※この作品はR-18です。

聖女(性女)様と一緒 ~悠々自適の一人旅が、波瀾とエロに満ちた珍道中に~   作:ぐうたら怪人Z

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③ 訓練開始

 

 

 

 朝。

 

「あー、やってらんねー」

 

 学院の廊下を、2人の男が歩いている。

 白髪で長身の男と、黒髪で小柄な男。

 

「やってらんねーっすわ」

 

「ちょっとゼンさん、さっきから何ずっと愚痴ってんですか」

 

「そうは言うがよー、ダニッチ。

 これが愚痴らずにいられるかって」

 

 白髪の男――ゼンは文句たらたらと言った様子で、持っていた書類をパンパンと叩いた。

 

「イーファ・カシジャスに関する全資料を持ってこい――なんて、あの学長(じじい)急に言ってきやがって。

 徹夜して纏めんのがどんだけしんどいのか分かってんのかね」

 

「外部から講師をお招きして、彼女に特別講習を受けさせるんでしたっけ」

 

「ふざけんなって話だよ!」

 

「そうですね。

 ――僕達、学長から信頼されてないってことですもんね」

 

 彼らは、“賢者の学院”の教師なのだ。

 その中でも、一応は“学長派”に所属している。

 しかし生徒に教える身である2人にとって、学長が外の人間を当てにしているという事実は、俄かに許しがたいものだった。

 

「どんな人なんですかね、その外部の講師って」

 

「どうせいけすかねぇ奴さ。

 こういうのは大体ろくでもねぇ野郎だって相場が決まってる」

 

「確か“帝国”から来てるんでしたっけ。

 きっと、有名な方なんでしょうね」

 

「はっ! 有名な教師ねぇ!

 なんだったら、かの英雄ヴィルバルト将軍でもつれてくりゃいいのに。

 確かあの学長(じじい)、この前の戦争で会ってんだろ?」

 

「会ってるどころか、一緒に戦ってますよ。

 まあ、学長でも呼ぶのは不可能でしょうけどね。

 もし“王国”にヴィルバルト将軍が来るなんてことになったら、大騒ぎですから」

 

「分かってるよ、そんなことは。

 ……と、そういやその講師、名前はなんつったっけ?」

 

「聞いてなかったんですか、ゼンさん?

 確か名前は――――ヴィル、だった、よう、な――!?」

 

 ダニッチは台詞の途中で、“何か”に気付いたように声を詰まらせていく。

 ゼンもそれは同様のようで。

 しばらく考え込んだ後、ぼつっと呟く。

 

「――――ヴィル?」

 

「えっと、確か、そんな感じだったはず、です」

 

「ヴィル」

 

 もう一度、口にしてみた。

 

「ヴィル――――ヴィルバルト」

 

「――な、なんか連想しちゃう名前ですよね!?」

 

 思いつきを否定するダニッチ。

 しかし、彼の顔には汗が一筋流れていた。

 

「…………」

「…………」

 

 沈黙が降りる。

 それを打破したのは、ゼンの方だ。

 

「いやいや、そんなわけねぇよ!

 なぁっ!?」

 

「そ、そうですよ!!

 そうだとしたら国賓クラスのお客様ですよ、そんなまさか!!」

 

「ああ、まさかだ!

 まさかだよ!!

 だいたい、お忍びで来るにしたってヴィルは無いだろう、ヴィルは!

 そんなバレバレな名前で――なぁ!?」

 

「ええ、お間抜けに過ぎますよね!

