※この作品はR-18です。

聖女(性女)様と一緒 ~悠々自適の一人旅が、波瀾とエロに満ちた珍道中に~   作:ぐうたら怪人Z

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第8話 青少年のお悩み相談
① 相談受付


 

「あ、これ美味しいですね」

 

「ええ、ミルクの旨味を十二分に生かしています」

 

「素朴だが何度も食べたくなる味だ」

 

 イーファ、エルミア、ヴィル。

 3人揃っての朝食だった。

 場所は立派な屋敷の中。

 豪奢な造りのリビングで、一行はテーブルを囲んでいる。

 

 ここがどこかと言うならば――

 

「――でもセリーヌさん、こんな良いところで暮らしていたんですね」

 

「確かに、育ちは良さそうな人ではあった」

 

 ヴィルはイーファの言葉に一つ頷く。

 彼女の言う通り、この屋敷はセリーヌの生家だそうだ。

 この町一番の商人の一人娘だったとか。

 

 イーファは部屋の中を一度見回すと、

 

「立派な屋敷の生活を捨てて、何で辺鄙な田舎なんかに――」

 

「イーファ、そのようなことを言うものではありません。

 これまでの生活よりも優先したいと思えるほど、愛する相手をセリーヌさんは見つけたのですから」

 

 軽口をぴしゃりと窘めるエルミア。

 こういうところを見ると、どことなく聖女に見えなくもない感じがする。

 

「でも結局先生に乗り換え――」

 

「言葉が過ぎますよ」

 

 今日のイーファはなかなか攻めていた。

 何故だろうか。

 ……ひょっとしたら。

 この町に来るまでの間、セリーヌとはすぐ別れてしまうから、という理由で“夜の順番”が下げられたことが原因、かもしれない。

 ちなみに、1番はエルミアで不動である。

 

 それはさておき。

 ヴィル達は昨日から、セリーヌの実家へと厄介になっているのだった。

 ここまで送り届けてくれたお礼として、彼女の両親からも是非にと頼まれてのこと。

 おかげで豪勢な食事に有り付けたし、快適な休みも得られた。

 

(改めて感謝しておかないとな)

 

 そう思いながら、ヴィルはスープをひとすすり。

 美味しいコクが口いっぱいに広がる幸せを噛み締める。

 

 そんな食事の最中、

 

「楽しんでいらっしゃいます?」

 

「ああ、セリーヌさん」

 

 現われたのは、艶のある黒い髪を長く伸ばした妙齢の美女。

 この家への誘いをしてきた当の本人、セリーヌだ。

 手には、追加の料理を抱えている。

 朝からそんなに多くは食べられない――と思いつつも、胃はもっと美味いものをよこせと主張していたり。

 

「はい、楽しませてもらってます!

 こんな美味しいもの食べるなんて久しぶりですっ!

 ここでセリーヌさんとお別れだなんて、寂しいですねー」

 

「……イーファ」

 

 ニコニコ笑いながら(余り寂しそうでは無い)そう言うイーファに、若干引き気味なエルミアだった。

 しかしセリーヌは聊かも気にした様子はなく。

 

「それは良かったですわ。

 腕によりをかけて作らせて頂きましたの。

 お昼も期待してて下さいましね」

 

「セリーヌさん自ら料理下さったのですか。

 朝早くからお手間を取らせてしまい、申し訳ありません」

 

 聖女が礼儀正しいお辞儀と共に感謝を述べる。

 

「……意外と料理上手だったんですね」

 

「イーファ」

 

 と同時に、また変なこと言ったイーファを牽制する。

 

(おお、なんか今日は聖女っぽいぞ!?)

 

 そして変なところに驚くヴィル。

 正真正銘の聖女様相手に随分な感想と思われるかもしれないが、彼女の正体を知っている人ならコレを咎めることはないはずだ。

 いつもこんな感じだと嬉しい――のだけれど、性女な彼女も決して嫌いなわけではないヴィルである。

 

「ところでヴィルさん、この後お時間頂いてもよろしくて?」

 

「ん、俺か?」

 

「ええ、ご相談したいことがございますの」

 

「ほう」

 

 別段断る理由は無かった。

 宿を提供して貰った手前、相応の礼は返そうと思っていたところでもある。

 

「朝っぱらからヤるつもりですかー?」

 

「いい加減にしないと怒りますよ」

 

 後ろでそんな会話が交わされるのを聞きつつ、

 

「どんな話なのか、少し聞いてもいいだろうか?」

 

「詳しくは後でお話しするのですが、(わたくし)の幼馴染のことなのです。

 幼馴染と言っても年齢(とし)が離れていて、弟のようなものなのですけれど」

 

「そうか。

 まあ、俺でいいなら、幾らでも相談に乗ろう」

 

「頼もしいお言葉、嬉しいですわ」

 

 笑顔になるセリーヌを眺めつつ、まずは目の前の料理を片付け始めるヴィルであった。

 なおイーファとエルミアのやりとりは、

 

「早速若いツバメを捕まえたんですか?」

 

「……お仕置き決定ですね。

 今夜は少々辛い目に遭うことになりますから、覚悟しておいて下さい」

 

「え?」

 

 どうもそういうところに落ち着いたらしい。

 

 

 

 

 

 

 食事は終わって、小一時間。

 ヴィルはセリーヌの屋敷のリビングに案内されていた。

 目の前には、一人の少年――いや、ギリギリだが青年と表現した方がよい顔つきか?

