だから。彼がいないと、我々の戦力だけでは、攻め込めない」
「まさか?トライヘキサ?あれの封印を解くんですか?」
「あの封印の解き方が解ったんですか?」
このタイミングで、サーゼクスが口を挟んできた。
「私がした封印だ。解る解らないの問題ではない。悪魔の王よ」
「あなたが??」
「神の右腕だった方だ。神のやらない仕事は、サマエル様がこなしていた。でもなんで彼なんですか?」
俺の疑問の答えを聞きたい。次に知恵の精霊が現れた。
「私が昔、ビジョンを見せて、鍵を託した一族の末裔だからだ」
「昔、見せた?あぁ~!確か、ボウズの本名って…」
ボウズ、すまん。気づくのが遅かったよ。
「あなた方が天界に攻め込んだら、天界は無くなるのですか?」
俺が感慨に浸っている間に、サーゼクスが質問をしている。
「無くならない。過去を清算して新たな天界を創る。その為の天界システムの改修だ。この改修によって、天使同士の交配では、堕天しない仕組みを入れる。神だけが天使を造るなんておかしいだろう?天使からも天使が生まれるようにする」
「知恵の果実も、善悪がわかるだけでなく、ほかの知恵も与えるようにする。命の樹も復活させる」
「昔はどんな仕組みだったんですか?」
サーゼクスが、次々に質問を投げていく。
「神は自分と同じ姿の家畜、人間を創造して、エデンの園に放牧。自分の気に入った人間だけ、別の区画で飼育していた。放牧されている人間は子羊の時代は可愛がられ、雌は神に抱かれ、天使を生んだ。大人になった羊は神の糧となり、魂は命の樹の栄養となり、天使と飼育されている人間に配られた。神は人間の女を抱いて、何も罰は無いのに、同じような行為をした、天使アザゼルは堕天使にされた。これって、おかしいでしょ?」
忘れていた昔のことを、サマエル様は覚えてくださっていた…
「ただ飼育されて、神の目の保養や性欲の捌け口にされていた人間を哀れに思い、おかしな行為をされていると気づかせる為に、紅い龍は知恵の果実を、神が大切にしていた人間達に食べさせた。私は紅い龍が悪い事をしたとは思えなかった。逆に、龍なのに情が深いなぁっと、感嘆させられたのだ。それなのに神はその紅い龍を抹消するという。だから、私はその龍を逃がしたのだ。そしてその結果、この様だよ」
一瞬、堕天使ドラゴンになられて、大天使に戻られたサマエル様。
「その事に抗議して、ルシファー様達は、天使の翼をもがれて、冥界にオトされたんですか??」
質問したサーゼクスの顔からは、完全に血の気が失せていた。
「そうだ。今回の作戦が成功したら、ルシファー達を天使として蘇らせて、昔の様に働いてもらおうと思っている。根の優しい天使達だったからなぁ」
そうだったな。俺達、下の者にも優しかった。
「この作戦には、どなたが参加されるんですか?」
「この件に所縁(ゆかり)のあるシュウの仲間だけだ」
「成功すれば、シュウ君は帰って来られますよね?」
「シュウ、リヴァイアサン、ベヒモス、ジズは消える運命だ」
「消える??」
「アイツを呼び起こす生け贄になる。彼らを食することで、本来の使命を呼び起こす」
「そんな…」
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そして、シュウの想い出造りが始まる。