 ヴィルバルトだからヴィル、だなんて、そんな偽名!」

 

 ここで、2人は一気にトーンダウン。

 

「――でも、一応、学長が呼んだ講師だからな。

 あまり、その、無礼なことはしないよう気を付けようぜ」

 

「え、ええ、失礼の無いよう、心がけるべきですね!」

 

「ははははは」

 

「あははははは」

 

 廊下に、2人の教師の乾いた笑いが木霊した。

 

 

 

 

 

 

「では、僕達はこれで」

 

「何かあったら、いつでも声かけてくれ」

 

「ああ。

 ありがとう」

 

 “賢者の学院”でのイーファの成績資料を届けてくれた教師2人を、ヴィルは礼を言ってから送り出した。

 

(なかなか好感を持てる人達だったな)

 

 学院の教師をやっているだけあって、2人とも礼儀作法がしっかりしていた。

 こちらの背筋が伸びてしまったほどだ。

 持ってきてくれた資料も見やすく丁寧に纏められていた。

 

(“帝国”にも色々と興味を持ってくれているようだし)

 

 研究者でもあるからだろう、自分が“帝国”出身であると聞いて、“帝国”の歴史や文学・哲学、果ては軍事のことまで聞いてきた。

 その探求心に敬意を表し、機密上問題がある部分を除いて色々と話をしたが――

 ああいう熱心な教師がいるということは、高度な教育を施す“下地”は出来ているというわけで。

 

(――やはり、対立構造とやらは壊さなければ)

 

 生徒のためだけではなく、今日来てくれたような“純粋に研究を励む”教師達のためにも。

 ヴィルは、これから始まるエゴールの孫娘への特訓に対し、全力で臨むことを誓った。

 

 

 

 

 

 

 再び、廊下にて。

 ヴィルの部屋からでた例の教師2人が並んで歩を進めていた。

 

「――帝国の歴史、聞いたこと聞いたこと全部スラスラ答えてましたね。

 アレ、完璧に暗記してますよ」

 

「研究者である俺達ですらよく知らん文献のことまで、平気な顔で網羅してたな」

 

「極めつけに、戦争の話ですよ。

 そっちの話題になった途端、やたら熱入ってましたよね、あの人」

 

「――ああ」

 

 部屋で起きたことを一つ一つ確認していく教師達。

 彼らは、同じ結論を導き出していた。

 

「…………」

「…………」

 

 一拍溜めて。

 

 

「「――将軍かよぉおおおおおおっ!!?」」

 

 

 絶叫した。

 

「うっわマジかよ、あの学長(じじい)何考えてんだ!?

 本気(マジ)でヴィルバルト将軍呼んでやがった!!」

 

「ど、どどどど、どうしましょう!?

 生きた伝説が目の前にいるんですよね!?

 僕達はいったいどうしたら――!?」

 

「落ち着けダニッチ!!

 こうなったら俺達にできることはただ一つ――」

 

 ゼンはダニッチの目を見据え、堂々と宣言する。

 

「――俺達自身が生徒になることだ」

 

「何言ってんですか、あんた」

 

 冷たいつっこみを入れるダニッチ。

 

「いやだからよ、俺達もあの人に色々勉強させて貰おうぜ。

 幸い、イーファが受けてる授業には俺やお前が担当してるのもあるだろ。

 口実はつけやすい」

 

「な、なるほど!

 この機会を逃す訳にはいかないですもんね!」

 

「そうと決まれば善は急げだ!

 将軍への質問、リストアップしとこうぜ!」

 

「はいっ!」

 

 慌ただしく結論づけると、彼らは足早にその学院を駆けて行った。

 

 

 

 

 

 

 女生徒と二人っきりの課外学習。

 この単語に惹かれない男などいないだろう。

 

 他に誰もいない空間。

 可愛い美少女とマンツーマンの個人授業。

 その子の息遣いさえ容易く聞こえる環境。

 ふとしたきっかけで手が触れる。

 しかし少女は拒まない。

 相手が無防備なのをいいことに、ついついその先へ、その奥へと手が伸びていく。

 行為はだんだんと過激になり、これ以上はいけないと、ふと我に返った瞬間。

 

 ――生徒が、物欲しそうな目で自分を見つめていた。

 

「……っていうのを妄想してたのに」

 

 ヴィルとイーファの講義を覗きに来たエルミア。

 しかしそこには、彼女の想像とは全く違う光景が繰り広げられていた。

 

「どうしたっ!!