 

「この人が?」

 

「ええ、(わたくし)の幼馴染、ジット君です」

 

「ど、どうも」

 

 紹介され、ぺこりとお辞儀をする青年。

 その少しおどおどとした態度からも、若さが伝わってくる。

 

(なるほど、確かに年齢が離れているな)

 

 ともすれば失礼な感想を抱いてしまう。

 無論、間違っても口には出さない。

 

「それで、相談とは?」

 

「え、ええっと、その――」

 

「ジット君、言い難いのでしたら私が説明しましょうか?」

 

「い、いや、大丈夫、セリ姉。

 自分でやれるから」

 

 ジット君からはセリ姉と呼ばれているらしい。

 なかなか仲の良い二人のようだ。

 

「えーとですね、いきなり変なこと言っちゃうんですが、僕には好きな子がいるんです」

 

「――まさか、俺に恋愛相談しようってことじゃない、よな?」

 

「ち、違います違います!」

 

「そ、そうか、それならいいんだ」

 

 嫌な予感がしたので一応聞いてみたが、否定して貰えたほっとする。

 青少年の恋愛問題なんて、流石に扱ったことが無い。

 

「それで、覚悟決めてその子に告白したらOK貰えたんですけど――その、お父さんに大反対されて」

 

「君の父親に?」

 

「あ、違います、その子のお父さんです!」

 

「なるほどなるほど」

 

 好きな女性に告白したはいいが、相手の父親に反対されたわけか。

 まあ、よく聞く話ではある。

 娘を持つ父親は何かと面倒臭いのだ。

 

「それでも何とか食い下がっていたら、交際を認めてくれる条件を出してくれたんです」

 

「ほうほう、どんな条件だ?」

 

「最近、この町の近くに強い魔物が現われたんです。

 アームドエイプっていう猿型のモンスターで――人の被害は無かったんですが、田畑がかなり荒らされてしまって。

 それを討伐してきたら、その子との仲を認めてくれるって」

 

「……そういうことか」

 

 合点がいった。

 魔物退治が絡むのであれば、ヴィルの得意分野だ。

 

「要するに、君がその魔物を倒す手助けをすればいいんだな?」

 

 戦闘のサポートをしてもいいし、この青年を鍛えてもいい。

 

(うん、身体つきも悪くない)

 

 体格は標準程度だが、頑強そうな造りをしている。

 見れば手には剣ダコができており、腕や足腰など、戦いに必要な箇所にはしっかり筋肉がついていた。

 前々から戦いの訓練を行ってきたようだ。

 

(この分ならアームドエイプの一匹程度、少し鍛錬を積ませれば十分狩れるようになるだろう)

 

 と、ヴィルはこれからの算段を見積もっていたのだが――

 

「…………」

「…………」

 

 ――セリーヌとジットが、少し冷ややかな視線を自分に送っていることに気付く。

 

「あれ、違うのか?」

 

「――ヴィルさん、分かってらっしゃいませんの?」

 

 慌てて尋ねてみるが、セリーヌは寧ろヴィルが何故理解できていないのか不思議な様子。

 

「ど、どういうことだ?」

 

「そのアームドエイプ――ヴィルさんが倒してしまわれたではありませんか。

 町に来る途中で」

 

「…………あー」

 

 そういえば、そんなこともあった気がする。

 ちょっとうざかったので、つい、ぷちっと。

 

「き、記憶にすら残ってなかったんですね。

 正規の兵隊ですら手を焼くような魔物のはずなのに」

 

「……まあ、さくっと蹴倒してましたものね。

 ジット君から話を聞くまで、私もその魔物を見掛け倒しの弱いモンスターなんだと勘違いしてた位ですから」

 

 慄くジットと、どこか冷めた感じのセリーヌ。

 

 一応ヴィルへの弁解もしておくと、幾ら彼だって倒した魔物を早々忘れることは無い。

 ただ今回の場合、タイミングが非常に悪く――要は、“夜の行為”の最中に襲撃されたのだ。

 しかもエルミアとの。

 当然ヴィルは出てきた魔物を瞬殺し、行為を続行したわけで。

 つまり、倒したモンスターのことなど大して確認していなかったのである。

 

「ヴィルさんにこの件をご相談したのも、そういう経緯があったからなのです」

 

「獲物を横取りしてしまっていたわけか――すまない」

 

 知らず知らずのうち、ヴィルはこの青年の恋路を邪魔していたわけである。

 せめて事前に知っていれば、魔物を倒したのはジットである、と口裏を合わせられたのだが。

 そういうことであればなおさら、助力を惜しむわけにはいかない。

 

 一方、謝られたジットは、

 

「あ、頭なんて下げないで下さいっ!

 僕が早く動かなかったのが原因なんですから!」

 

「しかし、その魔物を倒さなければ君と恋人の仲は認められないのだろう?」

 

「い、いえ、その件については、代替案を出して貰ったんです。

 居ない魔物を倒すことはできないだろうってことで。

 ヴィルさんには、そちらでお手伝い頂けないかな、と」

 

「……そうだったのか。

 色々早とちりしてしまったな」

 

 バツが悪くなって、ポリポリと頬をかく。

 

「それで、代替案とはいったい?」

 

「はい、実は二日後にこの町でちょっとした“大会”があるんです。

 そこで優勝すれば、僕達の仲を認めてくれる、と」

 

「ほうほう、なんの大会なんだ?」

 

「ええ、それは――」

 

 少し間を置いてから、ジットが答える。

 

「――あやとり大会です」

 

「え?」

 

「あやとり大会です」

 

「いや聞こえなかったわけではなく」

 

「あやとり大会なんです」

 

「……へー」

 

 あやとり大会だそうだ。

 

 

 

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