※この作品はR-18です。

ぐだおとキアラ   作:ザッカリフ

1 / 8
視点・場面変更多すぎてすみません。


1

「う~~デルセンデルセン」

 

今アンデルセンを探して全力疾走している俺はカルデアに召喚されたごく一般的な☆3全体剣。

強いて心境をあげるとすればマスターと殺生院キアラの関係に焦燥を抱いているってことかナー。

名前はフェルグス・マック・ロイ。

そんなわけでアンデルセンのマイルームを目指しているのだ。

 

---

 

「セックスってどうやったらいいの?」

「おお、そうか! ついにか!」

 

ようやく第R-18特異点・純愛情交寝台(マシュ・キリエライト)に辿り着いたのかと、他人事ながら歓喜と安堵に心が満ちる。

あの躰を前にして一切手を付けないあたり、このマスターは奥手にも程がある。自分ならば即ハメボンバー待ったなしだというのに。むしろ自分によく話しかけてくるあたり、俺を男として求めているのではないかと薄々思っていたのだが。

 

「しかしな、マスター。そう気構えるものではないぞ? お互い初めてならば、お互いそれを愉しめば良いのだ。マシュの嬢ちゃんも――」

「え? いや、マシュじゃなくてキアラさん、なんだけど……」

「ははははは!」ドギューン キュピーン

「なんで今勇猛使ったの?」

「ああ、いや……」

 

精神干渉を防ぐため反射的に使ったのだが効果はなかった。いや、既に何処からか精神干渉が始まっているのならば、今更使っても意味はなかった。まぁ、今更喰らったものは仕方がない。第二撃に備えることが出来たと考えるのが落としどころか……

 

---

 

これが全力疾走2分前の顛末である。

歓喜と安堵は恐怖と焦燥に。秋の空とてここまで派手に移ろうまい。すわ剪定事象か、特異点かとダ・ヴィンチ女史に取り掛かろうとも思ったが、両者と一番接点のあるアンデルセンに訊くのがまずは順当であろうと、こうしてアンデルセンのマイルームへと駆けつけたのである。

 

「アンデルセン!!」

「ノックくらいしろ! あと俺のケツは貸さんぞ!」

 

 

 

***

 

 

「いけませんっ、そのようなふしだらな! ま、まずはセックスっ、セックスからです!」

 

やってしまった。大いにやらかしてしまった。

魔性菩薩とも呼ばれた自分が何たる無様――

 

それはつい数分前の喫茶店にて、マスターである藤丸立香と語らっていたときのこと。視界の隅に学生カップルの食べさせあいが映ったのだ。互いの初々しさと臭いからするに恐らくは童貞と処女なのだろう。お互い顔を赤く染め、交代で不器用に食べさせあっている。なんと恥も外見も無く微笑ましいと意識は正面から視界の隅に移り始め、ついにはそのカップルから目を離すことができなくなっていた。

 

――遠くも新しい言葉。

恋は現実の前に折れ、現実は愛の前に歪み、愛は、恋の前では無力になる。

ならばあれは、そして自分は――

 

「キアラさん」

 

声が自分を現実に引き戻す。

せっかくの逢引に自分は一体何をしているのか。謝罪の言葉を発しようとしたところ

 

「は、はい。あーん」

「――――」

「あーん」

 

明らかな不意打ちだった。例えるならば玄妙な連携から顎を撃ち抜かれた時に似ている。いや、無防備だった自分が悪い。このザマでは素人にも遅れを取ろう。そうではない、不意打ちを受けたのならば反撃を、その前に熱が集まるこの顔を、いや年下のくせにこのマスターは……!