 誰が足を止めていいと言った!!

 走れっ! まだ1時間も経っていないぞ!!

 走れ走れ走れ走れっ!!」

 

「――は、はいぃ!」

 

 そもそも場所は教室ではなくグラウンド。

 そこでイーファは、ひたすら走り込みをさせられている。

 

(ひょっとして、昼から延々と走らせられてるの?)

 

 今、時刻は午後。

 ヴィルが言った言葉が正しいなら、イーファは昼食後からずっと走っていることになる。

 そして彼女の様子を見るに、その予想は間違っていないようだ。

 少女は息も絶え絶え、脚はふらふらになっていた。

 

「――あっ」

 

 脚をもつれさせ、転ぶ。

 すぐさま、ヴィルが駆けつけた。

 助け起こす――のかと思いきや。

 

「何を転んでいる!!

 気合いが足りてない証拠だ!!

 弱っている“フリ”をすれば情けをかけて貰えるとでも思ったか!?

 甘えは捨てろと言っただろう!!」

 

「……は、はいぃ」

 

 震える脚でどうにか立ち上がり、走り始める少女。

 ……流石に居たたまれなくなってきた。

 

「ちょ、ちょっと、ヴィル?」

 

 エルミアは青年の傍らに歩み寄る。

 

「いくら何でも、厳しすぎない?

 ていうか、魔法の訓練してるのよね。

 なんであの子にずっと走らせてんのよ」

 

「エルミアか。

 別に変なことはしていないぞ。

 魔法の源である“魔力”は、当人の精神力に大きく依存している。

 走り込みで自分を追い込むことで、精神を鍛えているんだ。

 ついでに体力もつくから、一石二鳥だな」

 

 魔法の研究は体力仕事だから、とヴィル。

 ――彼は、これでもかという程“体育会系”だった。

 

「で、でもさ。

 彼女、根本的に魔法が使えないんでしょ?

 だったら、まずはその原因を調べるところから始めた方がいいんじゃ――」

 

「ああ、それはもう大よそ把握している」

 

「えっ!?」

 

「“昔の理論”ではありがちな『穴』なんだ。

 午前中、検査もしてからほぼ間違いない。

 ――おそらく、学長は気付いているな。

 一部の教師にも、察している奴はいただろう。

 なのに派閥対立のせいで放置されていたのだから、酷い話だ」

 

 現在進行形でイーファに酷いことをしているのはヴィルだが。

 

「なら、その問題を解決するのを優先した方がいいんじゃないの?」

 

「彼女にただ魔法を使わせたいというだけなら、構わないかもしれない。

 しかしな、エルミア。

 如何な目的であれ、それは正道を外れて良い理由にはならない」

 

 青年が熱弁を振るいだした。

 

「どんな技術であっても、まずは基礎、基礎作りが大切なんだ。

 基礎が出来上がっていないところへ応用を身に着けさせようとしても、それは付け焼刃にしかならない。

 ちょっとしたことで簡単に崩れ去ってしまう。

 俺が彼女を見てやれるのはたったの1週間だが、その間にやれることは全てやるつもりだ。

 いつか、この経験が彼女の役に立つこともあるだろう――」

 

 とうとうと語る。

 

(――い、意外と教育熱心な)

 

 将来は教育パパになるかもしれない。

 自分とヴィルとの間に産まれる子に対し、今から少し同情してしまう。

 

 視線を、イーファの方へ移す。

 

(こんなにエロいのに、気にも留めてないだなんて)

 

 色気をまるで感じさせない訓練風景ではあるが、少女だけを切り取ればなかなか煽情的な光景でもあった。

 

 まず、あの巨乳巨尻な身体をして、着ているのがTシャツと短パンだけというのがエロい。

 かなりパツパツなサイズの服で、スタイルの良さを惜しげもなく披露している。

 余りに密着しているせいか、短パンには下着のラインまで浮かんでいた。

 

