バチカンを離れる日になった。破壊した聖剣を元通りにして、静養生活をした部屋を掃除した。聖女として忙しい日々を送っているアーシアが、訪ねて来てくれた。僕は彼女に、1枚の魔法陣が書いてある羊皮紙を手渡した。
「どうしようもない困難に遭遇したら、これに魔力を流しこんでね。僕達の家に転移出来るから」
「ありがとうございます。大切に…大事に持ち歩きます。もし、私が耐えられない問題に遭遇したら、使わせていただきます」
大切そうにしまうアーシア。
「いろいろ楽しい想い出をありがとう」
「こちらこそ、ありがとうございました」
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アーシアと入れ替えで、イリナとゼノヴィアが来た。
「お別れだね。日本に行ったら、かまってちょうだいね」
うっすら涙を浮かべるイリナ。
「あっ、イリナに言うのを忘れていた。僕達の家にイッセーも同居しているよ。イリナの初恋の相手で、ファーストキスを捧げた相手。添い寝も混浴もスキンシップも体験済みだったよな♪」
イヂワルっぽくいう僕。
「えぇぇぇ~!イッセー君と同居しているの?なんで??」
「僕の眷属だからね」
「眷属なのかぁ。いいなぁ~」
「うん?イリナは、男と添い寝を体験済みなのか。ファーストキスもかぁ。スキンシップだとぉぉぉ~負けた…」
項垂れているゼノヴィア。
「ゼノヴィア、男にしてあげようか?」
「男に?性転換もできるのか?」
僕の申し出に喰い付くゼノヴィア。
「出来るよ。実証済みだ。どうする?男になれば、デュランダルを抑え込めるんでないかい?」
「それも有りだけど、今はこのままでいいや。イリナのように、女としての喜びを経験したら、頼むよ」
女としての喜び?なんだろう??
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手荷物を持って、トスカが部屋にやって来た。
「ストラーダ様とクリスタルディ様は、別れるのがつらいそうなので、挨拶抜きだそうです」
「トスカは準備いいのかな?」
「はい♪」
「じゃぁ、帰ろうか」
僕達は僕達の家の前に転移した。うん?隣にまた新しいマンション?なんか嫌な予感がして、マンション名を見ると、『ハイツ サーゼクス』って、おいおい…
気を取り直して、僕は僕達の家の玄関のドアを開けた…
一瞬の静寂、その後、クラッカーが連発で鳴り響く。家の中でドラゴン花火をしているヤツもいるし。なんだ、この家…静かな処で静養していた僕は、カルチャーショックを受けた。
「「「おかえりなさい!!」」」
みんなが出迎えてくれた。が、僕の隣にいる女性に視線が移ると、
「この子、誰よ!」
紅髪が訊いてきた。
「リアス、お前には関係ないだろ?」
「まさか、静養先で口説かれましたね?」
ソーナに言われるとは心外だぞ!
「人聞きが悪いぞ。ソーナ、後でお仕置きな」
「私もお仕置き希望です」
手を挙げて発言してきた椿姫。
「椿姫よ、なんでだ??」
「スライムを貸してください」
恥ずかしそうに翼紗が…
「翼紗、スライムを卒業しろよ!」
「トスカ?トスカなのか??」
いきなり、木場がトスカに近づいた。
「僕だよ。イザイヤだよ。施設で一緒だった」
「えっ?イザイヤ?生きていたの?」
「あぁ」
二人は抱きしめあった。この二人って、知り合いなのか?感動の再会みたいだし。目の前の抱擁している二人を、静かに木場の部屋に転移させた。僕のしたことに驚かないみんな。
「ところで、リアス!隣のハイツサーゼクスってなんだ??」
久しぶりに見る、困った顔のリアス。この顔、好きなんだよな~
「お兄様家族が隣に越してきたの。それも今日、突然ね」
あぃ?今日、突然だと??