 

そして冒頭の説法だ。自分でも何を言っているのかわからなかったが、何か言わなくてはいけなかった。言い訳の弁を繰ることもできず、顔には熱が集うばかり。結果、進退窮まった自分は四念回峰行で会計を済まし、呆然とするマスターを引っ張り喫茶店を後にし、今に至る。

顔の熱はまだ引かない。それどころか熱は鼻孔の奥にまで浸透し、視界さえ歪ませはじめていた。

 

---

 

「キアラさん……」

 

これはどうあっても取り繕え無い。いや、諦めるのはまだ早い。確かに自分は狼狽し失敗した。だが、自分の武器が失われたわけではない。むしろ先の流れを利用して、自分の領域に引きずり込む。そうと決まればすぐに反撃を――

 

「あのさ、オレ、その、経験ないんだけど」

「――――」

「それでも」

「立香さん」

 

平時の通り発声できただろうか。なにせ分泌自在の愛液をこの殺生院祈荒が制御できていないのだ。それも出発前に自戒を込めたタンポンにより事なきを得たが、身体状態は容易に精神に影響を及ぼす。いや、順序が逆か。

何にしても今焦ってはいけない。この男(ひと)を逃すわけにいかない。ここで新たな天に変生する訳にはいかない。

ゆっくりと彼に振り向き、間合いを半歩詰める。逃げられないように手は彼の肩に。少し高い彼の顔を見上げ、瞳を覗き込む。

 

「では、素敵な思い出にいたしましょう」

 

しとどに溢れる愛液は吸水ポリマーによって堰き止められている。

グッジョブ祈荒、ナイス殺生院。出発前の自戒は今年度最高の正解だった。もしも着用していなかったらどうなっていたか。こんなの角生える。

 

「今晩、わたくしと、セックスしましょう? 日付が変わる前に、皆様には内緒でわたくしのお部屋に来てくださいね?」

 

彼は耳まで真っ赤だ。視線こそ自分から逸していないものの、よく見れば汗もかいている。

なんだ、自分以上に狼狽しているではないか。自分と彼を比較して余裕も戻り、先程の意趣返しが出来たと心のなかでほくそ笑む。

 

「は、はひっ」

 

返事を聞いてから極力艶を出さずに微笑み、彼の腕を胸に抱く。歩くペースはやや早めに。吸水ポリマーを貫通しつつある愛液がショーツに染み出す前にカルデアに戻る。

何が高分子吸収体か。愛液(わたくし)を阻みたいのならその三倍は詰め込めという――

自分を棚上げし、彼にしなだれて歩く時間が短くなったことを、心のなかで生理用品メーカーに八つ当たりしつつ、残り600m程の帰路を彼と一緒に歩んでいく。

 

 

 

***

 

 

人とはすなわち自分だけ。他は全て獣か虫。

男など、どこまでいっても所詮は餌。融かし溺れさせる程度造作もない。

……電子の海で生まれた一つの例外を除いて、それは変わるはずがないとそう思っていた。

 

今、自分は自身の躰と表情のチェックに追われている。

本来このようなことをする必要など、どこにもない。どこにもないのだが――先程から止まらない愛液と胸の高鳴りが、これから起こることに対してそのような余裕があるのかと自分を煽りたてる。

愛液はまるでパッキンの古い水道のように零れていく。杯や器を零すほどの量ではないが、確かに少しずつ、止めようもなく溢れていく。胸の高鳴りに至っては痛いくらいだ。無音であるはずの自室が裡から響く音でうるさくて仕方ない。

 

「これは、なに?」

 

ついに言葉が漏れ、胸を抑えて自問する。

欲情だけでは説明がつかない。さりとてただの高揚ではない。でも、これはどこか憶えがある。そう、どこかで。

 

(ああ、そういえば)

 

鏡に映る、胸を抑えた自分を見る。

それは外からの刺激から自分を守ろうとしているのか、裡からの喜びが弾け出さないよう抑えているのか。あるいはどちらもなのか。

そう、この感情は、十余年前、病の寝台で覚えたあの――

 

「何をときめくの――殺生院祈荒」

 

出た言葉は自戒だった。

しかし、愛液と鼓動は収まるどころかより一層激しくなっていった。

 

 

 

***

 

 

「ここ、だよな」

 