 そして胸と尻が、走る度にプルンプルン揺れているのだ。

 遠目から見てもかなり迫力。

 近くで見れば大興奮間違いなし。

 

 息が上がって紅潮した、愛らしい顔が実に官能的。

 振り乱されるセミショートの赤髪は艶めかしい。

 

 しかも身体は汗だらだら。

 シャツは濡れ、ブラが浮き出ている。

 濡れ濡れな肢体は、それだけでも色っぽい。

 

 男が見れば、勃起すること請け合いな状況だ。

 

(なのに――)

 

 ヴィルの股間は、ピクリとも反応していなかった。

 どうなっているのか。

 彼の精神は鋼鉄製なのか。

 

(これは――前途多難かも)

 

 自分の野望が早くも崩れかかっているのを感じ。

 エルミアは、小さくため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 昼は上手くいかなかった。

 だが、夜なら?

 夜中まで講義は入れないで欲しいと、あの青年には予め言ってある。

 身体を壊したら身もふたもないから、と。

 

 厳しい訓練の後、訪れる安らぎの時間。

 怖かった教官が見せる、優しい顔。

 最初はぎこちない会話も、だんだんと楽しくなっていく。

 相手の思いもよらない一面を知って、胸はときめき。

 談笑は続き、気づけば。

 

 ――2人の距離は、触れ合える程近づいていた。

 

「……とか、思ってたんじゃがなぁ」

 

 ヴィルとイーファの関係は、初日でどれだけ進んだか確認しにきたエゴール。

 しかし、そこで彼が見たものは――

 

「いやー、流石は“帝国”の講師ですね。

 本当に色んなことを知っていらっしゃる」

 

「よく覚えてるもんだよ、色々と。

 なぁ、それじゃ、“物質のエネルギー変換”についていい論文は知らないか?

 “王国”じゃ“帝国”の文献は調べにくくてよ」

 

「ああ、それについてなら、幾つか読んだことがあるな。

 確か――」

 

 学長もよく知る二人の教師――ダニッチとゼンが、ヴィルと仲良く研究討議している姿だった。

 

(違うっ!!

 儂が期待していたのは、こんな男ぐるしい光景じゃないっ!!)

 

 地団太を踏む。

 ちなみに、イーファは自室で既に就寝していた。

 余程きついトレーニングを課されたらしい。

 

(今すぐ乗り込んでいって解散させたい!

 ヴィル殿にイーファとの“夜の授業”を行って貰いたい!!

 しかし――!!!)

 

 エゴールにそんなことはできなかった。

 

(学長の立場を預かる身として、我が学院の研究者が勉学に励んでいるところを、何故邪魔できようか――!!)

 

 歯ぎしりする。

 いや、本当は邪魔したい。

 でも立場上できない。

 

 しかもどうやら、あの2人の教師はヴィルが“将軍”だと分かって話をしている様子。

 それを把握した上で、上手い具合に青年から話を聞き出していた。

 エゴールすら知らないような情報も、ちらほらとある程だ。

 研究機関の長として、この場を妨げる真似を行うことは許されなかった。

 

(ヴィル殿も!

 何故、イーファのあのナイスバデーを一日中見て、平然としていられるんじゃ!?

 教師の中でも話題騒然なんじゃぞ!!

 まあ、手を出そうとした輩は秘密裏に排除してきたんじゃが)

 

 想いとは裏腹に、彼らの談義は当分終わりそうも無かった。

 

(ま、まあ、まだ6日もある!

 明日こそは――仲が進展してくれると、いい、のぅ――)

 

 ちょっと自信が無くなってきた。

 真面目な男であることは知っていたが、ここまでだとは思わなかったのだ。

 

 エゴールは肩を落とし、とぼとぼとその場から立ち去った。

 

 

 

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