「ごめんね!私のお姉様も、隣のマンションに入居しているの」
おぃおぃ、どうしたよ魔王様達は…
そういえば、リビングルームに真新しいドアが壁に並んでいるけど…
「あのドアは?」
「各魔王の部屋とアザゼルとバラキエルさんの家に、直接行けるドアなのよ」
魔王とおっさんはするだろうけど、バラキエルさんはどさくさに紛れて設置しましたね。ますます僕達の家はカオスになっていく気がする。待てよ?各って言わなかったか?
「なぁ、今、各魔王って言わなかったか?」
「お兄様の提案で、四大魔王の家に直接行き来できるドアなのよ。ごめんなさい」
開いた口が…いつのまにか、父さんがいるし。
「ごめんな。君の留守中にこんな仕掛けを作ってしまって。でもこれで、仕事にいつでも来れるだろ?」
「そうですけど、いいんですか?父さんの家まで、ここから直接行けるようになって」
「構わないさ。移動中の危険は減ることになるからね」
あっ、張本人が来た。
「シュウ君、お帰りなさい」
「なんですか?あの仕掛けドア」
「シュウ君が聖者になった記念だよ。妹の旦那が、聖者なんて魔王として光栄だよ」
「ちょっと待って!僕はリアスの旦那に、まだなっていないぞ」
「あら?逃げるのですか?」
お兄さんの隣に、グレイフィアがいた。
「なんで、グレイフィアさんがいるのですか?」
「なんでって、僕の愛妻だからだけど…あれ?言わなかったっけ??」
「聞いてません!!!」
グレイフィアさんって…僕は凹んで、項垂れた。
「なんで泣いているの?」
リアスが僕の顔を覗き込んでいる。泣くだろう?理想の女性で、僕のペットが…人妻だなんて…気を取り直して
「で、何から逃げるのかな?」
「あれ?言っていないのリアス?」
怪訝そうな顔でリアスに訊く、グレイフィア。
「お姉様、今、逢ったばかりですぅ~」
真っ赤な顔で俯くリアス。らしくないぞ…何が遭ったんだ?
「シュウ君、リアスとソーナさんが、おめでたですよ。父親はもちろん、あ、な、た、よ♪」
そうだった…忘れていたよ。消滅するつもりだったから。アレを渡していたんだ!!渡した残りの人は?視線を向けると、
「私は大学に入ってから、産むからねぇ♪」
うん?ヴァイラは大学に入ってから?じゃ、ソーナとリアスは??
「リアス!ソーナ!お前ら、高3で産むのか?」
「「ビンゴ!!」」
二人とも、とても嬉しそうな素振りである。
「何を考えているんだ?」
「あれ?合意の上で入れたじゃないの」
リアスが不思議そうに訊いたきた。あれ?記憶が…そんな気もするけど…
「来年、ソーナと休学するから、シュウと同じ学年になれるよ」
同じ学年??あれ?僕、退学しなかったっけ??
「僕って、退学しましたよね??」
「それじゃ、ダメだろうと思って、来年、君とシーグヴァイラ君とヴァーリ君は2年生に編入扱いだよ。理事長権限でね」
指でピースしている魔王様。それって、職権乱用しまくりじゃないの?あぁ、僕は高校2年で父親になるのかぁ…僕は1万Ptのダメージを食らった気がした。
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12月にほど近い11月の末、リビングでのんびりしていると、リアスが近寄ってきた。
「クリスマスは、二人でデートしましょうよ♪」
みんな怪訝な顔つきでリアスを見た。そんな視線を、まるで感じていないリアス。
「子供が出来たら、二人でゆっくり過ごせないからさぁ~」
こいつ、ツッコミどころ満載なことを言っているんだが…
「リアス、クリスマスって、教会の祭りって知っているか?」
リアスはキョトンとしている。知らなかったみたいだぁ。はぁ~…
「サンタさんがプレゼントを持ってきてくれる日じゃないんだぁ??」
はぁ??