ついに来た、来てしまった。

あまりの展開の速さに今持ってこれが現実か疑わしい。このショートカットぶりには配管工ですら舌を巻くだろう。

しかも、自分がこれから潜るのは土管なんてものではなく――

 

---

 

「マスター。真剣な相談のところ悪いが、少し席を外すぞ」

 

そう言ったフェルグスの顔こそ真剣そのものだった。

まるで諸悪の根源に挑む前のような、授業参観に訪れた父親のような。

これには参った。女性に対して百戦錬磨のフェルグスなら、具体的なアドバイスが貰えるのかと思ったのに。一番頼りになると思ったアンデルセンにはこっぴどく叱られてもう頼れるあてがない。何せ事は内密も内密だ。アドバイスは欲しいが、これ以上キアラさんとの約束も破れない。

 

「仕方ない。やれるだけの準備はしたんだ」

 

自分なりの誠意のつもりだったが、正直に言えば見栄の方が強かった。アンデルセンの言う通り、虚飾は滑稽だということなのだろう。なに、ぶっつけ本番なんて今に始まったことでもない。行けば覚悟なんて勝手に決まるさ――

 

---

 

(そんなわけないだろ……!)

 

30分前の自分をガンドしてやりたい。どこの世界にあの女性(ひと)相手に覚悟が決まる童貞がいるというのか。無理にでもフェルグスを引き止めるべきだった。そして何故こういう時に限ってマグマダイバーズは霊基保管室で保管(おしおき)されているのか……!

 

(冗談であって欲しい)

 

もうあの言葉だけでも十分だったと、緊張は恐怖から卑屈にシフトしつつある。

チラリと腕時計を見ると残り時間は1分を切っていた。もうこれ以上の逃げ腰は許されない。

ままよ、と意を決してチャイムを押す。

 

「キアラ、さん?」

「立香さんですね?どうぞ」

 

声に導かれ歩を進める。まるで、死刑執行台に向かうかのように。

 

 

 

***

 

 

(これ、は)

 

何もかもが女だった。

見渡す全てが、漂う全てが、手を握られているこの感触が、何もかもが女だった。

いや、実際キアラさんは女性なのだが、わかってはいた事だが、女性らしすぎた。

この甘く重い、思考を犯す匂い。そしてこれ以上無いほどボディラインを強調した――

 

(バスタオル一枚って)

 

ただ巻いているのではない。締め付けるように巻きつけている。これでは隠しているが隠していないのではないのだろうか。

くい、と手を引かれる。どうやらあまりの衝撃に呆けていたらしい、キアラさんは微笑みながら自分をベッドまで引っ張っていく。

強烈すぎる。あまりの刺激の強さに思考がついていかない。今動いている脚は自分の脚なのか。日時を間違えたのではないか。先程冗談であって欲しいと願ったが、あまりの強烈な現実に逃避すら始めてしまいそうだ。しかも今からセックスをするって、それは。

 

「立香さんは」

 

キアラさんが腰掛けていたベッドから立ちあがる。

 

「ッ、はい!」

「いけず、ですのね」

 

バスタオルの位置が下がった。いや、下げられた。そんなことをしたら谷間が見えて――

 

「わたくしはこんなにも耐えているのに」

 

さら、と。左胸を隠していたタオルが下がる。

現れたのは、やや色素の強い桜色の突起のついた、大きくて重くて柔らかそうな乳房。

 

「立香さんは呆と上の空で」

 

右胸を隠していたタオルも下がる。あれだけ大きくて重そうなのに、美しい形を保っているのはどういうことなのか。何故そんなものが自分の目の前にこぼれ落ちているのか。いや、何故ってそれは今から――

 

「襟も崩していただけないなんて」

 

バスタオルが臍まで下がる。すらりとした、細いが締まった腰が見える。

とん、という足音が聞こえる。二歩は間合いがあった距離はあと一歩分しかなくなっていた。

 

「立香さ――」

 

彼女の声を最後まで聞くこと無く、藤丸立香はまるで破り捨てるように服を脱ぎ始めた。

 

 

 

***

 

 

(ふふ、ふふふふ)

 

止めることが出来た。続けられる。いや、初めることができる。

数分前に換気を忘れていたと気づいた時は御破算になるかと思った。なにせタンポンを3本消費するほどの愛液だ。部屋に匂いが篭もらないはずがない。それでも彼の顔に嫌悪が浮かんでいないのは、偏に知識に乏しかったことに救われたからといえよう。

 

流石に行為に及べば如何に彼が童貞と言えども異常に気づくだろう。しかし、それこそ始めてしまえば自分の躰から逃れることなど出来はしない。そこには絶対の自信がある。まずは逃さないことが肝要なのだ。愛液を止めるのは不可能、ならば視線を誘導する他無い。そう思ってのバスタオル作戦だったが、これもどうやら功を奏したようだ。

 

しかし、作戦などとうそぶいたが、ここから先は考えなしの行き当たりばったりだ。いつも通りと言ってもいい。

そもそも普段は制御可能な愛液が制御できず、もはや病ではないかと危惧するほどの鼓動では、平時通りのセックスなど出来る筈がない。恐らくは感度も桁違いに上がっているのだろう。こと今夜に至っては自分が男を支配するなど既に諦めている。

 

恐らくはまた狼狽するのだろう。先よりも酷い無様を晒すのだろう。

 

でも、それでいい。

そんなことよりも、ただ、この心が何かを知りたい。

自分のこの欲を、ただ、彼に知ってもらいたい。

自分と同じ気持ちなのか、ただ、それを確かめたい。

ただ、彼と繋がりたい――

 

彼は今、破り捨てるが如く衣服を脱いでいる。対して自分は、そこから覗く鎖骨と喉仏を見ているだけで既に軽い絶頂を覚えている。下ろしたバスタオルにその発露をこっそり吸収させているが、限界は時間の問題だ。既に指先にまで湿り気が伝播している。もう靴下なんて脱がなくてもいいから早くこちらに触れてもらいたい。まずは接触。そのプロセスさえクリアすれば何も問題はないのだから。

 

 

 

***

 

 

服を脱ぎ終えた彼に最後の一歩を詰める。

胸がぎりぎり触れるか触れないかの、昼に意趣返しをした時と同じ距離。

彼の顔を見上げ腕を伸ばす。指を置くのは誘った時と同じ位置。

 

(逃しません)

 

彼の腕が伸びる。左手は腰の上に、右手は背中のやや上に、添えるように置かれる。

あの時と同じく、内心でほくそ笑む。これでもう、彼は逃げられない――

彼の顔がゆっくりと近づいてくる。応じるように首をやや寝かせる。瞼を閉じ、彼を待つ。あと数秒もないはずのこの時間が、とても長く、とても新鮮で――

 

ぴと、と。唇が重なるのがわかった。同時に、膝の内側を愛液が駆ける感触があった。

 

(ん)

 

濡れるどころか漏らしているのではないかと危惧する心は、小さな驚きにかき消された。

 

(舌が……)

 

なんと、彼の舌が自分の口内に侵入しようとしていた。

 

(――――)

 

唇の隙間を彼の舌でつつかれ、愛液は足首にまで到達している最中、自分の心に去来したものは先の求める心でもなく、後に続ける賢しいプランでもなく、微笑ましさだった。

 

ついばむと言うには強引で、貪ると言うには控えめで。まるで子供が綿飴を必死に平らげようとしているかのよう。そんな強がる唇に反して、背に回された手は未だ添えるように置かれたまま。いっそ抱き寄せた方が体勢的にも楽だろうに。胸と胸の空間は彼が自分を抱き寄せていない事を証明している。

 

(なんてかわいい雄(ひと)なのでしょう)

 

何かがわかる確信がある。求める心の先を見つけられる。

しかしそれは、首筋に伝うなにかにかき消された。

 

(――え?)