「サンタクロースも、元々教会関係者なんだが…冥界の教育って、これでいいの?グレイフィアさん?」
「すみません。教育が行き届かなくて。はぁ~」
グレイフィアを、嘆かすとは許せない。彼女を虐めるのは、僕の特権なのに…
「そんなこと、どうでもいいじゃない。お祭りは楽しもうよ」
こいつ、まだ言うか
「その日は、スケジュールが、埋まっているから無理だぁ」
「なんでよ!誰とデートする予定なの!!バチカンからお持ち帰りしたトスカとか?」
怒り心頭で僕に攻め寄る紅髪娘。たぶん、この家で、気づいていないのは、お前だけだ、リアス…
「トスカも参加メンバーに入っている。あと、レイヴェルとグレイフィアさんとガブリエル、ヴァーリ、ヴァイラ、木場だったかな」
「えぇぇぇぇ~!私は除け者?ひどいんじゃないの?」
はっきりと言わないとダメかな。まるで、気づく素振りが見えないリアス。僕の婚約者だと自慢するコイツに、こんな事は言いたく無いのだが…
「僕の義理の両親の家のことは、覚えているかな?」
「もちろん!」
自信有りげで、笑顔で答えているが…
「職業は何か覚えているかな?」
「もちろん!」
そんな満面な笑みをされても、逆に哀愁を感じるぞ。あぁ、言いたく無い…コイツの落ち込む顔は見たくない。
「じゃ、今までの会話の流れで、おかしい点を挙げてみて」
不可解な顔しているリアス。本当にわからないのか?事実を知って、自分を滅したら、どうしよう…それは、避けたい事態だよ。
「おかしいのは、シュウが私を差し置いて、みんなとパーティーすることだよ!!」
あぁ…ダメだ。コイツ…
「なんで、そうなる?はぁ~、グレイフィアさん、リアスの子供は引き取るから、一緒になるのは、カンベンして欲しいな」
イヂワルぽくいう僕。いや、毎年、こんな会話は繰り返したく無い。
「そうですね。考え直した方が、良いかもしれません。義理の妹がバカで、ご迷惑をおかけします」
僕とグレイフィアさんのやり取りに、キレ出したリアス。
「なに?二人でいい雰囲気させて!!なんで、カンベンとか、バカなのよ、もう!!」
顔を真っ赤にして、頬を膨らませて…怒りを表現する天然のリアス。
「部長、マジぼけですか?でも、この件はまずいですよ」
イッセー、その通りだ。
「リアスさん、気づかないなら、この家にいる資格は無いですよ」
白音、良く言った。
「あらあら、キレても何も出ませんわよ、リアス」
朱乃さん、僕は溜息出まくりですよ。
「リアス部長は、来ても役立たない行事ですから」
木場、そうなんだよ。絶対に役立たないと思う。
自分の眷属達に、散々な事を言われて、更に激高するリアス。
「なんでよ!なんで、私だけ、知らないのよ!!」
「バカだからだろ!僕の義理の両親の家は教会だ、このボケ!その日はミサがあって、誰が相手であろうと、デートなんか、したくても出来無いんだよ!そこの紅髪娘!!」
僕の怒りが籠もった言葉で、やらかしたことに気づいたリアス。一気に顔面が蒼白になっていく。この感情のジェットコースターは凄い。大丈夫か?
「あぁ、そうだったよね。教会の息子だものね。手伝わないとダメだよね。あぁ、今まで積み重ねた信用が…」
信用?あの特製弁当が脳裏に浮かぶ…信用は無いなぁ。信頼はしていても…
「リアスが積み重ねたのは、僕の寝床への夜這いの回数だけだろ?」
「それだけでないもん」
頬を膨らませて怒るリアス。
「ちょっと、リアス!!シュウ君に夜這いってどういうこと??次期当主が情けない。ちょっと、他にも色々と教え込むことが有りそうね」
ここで、グレイフィアさんが、ついにキレた。リアスの頭を掴むと、サーゼクス家に続くドアに連れ込んで行った。
『痛いよ~!シュウ、たすけてぇ~』
というリアスの言葉を残して。