 

殺生院祈荒は涙していた。

 

 

 

***

 

 

(何故……?)

 

あまりに自然すぎる不自然な涙。

感情から流れる涙ならば涙腺が暴走する予兆があるはずだというのに。

意識してみればそこそこの量が流れ落ちていたとわかる。どうやら自分が気づくよりも前から流れていたようだ。

 

瞬間、背に添えられた手が離れていく。

唇に重なる熱が去っていく。

もう少しで得られそうだった何かが消えていく。

気取られてしまった。脳裏に浮かぶのは彼の困惑の表情。

 

(まって)

 

伸ばした両腕を彼の首に絡め、去っていく熱を追う。

唇だけでなく胸も潰れるほどに押し付ける。

下腹部を彼の陰茎に押し付け腰を揺らす。

 

(いかないで)

 

ぐいぐいと押し返すようなせり上がる熱を下腹部に感じる。

右足だけをやや斜め後ろに移動させて半身をきり、彼の首に絡めていた右手を、自身の濡れそぼった女陰にあわせる。まるで湯船から湯を掬うかのように愛液を汲み、反り勃った彼の亀頭に塗りたくる。人差指と中指でカリを挿むように掴み、親指と薬指で亀頭全体を包むように握る。しばらく指を非同期に動かして彼に刺激を理解させてから、一定のリズムでやや力を込め亀頭を揉むように擦る。にちゃにちゃと聞こえる水音と、重なった唇から漏れる彼のくぐもった声が自室に響く。

 

(わたしに、ふれて)

 

彼の腰が引く。重心が崩れた彼に追い討ちをかけるように、躰全体でしなだれかかる。後ろにあるベッドに着地できるように、彼のやや斜め後ろに体重を預けながらベッドに押し倒す。

 

「キアラさ――」

 

左手で彼の口をふさぐ。

聞いて欲しい。知って欲しい。これから得られる何かを。この裡に響く欲を。そして、叶うならば――

涙と愛液はまだ止まらない。左手で彼の口をふさいだまま、右手で亀頭を膣口に添えて、腰をゆっくり下ろす。

 

「ん、ぅ――!?」

 

亀頭を咥え込んだところで腰が止まる。時間にして一秒にも満たない刹那の時。

だが、祈荒は無限にも思える引き伸ばされた時の中で既に五度目の絶頂を迎えていた。

予想通り感度が尋常ではなく上がっている。今しがた味わった絶頂は並の女性なら既に気絶しているほどの官能。それもまだ、亀頭を飲み込んだ程度の話。残る陰茎を全て咥え込むまでにあと何度絶頂を味わうことになるのか。彼に伝えたい何かを得るまでに何度この絶頂を迎えればいいのか。しかし――

 

「んっ……!」

 

祈荒は残る陰茎を飲み込み始めた。

ただ、彼に聞いてもらうために。知ってもらうために。伝えるべき何かを得るために。

 

 

 

***

 

 

「あ゛っ、あぁ、あ゛ぁぁ――」

 

彼の上で泣きながら腰を振り始めてから一分半と少し。予想を遥かに上回る連続する刹那の絶頂に祈荒は耐えていた。

この極楽とも煉獄とも言える絶頂はしかし、一つの答えに辿り着くことができた。

あとは言葉にするだけなのに、口から漏れるものは言葉ではなく獣じみた低い喘ぎ声だけ。

 

(こんなのって、ない――)

 

押し寄せる絶頂が言葉を阻んでいる。絶頂から辿り着いた欲が絶頂により阻まれている。

いつかの彼の問いへの答え。それと同じで全く違うものだとわかっているのに。後は伝えるだけだというのに。

 

(何故――あと少し、あと少しなのに)

 

腰は止められない。

この答えの熱を消したくない。この熱が消えればせっかく辿り着いた答えが雲散してしまう確信がある。

 

殺生院祈荒は官能と絶望の中で、藤丸立香に答えを伝えるべく喘ぎ続けていた。

 

 

 

***

 

 

藤丸立香が押し倒されてから一分半と少し。

殺生院祈荒は藤丸立香を咥えこみ、泣きながら腰を振り続けている。

体験したことのない強すぎる快楽は、官能を通り越した異次元の攻撃と思えるほど。

 

男が殺生院祈荒を支配すること能わず。

その言葉に偽りはなく、その女の快楽の前に雄が陥落するはもはや必定。

瞬間最大膣圧は50kgを有に超え、絡み貪り吸い尽くす雌の前には、童貞など秒殺絶頂はおろか性的障害を超え廃人と化すだろう。

しかし、藤丸立香はそれに耐えていた。耐えなくてはならない理由があった。

 

(どうすればいい……!)

 

淋しそうな瞳と悲しみを湛えた涙を、自分はなぜ晴らせないのか。

まるで駄々をこねるような腰の動きに、自分はなぜ応えられないのか。

始まりから今に至るまで翻弄され続けた自分には、土台無理な話だったのか。

 

この美しい女性(ひと)の涙をすくいたい。

この美しい女性(ひと)の憂いを晴らしたい。

他の誰でもない。

いや、他に誰がいても、オレが――

 

---

 

「もっと恥は有効に使え、童貞」

「なっ」

「あのエロ尼の誘惑とは言え、約束を破ってまですることがそれか。とんだネタもあったもんだ。シェイクスピアと合同で一筆書いてやろうか」

「お、おい、オレはあれだぞ、グスッ、流石にそこまでされたらっ、泣っ、泣くこともグスッ、吝かじゃ」

「面倒くさいなお前は!」

 

「童貞が飾るなよ。男の筆おろしなんて、すべからく格好つかないものだ」

「ア、アンデルセンだって……童貞だろ」

「いや、俺は一歩先をいく童貞だからな」

「えっなにそれ」

 

---

 

――そうだった。そうだよな、アンデルセン

 

あれは叱責ではなかった。応援だったのだ。激励だったのだ。

そう、所詮自分は世界救いし開位童貞(チェリーボーイ)

小賢しく飾ろうと、虚飾は虚飾。今自分ができることなど、持てる全ての誠意と好意を見せる以外に何がある。

今の刺激で二度とオナニーができなくなってもいい、これからの刺激で二度とチンコが勃たなくなってもいい、今から叫ぶ応え(答え)で二度と笑顔を向けてくれ……なくなるのは嫌だけど、それでも――

 

男は度胸! なんでも――

――そうだよな、フェルグス!

 

今はこの、堕ちた女神を受け止め(涙する彼女を抱きしめ)なければ――!

 

自分の口を抑える彼女の左手をほどき、渾身の腹筋運動。

起き上がる反動で彼女が後ろに倒れないように支え、腰の横に手を伸ばし、前から彼女の尻をつかむ。

体位は奇しくも対面座位のそれに近く。

 

「キアラさん!!」

 

きょとんとした彼女の表情が印象深い。それはまるで、迷子で泣いている子供が親を偶然見つけたときのような。

陰茎が完全に抜けきらない程度に彼女を下から持ち上げて――渾身の力をこめて、陰茎で彼女を串刺しにするように抱きしめた。

 

 

 

***

 

 

めり、という躰の裡から響く鈍く重い音。

予想外ながらも焦がれるほどに期待していた彼の応え。

 

「お゛、ォ」

 

貫くほどの衝撃は子宮を震わせ、甘く重い痺れが全身に伝わっていく。

それは救いのようでもあり、介錯のようでもあった。歓喜の断末魔をあげようとした瞬間、彼の唇がそれを阻む。さながら自分の答えを全て余さず飲み干すかのように。既に自分の身体の制御は失われている。勝手に躰が震え、唸るように喉を鳴らす様はまるで壊れたバイブのようだ。

 

(あ)

 

胎に熱い迸りを感じる。それはびちゃびちゃと無作為に撒き散らすようでいて、その実、狙い澄ましたかのような圧のある勢い。あまりの熱の侵入に、それが何かも解らず反射的に身をよじろうとしたが、それを咎めるように彼の両腕は更に力を増して離してくれない。

 

(これは)

 

それが何かを理解しようと頭を働かせた瞬間、意識が白く塗りつぶされていく。

 

「は――ぁ……♡」

 

安らぎと充足感が広がっていく。彼の精液(答え)が胎(心)に染み渡る。

彼の胸に頭を預ける。今のこの気持ちも伝えたかったけど、力が抜けてどうにも難しい。

どちらも言葉で伝えられなかったのは残念だけど、それでも自分は彼と繋がりあえた。

 

それでいい。それならばいい。

 

それに、残念だと思うならもう一度すればいい。次にはちゃんと綺麗に伝えられるだろう。もしも伝えられなくても、伝わるまで何度だってすればいい。彼ならばきっと応えてくれるはず――

 

 

 

***

 

 

きよひーは激怒した。必ず、かの淫靡魔性の女を除かなければならぬと決意した。きよひーには事情がわからぬ。きよひーは、マスターのストーカーである。おはようからおやすみまで、マスターを眺めて暮して来た。当然マスターの性臭に対しては、人一倍に敏感であった。今日未明きよひーは保管室から釈放され、閉じるを押し霊基一覧を超え、2ステップ離れた此このサーヴァント一覧にやって来た。きよひーには常識、理性も無い、貞節も無い、狂と殺のイカれたライバル共と常に一緒だ。この三人組は、同じ時をして釈放されており、近々、情報交換をすることになっていた。

 

「あの毒虫の胎から我が子の性臭がいたします」

「なぜ匂いがするのですか」

「注射器一つあれば誰でも出来ることでは」

「驚きました、静謐さんはご乱心ですか」

「精液の入手経路は?」

「清姫さんなら解っていただけると思っていました」

「我が子からはあの毒虫の淫臭もするのですよ!」

 

聞いて、きよひーは激怒した。

 

「裏山死刑。生かしておけぬ」

「そこまでだよ」

 

「「「チッ」」」

 

「次に諍いを起こしたらゼリーに変えちゃうって言ったつもりだけどな」

「何をおっしゃいますダ・ヴィンチさん。私共は花のがぁるずとぉくを満喫していただけのこと」

「その通り。嘘は私の最も忌み嫌うものです。偽るわけがございません」

「ちょうどマスターの話題で盛り上がっていたところです」

「その割には随分と殺気を撒き散らしていたようだけど?」

「刃鳴り散らす談笑もありましょう」

「ふーん……そうか。では刃だけに切り口を変えてみようかな?」

 

そう言うと、突如第三霊基再臨状態に变化し、珍妙な帽子を人差し指で押し上げる。

 

「殺生院キアラを亡き者にしようと企んでいる者は――」

 

随分と乱暴な切り口もあったものだ。というか、ちゃっかり聞いていたのではないか。

しかしその質問は黙秘に徹さなければならない。その後はまたぞろ面倒な追求が続くのだろう。

情報はまだ不足してるが仕方ない。ここは散開し、今もって行方不明のマスターを捜索し、直接事情を訊かなければ……

 

「――藤丸立香の子を孕む」

「「「えっ?」」」

 

「ご、ご冗談をダ・ヴィンチさん」

「ああ、冗談だぜ。でもマヌケは見つかったようだね」

「「「アッ!」」」 サスリ サスリ

 

 

「「「シブいねぇ~。まったくオタク、シブいぜ……」」」

「確保ッ!」

「「「チッ!」」」

 

何たる厄日。植物の心のようにマスターと平穏を目指すこのきよひーが!

このような不当な弾劾許されて良いはずがない。

 

「この代償は高く付きますよ、殺生院キアラ……!」

 

ダ・ヴィンチちゃんとの追いかけっこは、藤丸立香がひんひん泣いている殺生院キアラをお姫様抱っこで連れ帰ってくるまで続いた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。